いよいよ11/10(土)スタート! 一休寺 特別企画展の舞台裏をレポート

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(撮影:2018年11月8日)

 

2018年秋「そう京」キャンペーン 2


今年の秋の「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンの舞台酬恩庵 一休寺(以下、一休寺)。「京都紅葉情報2018」でもお伝えしている通り、モミジも徐々に色づいてきました。

キャンペーン期間中は、限定の御朱印や授与品が出たり、カフェスペースが設けられたりと、さまざまな話題で盛り上がっていますが、いよいよ11月10日(土)より、宝物殿で特別企画展「祖師と肖像」が開催されます。

企画展名だけ聞くと、「なんだか難しそう・・・」と思ってしまうかもしれませんが、実は現代アートも採り入れた斬新な内容です。

 

 

(左)虚堂智愚、(中央)一休禅師、(右)大燈国師 すべて一休寺所蔵

 

 

一休寺には、一休さんをはじめ、さまざまな高僧を描いた頂相(ちんそう、肖像画のこと)が伝わっているのですが、今回の特別企画展では、なんと上記3幅の頂相をオマージュして作られた、その名も「NEO頂相」なるものが展示されます!

 

 

絵:伊野孝行

 

 

気になる作者はというと、テレビアニメ『オトナの一休さん』のイラストを手掛ける、イラストレーターの伊野孝行さんです。上記の頂相と見比べてみても、画風の違いは歴然。

伊野さん自身も最初は「NEO頂相」を描くことに戸惑いがあったそうです。「もともと頂相は信仰の対象でもある尊いもの。頂相を描くとなると構えてしまいます。頂相という昔に完成された形式があるだけに、そこからどうやって逸脱できるか。どこを押さえて、どこを遊べばいいんだろう・・・」なんとも難しいお題です。

しかし、出来上がった作品は、伊野さんの世界観を見事に表現しながらも、頂相らしい佇まいを実現した、まさに「NEO頂相」だったのです!

伊野さんの発想力や画力もさることながら、作品の完成には京都の老舗表具屋「八木米寿堂」も大きな役割を果たしました。

「そう京」ブログでは、「NEO頂相」が出来上がる過程を複数日に分けて取材。こだわりの詰まった仕事風景をレポートします♪

 

 

9月8日(土)~作品を東京から京都へ~

 

 

打合せの様子(左)八木忠彦さん、(右)伊野孝行さん

 

 

伊野さんの作品を表装した八木米寿堂は、「ウナギの寝床」といわれる昔ながらの京町家の雰囲気を残す、素敵な工房です。伊野さんは東京にお住まいのため、9月8日(土)に新幹線に乗って、大事な作品を届けに来られました。

対応されたのは、八木米寿堂の八木忠彦さん、智正さん親子。日頃は浄土真宗をはじめとするお寺の収蔵品の修復作業が主とあって、作家さんの作品を表装することは珍しいそうです。

 

 

 

 

八木さん親子にとっても、今回のお仕事は新しいチャレンジ。

伊野さんと八木さん親子に、特別企画展の発案者である一休寺の田邊副住職も加わり、作品の完成形を模索します。「何色の紙を合わせよう、軸の幅や長さはどうしよう」伊野さんの思い描くイメージを大切にしながらも、表装した時の見た目やバランスも意識しなければなりません。

 

 

 

 

議論を重ねるなかで、伊野さんが何か閃いたご様子! ペンを取り、愉快な髑髏(どくろ)のイラストを次々に描き出しました。

「これを絵の周りに貼り巡らすのは、どうでしょう」と伊野さん。

「それは斬新で、面白いかもしれませんね」八木さんも新しい表現との出会いに職人魂が刺激されるのか、なんだか楽しそうです。

さてさて、どのように仕上がっていくのでしょうか。

 

 

10月11日(木)~作品を補強する「裏打ち」作業~

 

 

 

 

表装は作品を展示に適した形態に仕上げるとともに、保護することも重要です。2回目の取材では、和紙を重ねて作品を補強する「裏打ち」の作業を拝見しました。

裏打ちは仕上げまでに3回に分けて行われるのですが、それぞれ呼び名があり、最初は「肌裏打ち」、2回目が「増裏打ち」、最後が「総裏打ち」です。

写真は肌裏打ちの段階で、和紙に糊を付け、刷毛を使って均等に伸ばしていきます。八木さんの手にかかれば、あっという間に終わってしまう作業ですが、ムラなく仕上げるには熟練の技が必要です。

 

 

 

 

息子の智正さんは、「付廻し(つけまわし)」の作業中。こちらは作品の見栄えをアップさせる重要な工程ですが、よく見ると、裂地が段々に折れ曲がっているように見えます。

「見栄えが大事なのに、シワシワな裂地でいいのかな」と思ってしまいますが、表装では裂地に「あそび」を持たせることが大事なのだと教えていただきました。

「最初からピンと貼ってしまうと、かえってシワが生まれたりします。紙と裂地の性質を見極めて伸び縮みを計算し、最後の最後にピンと美しく伸びているのがプロの仕事です」

「あそび」も計算のうちとは、さすが職人さん!

