京都のお寺探訪 7
親鸞聖人によって開かれた浄土真宗本願寺派の本山、西本願寺。国宝や重要文化財の建造物が多く、世界遺産にも登録されているお寺です。京都では親しみを込めて「お西さん」と呼ばれています。
どなたでもお参りできますが、観光を前面に出していないこともあり、他の世界遺産に比べると訪れたことがあるという方は少ないかもしれません。
じつは、現在、西本願寺ではお坊さん自ら境内を案内する「お西さんを知ろう!」が開催されています。しかも、なんと“参加無料”・“事前予約の必要なし”という気軽さ。さらに驚くべきことに、1日4回も開催されているのです!
まさに初めてのお参りにぴったりの企画。いったい、どんな風に行われているのか、気になる内容をご紹介します♪
※掲載内容は2019年4月時点の情報です。最新情報は公式ホームページでご確認ください。
受付は総合案内所(お茶所)へ♪
開催は、10:00~、11:30~、13:45~、15:30~の計4回。開始時間までに堀川通に面する御影堂門(ごえいどうもん)を入ってすぐ右側にある「総合案内所(お茶所)」内の受付で、「お西さんを知ろう!」への参加希望をお伝えください。
「お西さんを知ろう!」の旗が目印です♪
この日のご案内はお坊さんの牧野さんが務めてくださいました。「お西さんを知ろう!」は今年(2019年)で5年になるのですが、牧野さんは立ち上げ当初から携わっているベテラン組。約30名ものお坊さんが交替で対応しているそうです。
「20代から60代までさまざまな世代のお坊さんが対応します。案内も個性が出ますので、おもしろいですよ」と牧野さん。30人いれば、30通りのご案内。参加するたびに新しい発見がありそうです。
~阿弥陀堂~
まず、ご案内いただいたのが御影堂門から見て右手側にある国宝の阿弥陀堂です。2022年3月(予定)まで修復工事中のため、ご本尊の阿弥陀様はお隣にある御影堂に移されています。
「皆さん、国宝の建物と聞くと、“ほ~”“へぇ~”と言って建物全体や遠くを見る方がほとんどです。しかし、ここでの注目ポイントは廊下。下をよ~く見てください」
言われるがまま、じっと目を凝らしてみると・・・
なにやら、廊下にかわいいワンポイントを発見!
「廊下修復の折に、隙間をなくす“埋め木”という手法です。ただ隙間を埋めるだけではなく、さまざまなモチーフが施されているのは、昔の大工さんの遊び心。初夢でおなじみの富士山、鷹、なすびも近くにありますよ」
探し始めると案外夢中になるもので「あ、ここにあった! ここにも!」新しいモチーフを見つけるたびに、喜びの声が広がります。
牧野さんのイチ押しは、欄干部分にあるモミジの埋め木。「木目を水面に見立てて、流れるモミジを表現しています。粋でしょう」
他にも、隠れて分かりづらいものや一番新しく作られた埋め木など、楽しいご案内は続きます。
「こういう風に、時には足元を見て立ち止まらなければなりません。自分がどこに立って、どんなご縁で結ばれているのか、己を知ることは人生において大切です」
お坊さんならではのお話にも心を打たれます。
~御影堂~
ご案内いただいた日は、あいにくの雨模様。阿弥陀堂とお隣の御影堂は廊下で繋がっていますので、雨に濡れることなくお堂を行き来できます。
「雨ならではの見どころは、御影堂前にある屋根の水を受ける天水受けでしょうか。四隅をご覧いただくと、邪鬼が支えています」
屋根を支えたり、仏像に踏まれていたり、お寺ではどこかに邪鬼がいることが多いそうです。でも、天水受けを支えているのは珍しいような・・・ しかも、よ~く見ると肩に縁が乗って、とても重そうですね。
天水受けは寛永13年(1636)の御影堂再建時にあわせて作られたそうで、じつに350年以上にわたって支え続けていることになります。必死に耐える姿を見ていると「悪いことはできないな」としみじみ。もしや、これも仏さまの導きのひとつかもしれません。
四隅の邪鬼はそれぞれ表情が異なるそうですので、晴れた日には間近でじっくりと観察してみてください。
御影堂内部に入ると、その荘厳さに驚きます。きらびやかな装飾、美しい欄間、見上げれば格天井。時を忘れて見入ってしまいそうですが、ここはお参りする場所です。
「他の宗派ではお坊さんがお経をあげる内陣が広く、参拝者がお参りする外陣は狭いという造りになっています。しかし、西本願寺ではお念仏を唱えたり、仏さまの教えを聞いたりする参拝者が第一という考えのもと、外陣が広くなっているのが特徴です」と牧野さん。
その広さ外陣だけで441畳(内陣は270畳)というビッグスケール! 写真ではなかなか伝わりにくいと思いますので、ぜひご自身で体感していただきたいところです。
太鼓楼
「お西さんを知ろう!」は1回約30分。見どころが多すぎて「30分では足りない!」と思うほど、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
今回は阿弥陀堂と御影堂を中心としたご案内でしたが、お天気が良ければ境内にある重要文化財の建築物を見学したり、参加者に歴史好きの方がいれば新選組にゆかりのある太鼓楼を訪れたりと、内容はさまざま。
時間は短くても充実の内容で、一度参加したら「また来たい!」と思ってしまうはずです。
※カードのデザインはイメージです。変更の場合があります。
ツアー終了後、参加者には西本願寺の名所がプリントされた、その名も「024(オニシ)Card」が1枚プレゼントされます。「お西(024)さん」にちなんで24種類あるのですが、全部集めると記念品がいただけるそうです。
これを聞くと、ますます何度も参加したくなりますね♪
「お西さんを知ろう!」はお寺の見どころが分かるだけでなく、仏さまの教えにも触れることができるのがポイントです。なかには、ツアー終了後にお坊さんに悩み相談をする方もいらっしゃるとか。皆さんもお坊さんと過ごすうちに、新しい“気付き”が得られるかもしれません。
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いかがでしたでしょうか。観光にも門が開かれたお西さんへ、どうぞ気軽にお参りしてくださいね♪
■西本願寺
【拝観時間】5:30~17:00(伝灯奉告法要期間は17:30)
【拝観料】境内無料
【電話】075-371-5181
【アクセス】市バス「西本願寺前」下車すぐ
【公式ホームページ】http://www.hongwanji.or.jp/
※掲載内容は2019年4月時点の情報です。最新情報は公式ホームページでご確認ください。