初秋の風情を味わう、9月の和菓子 ~鍵甚良房~

  • お買い物
  • グルメ・スイーツ
トップ
 

京の和菓子の玉手箱 12



夏から秋へと季節が移ろっていく、9月。敏感に季節を映し取る和菓子の世界では、いったいどんな意匠のお菓子が登場するのでしょうか。今月も、和菓子ライフデザイナー・小倉夢桜(おぐら ゆめ)さんから素敵なお店をご紹介いただきました。どうぞ、ご覧ください♪



***
9月に入り、暑い暑い夏がようやく過ぎ去り、心地よい秋風を感じるようになってきました。9月9日は、五節句のひとつである「重陽(ちょうよう)の節句」。早いもので、今年最後の節句となります。

「五節句」とは、1月7日の「人日(じんじつ)の節句」にはじまり、3月3日の「上巳(じょうし)の節句」、5月5日の「端午(たんご)の節句」、7月7日の「七夕(たなばた)の節句」、そして1年の最後が9月9日の「重陽の節句」です。古来より、奇数は“縁起の良い陽数”、偶数は“縁起の悪い陰数”と考えられていました。その縁起の良い奇数が連続する日、特に9月9日は「9」という一番大きな陽数が重なる日として重んじられ、そこから「重陽の節句」と呼ばれるようになりました。


2

菊酒イメージ


菊の花が邪気を払い長寿に効くとされ、菊の花びらを浮かべた菊酒を飲み不老長寿を願います。そのため「菊の節句」とも呼ばれ、京都市内の各神社では様々な神事を行います上賀茂神社では毎年9月9日に菊の花を本殿に供えて重陽神事が行われ、その後、菊酒の無料接待を受けることができます。

今月は、この「菊」にちなんだお菓子をご紹介いたします。


「ゑべっさん」のお膝元に暖簾を掲げる 鍵甚良房(かぎじん よしふさ)


毎年1月8日~12日に行われる、「十日ゑびす大祭(初ゑびす)」。大勢の人々が祇園にある「恵美須神社(京都ゑびす神社)」を訪れ、商売繁盛を祈願します。そのゑびす神社のほど近く、大和大路通沿いに店を構えるのが、大正10年(1921)創業の和菓子店「鍵甚良房」です。


3

現在、30歳になるご主人が4代目を受け継ぎ、暖簾を守っています。創業以来、「見て美しい」「食べて美味しい」を心がけ、4代目は「もっと和菓子が皆さんにとって身近な存在になるように」と、日々営まれているそうです。


4

店内には、季節の移ろいを表現した上生菓子が、常時5種類ほど並べられています。


宮中の行事を受け継ぐ菓子に、長寿の願いを込めて
【菊の着綿(きくのきせわた)】


5

菊の着綿 240円(9月1日~末頃まで販売予定)


9月9日の「重陽の節句」に忘れてはならないのが、「菊の着綿」という習わしです。節句前日の8日夜に菊に綿をかぶせておき、当日、露で湿ったその綿で体を拭い長寿を祈ります。

平安時代・宇多天皇の御代、宮中で重陽の行事として菊の着綿が行われていたことが、『紫式部日記』などに書き記されています。その習わしから生まれたお菓子で、この時期になると市内の和菓子屋で見かけるようになります。

赤菊に綿を被せた様子を表現した、こなし製のお菓子。こちらのお菓子をいただき、不老長寿を願ってみてはいかがでしょうか。


清楚な美しさで秋を彩る
【糸菊(いとぎく)】


6

糸菊 240円(9月1日~末頃まで販売予定)


非常に多くの品種が存在する菊ですが、そのなかでも花びらが糸のように細く、放射状に広がった様子の「糸菊」は、とても人気が高い品種のひとつです。その花の姿をきんとんで表現したお菓子。

和菓子らしい優しい色合いとフワッとした雰囲気。口に入れたときの柔らかな食感が印象的で、まるで職人さんのお人柄が投影されているかのよう。見た目から、秋を感じることのできるお菓子です。


“ふわっモチッ”がクセになる、焼き皮製の菓子
【待宵草(まつよいぐさ)】


7

待宵草 240円 ※ご予約のうえ、お買い求めください


そして、最後に菊の花ではありませんが、どうしてもご紹介させていただきたいお菓子を!

粒あんを包んだ、焼き皮製のお菓子で、もっちりとした食感がクセになります。時季によって意匠を変え、この季節には、黄色の四弁の花をつけ夕方開き翌朝にはしぼむ「待宵草」をモチーフとしています。

***
今年最後の節句、そして秋の代表的な花「菊」。初秋の風情を、お菓子で存分に感じてみてはいかがでしょうか。


■鍵甚良房
【営業時間】8:00~18:00
【定休日】水曜日
【電話】075-561-4180
【アクセス】市バス「四条京阪前」バス停から徒歩約5分、京阪本線「祇園四条駅」から徒歩約5分  Google map
【公式facebook】https://www.facebook.com/鍵甚良房-829429737253961/
【公式Twitter】https://twitter.com/kagijin_kyoto

----------------------------------------------
文・写真:小倉夢桜 —Yume—
和菓子ライフデザイナー/ライター/フォトグラファー。京都五感処・京都Loversフォーラム代表。2012年よりホームページ『きょうの「和菓子の玉手箱」』を運営し、毎日京都の和菓子を紹介し続けている。現在は『月刊京都』(白川書院)で「月刊京都版・きょうの『和菓子の玉手箱』」を連載中。
【きょうの『和菓子の玉手箱』】http://kyoto-lovers-forum.com
------------------------------------------------


~みさごレポ~
“ゑべっさん”の門前、建仁寺の西門から徒歩すぐの場所にある、こちらのお店。和菓子屋さんらしい佇まいに敷居の高い感じもするのですが、入ってみると気さくな雰囲気。SNSでの情報発信にも熱心で、京都の和菓子に親しみやすくなるようなお店です。

今回ご紹介いただいた3つの和菓子も、夏の暑さに疲れた身体を癒やしてくれるような、優しさを感じる味わいと食感を楽しめました♪ 和菓子をいただき心も身体も和むひとときを、皆さまもお過ごしくださいね。


 

Written by. みさご

おすすめコンテンツ