しっとりと冬の装い 12月の京菓子3選

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京の和菓子の玉手箱 2


京の町には、たくさんの魅力的な「和菓子(京菓子)」があります。その豊かな世界を、京都の和菓子を愛する“和菓子ライフデザイナー”小倉夢桜(おぐらゆめ)さんにご案内いただきます! 12月は、“冬”をテーマとした和菓子をピックアップ。冬の京都を感じながら、お楽しみください♪



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早いもので、もう師走となりました。
“京都の師走”といえば、「顔見世興行(かおみせこうぎょう)」が有名です。

例年であれば、四条川端の鴨川沿いにある南座の前に出演者の名を記した「まねき看板」が掲げられ、風物詩として行き交う人々に京都の師走を告げるのですが、今年は少し違います。南座が工事を行っている為に、本公演が行われる岡崎のロームシアター京都にまねき看板が掲げられています。見慣れている方にとっては、例年とは違う“京都の師走”となるのではないでしょうか。

そして、京都の師走は厳しい底冷えの始まり。個人的に寒いのは苦手なのですが、京都の素晴らしさをより感じられる「冬の京都」は大好きです。静寂の中、響きわたる水の音、小鳥の囀り。慌ただしく暮らしてきた春から秋までの日々がようやく落ち着き、疲れた身体と心をリセットできる最高の環境です。

静寂の京都を感じながら、和菓子から温もりを感じてみてはいかがでしょうか。



亀屋光洋(かめやこうよう)【山茶花(さざんか)】


東山三十六峰のひとつ、「一乗寺山」。山裾には、詩仙堂圓光寺といった紅葉で有名な寺院が建立されています。11月には、その紅葉を目当てに多くの参拝者で賑わっていました。木々の葉が散り、冬木立となっていくこれからは、初冬の代表的な花である山茶花が彩りを添えてくれます。

詩仙堂、圓光寺の最寄り駅となるのが、叡山電鉄「一乗寺駅」。駅前にはたくさんの店舗が並び、個性的なセレクト書籍で知られる「恵文社 一乗寺店」をはじめ、人気のお店を目的にして訪れる方が多いエリアです。



その中で、昭和46年(1971)の創業以来、変わらずお店を営む和菓子屋さんが、「亀屋光洋」。現在、二代目の御主人が先代のあとを引き継ぎ、暖簾を守っています。



こちらのお店は、地元住民に親しまれ、普段使いのお菓子を買い求めるお客さんが多く、京都の暮らしを肌で感じることができます。これからの時期に販売されるのが、山茶花をモチーフにした意匠のお菓子。


山茶花(216円)

このお菓子と出会ったのは3年前。京都の厳しい寒さの中で凛と咲く様子を表現したお菓子は、先代から二代目へと受け継がれ、今も多くの方に愛されています。繊細な色使いからは、冬の冷たい空気までもが伝わってきそうな可憐な意匠です。日本の美を感じながら召し上がってみてはいかがでしょうか。

■亀屋光洋
【営業時間】9:00~19:30
【定休日】水曜日不定休
【電話】075-711-3764
【アクセス】叡山電鉄叡山本線「一乗寺駅」から徒歩約2分 Google map
☆「山茶花」は12月中の販売を予定。なくなり次第販売終了。事前のご予約をおすすめします。



千本玉壽軒(せんぼんたまじゅけん)【雪餅(ゆきもち)】


京都では、12月に「大根焚き(だいこだき)」という年中行事が行われます。この時期に大根を食べると中風にかからないといわれ、様々な寺院で営まれています。なかでも、12月7日と8日に千本釈迦堂で行われる「大根焚き」は、京都に暮らす人々はもとより、他府県からもたくさんの人がお越しになります。大きなお鍋で焚かれた、大根と油揚げ。湯気と香ばしい香りが境内に広がり、食欲をそそります。京都の冬のはじまりには欠かせない「大根焚き」を皆さまも召し上がってみてはいかがでしょうか。

⇒「大根焚き」についてご紹介しています。【スタッフブログ】12月に行きたいイベント5選 除夜の鐘ほか

千本釈迦堂の「大根焚き」初日の12月7日は、二十四節気では「大雪」にあたります。平野にも雪が降り始める頃です。その頃になると京都の和菓子屋には、雪にちなんだお菓子が数多く並びます。



千本釈迦堂から徒歩5分ほど、千本今出川を上がって(北へ)すぐ、格式のある看板が目を惹くお店が「千本玉壽軒」です。昭和13年(1938)に創業して以来、茶の湯の世界、そして仁和寺金閣寺大覚寺など格式のある寺院にお菓子を納められています。



店内には、お干菓子や羊羹など上品な京都らしいお菓子が並びます。
その中で、私が皆さんに召し上がっていただきたいのが「雪餅」というお菓子です。


雪餅(519円)


「雪餅」という名前ですが、餅粉ではなく、大和芋を原料に使った“きんとん製”です。大和芋が旬となる冬の時期のみに作られるお菓子で、まるで今にも溶けてしまいそうな、雪に見立てた繊細な意匠。純白のきんとんの中には黄身餡が入っており、まろやかな甘みと口当たりに仕上げられています。

