京都の神社探訪 5
来たる2019年5月1日(水・祝)、新元号「令和」の世がはじまります。このめでたき日に、皇室にゆかり深い神社で長年中断していた“行事”が復活するという嬉しいニュースが飛び込んできました! その神社は、上京区にある御靈(ごりょう)神社[上御霊神社]と、中京区にある下御霊神社。復活する行事とは? そして皇室との関わりが深い両社についてご紹介します!
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☆2019年4月16日(火)に、共同記者発表が行われました!
☆“上御霊さん”と“下御霊さん”の歴史・由緒は?
☆皇室とのつながりを伝える、両社のお神輿
☆2019年5月1日(水・祝)、神幸祭への両宮司の想い
☆「今出川口神輿四百歳」! 2019年5月18日(土)は上御霊神社の還幸祭に注目!♪
共同記者発表にて「即位日の神幸祭復活」が宣言されました。
左:出雲路宮司(下御霊神社)、右:小栗栖宮司(上御霊神社)
2019年4月16日(火)、上御霊神社にて報道関係者向けの記者発表が行われました。内容は、「神幸祭復活」について。“令和に改元される2019年5月1日、上御霊神社が京都御苑への神幸祭神輿渡御・京都御所前での神輿奉安を54年ぶりに復活する”というものでした。
その会見場所には、上御霊神社の小栗栖(おぐるす)宮司とともに、下御霊神社の出雲路(いずもじ)宮司も同席。なんと、下御霊神社も5月1日、約70年ぶりとなる神幸祭の巡行、さらに約150年ぶりとなる京都御苑への神輿巡行・仙洞御所前での神輿奉安を復活されるというのです!
新天皇が即位される日に、かつて天皇や上皇が住まいした地・京都御苑へ神輿を巡行し、京都御所や仙洞御所(譲位された天皇の御所)の前で神輿を奉安する。「いったいどんな関係が?」「どうしてそんなことができるの?」という疑問が湧くかと思います。・・・実は両社は「京都御所の産土神(土地の守護神)」なのです!
京都御所の産土神、“上御霊さん”と“下御霊さん”
左:上御霊神社 本殿、右:下御霊神社 本殿
上御霊神社と下御霊神社は、ともに「御霊八所神」(平安時代から疫病や天災をもたらすとして恐れられている8柱の神様)をお祀りされる神社ですが、祀られる神様は少し異なります(※)。また、創建年代や由緒なども別にされています。
※崇道天皇・吉備聖霊・藤原大夫人・橘大夫・文大夫・火雷(天)神の6所の神様は共通されるのですが、あと2所の神様として上御霊神社は井上内親王と他戸親王を、下御霊神社は伊豫親王と藤大夫を祀られます。
応仁の乱勃発の地、上御霊さん
上御霊神社の四脚門(南門)。伏見城の遺構と伝わります
上御霊神社は、平安京遷都の際に桓武天皇の勅願によって創建された神社。京都御苑の北側、烏丸鞍馬口近くに位置し、通称“上御霊さん”と親しまれています。畠山政長が御霊の森に陣を敷き応仁の乱の発端となったことから応仁の乱勃発の地としても有名です。
\「そう京」イベントで応仁の乱について学びました/
⇒【イベントレポート】応仁の乱の戦場跡を歩く(2017年5月20日実施)
毎年5月1日から18日に行われる祭礼「御霊祭」は、“京都最古のお祭り”とされ、貞観5年(863)悪疫退散の御霊会が神泉苑で催されたことに由来。祇園祭よりも歴史あるという、由緒正しいお祭りです。
名水の湧く、下御霊さん
寺町通に面する下御霊神社
