琵琶湖疏水通船が復活! 試乗会に行ってみた。

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琵琶湖水船試乗会

撮影日:2017年11月24日

 

琵琶湖の水を京都へ引くために明治時代に建設された「琵琶湖疏水(びわこそすい)」。かつては、物資を運ぶための船などで賑わい、京都の発展の礎を築いてきました。時代の流れとともに徐々に行き交う船の姿も見られなくなっていき、明治26年(1951)に舟運は終了・・・ しかし、なんと今年(2018年)の春から疏水を往来する船「琵琶湖疏水通船」が観光船として復活することになったんです! 運航は3月下旬からなのですが、2月1日(木)から予約受付が始まるとのこと。
それに先駆けて、昨年(2017年)の11月に行われた試乗会に“オパン”と“ち~たら”が一足早く乗船してきましたので、疏水クルーズの模様をレポートいたします♪
※運航期間や乗船料金、お申し込み方法など詳細は文末をご覧ください。


まずは琵琶湖疏水を知ろう!

(京都市上下水道局・田邉家資料)

琵琶湖疏水は、第3代京都府知事の北垣国道(きたがきくにみち)が、建設を計画。明治維新による東京遷都で衰退しつつあった京都を活性化させることが目的でした。工部大学校(現・東京大学)の卒業論文で「琵琶湖疏水工事」について執筆した田邉朔郎(たなべさくろう)を技術責任者として迎え、明治18年(1885)に着工、明治23年(1890)に大津から鴨川合流地点までの「第一疏水」が完成しました。

工事にかかった費用は当時の金額で約125万円。今のお金に換算すると、なんと約1兆円にもなるそう! この金額からも、いかに大がかりな工事だったかが分かりますね。京都の近代化を推し進めた琵琶湖疏水は、舟運や水力発電など、さまざまな役割で都市基盤を確立、現在でも多用途にわたって利用されています。
では、そろそろ楽しい船旅に出発するとしましょう♪


いざ、しゅっぱ~つ!

試乗会のスタート地点は、滋賀県にある京阪京津線「三井寺駅」から歩いて5分ほどの場所にある大津乗下船場。ここから山科を経由して蹴上(けあげ)まで約7.8キロメートルのコースを、およそ1時間かけてクルーズします。

今回乗船したのは、12人乗りの「めいじ号」。ガラスの屋根が取り付けられているので、景色もよく見えそう~♪ ライフジャケットを着用し、船に乗り込みます。

疏水には4つのトンネル(第一・諸羽・第二・第三)があり、ガイドさんがおっしゃるには「内部は4~5度ほど気温が低くなりますよ」とのこと。「もっと着込んでくればよかったかな・・・」と顔を見合わせるわたしたち。すると、「寒いと思いますので膝掛けお配りします♪ 皆さん、使ってくださいね~」とガイドさん。うれしいお心遣いです! 船が動き出し、いよいよ船旅がはじまります。

最初のトンネル「琵琶湖疏水第一トンネル」東口洞門の入り口には、「氣象萬千(きしょうばんせん)」と書かれた扁額が掲げられています。こちらは初代内閣総理大臣・伊藤博文の筆で、意味は「様々に変化する風光はすばらしい」というもの。琵琶湖疏水の船旅を物語っているかのようですね。道中のトンネルには琵琶湖疏水の関係者や明治期の政治家が揮毫(きごう)した7つの扁額を見ることができます。

第一トンネルは全長約2.4キロメートル。琵琶湖疏水のトンネルの中でも1番長い距離ですが、まっすぐ一直線なので、ご覧のように出口の光がはっきりと見えます。まだ土木技術が進んでいなかった明治時代に、日本人だけで造ったといいますから、当時の苦労は相当だったことでしょう・・・

薄暗い中を船が進んでいくと、トンネルの右側にのびる2本の長いケーブルが目に入ります。上が電気のケーブル線。下は船を引くために使われていたロープなのだとか。かつて船を疏水の流れに遡って走らせた際に使っていたロープで、ちょうど私たちが進む方向とは反対に向かって進む時に使うものです。現在の船にはエンジンが付いているため、使われることのないロープですが、トンネル内にはしっかり遺されています。遺構を眺めて、歴史を感じることができるのが疏水船の魅力のひとつなんですね。