■千本玉壽軒

【営業時間】8:00~18:00
【定休日】水曜日
【電話】075-461-0796
【アクセス】市バス「千本今出川」バス停から徒歩約1分 Google map
【公式ホームページ】http://sentama.co.jp/
☆「雪餅」は2月頃までの販売を予定。事前のご予約をおすすめします。



緑菴(りょくあん)【冬ごもり】


京都市内には、四季の移ろいを身近に感じられる美しい散策路が数多くあります。その中でも東山の麓に通る一本の道「哲学の道」は日本の道100選にも選ばれている散策路です。熊野若王子神社あたりから銀閣寺まで続く約1.5キロにおよぶ道の周辺には多くの名刹が点在しており、観光シーズンには多くの観光客で賑わいます。琵琶湖疏水の分線に沿うように作られた道は、散策用に石畳みが敷かれ、四季折々の景色を楽しむことができます。

春は満開の桜、夏には木陰の中を歩きながら新緑を楽しみ、秋には彩り豊かな紅葉。そして、これからの時期は、人の往来が少なくなり、のんびりともの思いにふけりながら散策することができます。その哲学の道にお出かけの際に立ち寄っていただきたいのがこちらのお店、「緑菴」です。



御主人は、「末富」で修業後に独立をされ、30年ほど。いかにも職人というシャキッとした容姿で、その雰囲気には見惚れてしまいます。一見すると言葉数少なさそうに見えるのですが、お人柄の良い方で居心地良く、いつも時間を忘れてつい話し込んでしまいます。「堪忍やで、しょうもない話ばかりしてもうて」とおっしゃる御主人。その話の中からは、長年、和菓子と真摯に向き合って来られた方だからこその言葉の重みを感じられます。



店内には、京菓子のスタイルを貫いた意匠のお菓子が並びます。
これからの時期に召し上がっていただきたいお菓子がこちらの「冬ごもり」。


冬ごもり(390円)

「こんなカタチやけど、いっぺん、食べてみて」と御主人がオススメするお菓子です。人、動物、植物などすべての生き物が、厳しい冬の寒さをじっと耐えながら過ごす様子を表現した村雨(むらさめ)製(米粉と餡をまぜて蒸したもの)のお菓子です。しっとりとした村雨の中には、京菓子では珍しく粒餡が入っており、温もりを感じるお菓子に仕上げられています。お抹茶はもちろんのこと、こたつを囲んで温かい緑茶と一緒に召し上がり、ほっこりとしていただきたいお菓子です。

■緑菴
【営業時間】9:00~19:00
【定休日】第2・第4水曜日
【電話】075-751-7126
【アクセス】市バス「浄土寺」バス停から徒歩約5分 Google map
【公式ホームページ】http://www.ryokuan-kyoto.com/
☆「冬ごもり」は12月中の販売を予定。なくなり次第販売終了。

寒い京都の冬ですが、この時期だからこその楽しみがたくさんあります。和菓子もそのひとつ。寒さに負けず、存分に京都の冬を満喫してくださいね。

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文・写真:小倉夢桜 —Yume—
和菓子ライフデザイナー/ライター/フォトグラファー。京都五感処・京都Loversフォーラム代表。2012年よりホームページ『きょうの「和菓子の玉手箱」』を運営し、毎日京都の和菓子を紹介し続けている。現在は『月刊京都』(白川書院)で「月刊京都版・きょうの『和菓子の玉手箱』」を連載中。
【きょうの『和菓子の玉手箱』】http://kyoto-lovers-forum.com
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~みさごレポ~
12月のテーマは、ずばり“冬”。冬というと期間も長そうな気もしますが、「実は冬のお菓子は、12月しかいただけないんですよ。1月になるとお正月や干支菓子、2月になると早春、梅が出てきてしまうので・・・」と、小倉さん。じゃあ、冬を扱うなら12月しかないですね! と、テーマが決まりました。

今回のお店も、一乗寺、千本今出川、浄土寺と場所も様々。電車やバスを乗り継いで、お店を訪ねます♪
3つの和菓子を並べてみると、秋の紅葉の和菓子とは違う、奥ゆかしい美しさを感じさせる意匠で、京の冬の凜とした姿が表されているんだなぁと、うっとり。
食べてしまうのがもったいないと思いながらも、実食。亀屋光洋さんの「山茶花」はもっちりとした食感、千本玉壽軒さんの「雪餅」はすっと溶けていくようななめらかな食感、緑菴さんの「冬ごもり」はほろほろとした見た目とは違うしっとりとした食感、と口当たりも違うことに気づきます。味わいもそれぞれの菓子の意図に合わせた甘味があり、冬をテーマとした菓子にこれだけの味の幅があるのだなぁと、驚いてしまいました。

実際にお店を訪ね、味わってみることで、和菓子への愛おしさが生まれてきます。
ぜひ皆さまも京の和菓子をお楽しみください♪


 

Written by. みさご

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