キャンペーンギャラリー
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2024
2024年秋
京都の碁盤の目を少し出たら、
平安の都人を夢中にさせた紅葉に出会えました。
京の都ができるより遥か早く拓けた宇治。宇治川を中心とした美しい景観に恵まれ、やがて多くの平安貴族の別荘地へ。平等院も元は藤原道長の別荘でした。やがて自然災害、内乱、疫病などで社会に不安の兆しが現れます。ついに道長没後25年目の一〇五二年、末法初年に長男頼通が寺への改修に踏み切り、名前も平等院へ。高さ3m近い阿弥陀如来坐像や周りの「雲中供養菩薩像」を揃えた彼の願いは、極楽の様子をこの世に具現化して、人心の不安を救うことだったのでしょうか。
写真は鳳凰堂。雲中供養菩薩像は平等院ミュージアム鳳翔館で。平等院/京都府宇治市蓮華一一六/京都駅からJR奈良線「宇治駅」下車
2023年11月撮影。広告上の演出を施しています。
※一部掲載していないポスターがあります。
2024年秋
京都の碁盤の目を少し出たら、
平安の都人を夢中にさせた紅葉に出会えました。
平安の都人を夢中にさせた紅葉に出会えました。
京の都ができるより遥か早く拓けた宇治。宇治川を中心とした美しい景観に恵まれ、やがて多くの平安貴族の別荘地へ。平等院も元は藤原道長の別荘でした。やがて自然災害、内乱、疫病などで社会に不安の兆しが現れます。ついに道長没後25年目の一〇五二年、末法初年に長男頼通が寺への改修に踏み切り、名前も平等院へ。高さ3m近い阿弥陀如来坐像や周りの「雲中供養菩薩像」を揃えた彼の願いは、極楽の様子をこの世に具現化して、人心の不安を救うことだったのでしょうか。
写真は鳳凰堂。雲中供養菩薩像は平等院ミュージアム鳳翔館で。平等院/京都府宇治市蓮華一一六/京都駅からJR奈良線「宇治駅」下車
2023年11月撮影。広告上の演出を施しています。
写真は鳳凰堂。雲中供養菩薩像は平等院ミュージアム鳳翔館で。平等院/京都府宇治市蓮華一一六/京都駅からJR奈良線「宇治駅」下車
2023年11月撮影。広告上の演出を施しています。
2023年 秋
「紅葉ベスト3」を京都の人に尋ねました。
その顔にこう書いてありました。
ごめんなさい、多くて、決められない。
その顔にこう書いてありました。
ごめんなさい、多くて、決められない。
この町の紅葉スポットは無限だ。時期により時間により趣により様々な景色が揃っている。東山に沿って数多くある寺社を巡るだけでも、何回、秋の京都の旅ができるだろう。ここは京都岡崎エリアにある臨済宗南禅寺派の大本山「南禅寺」。国宝「方丈」や、重要文化財「三門」などの建造物、さらには数々の庭園や狩野探幽の襖絵なども揃い、境内全体が国の史跡に指定。紅葉の景色もこれに立派に見合うように計算し手入れされている。自然と歴史が見事に融合したところに文化が生まれると納得させられる。南禅寺/左京区南禅寺福地町/地下鉄東西線「蹴上駅」下車、徒歩約10分。2022年11月撮影。広告上の演出を施しています。
2023年 秋
「紅葉ベスト3」を京都の人に尋ねました。
その顔にこう書いてありました。
ごめんなさい、多くて、決められない。
その顔にこう書いてありました。
ごめんなさい、多くて、決められない。
この町の紅葉スポットは無限だ。時期により時間により趣により様々な景色が揃っている。東山に沿って数多くある寺社を巡るだけでも、何回、秋の京都の旅ができるだろう。ここは京都岡崎エリアにある臨済宗南禅寺派の大本山「南禅寺」。国宝「方丈」や、重要文化財「三門」などの建造物、さらには数々の庭園や狩野探幽の襖絵なども揃い、境内全体が国の史跡に指定。紅葉の景色もこれに立派に見合うように計算し手入れされている。自然と歴史が見事に融合したところに文化が生まれると納得させられる。南禅寺/左京区南禅寺福地町/地下鉄東西線「蹴上駅」下車、徒歩約10分。2022年11月撮影。広告上の演出を施しています。
2023年 初夏
なぜ、口から6体の仏像なのか。
なぜ、こんなに粗末な衣なのか。
この町は、その答えを探す時間だって「旅」になる。
なぜ、こんなに粗末な衣なのか。
この町は、その答えを探す時間だって「旅」になる。
空也上人立像/六波羅蜜寺蔵空也没後、約250年たった鎌倉時代、運慶の四男康勝の作。教科書で知っていても、実物を見つめ空也の人間性を知ると、印象はアップデートされる。平安中期、念仏を唱えながら諸国を廻り、道路・橋・寺院の建設など社会事業に関わった空也。自らを顧みず、托鉢で得たものは貧しい人や病人に与え続けたという。これは、京の町に流行病で多数の死者が出た時、念仏を唱えながら魂を鎮め、疫病を踏み倒すように歩く姿だ。口から飛び出している小さな仏さま。空也が「南・無・阿・弥・陀・仏」6文字を唱えると6体の阿弥陀仏に変わったという伝承が見事に形にされている。六波羅蜜寺/京都市東山区五条通大和大路上ル東
2023年4月撮影。広告上の演出を施しています。
2023年4月撮影。広告上の演出を施しています。
2022年 秋
「秋が待ち遠しかった」と語る⼈は今年きっと多い。
私がそうであるように。
私がそうであるように。
京都の秋を語り始めたらキリがない。紅葉を入り口にするだけでも多くのストーリーを連れてきてくれるのは、さすが一二〇〇年の都。例えば、京都の町中から北西にバスで一時間足らずの場所にあり、北山杉の深い緑や清流とのコントラストが見事な高雄・栂尾。自然を一枚の絵画に仕立てる日本的な意匠に気づいたり、多彩で雄大な大自然を前に大天才空海の逸話に触れたり。今年のあなたの気持ちに寄り添う「紅葉」がきっと見つかるはずです。写真は神護寺/右京区梅ヶ畑高雄町/京都駅からJRバス「高雄・栂ノ尾・周山」行または「高雄・栂ノ尾」行で、「高雄」下車。
広告上の演出を施しています。
広告上の演出を施しています。
2022年 夏「建仁寺」
口をひらけば、暑い しか出てこなくなったとき、人に必要な風景ってなんだろう。
これから日々刻々と緑が色を深める京都。古く立派な神社仏閣が作り出す大きな影や風の道に、町のあちこちで出会う。それはまるで厳しい夏を計算してあつらえたかのようだ。例えば、この八百年ほど前に栄西禅師がひらいた由緒ある禅寺。余計なものがなく、しんとした空間が清々しく、涼しく、優しいとさえ思える。歴史ある建物を、簡単に威厳という言葉で片付けるわけにはいかないと気づかされる。ほかにも、この季節なら町中に湧水を探すもよし、碁盤の目を離れて山あいへ向かうもよし。歴史的な祭りや行事も待ち構えてくれている。 写真は建仁寺・東山区大和大路通四条下る・祇園四条駅から徒歩で。
2020年 早春「石庭編」
なんで今まで、この時期に来なかったのだろう。石庭を前に、そう思いました。
