先斗町・京料理「大當両」のお正月

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(撮影日:2018年1月5日)

先日、「サ○エさん」を見ていて「あれ?」と思った、わたし。というのも、磯○家は1月11日に鏡開きをしていて違和感を覚えたのです。なんと、関東と関西では松の内の期間が違うのですね・・・ 関東が1月7日までであるのに対して、京都など関西では1月15日まで。まだまだお正月ムードが続く、京都です。

お正月らしい話題をお届けしたいなと思い、向かったのは、京都きっての人気エリア「先斗町(ぽんとちょう)」。創業80余年の京料理店「大當両(だいとうりょう)」さんに、”京料理店のお正月”について教えていただきました! お店や先斗町についてのことなど興味深いお話もたっぷり伺いましたので、どうぞ最後までお楽しみください♪


 

伝統と流行が融合するスポット、先斗町


夜の先斗町。気になる電線も来年には地中化するそう


「富士の高嶺に降る雪も~京都先斗町に降る雪も~♪」
先斗町を歩くと、ついつい口ずさんでしまう、この懐かしのメロディー。知っている方も今は少ないでしょうか・・・

先斗町は、京都五花街のひとつ。「町」とありますが町の名前ではなく、鴨川と木屋町通の間、三条通から四条通までの500メートルほどの短い通りのことを指します。「ぽんと」には、ポルトガル語のカルタ用語で「先端」という意味があるとか、同じくポルトガル語の「ポンテ(橋)」という意味があるなど、諸説いわれています。安土桃山時代には南蛮寺が置かれ、江戸時代の終わりから花街として名を馳せるようになりました。

久々に先斗町を訪れたのですが、少し歩くだけでも新しいお店、特に牛肉を提供するお店が増えたことに、ビックリしてしまいました! 観光地化していることもあり、今の京都の流行を肌身に感じられます。とはいえ、やっぱり花街。お茶屋さんや置屋さんも、もちろん軒を連ねていて、千鳥の提灯のかかる玄関には「根引(ねびき)松」がお正月の情緒を添えています。この京都らしい風情を楽しみに、今日もたくさんの方が訪れています。

「大當両」は、四条通から約100メートルほど北へ上がったところにあります。築約140年を超える風情ある日本家屋で、ベンガラ色の壁が目印。鴨川に面し、5月から9月の間には納涼床もされている、先斗町の中でも伝統ある京料理店です。


大當両のお正月 ~正月飾りと海老芋の白味噌雑煮~



お通しいただいた2階の客室からは、ユリカモメの舞う鴨川が臨め、現在工事中の南座も間近に見ることができます。お部屋の中には、縁起の良い「蓬莱」の掛け軸。松や万両の飾りが、さりげないお正月感を演出しています。



「お正月飾りにもいろいろありますが、床の間には“のしあわび”を飾ります。贈答品などにつける“熨斗(のし)”の原型ですね。これは本物の鮑(あわび)でできているので、大事に使っています」

そうお話をしてくださるのは、三代目の上村哲也さん。最近ではセルロイドなどの模造品も多いという“のしあわび”ですが、さすが、本物を飾られています。廊下や客室には餅花や稲穂、小さな米俵など、随所に縁起物が飾られています。



「お正月飾りはめでたいものです。神様をお迎えするための目印となる“門松”は玄関に、ここにいらっしゃってくださいねという目印となる“しめ縄”や“しめ飾り”は入り口や大事な場所に、そして、この“のしあわび”など、神様にお供えするための“神饌(しんせん)”はお部屋の中に飾ります。でもあくまで料理屋ですので、華美にならないよう、シンプルであることを意識しています」

室礼だけでなく、お料理でもお正月らしさを味わえます。
普段は「ゆば会席」(5,400円~)や「おまかせ会席」(8,640円~)などの会席料理がいただけるのですが、冬場には「ゆば鍋」や「鶏の水炊き」(各5,400円~)、そして松の内(1月15日)までの期間は、「正月膳」も用意されています。



「『正月膳』は、八寸が“正月祝いの七種盛り”となり、椀物が“白味噌のお雑煮”になります。お雑煮は、焼いた丸餅に、海老芋、金時人参が入って、最後に糸鰹を添えます。お好みで芥子(からし)を溶いていただいても美味しいですよ」

先付から水物まで9品付いて、5,400円。白味噌のお雑煮は、「おまかせ会席」(全11品)でもいただくことができるそう。

「お雑煮に使う海老芋は、京田辺産のものを使っています。京都府の南部にある京田辺市は玉露が有名ですが、“山城のえびいも”といって海老芋も名産なんです。とても密度が濃く、ねっとりと甘い。白味噌にもよく合います。農家の方々に育ち具合などを伺って手配しているので、海老芋の美味しさには自信があります。会席の中の一品なので量は控えめですが、お正月だけの味わいなので、ぜひお召し上がりいただきたいですね」

※お料理には、別途サービス料10%が必要です


“奇をてらわない”お料理を出す意味とは



ところで、「大當両」という名前はどこから名付けられたのでしょうか。

「お客様からもよく聞かれます。初代からの屋号ですが、歌舞伎の掛け声で、“よっ、大統領!”というのがありまして、“統”を“當”(当たるという字の旧字体)に、“領”をお金を表す“両”という字に替え、縁起の良い字をあてて屋号としました」

