井筒安「お雑煮の会」:2017年12月16日実施
「も~いーくつ寝ーるーとー、お正月♪」ですね! 京都の旧家や花街では、“事始め”の日(12月13日)を過ぎると、お正月準備を始めます。「お正月も近いし、京都のお雑煮づくりを学んでみたいなぁ」と探していると、東本願寺の門前町にある料理旅館「井筒安(いづやす)」さんが、お雑煮づくりのワークショップをされるとの情報が。早速、“オパン”ちゃんとともに取材へ伺いました!
創業178年の老舗料理旅館のご当主は、元カメラマン!!
「井筒安」は、天保10年(1839)創業の歴史ある旅館です。七代目のご当主・井筒(いづつ)安次郎さんが料理長として腕を振るい、今回のワークショップも、井筒さん自ら京都のお雑煮の作り方を教えてくださいます。
京都駅から歩いて約10分。仏具屋さんや法衣屋さんが並ぶ門前町の中に、井筒安さんがあります。数寄屋造りの旅館の佇まいにうっとり。美しいですねぇ。2013年に全館リニューアルをされたということで、館内には、伝統的でありながらもモダンな、京都らしい気品が漂います。ワークショップは、玄関を上がってすぐのカウンターで行われるとのこと。席数が少ないため、6名限定での開催です。
ご主人の井筒安次郎さん。代々その名を受け継がれています。旅館を継がれる前には、カメラマンをされていたそう! お話上手で、とっても気さくなお人柄です。参加者の皆さまが揃われたところで、ワークショップのスタートです!
京のお雑煮づくり、開始!
カウンター席の上には、今日のレシピが用意されていました。
「京都に生まれ育ったものには、元日に白みそのお雑煮を頂かへんと新年を迎えた気になりません。白みそと昆布出汁の繊細で優雅な味わいがお芋さんに馴染んで、これが又たまらんのです」(レシピ冒頭より)
素敵な一文ですね! 期待感が高まります♪
井筒さん 「お雑煮は、歳神様に捧げるものです。京都では生臭いものを避けるために、昆布だけでお出汁を取ります。家によってはかつお節を入れるところもありますが、うちは昆布だけ。真昆布ではなく、京都では利尻昆布を使います」
たっぷりのお水に昆布を入れ、しばらく(30分ほど)置いておきます。だいたい、水1リットルに30グラムの昆布を使うそう。
※右下が「鶯菜」です
そして、今日の材料が紹介されます。
まずは、「頭(かしら)芋」。里芋の親芋で、京都ではその家の主人と長男だけが丸ごと1個を食べます。井筒さんも小さな頃からお椀に入っていたそうで、その時はあまり好きではなかった、と苦笑されます。子孫繁栄を願う、「小芋」。長寿を願うお餅は、円満にことがはかどるように「丸もち」を使い、地に根が張るように「祝い大根」を添えます。
井筒さん「探し回ったんですが、祝い大根がどこにも売っていなくて(笑) 錦(市場)の人にも“あんた、何いうとんのや。来週くらいにならな出回らへんで”と言われちゃいました。なので、今日は間引きの大根を使います」
彩りを添える「鶯(うぐいす)菜」。あまり馴染みのない野菜ですが、冬からウグイスが鳴く頃までが旬のお野菜だそうです。そして、一番大事な材料が、「白みそ」です!
井筒さん 「お味噌は、とにかくいいものを使ってください! そして、たっぷりと使う。高いお味噌を使うと量を惜しんでしまいがちですが、そこはお正月なので奮発してください(笑) いいお味噌には砂糖が入っていません。大豆だけの甘さなんです。今日は、“しま村”さんの白みそを使います。これなら錦(市場)などでも手に入りますよ」
・白みそ だいたい300グラム (良いものを選ぶ。50グラム700円ぐらいするものを選びましょう)
・昆布 30グラム(出来れば利尻昆布)
・水 1リットル
・頭芋 1個(八つ頭。主人と長男だけが丸ごと1個を食べる)
・里芋 中サイズ4個(昔は女性用)
・祝い大根 2本
・餅 丸もち4個
・彩り 鶯菜(適量)なければ水菜
・花鰹 少々
・和辛子 少々(お好みで)
・お酒 適量(お好みで)
いざ、調理開始!!