京都に点在する「日本の美」たちとゆっくり対面するために、桜の前の時期を選ぶ人は多い。深と凛とした空気が「心の旅」にはむしろポジティブに働くという。例えば、石庭だ。紫野という平安京遷都以来の美しい名をもつ地域の一角にあって、創建以来多くの名僧、皇族、武将、茶人が関わってきた禅宗の寺、大徳寺塔頭の石庭を回るのはどうだろう。塔頭ごとに美しさ、面白さ、メッセージ性は様々。写真は大仙院。白砂と砂盛でできている国宝方丈の南庭。大海の無限の広がりと静寂の境地を描き出しているのだろうか。侘び寂び、日本のミニマリズム、引き算の美学などなど難しいことはさておき、石庭とはまずは時間をとって向きあうことから。それに尽きる。大徳寺・北区・市バス「大徳寺前」下車すぐ。
2019年 盛秋「秋は夕暮れ編」
秋は夕暮れ。
このあと急いで帰る理由がどこにも見つからない。
このあと急いで帰る理由がどこにも見つからない。
秋は夕暮れ、と彼女が評価したあの時代の秋に思いを馳せる。穏やかさが戻りつつあるものの、まだ夜は長い。その入口にあたる夕暮れ時。色づいた木々に呼応するように西の空が多彩な茜色を見せる。庭の虫の声を聞き、人は静かに読み書きを嗜んだのだろう。そうする他なかったのかもしれない。やがて、時は令和。一〇〇〇年前と変わらず、木々の色は見事だ。しかし、あの頃とは違う。町に豊かな時間が溢れているのだ。紅葉のお寺の門が閉まったら舞台を変えて、碁盤の目の町歩きはどうだろう。この時刻から見つかる町文化がいくつもある。我々の時代の秋の京都には、急いで帰る理由がなかなか見つからない。写真は真如堂・左京区浄土寺真如町・市バス「錦林車庫前」下車、徒歩で。
2019年 盛秋「秋は夕暮れ編」
秋は夕暮れ。
このあと急いで帰る理由がどこにも見つからない。
このあと急いで帰る理由がどこにも見つからない。
秋は夕暮れ、と彼女が評価したあの時代の秋に思いを馳せる。穏やかさが戻りつつあるものの、まだ夜は長い。その入口にあたる夕暮れ時。色づいた木々に呼応するように西の空が多彩な茜色を見せる。庭の虫の声を聞き、人は静かに読み書きを嗜んだのだろう。そうする他なかったのかもしれない。やがて、時は令和。一〇〇〇年前と変わらず、木々の色は見事だ。しかし、あの頃とは違う。町に豊かな時間が溢れているのだ。紅葉のお寺の門が閉まったら舞台を変えて、碁盤の目の町歩きはどうだろう。この時刻から見つかる町文化がいくつもある。我々の時代の秋の京都には、急いで帰る理由がなかなか見つからない。写真は真如堂・左京区浄土寺真如町・市バス「錦林車庫前」下車、徒歩で。
2019年 初夏「苔と新緑編」
苔が、新緑を見守る。「古と今」は、共に美しく生きていました。
桜が終わり、いよいよ次の季節。京都、特に嵯峨野周辺を回るなら初夏にと決めている京都通は少なくない。理由は「みどり」。その色その匂いに、古都が新しい命を重ねてゆくのを実感できるからと言う。なるほど初夏の京都は多種な植物が多彩なみどり色を競う。この町のみどりは何色あるのだろうと気が遠くなるが、やがてその微妙な色の違いを見分ける能力が備わってくるような気さえする。特に苔の庭を見て回るには絶好機だ。庭園のデザインの要が「苔」であり、その美しさと精神性に世界の注目が集まっているのも納得できる。古の侘び寂び「苔」、今日の生命「新緑」。古今が並ぶ。初夏の京都は贅沢だ。写真は常寂光寺・右京区嵯峨小倉山・市バス/京都バス「嵯峨小学校前」下車、徒歩で。
2019年 初夏「苔と新緑編」
苔が、新緑を見守る。「古と今」は、共に美しく生きていました。
桜が終わり、いよいよ次の季節。京都、特に嵯峨野周辺を回るなら初夏にと決めている京都通は少なくない。理由は「みどり」。その色その匂いに、古都が新しい命を重ねてゆくのを実感できるからと言う。なるほど初夏の京都は多種な植物が多彩なみどり色を競う。この町のみどりは何色あるのだろうと気が遠くなるが、やがてその微妙な色の違いを見分ける能力が備わってくるような気さえする。特に苔の庭を見て回るには絶好機だ。庭園のデザインの要が「苔」であり、その美しさと精神性に世界の注目が集まっているのも納得できる。古の侘び寂び「苔」、今日の生命「新緑」。古今が並ぶ。初夏の京都は贅沢だ。写真は祇王寺・右京区嵯峨鳥居本・市バス/京都バス「嵯峨釈迦堂前」下車、徒歩で。
2019年 春「春はあけぼの編」
春はあけぼの。枕草子は最高のガイドブックでした。
春の歓びは桜だけではない。水温、芽吹き、何よりも光だ。暗闇から陽が昇り始めて白々としたら、やがて空を紫色に染める。春はあけぼの、である。早朝の美しい光がつくり出す春の短い時間と空間、その魅力を発見し書き留めたのは、平安の京に暮らす清少納言。まだ30前だったろう。彼女の証言は、一〇〇〇年以上もこの国の人々の心に住み着いてきた。ならば、それを確かめてみようじゃないか。賀茂川に架かる橋に立つ、船岡山、双ヶ岡に登る、大沢池を嵯峨天皇陵から臨む、などなど。ありがたいことに、私たちはこの町に来れば、今だって一〇〇〇年も前と同じ春の空を眺めることができるのだから。
2018年 春
いい春を残してくださってありがとうございます。私たちも、美しい過去になれるといいけれど。
勧修寺【山科区】参道の白壁に映える桜に沿って勅使門から進むと、一気に視界が広がります。目の前の氷室池に張る氷は、毎年一月二日に宮中に献上されていたとか。そもそも皇室や藤原家とゆかりが深く、九〇〇年醍醐天皇が母胤子の菩提寺として創建。今昔物語には胤子の母列子と父藤原高藤のロマンスが書かれていて、その舞台がこのあたりです。桜の姿が優しそうに見えるのはそのせいでしょうか。京都駅からJR「山科」で地下鉄東西線に乗り換え、「小野」下車のち徒歩約6分。または、京都駅から山科急行バスで「勧修寺北出町」下車のち徒歩約3分。
2016年 秋
外の景色をお借りできて、うれしい、ありがとう。「借景」は、きもちの言葉でした。
天龍寺【右京区】建立を足利尊氏に促したとされるのは、僧であり作庭家でもあった夢窓疎石。この約二千坪の曹源池庭園の造園を終えたとき70歳を過ぎていました。これまでの経験がいかんなく発揮された大傑作で、天下の景勝である嵐山・亀山をまるで庭の一部のように取り込むいわゆる「借景」。後世の造園に多大な影響を与えたと言われています。JR京都駅からJR山陰本線(嵯峨野線)「嵯峨嵐山駅」下車、徒歩約13分。天井に描かれた雲龍図が有名な法堂は、秋の特別参拝の期間中毎日公開されます。期間:平成28年9月3日(土)~12月4日(日)(10月28日(金)~30日(日)を除く)。
2016年 「そうだ 京都は、今だ。」
目の前にあるのは、もしかして16面パノラマスクリーンではありませんか。
こちら、襖絵の現場です。ただいま、国宝が里帰りしています。
こちら、襖絵の現場です。ただいま、国宝が里帰りしています。
