神職さんとご朱印 1
「ご朱印ガール」というフレーズもメディアではあまり聞かなくなった2017年。気にはなっていたけれど波に乗れなかったわたしは、「ブームも落ち着いた今なら! 」と、満を持してご朱印を集めてみることにしました♪
・・・ でも、そもそもご朱印のことをあまり知りません。それならば「ぜひ教えてもらいたい」。 ご朱印といえばお寺でいただく方も多いと思うのですが、今回は神社の若手神職さんにお話を聞いてみよう! と思い、さっそく出かけてきました。
今回訪ねたのは、岡崎にある平安神宮で広報を担当されている、南坊城(みなみぼうじょう)さん。お会いした瞬間に「なぜ今ご朱印なんですか? 」と尋ねられてしまいました(笑) わたしとしては、今だからこそご朱印なんです・・・ 。
「ご朱印ガール」ブームは、もうかれこれ5年ほど・・・
——ご朱印ブームのときは、どれくらいの時期から「あ、これブームだな」と肌で感じましたか。
わたしの場合は広報を担当しているので、「最近ご朱印に関する取材が増えたなぁ」というところからですね。雑誌などのメディア関係で取り上げ出されたのが何年前かなぁ・・・ そう、「山ガール」が流行った後くらい。「まぁ、ご朱印は流行らないでしょう」と思っていたのですがブームがきて。若い女性の参拝が増えましたね。なので「ご朱印ガール」のブームはたぶんここ5年くらいじゃないですか。
——ご朱印ガール以前と以後ではどう変わりましたか。
以前は年配の方が多かったですね。あと、団体旅行の方。団体の方は、なぜか長野県にある善光寺さんのご朱印帳をもっているんです。昔は特に多くて。なんでかは知りませんけど(笑)
神職さんも巫女さんも、毎週、筆のお稽古
——平安神宮のご朱印はいつ頃から始まったのですか。
正確なところはわからないですが、大正13年(1924)か14年頃からご朱印をしていたことは間違いなさそうです。おそらく全国の流れからみますと、平安神宮のご朱印も明治時代にはあったのではないかと思います。なので、創建当初の明治28年(1895)からですかね。ちなみにうちのご朱印は、現在は中央に「平安神宮」の印を押しますが、昔は「大極殿」の印を押していたようです。現在の形になったのは昭和から平成にかけての頃だと思います。
——ご朱印は達筆なものが多いですが、神社の方々はご朱印を書く練習や、筆の練習はされますか。
うちの場合は毎週決まった曜日に書道の先生に来てもらい、神職と巫女は書き方を教えてもらいます。神社に入って、いきなり「書いて」といわれても書けませんから。
——てっきり字の上手な方が、ご朱印を担当されているのかと思っていました。
上手な人とかそれなりに書ける人が担当になる頻度は高いですね。最初は筆が使えるようにならないと。最近は「すぐご朱印が書ける」というのが、戦力の目安になったりもします。神様の前で読み上げる祝詞(のりと)を書いたりもしますしね。
平安神宮は京都屈指の桜の名所。4月に、南坊城さんが書いた枚数は・・・
——ご朱印を書くときに意識されていることはありますか。
何も考えないようにしています。字には人の性格が出るとよく言うじゃないですか。だから無心で。胸を張って、姿勢良く書こうということは気を付けていますね。あと、“残ること” を意識して書いています。最近は参拝してすぐにSNSにご朱印の写真をあげる方もいらっしゃいますので。
——ご朱印の字を見れば、どなたが書いたかわかるものですか。
なんとなくわかります、その人のクセがありますから。うちは決まりとかは別になく、基本さえ守ればいい。字を崩して書く人もいますし。実は、「平安神宮」って字が意外と難しいんですよ。単純な字ほどバランスが難しいと思いますね。
——1日で最大何枚くらい書かれたことがありますか。
おそらく300~400枚くらいです。今年(2017年)の4月に。うちは桜のシーズンが特に多くて。参拝される方が増えれば、比例してご朱印もよく出ます。休憩のとき以外は、一日中顔を上げる時間さえないくらいで。「今日、何日やったっけ・・・」とか、平安神宮の「平安」を「平成」と書き間違えそうになったり・・・ 。途中からわからなくなってきます(笑) けれど、おかげさまで、失敗したことはないですね。
