京都のうどんの謎 たぬきは化ける!?
2011年10月公開

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大阪育ちの弥次さんと東京育ちの喜多さんが、京都は祇園で会いました。
旧交を温め、初めてのお座敷遊びに大盛り上がり!
舞妓ちゃんとの「こんぴらふねふね〜」に大興奮の二人でした。
さて、もうお開きの時間。「でも、ちょっと小腹が空いたなぁ」と喜多さん。「ほんなら近所のうどん屋さんから何かとりまひょか」と女将さん。「何がいい?」と弥次さんはまず舞妓ちゃんに聞きます。「へぇおおきに。お兄さんは何がよろしおす?」「遠慮せんとまずあんたが頼みや」「ほな、うちは『たぬき』をお願いします」「おんなじのがええな」「じゃあ僕も」、ということで全員たぬきを注文。さて、しばらくして届けられた「たぬき」を見て、弥次さん喜多さんが同時に叫びました。「たぬきと違う!」。
「うちら、たぬきゆうたら、これしかありまへんのどすえ」と舞妓ちゃん。初めての京都のたぬきに、二人も恐る恐る食べてみると―「これはうまい。体もあったまるしええもんやなぁ」と大満足。「たぬき」に化かされたお話です。
はてさて弥次さん喜多さんのお座敷に届いた「たぬき」とは…。
東京のたぬきは揚げ玉が入ったシンプルなうどん。揚げ玉(天かす)なので天麩羅の「タネ」がない、タネ抜き、ということから「たぬき」になったといわれます。大阪のたぬきはそば。きつね(うどん)が化けたからこう呼ばれるのだとか。たぬきと区別するために大阪では東京のたぬきを「ハイカラ」と呼んだという説もあります。ちなみに京都では「ハイカラ」はそれほど知られていませんが、祇園富永町で86年続く「おかる」の女将、干場洋子さんは「お客さまの要望で4年ほど前から始めました」と話します。うどんに天かす、ネギ、花がつお、細く切ったかまぼこが入り、海苔をトッピング。「天かすとか、変わったもんが入るからハイカラとゆうたんでしょうか」と女将さん。おだしの味が際立つ逸品です。

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住所 京都市東山区祇園富永町132 電話 075-541-1001 営業時間 11:00〜15:00、17:00〜2:30
(金・土曜日3:00、日曜日24:00まで)定休日 無休 アクセス 京阪本線「祇園四条駅」・市バス「四条京阪前」下車徒歩約5分
京都のたぬきは、きつねにあんがかかった「あんかけうどん」。きつねが「ドロン」と化けたから。「あんかけでドロッとしていることからこういわれるそうです」と教えてくれたのは、昭和15年から左京区岡崎で「おかきた」を営む三代目主人の北村正樹さん。「底冷えする京都の冬には熱々のあんかけが一番です。生姜も載って風邪の予防にもなります。京都のうどん屋さんにあんかけメニューが多いのも冬の寒さを乗り切る知恵といえるかも」とご主人。
さて、うどん屋さんを代表するメニュー「きつね」は京都ではきざみきつね。大阪では甘く炊いた大きなお揚げが載っていますが、大阪スタイルのきつねうどんのことは京都では「甘ぎつね」といいます。京都のきつねは味をつけていないお揚げを細く刻んだものとネギが載っています。「甘ぎつねやとかぶりつかんとあかんでしょう。舞妓ちゃんとか、おちょぼ口で食べんとあかんので、食べやすいように小さく刻んであるんです。九条ネギも斜めに細く切って、うどんとお揚げとネギと一緒に味わえるようにしてあります」。京都のうどんの醍醐味はおだし。京料理とともに発達してきた、うどんのおだしのおいしさは群を抜いています。京うどんはこのおだしがよく絡むように細めでもちっとした食感。「おかきた」では、うどんもそばも、中華めんも毎朝自家製麺です。注文が通ってから湯がきます。