国宝特別公開中 大徳寺 聚光院 狩野永徳「花鳥図」 襖絵「花鳥図」日本の季節が襖16面にエネルギッシュでストーリー性ある展開で描かれた、襖絵の最高峰の一つである。聚光院は通常は非公開だが、創建450年を記念して特別公開中。それを機に狩野永徳とその父、松栄による本堂障壁画46面(全て国宝)が京都国立博物館より9年ぶりに里帰りし、一挙公開。アクセスや公開日など詳しくは「そうだ 京都、行こう。」ホームページで。
2016年 春
京都御所 京都御苑
世界でもっとも人気の町のその「まん真ん中にある春」なんですから。
京都御所 京都御苑【上京区】南北朝以降約500年にわたり天皇のお住まいであった京都御所。それを取り囲むのが京都御苑。市内中心部、面積約65万㎡の緑豊かな一画で、東京遷都以前には、200軒余もの宮家や公家邸宅が立ち並んでいたそうです。苑内には、写真の近衛邸跡の枝垂桜をはじめ、約5万本の樹木や旧屋敷跡などが点在し、季節毎に雅な風景を見せてくれます。JR京都駅から地下鉄烏丸線「今出川駅」下車。御苑はいつでも自由に入れます。京都御所は4月6日~4月10日一般公開。それ以外の期間も参観できます(事前申込み)。
2015年 夏
過去の場所から未来を想像する。この町は、そんなふうにできている。
下鴨神社(賀茂御祖神社)【左京区】神社の起こりは西暦紀元をはるかに遡るとされており、境内がある「糺の森」からは縄文時代の祭祀遺構が発掘されました。古代の植生が残る森は外より地表面温度が約10度低いとも。凜とした空気が満ちて、前々から人々の憩いの場であったそうです。今年は21年に一度の式年遷宮の年。社殿の屋根の葺き替えや、飾り金具と漆部分の修理などを経て、新しく生まれ変わりました。古代の社は、現に「今」を生きているのです。JR京都駅から、市バス(4)・(205)で「下鴨神社前」下車、徒歩約3分。
2014年 夏
この夏の旅が、いつか、きっと家族のチカラになってくれる気がします。
萬福寺【宇治市】ひらいたのは、1654年に弟子20余人と中国からやってきた隠元禅師。すでに63歳。中国明代の高僧は行く先々で熱狂的に迎えられたそうです。禅師が将来されたものは、美術、医術、建築、音楽、印刷、煎茶、普茶料理など広汎にわたり、江戸時代の文化に影響を及ぼしたと言われます。建物も仏像も明代の禅宗様式に忠実で、僧の読経も明の時代の発音で行われるなど、今も「山門をくぐれば、そこは中国」といった趣です。JR京都駅からJR奈良線で「黄檗駅」下車、徒歩約5分。坐禅の体験には事前の予約が必要です。
2013年 冬
宮川町
「ここに来なければ、今ごろ何してた?」「きっと、こたつで、うたた寝してた」
宮川町【東山区】京都五花街の一つ。四条河原で起った歌舞伎を観に集まった客をもてなす茶屋が始まりとか。役者も多く住んだといいます。古い町並みの薄暗闇が点在する路地は昼間も人通りが少なく、落ち着いた趣きが格別です。やがて夕暮れになるとお茶屋さんの玄関に提灯が灯り、しっとりとした町並みへと姿を変えます。JR京都駅から市バス(4)・(17)・(205)で「河原町松原」下車後、徒歩で。年末年始のしつらいを整えた花街は、いつも以上に京都です。
2013年 盛秋
「今年の紅葉」を見に行く、と言いながら「今年の自分」を見に行く私、でもありました。
南禅寺 天授庵【左京区】室町時代の最盛期には約10万坪の境内に60ほどの塔頭を有し、高い寺格を守り続けた南禅寺。戦禍、復興を繰り返し、今は寄り添うようにあるいくつかの塔頭。中でもこの季節、見逃せないのが三門すぐそばの天授庵です。洗練された枯山水庭園に散る紅葉と、自然美を生かした回遊式庭園の池に映る紅葉と。二つの対照的な紅葉を体験できるのが魅力です。京都駅から、市バス(5)で「南禅寺・永観堂道」または(100)で「東天王町」下車後、徒歩約10分。ライトアップは今年も実施の予定。
2013年 春
どの町の、どこの桜が好きですか。おや、迷っていらっしゃる。どうぞ、ごゆっくり。
妙心寺 退蔵院【右京区】平安の貴人達が山荘を置き、多くの草花を植えたこの辺りは花園と呼ばれ、室町時代にこの地を愛し、この地の離宮を禅寺に改めた法皇に花園法皇の名が贈られました。その禅寺が妙心寺。約13万坪の境内にある40超の塔頭の中、屈指の古刹かつ「元信の庭」「余香苑」で知られるのがここ退蔵院。写真の桜は「余香苑」入り口。四季の花、滝や池や岩で強く優しく見事に構成された名庭です。JR京都駅からJR山陰本線(嵯峨野線)で「花園駅」下車、徒歩約8分。如拙の傑作「瓢鮎図」が有名です。
2012年 夏
早く大きくなれ。いや、ゆっくり大きくなればいい。夏は、親も戸惑いながら育ってゆきます。
伏見稲荷大社【伏見区】伏見稲荷大社の本殿は、「東山三十六峰」の一番南の山のふもとにあります。有名な千本鳥居をくぐり終えて、実はここからが肝心の「お山めぐり」。約4㎞、2時間くらい。清少納言の枕草子に「うらやましげなるもの」として初午の日の「稲荷詣で」が取り上げられているほどですから、峰々を巡拝することは平安の昔から人々の関心事だったのでしょう。JR京都駅からJR奈良線で「稲荷」下車。楼門は、徒歩すぐ。お山の参道全体に並んで立っている朱塗の鳥居は、現在は約1万基だとか。
2011年 冬
二年坂
聞こえてくる「京ことば」も風景のひとつだと気づきました。
二年坂【東山区】清水寺、八坂の塔、高台寺、八坂神社、円山公園に続く坂道。石段や石畳など風情あるこのあたりが整備されたのは古く平安京ができた頃で、清水寺の門前町として発展しました。二年坂を登り切ると八坂道(八坂通)。この冬、坂の名が刻まれた石碑をガイドに町歩きはいかがですか。JR京都駅から市バス(100)・(206)で「清水道」下車、徒歩約8分。三年坂、二年坂、一年坂は産寧坂、二寧坂、一念坂とも書かれ、その諸説ある由来を調べるのも面白いものです。
2011年 夏
東本願寺・西本願寺
この町の過去は、君たちの未来のためにあるのだよ。
本願寺界隈【下京区】京都の東西二つの本願寺。どちらも激動の平安末期から鎌倉時代を生きた親鸞聖人が開かれた浄土真宗の本山です。「お東さん」「お西さん」。京都の人はそう呼び親しんでいます。今年は親鸞聖人のいよいよ七五〇回の遠忌を迎えます。瓦一〇万枚以上もの大屋根の下、七〇〇畳を超える広い御影堂に親子並んで座る。家族の思い出深い体験になりそうです。JR京都駅から、東本願寺へは徒歩約7分。西本願寺へは市バス(9)・(28)・(75)で「西本願寺前」下車。どちらも、比較的京都駅の近くです。
2010年 盛秋
「暑い」「寒い」だけで私の一年が終わるなんて、ジョーダンではありません。
