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京の和菓子の玉手箱 7
季節を先取りする、和菓子の世界。今年の京都の桜は早くも見頃を迎え、和菓子の意匠も駆け足で進んでいきそうです。
今回、“和菓子ライフデザイナー”の小倉夢桜(おぐらゆめ)さんにご紹介いただくのは、仁和寺(にんなじ)そばの老舗和菓子店が手がける4月の和菓子。仁和寺といえば、例年4月中旬に見頃を迎える遅咲きの桜で有名です。桜ガイドとともに、季節を感じる和菓子の世界をお楽しみください♪
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2月から3月初旬にかけては異常なほどの寒さで、今年の桜の開花日を心配する声をよく耳にしました。その心配をよそに、早めに桜シーズンを迎えた京都市内です。
桜の開花には、花芽が冬に一定の期間寒さにさらされた後に休眠から覚める、“休眠打破”が必要です。その後、気温が上昇し、平均気温が累計で一定に達すると桜の開花が始まるといわれています。
今年は、3月中旬の気温が平年よりも暖かい日が多かったこともあり、例年よりも少し早めの桜シーズンを迎えています。皆さんは、どのような桜シーズンをお過ごしでしょうか。
“見なければ「春の義理」が果たせない” 仁和寺の御室桜
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川端康成の小説『古都』の中に出てくる「御室の桜も一目見たら、春の義理が済んだようなものや」という台詞。京都の本格的な桜シーズンの最後を飾るのが仁和寺の御室桜(おむろざくら)です。桜雲越しに見える五重塔は、春の京都を代表する光景のひとつ。
JR東海「そうだ 京都、行こう。」エクスプレス・カードの会員限定オリジナルイベントでは、4月14日(土)、15日(日)に仁和寺の境内をライトアップされるそう。日中とは違う夜の御室桜を楽しむことができる貴重な機会です。
⇒【そう京イベント】仁和寺 御室桜苑ライトアップ
御室桜は、仁和寺の境内に植えられている桜の総称。「御室有明」という品種で、特徴はなんといっても、ほかの桜とは違い“背が低い”こと。その理由は、土壌にあるといわれています。酸素や栄養分が少ない粘土質の土壌のために大きくならず、横に広がったのだとか。
京都の人々に愛され続けるこの桜は、背が低いことから「お多福桜」とも呼ばれています。
「わたしゃお多福 御室の桜 はなが低くても 人が好く」
と、“花”と“鼻”をかけ言葉として歌われ、親しまれています。
仁和寺の御用達・老舗和菓子店 亀屋重久(かめやしげひさ)
仁和寺の御用達を務める和菓子屋が一条通の妙心寺北門前に店を構える、享和2年(1802)創業の「亀屋重久」です。
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創業当時は京都御所の近くに店を構え、五摂家のひとつである九条家に出入りを許されていたという、由緒あるお店です。その後、北野天満宮近くの紙屋川(天神川)を経て、現在の妙心寺北門前に店を構えて約85年。上生菓子を中心に季節感と菓銘を大切に現在まで営まれてきました。
店内に入るとまず目に入るのがこちら。
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額ぶちのなかにお店の歴史が偲ばれます。ショーケースには、季節感のある上生菓子が並びます。
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桜を表現した、雅やかな和菓子2種
桜シーズンに販売されているお菓子が、「花の宴(えん)」です。
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花の宴(324円)
桜に集う人々を意味して付けられたという、菓銘。五弁の桜を表現した、春を代表する意匠の“こなし製”のお菓子ですが、その表現はお店によって様々。こちらのお店では、可愛らしさよりも、品を感じる洗練された意匠となっています。
そして、御室桜を表現したお菓子が、「花かさね」。
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花かさね(335円)
背の低い御室桜の花びらが重なり合い、桜雲となった様子を表現しています。花びらは、一枚であれば白く、集まればピンク色に見えるという桜の繊細な色合いを感じられる、“きんとん製”のお菓子です。
京都の桜シーズンのラストを存分に味わい、お菓子でその余韻に浸ってみてはいかがでしょうか。
■亀屋重久
【営業時間】10:00~19:00
【定休日】木曜日
【電話】075-461-7365
【アクセス】JR山陰本線(嵯峨野線)「花園駅」から徒歩約10分、市バス「妙心寺北門前」バス停から徒歩すぐ
Google map
【公式ホームページ】http://www.kameya-shigehisa.com/
☆「花の宴」「花かさね」の販売は4月上旬から中旬を予定(事前にお問合せください)。
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文・写真:小倉夢桜 —Yume—
和菓子ライフデザイナー/ライター/フォトグラファー。京都五感処・京都Loversフォーラム代表。2012年よりホームページ『きょうの「和菓子の玉手箱」』を運営し、毎日京都の和菓子を紹介し続けている。現在は『月刊京都』(白川書院)で「月刊京都版・きょうの『和菓子の玉手箱』」を連載中。
【きょうの『和菓子の玉手箱』】http://kyoto-lovers-forum.com
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~みさごレポ~
京都の桜が早くも見頃を迎えたということで、今回はタイムリーに遅咲きの桜にちなんだ和菓子をご紹介いただきました! もっちりとした“こなし製”と、ほろほろとした“きんとん製”の和菓子。それぞれ、こしあん、つぶあん、と餡も違いますので、お好みに合わせて選んでみてくださいね。
亀屋重久さんがお店を構える妙心寺の北門といえば、ちょうど先日のブログ「お悩み解決! 京都の桜名所へのおすすめアクセス術」のなかで、仁和寺に行くならばぜひ妙心寺経由で! と紹介していたアクセス術ともリンクしてきます。ぜひこちらも参考にしてみてください♪