
- 知恩院の釣鐘は、同じく東山区にある方広寺、奈良の東大寺と並んで「日本三大梵鐘」といわれている。高さ3.3メートル、口径2.8メートル、重さ約70トンと、現存する梵鐘の中では日本最大級を誇り、大鐘楼は 1997年に国の重要文化財にも指定された。
大晦日(おおみそか)には、鐘楼の周りで撞木(しゅもく)の子綱を握る16人の僧侶と対面するかたちで、親綱を握る僧侶が体を後ろへ反らし、全体重をかけて除夜の鐘をならす。その静寂を打ち破る音を間近で聴けば、人間に108あるという煩悩も吹き飛ぶ迫力だ。
2006年12月、除夜の鐘本番を前に、12年ぶりにこの鐘を撞(つ)く撞木が新調された。
まずは鐘楼に足場を組み、古い撞木が取り外された。これまで使われてきたこの撞木も、もとは4.2メートルあった。だが大鐘を撞くたびに、頭の部分が磨り減るため、12年の間に2回切り縮め、50センチは短くなったという。また、いままで撞木を吊り下げてきた鎖に替えてワイヤーを使用した。鐘を撞くときに鎖の音が邪魔をせず、鐘の音がより澄んで聴こえる。
新調された撞木は、直径約45センチ、長さ約4.5メートルあり、重さは約400キロにもなる。梵鐘が最大級なら、撞木もかなりの大きさだ。
この知恩院の撞木を製造した、奈良市の上田技研産業譁を訪ねた。全国各地の寺院に撞木を製造、納品してきた会社だ。
知恩院の撞木の直径45センチ程度の原木なら、いくらでも国内で調達できそうなものだと考えていたが、実際はそうではなかった。
撞木には木の中心部を避けた「心去(しんさ)り材」を使用する。木の中心部を撞木として使うと、どうしても割れやすくなり、音にも影響が出る。その点、心去り材は硬さも品質も均等だ。
そうなると、知恩院の撞木を作ろうと思えば、少なくとも直径1メートル以上の木が必要になってくる。このような大木は、もはや国内で入手するのが難しい。
また、硬すぎる木を使えば鐘に悪影響を与え、柔らかすぎれば今度は撞木が鐘に負けて割れてしまう。ちょうどよい硬さの原木を探すのも大変だ。
今回の撞木には、京都市内の社寺建材を扱う業者が、20年前に台湾で伐採したスギ材を使った。樹液を抜くため10年間水に漬け、さらに10年かけて乾燥させたものだ。このような原木が次の付け替えのときに見つかるかどうか、定かではない。
近年、木製の撞木に代わって注文が増加しているのが、鐘を撞く部分だけ木製のヘッドを付けた、本体がブロンズなどの金属製撞木。また、タイマーで自動的に鐘を打ち鳴らす、自動撞木も扱う。「新しい技術ですか」と尋ねると、なんと平安時代に、小野篁(おののたかむら)(802〜852)が京都の愛宕寺で2時間おきに鳴る自動鐘を造らせた、という記述が『今昔物語』にあるというので驚いた。
社長の上田全宏さんは「昔から『鐘と撞木の“あい”で鳴る』と言います。この“あい”は“愛”とも“合い”とも、どちらにも通じます」と語る。そのため注文が入ると、その梵鐘に“合う”撞木を作るためにまずは現地に赴き、どんな梵鐘かを調べるところから始める。「鐘楼は梵鐘が吊り下がってはじめて建っていられるのです。中心にあれだけ重いものを吊り下げるのだから、あらかじめ柱を四方転びに傾けて建て、釣り合うようにしている。この支え合いの精神は、どこか仏教の教えにも通じるところがあるように思います」と柔らかな笑顔を見せた。
京都新聞出版センター刊『京の名脇役』より引用
掲載内容は2009年12月時点での情報です。最新情報は各掲載先へご確認ください。
| 住所 | 京都市東山区林下町400 |
|---|---|
| 電話 | 075-531-2111 |
| 拝観時間 | 9:00〜16:00 |
| 拝観料 | 方丈庭園・友禅苑庭園共通500円 |
| アクセス | 市バス「知恩院前」下車徒歩約5分 |


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