参加者が分担して井筒さんと一緒に調理をしていきます。オパンちゃんも参加することになり、任務は「最後の盛り付け」です。責任重大ですよ!!
1・昆布出汁を取る
まずは、先ほど水につけていた昆布からお出汁を取ります。とろ火で加熱し、鍋の周りにプツプツと泡が付いてきたら火を止めます。
井筒さん 「これ以上沸騰すると、粘りと臭みが出てしまうので、早めに止めてくださいね。関西は軟水なので、よりお出汁が出やすいと言われています」
2・頭芋、小芋の下ごしらえ
たわしで泥を落とし、両端を落として、頭芋は八角に、小芋は六角に皮をむきます。頭芋は8等分し、1人に1個入れます(確かに、この頭芋を1個丸ごと食べるのは大変です!)。小芋は水分量が多いので、水に落とさずにそのまま茹でます。あまりグラグラせず、竹串が通るようになるまで茹でます。
3・祝い大根の下ごしらえ
たわしで泥を落とし、葉の部分の根元を落とし、約5ミリ間隔で輪切りにします。水から少し茹でて、歯ごたえがある程度で水切りをします。
4・鶯菜の下ごしらえ
鶯菜も下茹でして、八方地(はっぽうじ)に漬けます。
井筒さん 「八方地は、便利ですよ。薄いお出汁に塩少々、薄口醤油を数滴入れたものです。ほうれん草やスナップエンドウなど、緑のものを茹でて漬けておくだけで、味がぐんと引き立つんです。鍋は出来れば、銅鍋を使ってください。酸化銅の影響で、緑色が綺麗に出るんですよ」
5・出汁で炊く
昆布出汁に「2」で下茹でした頭芋、小芋を入れて、中火で炊きます。おおよそ20分ほどで味がしみます。
井筒さん 「煮立たせると身割れしますからね! 中火でコトコト炊いてください」
6・お餅の下ごしらえ
常温の状態のお餅を沸騰したお湯へ。3分ほどで柔らかくなります。
井筒さん「お餅は粉が付いてますからね。それを取る意味もあります。うちでは、毎年12月28日にお餅つきをするんですよ。臼と杵で、8升分つきます。だから、その日だけ旅館もお休みするんです(笑)」
7・白みそを溶く
“いかき”で味噌を溶きます。
井筒さん 「失敗する原因は白みそが少ない場合が多いですね。思い切って多く溶きましょう!」
溶き終わって味見をしたら、「3」で準備した祝い大根を入れます。お餅を入れ、おおよそ10分、煮たたせないように炊きましょう。
井筒さん 「最後に、お酒を入れます。このお酒も、お米だけで造られた純米酒で、余分なものは入っていません。今回は、京都の羽田酒造さんのお酒を使っています」
タパタパタパ・・・ と、お酒を投入する井筒さん。「量はお好みで」とのことですが、思ったよりもたくさん入れるんですね!
井筒さん 「お酒を入れた後も、煮たたせてはいけませんよ。アルコール分だけを飛ばす感じで」
8・椀に盛る
いよいよオパンちゃんが手伝う番がやってきました! 緊張の面持ちで、盛り付けの仕方を教わります。
お餅、頭芋1切れ、小芋、大根を入れ、白みその出汁を注ぎます。飾りに鶯菜を添え、食べる直前に糸鰹を盛り、出来上がり!
オパン 「緊張しました! 鶯菜をクルンと丸めて綺麗に盛り付けるのが案外難しかったです・・・」
井筒さん 「頑張りましたね(笑) さあ、では試食しましょう! 今日は、少しだけお正月のお料理もおつけします!」
念願の、京都のお雑煮を実食!!