『よっ、大統領!』は、二代目市川左團次(1880-1940)への掛け声。大當両が創業80余年ということで、ちょうど二代目左團次が活躍していた時代にあてはまります。南座が近いお店だけに、歌舞伎とも縁が深いのですね。

「初代の頃は、イチゲンさんお断りのお店でした。先代の時に今のようなお店に変わり、現在、三代目となりましたけれど、これからも奇をてらわないお料理をお出ししていこうと思っています」

“奇をてらわない”。そのことがとても大事だと、上村さんは話されます。

「お客様がこのお店に来られるのは、“伝統的な京料理”を求めて来られると思うんです。伝統的な京料理であり、伝統的な和のスタイルであることを期待して、お店に入られる。だから、それを裏切らないお店を続けていきたいですね」



そう語る上村さんは、実は、元エンジニア。某有名企業で最先端の開発をされ、アメリカ留学経験も持つ、バリバリの理系男子です。

この家に生まれ育った女将さんが、絵画の活動で東京にいた際、上村さんと出会い、結婚をされたそう。

「私も京都出身で、女将とともに東京から京都へと戻ってきたのは、6年ほど前になります。もともと繁忙期にはお手伝いもしておりましたし、女将もお店のことを常に考えてきてはおりましたが、先代が年齢を重ねて待ったなしになり・・・ お店の未来と家族の幸せのカタチを二人で精一杯悩み、考え、結果、すっぱり仕事を辞めて一緒に戻ってきました」

最先端の仕事をするエンジニアから、伝統ある京料理屋の若旦那への転身。聞いているだけでも大変に思え、相当なご苦労があるのでは? と、尋ねてみました。

「そうですね・・・ 大変ではありますが、先代や女将がおりますし、わたしも安心して試行錯誤できています。また、ここにはここの楽しさもあります。たくさんのお客様とお会いしてお話できることもそうですし、室礼も女将と一緒に準備しますが、季節に合わせたことを考えるのは楽しいものです。床の間の飾りも季節ごとに変えていて。やっぱり床の間のあるお部屋でお食事をしていただくことがいい時間になると思いますので、楽しんでいただけるように考えています」

お店に入られてからは元々好きだった歴史など文系の勉強にも、なお一層取り組まれたそうで、京都文化博物館のガイドのボランティアをされたり、語学力を生かして、通訳案内士(英語)の資格も取得されています。

「来てくださったお客様との会話が大事ですから。観光でお見えになるお客様も多いですし、京都のことを伝えられたらと思いまして。うちの仲居さんも長く勤めている方が多いので、いろんなことをよく知っていますよ。ぜひ、そんな会話もお楽しみいただきたいですね」


変わりゆく先斗町の中で


京都に住んでいる人たちの中では、ここ数年、京都の移り変わりが激しいなぁという実感があります。ここ先斗町も、大きな時代の変革期にあるようです。



「あのお地蔵様(写真左側の祠の中に祀られる)は、うちの初代が店の袂の川から引き上げたものです。ここで、町の皆さんでお祀りしてるんですが、もうすぐこのスペースも様変わりします。今、先斗町では無電柱化工事が進められているので、もう少ししたらずいぶん景色が変わりますよ」

そういえば、しばらく前には石畳だった先斗町ですが、いつの間にか四条通に近いあたりはアスファルトとコンクリート敷きになっています。2015年から電線地中化工事がはじまり、昨年(2017年)の暮れからは全国初の小型ボックスを活用した無電柱化事業に着手したそうで、この工事は2019年まで続きます。

「京都に来られる人の数も増えていますし、新しいお店も増えています。そのなかで、先斗町、そしてこのお店の伝統を受け継ぎながら、次世代にどう引き継いでいくのか。いまはそのことを大切に考えています」

変わりゆく町並みの中で、一緒に変わっていくこともできるけれど、あえて伝統的なスタイルを守り続けることにこだわりたい、という上村さん。「京都を愛し訪れる方を裏切らない」という信念は、これからの時代にとても必要なことのように思いました。伝統を守る先斗町のお店を、ぜひ皆さまも訪ねてみてくださいね。

■京料理 大當両
【営業時間】
<10月~4月>17:00~22:00(ラストオーダー21:00) ※土日祝は11:30~15:00(ラストオーダー14:30)、16:30~22:00(ラストオーダー21:00)
<5月~9月>16:30~22:00(ラストオーダー21:00) ※5月・9月のみ11:30~15:00(ラストオーダー14:30)も営業
【定休日】火曜日
【電話】075-221-5663
【アクセス】阪急京都線「河原町駅」から徒歩約5分 Google map
【公式ホームページ】http://pontocho-daitoryo.com/



「そうだ 京都、行こう。」エクスプレス・カード会員の皆さまへ
★2018年1月10日(水)より、大當両が「そうだ 京都、行こう。」エクスプレス・カード特典協力先に加わりました! ぜひご活用ください。

【特典内容】ドリンク一杯サービス
【特典条件】1,000円以下のドリンクメニューから一杯。お食事のとき。会員のみ。

Written by. みさご

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