金戒光明寺【左京区】そもそもは平安末期、比叡山を降りた法然が最初に開いた小さな念仏道場でした。やがて浄土宗の大本山へ。幕末には京都守護職、会津藩主松平容保と武士団約千名の宿舎になり、新選組近藤勇たちもしばしば足を運んだとか。境内の東には京都でなくなった352名の会津藩士など一万もの墓石が並びます。ここから真っ赤な夕日が西に沈む様子はまさに西方浄土。紅葉と並んで見事です。JR京都駅から市バス(5)・(100)で「東天王町」下車、徒歩約10分。町の人は「くろ谷さん」と親しみをこめて呼んでいます。
2010年 春
遅咲きのサクラです。見なければ「春の義理」が果たせない、と京都の人は言うのです。
仁和寺【右京区】江戸時代の終わりまでの約千年間、皇室出身者が代々門跡をつとめ、御室御所とも呼ばれる格式あるお寺。一方ここは江戸時代から庶民の桜の園でもありました。ソメイヨシノ、枝垂桜、御室桜の満開にあわせ、人は春3回訪れると当時の書物にあります。中でも200本以上ある遅咲きの御室桜は高さ3mほどの低木で、地上20~30㎝から枝が張り出す珍しい里桜。春との別れを告げることから、「泣き桜」の別名もあるそうです。JR京都駅から市バス(26)・JRバスで「御室仁和寺」下車すぐ。「春の義理」は川端康成『古都』より
2008年 冬
西陣あたり
ふだんとは、娘はしゃべり方がちがってる。母ははしゃぎ方がちがってる。
西陣あたり【上京区】京都で機織りが始まったのは5世紀ごろ。やがて平安遷都を機に、平安京のこの地域に集められた機織りの職人たちは、以来ずっと綾、錦など高級織物の生産に携わってきました。「西陣」の名は、応仁の乱で山名宗全の西軍の本陣がこの地に置かれたことからついたもの。写真は西陣大黒町。町並みからは京都の織物の歴史と自信が伝わってきます。JR京都駅から市バスで「今出川浄福寺」下車、徒歩4分。近くの北野天満宮から歩いて、散策がてらの西陣の町歩きもおすすめです。
2008年 初秋
涼しくなったら考えよう、そう言って後回しにしていたこと、ここに来たら思い出しました。
勝林院【左京区・大原】平安貴族の隠れ里、大原は念仏・声明(しょうみょう)のふるさとでもあります。中国からの声明を大原の地で大成させた良忍。鳥も川の魚も聞き入ったといわれるほどの美声で、律川の上流にある「音無の滝」は彼の唱える声明で水音が止まったことから名付けられたそうです。国宝阿弥陀仏像の三千院、額縁庭園の宝泉院、声明修行僧の宿坊実光院、良忍が建立した来迎院、建礼門院が一生を遂げた寂光院、そして写真の「勝林院」など。それぞれに趣のある名刹ばかり。JR京都駅から京都バス(17)・(18)系統で大原下車。散策の季節いよいよ到来です。
2008年 初夏
「きれいなものを目にする」には、ちょっとした努力がいる。家でニュースを見ていると、そう思います。
勧修寺【山科区】スイレンが咲くのは「氷室池」。平安時代、ここに張る氷を宮中に献上していたことからついた名前です。今昔物語に創建にまつわる話が出てくるという門跡寺院。夏になると、今度は泥の中から見事なハスの花が姿を見せます。花はその寺の性格をあらわすとすれば、歴代の法親王が世間を離れてひっそりと暮らされた場所には、こういう花たちが似合うのかもしれません。市営地下鉄東西線「小野駅」下車、徒歩6分。夏に向けて、カキツバタ、キショウブ、ハナショウブ、ハス。ずっと楽しめるお寺です。
2007年 冬
西花見小路
お勉強することが、まだまだいっぱいあるわね。母はうれしそうでした。
いつもとちがって、母がどんどん前を歩いて行きます。いつもとちがうこの町の冬の空気のせいでしょうか。「わかいわね」「え、なんて言った?」母を誘ったのは、正解でした。
いつもとちがって、母がどんどん前を歩いて行きます。いつもとちがうこの町の冬の空気のせいでしょうか。「わかいわね」「え、なんて言った?」母を誘ったのは、正解でした。
西花見小路 東山区JR京都駅から市バス(100)・(206)系統で「祇園」下車、徒歩4分。
2007年 盛秋
美しい景色は人がつくり上げるものです。この当たり前のことに一〇〇〇年たった今、ドキリとするのはどうしてだろう。
平安時代の初めに海外の情報を集め、書を読み、話を聞き、練りに練ってこの空間設計は生まれたのでした。
平安時代の初めに海外の情報を集め、書を読み、話を聞き、練りに練ってこの空間設計は生まれたのでした。
大覚寺【右京区・嵯峨野】もとは平安初期、嵯峨天皇によって建てられた離宮「嵯峨院」でした。20代ながら屈指の学者で文化人でもあった天皇は、空海を頻繁に招いて唐の文化について語り合い、また歌会や船遊びを催して政務の疲れを癒したといいます。30代のとき「無位無号にして山水に詣でて、逍遙し」と述べて位を譲った後は、さらにこの地を愛されたようです。広大な敷地に雅な伽藍、日本美術を代表する障壁画など、見所多し。時間をかけて、どうぞ。JR京都駅から市バス(28)系統または京都バス(71)系統で「大覚寺」下車すぐ。五大堂の濡れ縁から眺める大沢池、絶景です。
2007年 初秋
暑い夏を乗り切った私に、この町が「おつかれさま」と言ってくれました。
常寂光寺【右京区・嵯峨野】愛宕(おたぎ)念仏寺、祇王寺、二尊院、大覚寺など趣の異なるお寺が続き、清少納言に「枕草子」で、野は嵯峨野、山は小倉山と讃えられたこのあたり。大宮人の草庵や隠れ家が多くつくられました。宮廷歌人藤原定家もそのひとり。小倉山山麓の別荘で古来の名歌一〇〇首を選んだのがいわゆる「小倉百人一首」。その定家の山荘跡はここにあるといわれています。身を隠しているかのようなお寺ですが、境内の上から遥か京都の町、さらに大文字山ものぞめます。JR山陰本線嵯峨野線「嵯峨嵐山駅」下車、徒歩15分。大文字の送り火のあと、京都はいよいよ次の季節へ向かいます。
2007年 初夏
青空にいちばん似合うのが、高層ビルってわけはない。
春と夏の間に、いったい いくつ季節を隠しているんだ、この町は。
春と夏の間に、いったい いくつ季節を隠しているんだ、この町は。
東寺(教王護国寺)【南区】日本仏教思想史上の巨人、空海が真言密教を広める拠点として建設に心血を注いだ場所です。以来、1200年間、戦乱に巻き込まれてもそのたびに同じ地に再建され、京都の長い歴史をこの地で見続けてきました。蓮の向こうは有名な五重塔。完成は、空海没後50年近く、平安遷都からは90年近くもたっていました。ここにゆったりと流れる時間も、空海が私たちに密教の教えとして残していってくれたものかもしれません。JR京都駅から徒歩15分。金堂の薬師三尊像や講堂の立体曼荼羅をはじめ、見応えある密教美術の宝庫です。
2007年 初夏
京都なら、そのスーツのままでいいんじゃないですか。
春と夏の間に、いったい いくつ季節を隠しているんだ、この町は。
春と夏の間に、いったい いくつ季節を隠しているんだ、この町は。