——平安神宮のご朱印は「奉拝、平安神宮、日付」に印が押された、シンプルなデザインの1種類だけですが、今後種類を増やす予定はないのでしょうか。
種類を増やす予定はいまのところないですね。1種類のご朱印でも、書く人によって字の感じが違いますので。見比べていただいて楽しんでもらえればと思います。
京都といえば四神相応の地。ご朱印帳は期間限定の予定だったデザインを今も採用
——ところで現在授与されている四神がデザインされたご朱印帳は、いつ頃からあるものなのでしょうか。
ちょうど平安神宮のご鎮座100年のときで、平成6年(1994)からです。それまでのご朱印帳は、一般的なデザインと変わらず、ちょっとした模様と社紋があるだけのものでした。現在の四神のご朱印帳は、百年祭を記念して1年間限定で出したものですが、1年を過ぎてもお求めになる方が多かったため、引き続き出すことになり、今に至っています。
——大人気だったのですね。
人気といっても、その当時はご朱印ブームではありませんでしたので、あまり授与所には出していませんでした。今でしたら当たり前のように、1日何冊とお求めになる方がいますが、当時は「今日は久々に1冊出たなぁ」という感じで。
——どうして四神のデザインにされたのですか。
最初は記念品的な意味合いが強く、平安神宮らしいものを作ることになったそうです。平安遷都とゆかりが深いですから、「四神相応の地」 ということで四神をあしらったご朱印帳を作ってみました。それが意外と好評をいただいた感じです。平安京らしい、京都らしい、というこだわりはありますね。
——ちなみに、ご朱印帳以外にご朱印を書かれたことはありますか。
一度だけ掛け軸で持ってこられた方がいらっしゃいましたよ。
——掛け軸の中には何ヶ所くらいご朱印を書く場所があったのですか。
30ヶ所ほどありました。ご朱印を書くときは毎回緊張するんですけど、このときは失敗できないので特に緊張しましたね。
ご朱印は「神様とのご縁を結んだ証」
——わたしたちがご朱印をいただく際、注意すべきことはありますか。
一般的には「帳面を開いて出してください」 や「おつりはないほうが・・・ 」といわれていますが、わたしはあまりこだわっていません。
——神社にとってのご朱印とはどういうものだと思われますか。
ご朱印は、皆さまが神社にお参りされ、ご祭神に対してそれぞれの無事を祈った後の“しるし”ではないかと思っています。わたしたちが書くご朱印は「これで神様とのご縁を結びましたよ」という証のようなものではないでしょうか。
——平安神宮に参拝される皆さまへメッセージをお願いします。
これから文化庁の移転など、ますます京都に注目が集まりますが、いつ来ても変化のない、安心できる場所でありたいと思っています。桜の季節だけでなく、季節問わずに、お越しいただけると嬉しいです。
「ご朱印ブーム」から、もう5年も経っていることに驚きました。お参りの前にではなく、心を込めてお参りしをてからご朱印をいただく。当たり前のことかもしれませんが、そうすることで「神様とのご縁を結んだ証」としてのご朱印が意義深いものになるんだなぁと強く感じました。一過性のブームではなく、だんだん定着してきた感のあるご朱印ですが、まだまだ知らないことはたくさん。ご朱印の世界をもっと深く覗いてみるために、これからも京都の神社を巡ってみたいと思います♪
■平安神宮
【参拝時間】6:00~18:00、授与所7:30~18:00
神苑8:30~17:30(3月1日~14日・10月は17:00まで、11~2月は16:30まで)
【参拝料】境内無料、神苑600円
【電話】075-761-0221
【アクセス】市バス「岡崎公園 美術館・平安神宮前」バス停から徒歩約5分、地下鉄東西線「東山駅」から徒歩約10分 Google map
【公式ホームページ】http://www.heianjingu.or.jp/
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