京の晩夏を彩る、8月の和菓子 ~茶菓えん寿~

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京の和菓子の玉手箱 11



今日から8月。京都も祇園祭の熱気がおさまり、つかの間の穏やかさを取り戻しています。この後に続く大きな行事が、8月16日(木)の「京都五山送り火」。和菓子ライフデザイナー・小倉夢桜(おぐら ゆめ)さんにご紹介いただく今月の和菓子も、この行事をモチーフとしています。新進気鋭の職人さんが手がける、2種類のお菓子をご覧ください♪



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祇園祭が終わった京都。8月7日(火)は、暦の上では「立秋」となります。まだまだ暑い日が続きますが、小さな秋を少しずつ感じられるようになる頃です。

そして、ご先祖様の霊を迎える行事「お盆」。京都市内では、立秋の8月7日より“迎え鐘”が鳴り響き、「六道まいり(六道珍皇寺)」をはじめとする様々な行事が、各寺院で執り行われます。


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毎年8月16日には、五山にかがり火が灯り、あの世から迎えたご先祖様が冥府へ迷うことなくお帰りになれるようにと願いを込めて、「京都五山送り火(以下、「送り火」)」が行われます。

今月は、この「送り火」にちなんだお菓子をご紹介します。



2017年8月9日にオープン。1周年を迎える、茶菓えん寿


京福電気鉄道、通称“嵐電(らんでん)”の「帷子ノ辻(かたびらのつじ)駅」前から東へのびる、大映(だいえい)通り商店街。文字通り、昭和の日本映画の黄金時代を支えてきた大映京都撮影所とともに発展してきたエリアです。現在、大映京都撮影所は無くなってしまいましたが、商店街は今も多くの地元住民にとってなくてはならない存在となっています。


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その商店街に昨年(2017年)8月、和菓子店「茶菓えん寿」がオープンしました。誰でも気軽に利用していただける、飾らない親しみやすい外観のお店です。


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店内の手前はショップとなっていて、和菓子とともに、お店のご主人が厳選した日本茶が40種類ほど並びます。奥はカフェスペースとしてカウンターとテーブルが置かれ、契約農家から取り寄せた多くの茶葉を、和菓子と一緒に気軽に楽しむことができます。



「大」の文字が交わるところをモチーフに 【金尾(かなわ)】


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金尾 378円(8/1~16頃まで販売予定)


送り火の中で最初に灯る、東山如意ヶ嶽(にょいがたけ)の「大」の字。そのなかでも最初に火を点けられるのが、「大」の字画が交わる中心点「金尾」です。ここに組まれた薪に火を灯した後、合図により、75ヵ所の火床が一斉に点火。かがり火が灯る間、金尾の傍らにある「弘法大師堂」では浄土院のご住職が読経を行います。

この「金尾」に燃える炎をモチーフとしたお菓子です。小豆と波照間(はてるま)産の黒糖を合わせた餡を、紅色の錦玉で包み、燃え盛る炎を表現しています。

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金尾



浴衣姿でご先祖様の霊を見送る姿をモチーフに 【送り火】


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送り火 378円 ※ご予約のうえ、お買い求めください


京都の夜空を彩る「送り火」。浴衣を着た人々が団扇を片手に、ご先祖様に想いを馳せながら眺めている— そんな情景を象っています。

こしあんを包む葛は、浴衣の袖を表現。うっすらと透ける大の文字は、まるで盃のなかの水に映っているかのよう。夏の終わりを感じさせる和菓子です。

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京都の8月の風物詩として、大勢の方々が「送り火」見物にお越しになられます。観光行事として賑やかに観覧されることに少し抵抗を感じてしまうのも、昔から京都で暮らす人々の正直な気持ちかもしれません。

京都で長年の間「送り火」に関わってきた方々にとっては、心穏やかにご先祖様のことを想い、別れを惜しむ大切なひと時です。どうかおひとりでも多くの方が本来の行事の在り方を理解されて、騒がず、心穏やかに「京都五山送り火」を観て、しみじみと夏の夜をお過ごしいただければと、切に願います。


■茶菓えん寿
【営業時間】11:00~18:00
【定休日】水曜日
【電話】075-432-7564
【アクセス】嵐電嵐山本線「帷子ノ辻駅」から徒歩約1分、JR山陰線(嵯峨野線)「太秦駅」から徒歩約8分  Google map
【公式facebook】https://www.facebook.com/茶菓えん寿-1447430392008273/
【公式ホームページ】http://chaka-enjyu.com
※2018年9月頃よりホームページ再開予定(2018年8月末までは閲覧できません)。

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文・写真:小倉夢桜 —Yume—
和菓子ライフデザイナー/ライター/フォトグラファー。京都五感処・京都Loversフォーラム代表。2012年よりホームページ『きょうの「和菓子の玉手箱」』を運営し、毎日京都の和菓子を紹介し続けている。現在は『月刊京都』(白川書院)で「月刊京都版・きょうの『和菓子の玉手箱』」を連載中。
【きょうの『和菓子の玉手箱』】http://kyoto-lovers-forum.com
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~みさごレポ~
昨年オープンしたばかりの、茶菓えん寿。「和菓子」とともに「日本茶」がメインのお店です。宇治茶はもちろん、静岡県の川根や福岡県の八女など各産地の茶葉を取りそろえ、しかも、ブレンドではなく単一の茶園で生産されたお茶「シングルオリジン」を味わえるという、こだわりのお店です。

ご主人は老舗の和菓子店で修行をされたのですが、それも「お茶を美味しくいただくための和菓子を、自分の手で作りたい」という一念からと伺い、その情熱に驚いてしまいました。お店では、おかいもののほか、カフェスペースにて急須で淹れるお茶や和菓子、かき氷などを味わえます。和菓子も季節に合わせて変わっていきますので、ぜひ実際にお店を訪れてみてくださいね♪


 

Written by. みさご

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