智積院【東山区】多くの僧が修行に集まる伝統ある学問寺です。学舎「智積院」があった紀州根来寺を、勢力の拡大を恐れた秀吉に焼き払われて京のこの地へ。その後の家康は、東山一帯から豊臣色を除くため智積院に格別の庇護を与えます。秀吉が贅を尽くした「都一番の寺」祥雲寺の寺宝を下げ渡したのです。それが「生涯の奇筆にして世に比類なし」といわれた長谷川等伯一門による一連の障壁画と、この見事な庭園。大書院の床下まで水が入り込んでいて、まるで水の上にいるかのような気分です。JR京都駅から市バス(100)・(206)・(208)系統で「東山七条」下車、徒歩3分。
2007年 初夏
桜がすんでも一息ついてるヒマはないですから、京都は。
春と夏の間に、いったい いくつ季節を隠しているんだ、この町は。
春と夏の間に、いったい いくつ季節を隠しているんだ、この町は。
城南宮【伏見区】平安京の南を守る社でした。やがて貴族たちが別荘を建て始め、白河上皇がこの神社を中心に鳥羽離宮を造営。御殿が次々に建つ頃の華やかさは、「まるで都がここに移ってきたかのようだった」と記されています。社殿を取り囲む約一万坪の楽水苑は、趣の異なる五つの庭園からなる「源氏物語花の庭」。ここを彩るのは、紫式部が作品に登場させた100種を超える「源氏物語」の花々。藤に続いて、笹百合、空木、菖蒲、露草、藍、夕顔…一年中途切れることなく咲いてくれます。JR京都駅から近鉄京都線で「竹田駅」下車、徒歩15分。
2007年 春
春のない国には、わたし、住めないかも。
上賀茂【北区】京都盆地の中でも早くから人々が住むこのあたり。平安京よりも古い京都最古の社、上賀茂神社があります。背には神様の降臨地とされる神山が。「賀茂・鴨」は「神」に由来するともいわれ、その起源は神話の世界に遡ります。一の鳥居から二の鳥居に一直線に伸びる参道の両側には、樹齢一五〇年の紅八重枝垂れ桜、馬出しの桜、鞭打ちの桜。それぞれ曰く付きの桜たちです。JR京都駅から市バス(4)系統で「上賀茂神社前」下車すぐ。写真は上賀茂神社と下鴨神社を結ぶ賀茂川の東岸にある半木(なからぎ)の道。この季節は八〇〇ⅿの紅枝垂れ桜のトンネルです。
2007年 初春
一年の「旅初め」をどこにするか、だ。
下鴨神社(賀茂御祖神社)【左京区】高野川と賀茂川の合流点にあって樹齢二百年~六百年にもなる老樹が茂り、古代山城国の名残をとどめる広大な原生林「糺(ただす)の森」。ここを縦断する参道は、まるで町中にある山道。漂う清浄な空気が一年の納めや始めにふさわしく感じます。写真は「光琳の梅」。初代は尾形光琳の国宝「紅白梅図屏風」のモデルと言われています。彼もここへ足繁く訪れていたのでしょうか。JR京都駅から市バス(4)・(205)系統で「下鴨神社前」下車、徒歩3分。上賀茂神社と並んで世界文化遺産です。
2006年 盛秋
一年なんてアッという間に過ぎていく。それじゃいけない。
ホーッ・・・・京都の紅葉が、ゆっくりとため息をつかせてくれました。
ホーッ・・・・京都の紅葉が、ゆっくりとため息をつかせてくれました。
曼殊院【左京区・一乗寺エリア】最澄が比叡山に開いた一坊が江戸中期にこの地に移り、優美な堂宇は「小さな桂離宮」と呼ばれました。建立したのは良尚法親王。桂離宮を造った八条宮智仁親王の次男でした。茶道、華道、書道、香道、和歌の精進をつんだといわれるだけあって、紅葉と建物の見事なレイアウトや部屋の意匠へのこだわりなど、内も外も曼殊院ならではの美意識に溢れています。JR京都駅から市バス(5)系統で「一乗寺清水町」下車、徒歩20分。近くに詩仙堂、修学院離宮、赤山禅院。紅葉散歩に最適です。
2006年 初夏
「京都」「初夏」「花」で検索して、息子が教えてくれました。
春と夏の間に、いったいいくつ季節を隠しているんだ、この町は。
春と夏の間に、いったいいくつ季節を隠しているんだ、この町は。
三室戸寺【宇治市】5千坪の大庭園に、5月は2万株のツツジ、1千株のシャクナゲ。6月は1万株のアジサイ。7月は250鉢のハス。ここは宇治の「花の寺」。1200年以上も前に創建の古刹です。中でもハスは、仏の教えとともに語られる花。花びらは迷いを、花托は悟りを表す。だから花托が現れて、花びらは一枚一枚散り始めるのだそうです。JR京都駅からJR奈良線「宇治駅」下車、京阪宇治バス(43)系統「三室戸寺」下車すぐ。重要文化財の仏像5体、源氏物語「宇治十帖」の浮橋の古墳、芭蕉の句など見どころ多し。
2006年 初夏
手帳を見たら、一日くらい自分のために使えそうに思えました。
春と夏の間に、いったい いくつ季節を隠しているんだ、この町は。
春と夏の間に、いったい いくつ季節を隠しているんだ、この町は。
梅宮大社【右京区】かき(垣)を連想させることから、春と夏を隔てる花として都人に珍重されていたのがカキツバタ。それとバトンタッチして姿を見せるのがハナショウブです。古い神社の神苑に群生する花々を見ると、春と夏の間にはまた別の顔を持つ美しい季節があることに気づかされます。晩春から夏にかけて神苑ではキリシマツツジ、カキツバタ、ハナショウブ、アジサイの花のリレーが見られます。JR京都駅から市バス(28)系統「梅ノ宮神社前」下車すぐ。ここはその名の通り梅の香が漂う貴族の別荘地だったこともあるそうです。
2006年 初夏
「お天気よかったから、京都に来ちゃった」ケータイの留守電から妻の声がした。
春と夏の間に、いったいいくつ季節を隠しているんだ、この町は。
春と夏の間に、いったいいくつ季節を隠しているんだ、この町は。
安楽寺【左京区】銀閣寺、法然院、霊鑑寺、京都らしいお寺が点在する哲学の道かいわいにひっそりとあります。後鳥羽上皇の女御、松虫姫と鈴虫姫が、法然上人の弟子の住蓮・安楽の説法に魅了されて密かに出家し、それが上皇の逆鱗にふれて両僧は死罪、という悲劇の舞台でした。通常は非公開ですが、楓が新緑に変わるころ、庭いっぱいにサツキが咲き、私たちを招き入れてくれます。JR京都駅から市バス(5)・(17)系統「錦林車庫前」下車、徒歩5分。今年5月の公開日…5月3~7、20・21・27・28日。本堂で30分おきにお寺の由来が聞けます。
2005年 盛秋
子どもは ひと夏ごとに、おとなは ひと秋ごとに、
なにか大事なものを身につけてゆくように思います。
なにか大事なものを身につけてゆくように思います。
善峯寺【西京区】「え、こんなところに」と、歴史があってもまだまだ多くの人に知られていない秋のお寺が京都にはあります。平安中期の開山である善峯寺もそのひとつ。人々の極楽往生のためにはどうしてもこの地でなくてはならず、山肌を切り開いて建てられました。3万坪に高低差100ⅿ。境内全体が回遊式庭園で、山寺という言葉の印象をはるかに超える華やいだ景観が広がっているのです。JR京都駅から2駅先のJR向日町駅下車、阪急バス(66)で善峯寺下車、徒歩8分。真っ赤な紅葉との対比を見せる40ⅿの「遊龍の松」。国の天然記念物です。
2003年 冬
陽気に誘われるだけが、旅ではないのです。
