取材日:2017年7月31日
気軽に行く、京トレ 1
三方を山に囲まれた町、京都。こんな身近に山があるんだから、楽しまなくっちゃ! ということで、発足したのが「そう京」編集部・山部です。気軽に(時にはちょっぴりしんどく)楽しめる京都トレッキング(略して「京トレ」)を、実際に山部が登って体験します♪
そうだ 愛宕山、登ろう!
記念すべき、初回「京トレ」。最初の山・・・ どこがいいかな? と、部員である「きのこ」さん、「かりー」さんと頭を悩ました結果、今回挑戦する山は、京都市の西にそびえる「愛宕山(あたごやま)」となりました! 伏見稲荷大社のある稲荷山など、京都には信仰に関係する山が多いのですが、愛宕山はまさにその代表格。ぽこんと飛び出た山頂に、全国に約900もの分社を持つという「愛宕神社」の総本宮が鎮座されています。
標高は924m。京都市で二番目の高さを誇ります(1位は、左京区にある皆子山971m)。神社への参詣は「愛宕詣り(あたごまいり)」と呼ばれ、近年では参詣を目的としつつトレッキングやトレイルランを楽しむ人も多く訪れています。地元の学生さんが部活動のトレーニングで走っていることもある、地域の方に愛される山です。
登山ルートには、奥嵯峨のさらに奥に位置する清滝(きよたき)から登る「表参道(清滝道)」、山の北側にある月輪寺を経由する「裏参道(月輪寺参道)」、その間を走る難路の「大杉谷道」があり、そのほかに、柚子で有名な水尾(みずお)から表参道に合流する「水尾道」、明智光秀が本能寺に向かう際に越えたといわれる「明智越え」など、たくさんのルートがあります。
決行日は「千日詣」の日! いざ、夜登山へ!
登山決行日は、7月31日の夜。この日は愛宕さんの縁日で、「千日詣(せんにちまいり)」の日です。
防火・鎮火の神さまとして信仰を集める愛宕神社では「火迺要慎(ひのようじん)」のお札を授与されているのですが、7月31日から8月1日にかけてお参りし、この札を授かると「千日分のご利益がある」といわれています。正式には「千日通夜祭」といい、31日の夜9時に「夕御饌祭(ゆうみけさい)」、1日の深夜2時に「朝御饌祭(あさみけさい)」の神事が行われ、特にその間にお参りをするといいといわれています。狙うは、この時間帯です!
夜の山、しかもこの日は夕方に雨が降り、地面もしっとりすべりやすい状況。わたしたちが清滝の登山口に到着したのは20時半頃(千日詣は基本、表参道を利用します)。提灯のかかる鳥居を潜って、いざ、お参りに出発です! ちなみにこの鳥居の右手側に、愛宕山ケーブルカーの廃線跡があります。その昔は、山頂付近までケーブルカーが通っていたのです。
道は険しい、けれど喜びもある!