 

 

 

 

お次は定規を取り出して、親子で入念に相談。作品の両端にくる「筋」や「柱」といった部分の裂地の幅を決めるのですが、お二人の会話を聞いていると、長さの単位がであることに気付きました。

「表具の世界ではミリやメートルではうまく仕事ができひんのです。昔ながらの寸法を使うほうが、微妙な調整が可能なんです」

すべては仕上がりの見た目のため。伊野さんの作品がどんどん頂相らしくなっていきます。

 

 

 

 

前回の訪問で伊野さんが閃いた髑髏の付け廻しはというと・・・ 後日、新しく描いた髑髏のイラストが伊野さんから送られてきたそうです。

写真では分かりづらいですが、伊野さんのイラストが描かれた和紙にショッキングピンクの和紙を重ねて、淡いピンク色を出しています。

「この作品はポップな仕上がりなので、全体をパステル調にまとめたいと思っています」どんな和紙をあわせるか、これも職人の腕の見せ所です。

 

 

11月1日(木)~仕上げ作業、完成へ~

 

 

 

 

表装では作品の乾燥にも時間がかかるため、仕上げ作業が行われたのは約1ヶ月後こと。3回の裏打ちを経て、和紙が幾重にも重ねられているのを見せていただきました。

八木さんによると、もともと伊野さんが描いた本紙と、3回の裏打ちで使用した和紙の厚さが同じにならなければいけないそうです。確かに、表装された掛け軸を見てみると凹凸がなく、すっきりしています。紙の厚さや種類を変えて調整すると聞くと、職人さんの指先の感覚がいかに大事かということが分かりました。

 

 

(左上)軸棒の取り付け、(右上)軸先に使うさまざまな素材、(左下)風帯の取り付け、(右下)金具の取り付け

 

 

作業も大詰め。最後に軸棒風帯(ふうたい)をつければ、完成です。

風帯は作品の上部にある飾りで、手縫いで取り付けます。今回、伊野さんが描いた作品のうち、風帯が取り付けられたのは、一休さんを赤と青の色鉛筆で描いた1作品だけ。

「風帯をつけると、頂相の格があがります。主役である一休さんを描いた頂相ですから、昔ながらの手法で仕上げてみました」

本当にいろいろなこだわりが詰まっていますね。

 

 

 

 

約2ヶ月にわたって作業が行われ、ついに完成した「NEO頂相」。密着取材させていただいただけに、私も感慨深いものがありました。

「今回の表装は伊野さんの作品が引き立つように模様が入った和紙や裂地は使わず、すべて無地で仕上げました。また、色味も伊野さんの希望をお伺いしつつ、頂相らしくまとまるように配慮しています。今までにない楽しい仕事でした」と八木さん。

特別企画展では一休寺に伝わる頂相とともに、伊野さんの作品が4点展示されます。伊野さんがそれぞれの作品にどういった想いを込めたかは、見に行った人だけのお楽しみ。ぜひ、期間中に足を運んでいただき、「NEO頂相」の仕上がりの美しさを鑑賞してくださいね♪

 

 

特別企画展「祖師と肖像」
「NEO頂相」以外にも、一休寺所蔵の貴重な頂相や袈裟(けさ)など、約20点が展示されます。

【日程】2018年11月10日(土)~12月2日(日)
    9:00~17:00、宝物殿9:30~16:30
【場所】酬恩庵 一休寺 宝物殿 詳細はこちら
【入場料】無料、要境内拝観料500円
【問合せ】0774-62-0193
【公式ホームページ】http://www.ikkyuji.org/

 

 

「そうだ 京都、行こう。」エクスプレス・カード会員、EXカード会員の皆さまへ

11月25日(日)に伊野孝行さんにもご出演いただき、一休さんの実像に迫るトークショーを開催します♪ 伊野さんに制作エピソードを聴けるチャンス! さらに、参加者の皆さまは、紅葉ライトアップも鑑賞いただけます。たくさんのご参加をお待ちしています♪

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Written by. シュガー

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