北山鹿苑寺(金閣寺)【北区】苑路を右に折れると突然、幻想的な金閣が現れます。あっと息をのむ瞬間。まさに日常から非日常への旅です。そもそもは足利義満が1397年から造営に着手した山荘。北山文化を花開かせた拠点でもありました。市バス(12)・(59)系統で金閣寺前下車、すぐ。この冬は狩野外記筆の襖絵がある方丈が特別公開。方丈の中から見る方丈庭園や「陸舟の松」の眺めも格別。どうやら京都は、冬も「芸術の季節」のようです。
2003年 夏
過ごす場所を選ぶだけで、人はそうとう幸せになれるもんだ。
この空、この水、この緑。このデザイン、このランドスケープ。人のセンスと哲学が楽園をつくるのだ、と思いました。
この空、この水、この緑。このデザイン、このランドスケープ。人のセンスと哲学が楽園をつくるのだ、と思いました。
平等院【宇治市】10円硬貨に描かれた平等院の鳳凰堂。その姿の美しさは「極楽を信じられなくなったら、このお寺を拝むといい」、そんな童歌があったほどでした。建てたのは藤原道長の子、頼通。時代は、いよいよ末法の時代に入った11世紀半ばでした。これからの季節、宇治川の周辺を散策しつつこのお寺を尋ねると、不安な時代はただただ謙虚になって、美しい場所に美しいものをつくることで幸せになろうとした、その頼通の思いが伝わってくるようです。JR京都駅から快速で16分のJR宇治駅で下車、徒歩10分。宇治は源氏物語の舞台。近くには、宇治上神社、三室戸寺などもあります。
2000年 盛秋
日本の「ガーデニング」です。どなたか、この美しさについて、論理的、科学的に説明していただけませんか。
ここに来てみれば、すぐわかります。まずは、紅葉から、ごゆっくり。
ここに来てみれば、すぐわかります。まずは、紅葉から、ごゆっくり。
光明院(東福寺)【東山区】この「波心の庭」は、昭和の枯山水です。日本の300の庭園を実測し、1939年に「日本庭園史図鑑26巻」を完成させた現代の作庭師、重森三玲氏、渾身の作品といわれています。鎌倉時代の伝統を踏襲しながらも石と石とを直線的に結んだレイアウトは、実にシャープでモダンです。JR奈良線東福寺駅下車、徒歩15分。東福寺の方丈庭園も重森氏作。東西南北それぞれ趣の異なる庭は必見です。くれぐれも紅葉だけでお帰りにならぬよう。
2000年 夏
スイカ、れんこん、精進揚げ、けんちん汁、インゲン豆。そして、ダイニングテーブルに椅子。そうか、「一家だんらん」は、インゲンさんが持ち込んだ、ってワケだ。
ぜんぶ、中国から来た隠元禅師のおみやげ。「萬福寺」の、「マンプク」になるお話でした。
ぜんぶ、中国から来た隠元禅師のおみやげ。「萬福寺」の、「マンプク」になるお話でした。
萬福寺【宇冶】今まで見た京都のお寺とどこか違う…。そう感じる人は多いはず。ここは一六六一年、中国の高僧、隠元禅師によって建てられ、明の頃の禅宗スタイルを保つ黄檗宗の本拠地です。総門の屋根に乗っているガンジス河の神獣マカラや、卍くずしの匂欄など、建物のディテールもまさに中国。鎖国の時代でも、人の心はオープンだったようです。「山門を出れば日本ぞ茶摘唄」と書かれた句碑、実感できます。JR奈良線黄檗駅下車、徒歩約10分。坐禅や普茶料理の体験もどうぞ。
1999年 冬
まっすぐ揃っているのが、 良い。歪んでいたりズレているのは、悪い。なんてルールは、この「ちゃわん」のどこにも見つかりませんでした。
日本人って、そもそもそうとう「自由でクリエーティブ」だったんだなあ。
日本人って、そもそもそうとう「自由でクリエーティブ」だったんだなあ。
大仙院(大徳寺)【北区】大徳寺最古の塔頭のひとつ。本堂は創建当初のもので、500年近くもの間、ここを出入りする人々を見続けてきたことになります。三世の住職は千利休の禅の師、古渓和尚。枯山水を前にする茶室で、秀吉に茶をふるまったといわれます。利休を切腹に追いやった秀吉と彼の間に、どのような会話があったのか…。京都市営バスで大徳寺前下車。中で御抹茶をいただきながら、その頃に思いをはせるのもいいものですよ。
1999年 盛秋
会議室でエンエン議論、データとにらめっこの効率計算。どうですか、いいアイデア出ましたか?
その辺をプラッとして、「紅葉」なんかためしてみませんか。
その辺をプラッとして、「紅葉」なんかためしてみませんか。
法然院【左京区】銀閣寺から続く「哲学の道」の、まさにその趣を感じさせるまるで山荘のような佇まい。それ故に多くの学者や文化人に愛されたのでしょうか。参道の先の茅葺きの山門が、紅葉にハシャギがちな気持ちを鎮めてくれます。境内に入りまず目を引くのは、白砂壇(びゃくさだん)と呼ばれる砂盛。毎朝、修行僧によって描かれる模様には、禅の精神が込められているそうです。京都市営バスで浄土寺下車、徒歩10分。谷崎潤一郎の墓はここにあり、自然石に「寂」の一文字が印象的です。
1999年 夏
この国もますます、グローバル化するそうですね。あちこちが、デジタル化なんだそうですね。二十一世紀が、もうすぐだそうですね。
京都は「関係ない」って顔をしているようでした。
京都は「関係ない」って顔をしているようでした。
宝泉院【左京区】三千院、実光院などの寺院を尋ね歩く道のつきあたりに、ひっそりと姿を現します。柱を額縁に見立てた額縁庭園で、ゆっくり目と耳を遊ばせてください。鮮やかな緑と樹齢七百年の見事な五葉松。縁側でいただく御抹茶と和菓子。この庭園の名は「盤桓園(ばんかんえん)」、「立ち去りがたい」という意味だそうです。うなずけます。京都市営・京都バス大原下車、徒歩10分。このあたり、畑や茅葺屋根なども残るまさに「大原の里」です。
1999年 春
ここの桜のように一年にたった一回でもいい。人をこんなにも喜ばせる仕事ができればなんて思いました。
春に桜が必ず咲く国に生まれて、ラッキーでした。
春に桜が必ず咲く国に生まれて、ラッキーでした。
善峯寺【西京区】西山の険しい山の斜面に建つ善峯寺(よしみねでら)、名前は平安時代の終わり頃、天皇から賜ったものです。登りきると眼下に京都の町が一望できたり、全長40ⅿ近くもある天然記念物「遊龍の松」に出会えたり、と、時間をかけて歩くだけのことはあります。なによりもこの季節圧倒されるのは境内の桜。なかでも、経堂近くにある枝垂れ桜は樹齢300年、珍しい桜と楓の合体木です。JR向日町駅下車、車で約20分。境内は3万坪以上。気もちのいい汗を流しにきてください。
1998年 冬
ブロードウェイの賑やかさもいいけれど、「祇園」で過ごす粋な時間もなかなかですよ。
「京舞」を見ました。華やかさだけじゃない。ぴんと伸びた指先は、舞う人の強い思いが込められていました。
「京舞」を見ました。華やかさだけじゃない。ぴんと伸びた指先は、舞う人の強い思いが込められていました。
