妙心寺 退蔵院で、月あかりを感じる坐禅会

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当日レポート ~2018年9月22日実施~


「中秋の名月」の日を中心に、月を愛でる催しが各所で行われた9月の京都。「そうだ 京都、行こう。」オリジナルイベントでも、夜の禅寺を貸切り、月あかりのなか坐禅を体験する特別なイベントを実施しました。

訪れたのは、妙心寺にある46の塔頭のなかでも屈指の歴史を有する退蔵院。参加者を歓迎するように天候にも恵まれた当日の様子をレポートします!

⇒「そう京」イベントに参加するには、カードへのご入会が必要です。詳しくはこちら


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イベントの実施日は今年の中秋の名月の2日前となる9月22日。一般拝観終了後にイベント開始です。まずは、退蔵院副住職の松山大耕(だいこう)さんに広い境内をご案内いただきました。

退蔵院といえば、2013年春の「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンの舞台ということもあり、すでに幾度か拝観されたことがある会員様がほとんどでした。ところが、お寺を知り尽くした松山さんにかかれば、あっと驚く新しい発見があるから不思議です。たとえば・・・

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境内の南に広がる庭園「余香苑(よこうえん)」へとつづく参道の石畳に注目。実はここに埋め込まれているのは、昭和53年(1978)まで京都を走っていた市電の路面の敷石! 廃棄されるところを譲り受け、余香苑の造園の際に石畳として再利用されたそうなのです。

普段は気にとめない場所が見どころになるのも、案内付きイベントの醍醐味。「風景じゃなくて石畳だけを撮ったのは初めてかも(笑)」と会員の皆さまも熱心にカメラを向けていらっしゃいました。


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余香苑

“昭和の名庭”と称される余香苑はすでに夕ぐれの雰囲気。池のほとりから暮れなずむお庭を眺めながら、のんびりと過ごすひとときは格別のひとことです。

池はひょうたんの形をしていることから「ひょうたん池」と呼ばれ、2匹のナマズが飼われています。松山さん曰く、「ある禅問答に対する回答」だそうですが、どういうことなのでしょう? 「説明は後ほどしますね」 ・・・う~ん、気になります。


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庭園散策のあとは、お茶席「大休庵」で美味しいお抹茶とお菓子でひと休みを。月が綺麗なこの時季にぴったりな月見団子は、京都の老舗和菓子店「中村軒」にご用意いただいたもの。観光で疲れた身体も、優しい甘味に癒やされますね。


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ひと息ついたあとは、しばし松山さんのお話に耳を傾けます。面白く、ためになる話がたくさんあったのですが、ここでは、ほんの一部だけご紹介しましょう。

禅には「円相(えんそう)」と呼ばれる、一筆で丸を書いた書画があります。この円は宇宙全体や仏性、悟りを表現しており、同じく丸い満月は、たびたび悟りの象徴とされてきました。

9月に各地で行われるお月見は、ただの観光イベントではなく、大切な仏事なのだそう。この意外な禅と月の関係には、皆さまも驚かれたようです。

今回の坐禅で“すぐさま悟れる”というわけではありませんが、“月”夜の坐禅に期待が高まっていきます。


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松山さんの右隣が「瓢鮎図」

外に出ると、すっかりと日も暮れ、空には煌々と輝く月が出迎えてくれました。前日まで雨模様だっただけに、これには会員様も大興奮! 月の美しさに心奪われながらも、坐禅を行う方丈へと向かいます。

そこで待っていたのは、日本最古の水墨画と伝わる国宝「瓢鮎(ひょうねん)図」(模写)です。ひょうたんを持った男とナマズの絵が描かれ、上部にはびっしりと細かい字が書き込まれています。

これは、禅の修行のための問題「禅問答」のひとつで、「ひょうたんで大きなナマズをいかに捕まえるか」という問いに対する、高僧31人の回答が書かれているのだとか。「ひょうたん」に「ナマズ」、「回答」ときて、ピンと来た方は鋭い! そうです、余香苑で松山さんから伺った「ある禅問答に対する回答」とはこのことだったのです。なるほど、確かにひょうたん(池)にナマズが入っていますね!


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いよいよ本日のメインイベント・坐禅の開始です。かつては、剣豪・宮本武蔵も退蔵院の方丈で精神修養の修行に励んだそう。武蔵の刀の鍔(つば)にはひょうたんとナマズが彫られていたそうで、いかにこのお寺での修行の日々を大切にしていたかがわかりますね。

武蔵が座っていたかもしれない場所で、足や手の組み方、呼吸の方法と説明を聞きながら体を動かしていくと、気づけば初めてという方もまるで剣豪のようなピシッと背筋が伸びた綺麗な姿に! 皆さまの心と体も準備万全。堂内の灯りが落とされ、坐禅の始まりです。


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暗くなると雰囲気が一変。わずかな光と月あかりだけの空間は、風に揺れる葉擦れや虫の音以外は静寂そのものです。徐々に皆さまの呼吸も整い、とても穏やかな時が流れていました。

禅宗には、深夜に修行僧が各自で行う「夜坐(やざ)」という坐禅があるそう。今回と同じように野外で行うことが多く、禅の修行においても自然を感じることはとても重要だとされています。

終わりを告げる鐘の音が鳴り響き、20分ほどで終了。短時間ではありましたが、静かな夜のお寺で、自然を感じながらの坐禅は、都会に暮らす方ほど得がたい体験になったのではないでしょうか。


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夜の余香苑

坐禅を終えたあとも、会員様だけに開放された境内で、秋夜のひとときを過ごしていただくことに。「禅寺の荘厳さを感じられました」「少人数での拝観はやっぱり贅沢!」という言葉のとおり、今や貴重となった「静かで厳かな京都」が堪能できるイベントとなりました。

「そう京」イベントでは、坐禅はもちろんお寺でのお勤め体験や、少人数でお寺を拝観できる貸切り企画を実施しています。興味を持っていただけた方は、ぜひこちらをご覧ください

穏やかな心と素敵な思い出をおみやげに、名残惜しくもイベントは終了です。松山さん、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!

Written by. きのこ

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