どんどん船は進んでいき、ガイドさんから「この先、水がかかるかもしれないので、気をつけてくださいね」と、アナウンスが。すると、目の前に・・・

オパン・ち~たら 「わぁ~~~!!」
ジャバジャバーー!! と大雨が天井の穴から降っていました。船に屋根はあるものの、あまりにも勢いよく降っていたため水しぶきで濡れてしまうほど。なぜトンネルの中なのに雨が降っているのでしょう・・・

これは、「第一トンネル第一竪坑(だいいちたてこう)」と呼ばれる“穴”。第一トンネルは約2.4キロメートルあり、建設当時、日本最長のトンネルでした。工事をなるべく早く進めるため、山の両側からだけでなく、山の上からも掘り進める「竪坑方式」が日本で初めて採用されたことの痕跡で、歴史的にも貴重な“穴”なのです!

ところがこちらの竪坑、山に貯まった雨水が流れ込んできてしまうそうで・・・ 雨量が多かった昨年は、とくに水が流れる勢いも強かったのだとか。それにしても・・・ 突然のことで、びっくりしました。

長~い第一トンネルの先に見えてきたのは、紅葉の絶景! 試乗会は、ちょうど紅葉真っ盛りの頃に行われたため、綺麗なモミジがお出迎えしてくれました。風が吹くと、モミジがひらひら~と水面に落ちてきて、これまた風情があります。春には桜がきれいでしょうね♪

どんどん進み、山科の諸羽(もろは)トンネルを抜けて見えてきたのは安朱(あんしゅ)橋。紅葉の名所・毘沙門堂へと続く道に架かる橋で、春は桜と菜の花のコラボレーションが楽しめる人気スポットです。季節ごとに移り変わる琵琶湖疏水沿いの景色が楽しめるのも、このクルーズの魅力です♪

少し見にくいですが、第二トンネルの西口に掲げられた扁額「随山到水源(やまにしたがいてすいげんにいたる)」が見えてきました。山に沿って行くと水源にたどりつく・・・ つまり、「疏水を山に沿って行けば琵琶湖に辿り着く」という意味なのだとか。この扁額の揮毫者は、政治家の西郷従道(さいごうつぐみち)。西郷隆盛の弟さんです! 今年(2018年)のNHK大河ドラマとして話題になりそうなだけに見逃せませんね!

さて、こちらもご注目♪ 鉄柵の中に橋が架かっているのが分かりますでしょうか? 実はこの橋は、日本最初の鉄筋コンクリートの橋なんです! 明治36年(1903)に田邉朔郎の設計で造られたもので、この鉄柵は安全対策のために後からつけられたもの。架けられた当時はこの鉄柵が無かったのかと思うと、なかなか危ない橋ですよね(笑) 橋のそばには「本邦最初鐵筋混凝土(コンクリート)橋」と刻まれた石碑もたっているとのこと。カツオさんのブログ「2018年は“橋”にご注目!」でもあるように、こちらの橋にもぜひ注目してみてください♪

ついに、ゴールの「蹴上乗下船場」に到着! レトロな煉瓦造りの建物は「旧御所水道ポンプ室」。山上にある貯水池に水を圧送して、京都御所へ防火用水を送るために建てられたそう。設計は、片山東熊(かたやまとうくま)。京都国立博物館や旧赤坂離宮などを手懸けた明治時代を代表する建築家です。ポンプ室がこんなに優雅なデザインの建物とは・・・ 驚きですね!

楽しかった琵琶湖疏水の旅も、これにて終了。2018年は、明治維新から150年の記念すべき年。皆さまも、明治時代の京都を感じられるこの近代遺産を、琵琶湖疏水通船でクルーズしてみてはいかがでしょうか♪

■琵琶湖疏水通船
【運航期間】2018年3月29日(木)~11月30日(金)
※完全事前予約制
※2018年2月1日(木)から予約開始。詳細は公式ホームページをご覧ください
【乗船料金】ひとり 4,000円~8,000円
※料金は時季により変動します
※下り便(大津~蹴上)、もしくは上り便(蹴上~大津)一回あたりの乗船料金です
【電話】075-365-7768(平日9:30~17:30)
※2018年2月1日(木)より電話開通されます
【公式ホームページ】http://www.biwako-sosui.jp/

⇒2018年4月7日(土)に、琵琶湖疏水で「そう京」イベントを実施します! 詳しくはこちら。

 

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