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住所 京都市左京区岡崎南御所町34 電話 075-771-4831 営業時間 11:00〜20:00 定休日 火曜日 アクセス 市バス「動物園前」下車徒歩約2分
お品書きを見て「しっぽく」って何? と思ったことはありませんか。
しいたけ、かまぼこ、湯葉、ほうれん草など青いものに庄内麩などが華やかに載ったうどん。京都では定番です。「しっぽく」の意味は諸説あって、長崎のしっぽく料理の中に素麺にいろいろな具を載せて食べる麺料理があって、これをまねたもの、とか、干ししいたけの種類で、肉厚の「どんこ」と薄くてカサが開いた「こうしん」の間のサイズを「しっぽく」と呼ぶから、などといわれています。東京では「おかめ」ともいいます。しいたけなどの具材でおかめの顔を描いたら人気になったとか。ところで、しっぽくのおだしがあんかけに変わると「のっぺい」になります。「おかめさんが、のっぺらぼうになったから」と上七軒「ふた葉」の若主人、中島秀行さんが教えてくれました。「のっぺらぼうがなまって、のっぺいになったんでしょう」。なるほど、おかめの顔にあんかけがかかると一瞬で「のっぺらぼう」に。
ところで、「今、なんどきだ〜」で有名な落語の「時そば」にはしっぽくと花まきが登場します(ほかにもバリエーションがあります)。上方落語の「時うどん」が基になったといいますが、「時そば」は江戸の蕎麦屋台が舞台(お店の場合もあります)。東京でも人気のしっぽくでしたが、お蕎麦屋さんが考案した「おかめ」が評判になり、しっぽくはその座をおかめに奪われたのだそうです。
花まきは江戸が発祥の浅草海苔を使ったそば。海苔は「磯の花」なので花まきになったといいます。「ふた葉」ではうどんでも、そばでも食べられます。「西陣の旦那衆が上七軒で遊んだシメにお茶漬け代わりに食べはったようです」と中島さん。海苔の香りにワサビ、おだしが絶妙。あっさりした粋な味です。

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住所 京都市上京区今出川通七本松西入ル真盛町719 電話 075-461-4573 営業時間 11:00〜19:30 定休日 水曜日 アクセス 市バス「上七軒」下車徒歩約5分
「権太呂・ごんたろ」の初代は大阪の「更科総本店」で修業して独立し、大阪で50年、京都で50年。うどんすきが評判のお店です。お店では「東京、大阪、京都のええとこどりをしています」と本店店長の東理子さん。浪花の味を京都へ、ということで、きつねは甘ぎつね。たぬきは京都のあんかけですが、甘ぎつねの上にあんをかけます。おだしは京料理と同じこだわりのかつおと昆布のだし。麺は自家製麺です。こちらの名物はけいらん。
「けいらん(鶏卵)」とはストレートなネーミングですが、卵をとじたあんをうどんにかけ、生姜を添えたうどんです。「けいらんは京都が有名で卵だけのものがほとんどですが、中にはキクラゲが入ったりするものもあります。北の地方に行くと、必ずしもあんかけではないようです」。それにしてもそのままの名前ですよね。「鶏の卵は昔、貴重品だったので、それだけでありがたい名前だったのでは」と東さん。こだわりの地卵を濃い目のかつおのだしで作ったあんにとき入れ、強火で一気に煮立てます。そうすると卵が薄い膜状につながってふんわりした玉子の出来上がり。「先代が考案した作り方です」。吉野葛を使っているため、ぴかりと照りの良いけいらんが完成。少し太めのうどんが濃い目のだしによく合います。

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住所 京都市中京区麩屋町通四条上ル 電話 075-221-5810 営業時間 11:00〜21:00 定休日 水曜日 アクセス 阪急京都線「河原町駅」・市バス「四条河原町」下車徒歩約5分
衣笠山は京都市北区にある標高201メートルの山。笠を伏せたような山容からこの名が付いたといわれています。宇多天皇が真夏に雪景色が見たいと言われ、衣笠山に白絹を掛けたという故事から「きぬかけ山」とも呼ばれ、衣笠丼はこの故事にちなんだ丼。刻んだお揚げとネギの上に白絹ならぬ、とき卵をふわりとかけます。玉子の下にお揚げが入るのは「キツネに化かされたから」だとか。
さて、ハイカラでご登場いただいた祇園の「おかる」。その店名はお店の前身の元お茶屋さんが忠臣蔵の「おかる勘平」で有名なおかるさんの住まいだったことから付いたといいます。北海道の香深の利尻昆布を使ったおだしの味が自慢。衣笠丼も創業以来の人気メニュー。「お月さんが笠をかぶっているので衣笠やと聞いています」と女将さん。おだしの効いた玉子にとじた厚さ1センチほどのお揚げが美味。「お山でも、お月さんでもおいしいものはおいしい」と感じ入った次第。おあとがよろしいようで…。
※ここで紹介した名前の由来には諸説あり、この記事内容はすべてのうどん、そば屋さんに当てはまるものではありません。

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