下御霊神社は京都御苑の南側、寺町丸太町の近くに位置し、通称“下御霊さん”と呼ばれています。創祀の年代は不明ですが、上記「神泉苑御霊会」を起源とし、その頃に御所の鎮守として創建されたといわれています。手洗舎に湧く地下水「御霊水」は、かつて干ばつの際に人々を助けた「感応水」と水脈を同じくする清浄な名水です。同じく、毎年5月に祭礼を行われていて、1日に神幸祭(おいで)を、5月3週目もしくは4週目の日曜日に還幸祭(おかえり)が行われます。
両社と天皇家とのつながりを伝えるもののひとつが、「お神輿」。お神輿の歴史を知ると、両社と皇室との深いつながりが見えてきます。
400歳を迎える、天皇御下賜のお神輿! [上御霊神社]
左から「北之御座(今出川口)」「中之御座(末廣)」「南之御座(小山郷)」
上御霊神社の御霊祭には、「北之御座(今出川口)」「中之御座(末廣)」「南之御座(小山郷)」の3基の神輿が登場します。そのうち「南之御座」は文禄5年(1595)後陽成天皇から下賜されたもの。「北之御座」は元和5年(1619)に後水尾天皇から下賜されました。
2019年神幸祭・還幸祭の道筋
その縁もあり、かつては神幸祭・還幸祭ともに京都御所へと巡行していたというお神輿。今出川通に面する「今出川御門」から現在の京都御苑内に渡御し、京都御所の北門である「朔平(さくへい)御門」でお神輿を奉安。歴代天皇もお神輿の差し上げを楽しみに御拝され、明治天皇も子どもの頃にご覧になられたと伝わっているそうです!
牛車も後陽成天皇からの寄進という貴重なもの!
ところが、明治維新により天皇は東京へ・・・ それにともない、御所への神輿渡御も行われなくなり、昭和41年(1966)には神幸祭の神輿巡行が中止に。お祭りの規模も縮小されました・・・ しかし、氏子さんたちの強い想いにより、今から10年前の平成21年(2009)に還幸祭での御苑内神輿渡御が復活! そして今年、北之御座が後水尾天皇から下賜されて400年という記念の年に、ついに神幸祭の神輿渡御が復活、朔平御門前で3基による差し上げも行われることが決定したのです!
・・・ここまでの道のりは大変なものだったと、小栗栖宮司や各神輿会の皆さまは振り返ります。
小栗栖宮司 「神幸祭の復活は、昨年のお祭りが終わった頃から考えていたことです。お神輿が御下賜400年やから、記念になることをしたいと。そうしたら、御代替わりが決まり、神幸祭の5月1日がその日になるという。・・・これは実現が難しいのではないかと思いました。でも、思っていたよりも周囲からの理解がえられ、ようやく今年(2019年)2月末頃になって、これは実現できるのではないか、という話になりました。とはいえ、まだ半月ありますので、手放しでは喜んでいられないんです。当日の状況がまったくわからないですから」
全国でも最重量クラスのお神輿が約70年ぶりに巡行! [下御霊神社]
現在巡行する「若宮神輿」
下御霊神社のお神輿には現在お祭りの際に巡行している「若宮神輿」と、もうひとつ「大宮神輿」があります。大宮神輿は全国でも最大級の重量を誇る立派なお神輿で、後水尾天皇の皇子である霊元上皇と、その皇子・東山天皇により下賜されました。特に霊元上皇は下御霊神社への尊崇が篤かったそうで、崩御後には上皇たっての願いにより、同社に祀られたというので、いかにつながりが深いのかがわかります。
こちらは神坂雪佳が総合プロデュースをつとめた大正12年(1923)造営の御鳳輦
そのため、霊元上皇が住まいした仙洞御所との関わりも深く、かつてはお祭りの際に仙洞御所及び大宮御所までお神輿が巡行、門前にて“神輿の奉安”と“神主奉幣(かんぬしほうべい)の儀”が行われることが恒例でした。
左が大宮神輿。右の若宮神輿に比べると大きさが分かります!