八坂神社【東山区】京都の人は親しみを込めて「祇園さん、八坂さん」と呼びます。京舞が守られてきた祇園まちは、そもそも江戸時代初期に八坂神社の門前町として発達しました。朝夕お参りをする祇園の舞妓さんや芸妓さん達をよく見かけます。12月31日の「おけら詣」をはさみ、さまざまな祭事が行われるこれからの季節です。京都市営バスで祇園下車、すぐ。東大路通りに面しているのが西楼門。南楼門から入ると、この写真の舞殿に直接出ることができます。
1998年 盛秋
泉涌寺。なんと読むのか、とよく聞かれます。七百年以上も門を閉ざしていたお寺ですから。「せんにゅうじ」と読みます。
この時代に生まれてよかった。七百年間の秘仏「楊貴妃観音」に会えました。
この時代に生まれてよかった。七百年間の秘仏「楊貴妃観音」に会えました。
泉涌寺【東山区】朝もやの中に姿を見せる仏殿。敷き詰められた白い砂。永く人目に触れることのなかった唐時代の秘仏「楊貴妃観音像」。ここは四条天皇以来の皇室の菩提寺にふさわしい静寂な空気が漂っています。紅葉に彩られる東山三十六峰のお寺の中にあっても、決して賑やかになるのではなくむしろ静かに黙って物を考えさせる力を持っているように思えます。京都市営バス泉涌寺道下車、徒歩10分。泉が涌く寺。その名の通り境内には涌き水があります。
1998年 春
京都の桜、のぼり坂。縁起のいいもの揃っています。「ニッポンに春よ来い」です。
これまでも、この国に、何度も冬の時代はあったけど、春は必ずやって来るんですね。
これまでも、この国に、何度も冬の時代はあったけど、春は必ずやって来るんですね。
勝持寺【西京区】「ねがはくは花の下にて春死なん、そのきさらぎの望月の頃」と詠み、桜に生き、桜に死んだ歌人、西行はここに庵を構えました。彼自ら植えたといわれる「西行桜」をはじめ約四百五十本の桜におおわれた別名「花の寺」。決して広くはない境内だけにお寺が花に埋もれているかのように思えます。JR向日町駅から阪急バスで南春日町下車のち徒歩20分。バスをおりて長い参道を歩いてゆくと、もう途中から桜たちが顔をのぞかせて旅人を迎えてくれます。
1997年 夏
スーパースター、世阿弥12歳。プロデューサー、足利義満17歳。「能」は六〇〇年前からブームです。
平成のアーティストの皆さん、「能」はずっとライブを続けていますよ。
平成のアーティストの皆さん、「能」はずっとライブを続けていますよ。
相国寺【上京区】京都御所のすぐそば、町の中心に意外な広さを持つ禅寺です。それもそのはず、足利義満が金閣寺に先立って創建したもの。京都五山の第2位でした。義満といえば17歳で初めて見た申楽(さるがく)に大いに魅せられ、世阿弥の芸を保護し、それが「能」の芸術的立場を確立することになったといわれています。京都市営地下鉄烏丸今出川駅から徒歩10分。来たる9月25日には、相国寺創建600年記念の薪能が催されることになっています。
1997年 初夏
「ある日突然、戦うのがイヤになりました。花や虫たちと、暮らすことにしました」
・・・・・と戦国時代の武将、石川丈山はこの庭を作ったそうです。
・・・・・と戦国時代の武将、石川丈山はこの庭を作ったそうです。
詩仙堂【左京区】ここはそもそも、18歳で関ケ原の戦に従い、家康の信頼厚かった武将、石川丈山が、その後31年間の隠遁生活を送った山荘でした。彼は、読書を楽しみ、詩を詠み、書も巧みな風雅の人。詩仙堂の名は、日本の三十六歌仙にちなんで中国の三十六詩人を選び、彼らの肖像画を住まいに掲げたことによるものだといいます。京都市営バス、京都バスで一乗寺下り松町下車、徒歩5分。庭園いたるところに野の花が咲き、季節ごとにちがった表情を見ることができます。
1997年 春
物事を深く考える、の近頃、流行っていないようですが。いいんでしょうか。と思ってしまった哲学の道。
思ったよりささやかな散歩道でした。それがかえって、哲学的でした。
思ったよりささやかな散歩道でした。それがかえって、哲学的でした。
哲学の道【左京区】道の横を流れているのは琵琶湖疏水の分流で、つまりこの道は「疏水べり」。人工のものと自然が一緒に美しい空間をつくる、そのお手本です。そもそもこのあたりには哲学者、西田幾多郎をはじめ学者、芸術家などが多く住み、彼らの思索し語り合う姿がよく見られたといいます。ここを歩くのは、銀閣寺を起点に南へ下るか、南禅寺あたりから北へ上るかどちらでも。ちなみに、もう少し東側に平行する小道があります。ここは、もうひとつの哲学の道。
1996年 初夏
「娑羅双樹の花の色盛者必衰の理をあらはす」が、やっと今、わかりました。
京都には、「人の世とは…」と語りかける花があります。
京都には、「人の世とは…」と語りかける花があります。
妙心寺(東林院)【右京区】塔頭の数46。その中のひとつが、娑羅双樹の花の寺とも言われる東林院です。美しい花をつけたとたんに落ちてしまう娑羅双樹の花。これが『平家物語』で語られているところの「盛者必衰の理をあらはす」。外に出れば、初夏の太陽が、境内を縦横に走る石畳と美しく重なりあう甍を明るく照らし出しています。新しい季節は、もうそこまで来ているのです。京都市営バス、JRバスで妙心寺北門前下車。法堂天井の「八方にらみの龍」も必見。けっこう緊張できます。
1995年 夏
「真夏です」と言っているのは温度計だけでした。
そうか、「しーん」というのがいちばん涼しい。
そうか、「しーん」というのがいちばん涼しい。
青蓮院門跡【東山】知恩院の北隣り。ここまで歩いてきた夏の旅人をホッと一息つかせるかのように、門前の楠の巨木がたっぷりと日影をつくってくれているお寺があります。粟田御所とも呼ばれる青蓮院(しょうれんいん)。その名を見ても聞いても涼やかな印象は、中に入ればなお一層。相阿弥と小堀遠州による庭の緑に、不思議と暑さが遠のいてゆくような気がします。京都市営バスで神宮道下車、徒歩すぐ。ここの『不動明王二童子像』は青不動とよばれて、三井寺の黄不動、高野山明王院の赤不動と並ぶ日本三大不動の一つです。
1995年 春
地球に、ポッと桜色になっているところがあるとしたら…京都です。
あの秀吉が、自慢したくてしたくてたまらなかった700本の桜の子孫たちです。少々の人出には、負けません。
あの秀吉が、自慢したくてしたくてたまらなかった700本の桜の子孫たちです。少々の人出には、負けません。
醍醐寺【伏見区】ほぼ醍醐山全体が寺域というとにかく広大なお寺です。秀吉の「醍醐の花見」は有名ですが、まずは入口から桜並木の参道に迎えられるという贅沢さ。その左側の塔頭「三宝院」も、花見の宴のために秀吉が造園した自信作。右側の霊宝館と併せて、ここは国宝・重文の仏像、屏風、曼荼羅図などの宝庫でもあります。昨年、ユネスコの「世界文化遺産」に選ばれました。JR東海道本線山科駅近くより京都市営バスで醍醐三宝院前下車。ライトアップはされていませんが境内の参道の桜はいつでも見ることができます。