登りはじめは穏やかなのですが、すぐに勾配がきつくなります。石段や横木が敷かれているものの段差があるので、徐々に「フー、フー・・・」。・・・心拍数があがっていきます。しんどそうにしていると、下りてこられる方がにこやかに「お上がりやす~」と声をかけてくださいます。登る私たちは「おくだりやす~」と返事。これが、千日詣をする人同士での定番のご挨拶。最初は少し恥ずかしいのですが、登って行くにつれ、このやり取りが段々と励みになっていきます。
10分もすれば、滝のような汗。7月末の京都は蒸し暑い。山の中で温度は少し下がるのですが、湿度が高いのでとにかく汗が出てきます。タオルは必須・・・ 8月も終われば少しは涼しくなりますし、その点でも9月から10月にかけてが、やっぱり登山にはいい時季かと思います。
登山口となる鳥居から愛宕神社までは約4km。山道には100mごとに「○/40」という立て札があり、これを目安に、いまどのあたりにいるのかを把握しながら登っていきます。それぞれの立て札にひと言メッセージが添えられていて、注意を喚起してくれます。そうです、山での軽装は、けがのもとです。足下もやっぱり、トレッキングシューズがいいですよ。
五合目付近にある休憩所を過ぎると、京都盆地の夜景を見下ろすこの景色! あれが桂川だ、あれが京都タワーだ、と、しばし足を止めて景色に見入ります。
七合目付近が「水尾別れ」で、ここから水尾の里へと下りる林道が続いています。山小屋があり、この日は休憩する人でいっぱいでした。千日詣の日は本当にたくさんの参詣者の方が訪れ、小さなお子様も一生懸命登っています。3歳までに愛宕さんにお参りをすると一生火事に遭わない、といわれているため、普段からお子様の参詣も多い山なのです。ちっちゃな子が頑張っている姿を見ると、自分も頑張ろう! と思いますね。
頂上はもうすぐ! 一歩一歩踏みしめて。
この黒門を潜れば、頂上はもうすぐ! といいながら、まだまだあります。が、「もう少し」という気持ちから、足取りも軽くなり、実際、勾配も緩やかになってきます。
愛宕灯籠の並ぶ境内には自動販売機があり、通常の登山の際にもいい休憩場所となります。お弁当スポットにも最適です♪
ここから先が、ぽこんと飛び出た頭の部分。一気に石段をあがっていきます!
そして、到着! たくさん吊された提灯が、なんてフォトジェニック! お参りをし、お神酒をいただきます。汗で冷えた身体にお酒が染みこみ、胃の中がぽかぽか。力が沸いてきます。お酒の力って、本来はこういうことなのか! かりーさんと一緒に「美味しい、嬉しい、あったかい!」と、大喜びしていました(もちろん提灯やお神酒の授与は、千日詣の日だけの特別バージョンです)。
「火迺要慎」のお札(小400円)を授与していただき、この日だけの限定御朱印(書き置き、300円)もいただき、目標達成! 何度も弱音を吐き、もう帰っちゃおうかなと何度も思いましたが、なんとか登りきることができました! ※「火迺要慎」のお札は通年授与されています。
達成感と心地よい疲労感に包まれつつ、帰りの道のりは軽快に。サクサクと山を下りる私たちでした。
来年の千日詣に向け、この秋、愛宕山に挑戦してみては?
結局、登りに2時間半、帰りに2時間、あわせて4時間半の登山となりました。以前に昼間登ったときには、3時間半ほどで帰ってこれたので、やっぱり夜道は時間がかかります。足下も危ないので、余裕を持った登山計画が必要ですね・・・。
夜間に愛宕山に登ることができるのは、7月31日から8月1日の早朝までのこのときだけ(それ以外の日にも山に入ることはできますが、灯りなどありませんので危険です)。まずは一度、日中での登山を経験してから、来年の「千日詣」にのぞまれることをおすすめいたします! 日中の登山ももちろん、素敵な風景をたのしむことができますよ♪
過ごしやすくなる初秋のこの時季。ぜひ、愛宕山登山にチャレンジしてみてくださいね!
■愛宕神社
【参拝時間】境内自由、授与所9:00~16:00
【参拝料】境内無料
【電話】075-861-0658
【アクセス】京都バス「清滝」バス停から徒歩約2時間 Google map
【公式ホームページ】http://atagojinjya.jp/
★千日詣は、毎年、7月31日夜~8月1日早朝です。
※千日詣は夜間の登山になります。体力・装備など自己管理のもと、充分に準備してご参詣ください。
【参加スタッフからのひとこと】
◆きのこ隊長:元山岳部の、頼れるリーダー。登山の際は、「地形図」派。
今日のひと言「夏の夜は眼鏡が曇るので、眼鏡派の人は気をつけて」
◆かりー部長:アウトドア大好き、山ガール。お気に入りは、六甲山(京都なら大文字山)。
今日のひと言「夜の登山は大変! いつも以上にストレッチをしてから登ってください」
◆みさご平部員:弱音担当。持久力があるので、後半に妙に元気になる。
今日のひと言「愛宕山山頂は、夏でも寒い! 汗が冷えてしまうので上着は必須です」