みんなで作ったお雑煮を、いよいよいただきます! 白みその甘い香り、そして最後に隠し味に入れたお酒の香りが鼻腔をくすぐります。
井筒さん 「お好みで、辛子味噌も入れてくださいね。白みそに和辛子を練りこんだもので、私はこれを付けていただくのが好きなんです」
う~ん、美・味・し・い~~~!!! 昆布のお出汁がしっかりと効いていて、白みその自然な甘さが口の中に広がり、極上の幸せタイムです。ねっとりとした頭芋や、ホクホクした小芋、なめらかな丸もちが白みその汁に絡まり、いつまでも食べていたいくらい! 京都のお雑煮、最高です~♪
井筒さんと語らいながらいただく京都のお雑煮。本当に美味しいものでした。今年のお正月は、ぜひこのレシピでお雑煮を作ってみたいと思います♪
オパン 「いろいろなお話を伺えて、貴重な時間でしたね!」
みさご 「ほんまに。東本願寺の門徒さんならではのお話や、版画家の棟方志功(むなかたしこう)さんが逗留されていたお話、所蔵する数々の美術品のことなど、もっといっぱい紹介したかったね。それはまた次の機会にできるといいな」
みさご&オパン「井筒さん、ありがとうございました!」
■料理旅館 井筒安
【電話】075-371-1574
【アクセス】JR「京都駅」から徒歩約10分 Google map
【公式ホームページ】https://izuyasu.com
※お料理だけのご利用も可能です。昼食11:30~13:30、夕食19:00~(3日前までに要予約)
※月に一回、ワークショップや和文化的な催しを開催されています。次回は2018年1月14日(日)「初春狂言~井筒安で狂言を知る・観る~Stage2」です。
ロケーション抜群! お雑煮が食べられるお店2選
お雑煮の作り方を学んだ後には、お雑煮をいただけるお店をご紹介します♪
みさご 「以前に京都のお雑煮を食べられるお店を紹介したよね。他にもまだあるのかな?」
オパン 「それなら、お庭を見ながらいただける、とっておきのお店がありますよ!」
オパン 「まず、ひとつめは、“よーじや 銀閣寺店”さんです! あぶらとり紙で有名ですが、銀閣寺店にはカフェが併設されていて、1月1日から3日間だけ、お雑煮を出されているんです。日本家屋をそのまま活かした風情ある店内で、お庭を見ながらお雑煮をいただくって、素敵ですよね♪」
みさご 「“哲学の道”のそばっていうのが、また風情があっていいね」
よーじや 銀閣寺店の「京風お雑煮」700円
オパン 「具は、二種類の生麩と大根。そしてお餅は、京都では珍しく四角い焼き餅を使われています!」
みさご 「四角いお餅で、しかも焼いてるなんて、珍しい!! これは、行ってみたいな~♪」
■よーじや 銀閣寺店ショップ&カフェ
【営業時間】<カフェ>10:00~18:00(ラストオーダー17:30)、<ショップ>9:30~18:00
※営業時間は季節により異なる
【定休日】無休
【電話】<カフェ>075-754-0017、<ショップ>075-754-0010
【アクセス】市バス「錦林車庫前」バス停から徒歩約5分 Google map
【ホームページ】http://www.yojiya.co.jp/
★「そうだ 京都、行こう。」エクスプレス・カードの特典協力先です。特典内容はこちら。
★「よーじや 銀閣寺店」で、「そう京」イベントを実施します! 詳しくはこちら。
オパン 「もう一軒は、“虎屋菓寮 京都一条店”さんです! 2018年は、1月3日から20日まで、お雑煮を提供されるそうです」
みさご 「虎屋菓寮といえば、とらやさんの京都一条店のほど近くにある喫茶だね。お庭が綺麗なんだよね」
虎屋菓寮のお雑煮1,404円
オパン 「そうです。羊羹で有名な“とらや”さんの発祥の地は、京都。白みそ仕立てのお雑煮で、丸もち、海老芋、京人参などが入っています。甘くてとろみのある白みそは、本田味噌製とのことです」
みさご 「老舗和菓子店の期間限定のお雑煮、こちらも頂いてみたいなぁ」
みさご&オパン 「京都のお雑煮を、ぜひ皆さま、味わってみてくださいね♪」
■虎屋菓寮 京都一条店
【営業時間】10:00~18:00(ラストオーダー17:30)
【定休日】不定休、元旦
【電話】075-441-3113
【アクセス】地下鉄烏丸線「今出川駅」から徒歩約7分 Google map
【ホームページ】www.toraya-group.co.jp