1994年 冬
シャッター押すのをやめてじっと、まぶたに焼きつけています。
しっかり見る。しっかり感動する。 簡単にみえても、案外、コツがいったりするんです。
しっかり見る。しっかり感動する。 簡単にみえても、案外、コツがいったりするんです。
金閣寺(鹿苑寺)【北区】衣笠山を背景とするこのあたりは、かつて平安貴族が別荘地として好んだところで、室町幕府の最盛期、3代将軍義満がこの地に、権力と財力を尽して金閣を実現しました。金色のまばゆい光に目が馴れたところで建物に注目してください。第一層は藤原時代の寝殿造で、第二層は鎌倉時代の書院造で、第三層は禅宗仏殿造といったように住宅と仏堂を兼ねた独特の建物。公家文化と武家文化の融合。北山文化の一端を見るようです。京都市営バスで金閣寺前下車、すぐ。
1994年 春
銀じゃなくても…。銀じゃないから…。私は、好きです。
「ここが義政、富子の住まいですか」「お金がなくて、銀にできなかった…」「かえって、よかったね」
「ここが義政、富子の住まいですか」「お金がなくて、銀にできなかった…」「かえって、よかったね」
銀閣寺【左京区】正式には慈照寺。哲学の道の北端からちょっと入ったところ。銀でもないのにナゼ銀閣寺か?建てた足利義政は祖父義満の金閣寺にならって銀箔をおしたかったのに、応仁の乱後の経済状態ではあきらめざるを得なかった、とか。しかしそれがかえって、我々に「わび、さび」を教えてくれる存在になったのは、なんとも皮肉です。京都市営バス銀閣寺前から徒歩。義政と正室日野富子らをめぐる人間模様は、今年のNHK大河ドラマなどご参考に。
1993年 冬
「これからのニッポンは?」の悩みには、「むかしむかしのニッポン」がお答えします。
一つくぐると一年むかし。と考えると、さっきカーブしたあたりで三〇〇年はもどったってことなんだ。
一つくぐると一年むかし。と考えると、さっきカーブしたあたりで三〇〇年はもどったってことなんだ。
伏見稲荷大社【伏見】酒どころ伏見。ここに、全国4万はあるといわれる稲荷神社の総本山「伏見稲荷大社」があります。駅の前から参道。本殿、奥宮へ。その先に進むと、長さ約4キロ、鮮やかな朱塗りの鳥居「千本鳥居」です。途中、休み処もあります。眺めも良し。1本くぐるごとに1年むかしへ。しばし、過去へのタイムトリップをお楽しみください。JR奈良線稲荷駅からすぐ。人出の多いお正月を避けて、年末にゆっくり来る年の祈願を、というテもあります。
1993年 冬
修学旅行のときは「仏様が一〇〇一体。それがどうした」って、かんじでしたが…。
帰ったら、なつかしい日本史の教科書「平安時代」のページでも、読んでみようかな。
帰ったら、なつかしい日本史の教科書「平安時代」のページでも、読んでみようかな。
三十三間堂【東山】正式には蓮華王院。わずかな光が差し込む堂内に、その数一〇〇一体の観音像。ここの柱の間数が33あることから三十三間堂とよばれています。これだけの数の観音像、実は後白河上皇が平清盛に所望して安置させたものだといいます。なんともリッチなプレゼントをねだったものです。この裏には相当興味深い人間関係があったのにちがいありません。京都市営バスで博物館三十三間堂前下車、すぐ。有名な「通し矢」の行事。堂の裏手には多くの矢傷が見つかります。
1993年 盛秋
紅葉なんてどこにでもある、と思ってました。 失礼しました。
去年の今頃、オレ、何してたんだっけ。どうせ、忙しい忙しいって言ってたんじゃない。
去年の今頃、オレ、何してたんだっけ。どうせ、忙しい忙しいって言ってたんじゃない。
常寂光寺【嵯峨野】もともと文人墨客の隠棲地でもあり、見どころの多い嵯峨野の中でも、このお寺は、紅葉の彩り、眺望ともに美しいところです。11月上旬なら赤、黄、緑の木々の色を、11月下旬なら散紅葉に敷きつめられた石段が見事。少し急な石段ですが、上がり切ると、そこには本堂や檜皮葺(ひわだぶき)の多宝塔が並びその様子に、ここまで来てよかったという気にさせられます。また、かつては藤原定家の山荘もここにあり、「小倉百人一首」の編さんが行なわれたといわれています。京都市営バスで野々宮下車、徒歩8分。京都~徒歩30分。野宮神社、落柿舎、二尊院などもここから歩いて回れます。
1993年 盛秋
人の成功、失敗、一二〇〇年ぶん。京都は勉強になります。
「なに、 ここ藤原さんの別荘だったんだって」「こういうところに住みたいね」
「なに、 ここ藤原さんの別荘だったんだって」「こういうところに住みたいね」
平等院【宇治】十円玉の図案でお馴じみの鳳凰堂。約九五〇年前、藤原氏最盛期に建てられた時のままで残っています。その堂々とした姿は、さすが貨幣に採用されただけのことはある。中に入ると、壁に52体の菩薩像が取付けられ、それぞれが踊ったり歌ったり楽器を奏でたり、と、これが意外と現代的でカワイイ。京都市内から少し足を伸ばしますが、その価値あり。ぜひスケジュールに加えてください。京阪宇治駅下車、徒歩10分。宇治は茶どころ、近くにはお茶屋さんが並んでいます。
1993年 盛秋
紅葉なんてどこにでもある、と思ってました。 失礼しました。
お抹茶、和菓子、紅葉浴まで付いて700円。 え、それで何時間、座っていてもいいんですか。
お抹茶、和菓子、紅葉浴まで付いて700円。 え、それで何時間、座っていてもいいんですか。
蓮華寺【上高野】高野川に沿って北へ進み、八瀬の少し手前にこの小さなお寺はあります。江戸時代の初めに、洛中からこの里へ移築され、今でもひっそりとたたずんでいる、という趣きがあります。カエデの葉に彩られた山門をくぐると、書院。その書院の正面にあるのがこの庭園です。高野川の水を引いた池のまわりに、息をのむような紅色、黄色の景色が広がります。屏風絵のように、と計算された柱を通して見るのがベスト。縁側よりも、書院の奥にさがって見ることをおすすめします。叡山電鉄本線の三宅八幡駅下車、徒歩5分。9時~17時。抹茶を楽しむこともできます。
1993年 盛秋
パリやロスにちょっと詳しいより京都にうんと詳しいほうがかっこいいかもしれないな。
外国のビジネスマンって、けっこう京都のことよく知ってたりするんだよな。
外国のビジネスマンって、けっこう京都のことよく知ってたりするんだよな。
清水寺【東山】東山の中腹、断崖の上にせり出した清水の舞台。周囲2ⅿ30㎝の巨大なケヤキの柱でクギを一本も使わず、支えられています。たいへんな技術です。さて、特にこれからは、太陽が西山に沈み始める頃、訪れる人の数もぐっと少なくなります。見おろす右下に、ひときわ明るい四条通り。今頃はさぞ祇園あたりは賑っているだろうなどと、じっくり一二〇〇年目の京の町を眺めるのもいいものです。京都市営バスで清水道下車、徒歩10分。10月末の京都の日入は、午後5時ちょっと過ぎ。