・・・が、こちらも明治維新により仙洞御所への神輿渡御が中断。戦前には神幸祭の巡行が、昭和25年(1950)には大宮神輿の巡行も中断されることになり、現在では5月1日に神事を行い、3週目か4週目の日曜日に還幸祭を実施するのみとなりました(とはいえ還幸祭当日や宵宮は屋台で賑わいます)。それがこのたび、約150年ぶりの御所への神輿渡御、約70年ぶりの神幸祭復活と相成るのです。
出雲路宮司 「霊元上皇にゆかり深い当社の祭礼が、約200年ぶりに上皇様が御存在されるこの年、御代が替わるこの日に神幸祭の巡行ができるというのは、大変意義深く感じられます」
京の地から、御所の産土神として、御代替わりを祝う
小栗栖宮司 「5月1日にお祭りをする神社は、日本全国にたくさんあると思います。でも、“御所の産土神”という歴史を持つ神社は、上御霊神社と下御霊神社しかない。偶然ではありますが、その立場にあるものとして、我々にしかできないことだけに、やらないではすまされません。大変ではありますが、実現できるよう力を尽くします」
出雲路宮司 「通常であっても5月1日と聞いただけで“神幸祭の日”と反応してしまうのですが(笑)、まさか御即位の日になるとは。その日にお神輿を巡行するお祭りを奉仕してきた社として、やらないのは無責任というか、使命感があります。“やりなさい”と神様から言われているような・・・ 元号が変わるときに、こういう歴史を持った神社があることを知っていただけたらと思います」
かつて天皇が住まいした京の地で、即位のその日に神社と氏子が一体となり、かつての祭礼を復活させる。そして、来年からの実施はまだ白紙ということ。もしかしたら、もう見られない一日限りのことになるかもしれません。この歴史的な場面を、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか♪
5月18日の還幸祭では、今出川口神輿400年を盛大に祝います!
今出川口神輿が400歳を迎えます
今回の「即位日の神幸祭復活」は偶然であり、本来は「北之御座(今出川口)神輿の御下賜400年を祝うために企画されていた」ということは前述しました。そうです、本来のメインイベントとなるのは、5月18日の還幸祭なのです。
記念すべき年、御霊祭の北之御座神輿を奉仕する「今出川口京極神輿会」では、通常であれば1基で行う河原町今出川交差点での「神輿差し上げ・差し回し」を、他の2基と合同で、3基が集結して神輿振りを披露することになりました!
3基揃っての「神輿差し上げ・差し回し」は、例年、還幸祭の御所の朔平御門前でのみしか見られないもの。それが、河原町今出川の交差点で、3基揃っての神輿振りが見られる・・・ この18日限りの、大変貴重なシーンとなりそうです!
今出川口京極神輿会 「3基の神輿が合わさると、総勢500名もの担ぎ手になります。それだけの数の人が集結するには広い場所でないとできません。そのために交通を規制し、この日限りの差し上げを行いますので、ぜひ勇壮な神輿振りをご覧になっていただきたいですね」
南之御座小山神輿会 「南之御座のお神輿は、“京神輿”といって長柄の先に“鳴りかん”という金具がつきます。差し上げの際には、この金具をきれいに鳴らすため、担ぎ手たちは神輿を跳ねるようにして音を出します。清浄な音が災厄や不浄を払いますので、ぜひご注目ください」
中之御座末廣神輿会 「中之御座のお神輿は、掛け声に特徴があります。京都のお神輿は“ホイット、ホイット”という掛け声が多いのですが、末廣は“エラィヤッチャ、エラィヤッチャ”。テンポが速く、演歌とロックくらいの違いがありますよ。そして、御霊祭のラスト、拝殿に神輿を上げる際は、綱を巻いて上げるのですが、ここでお神輿が“暴れ”ます。この“暴れ”も見どころですよ」
聞いているだけでもお神輿の熱気が伝わってきて、ワクワクしてきますね! 5月1日は上御霊神社、下御霊神社の神幸祭復活に、そして5月18日は上御霊神社の北之御座神輿御下賜400年に、ぜひご注目ください!
★さらに詳しく“御霊祭”を学びたい方は、「そう京」イベントにご参加を!
\キャンセル待ちで受付中/
⇒御靈神社 御霊祭の魅力徹底レクチャー(2019年5月11日実施)
【参拝時間】9:00~17:00
【参拝料】境内無料
【電話】075-441-2260
【アクセス】地下鉄烏丸線「鞍馬口駅」から徒歩約3分 Google map
【公式ホームページ】http://www.kyoto-jinjacho.or.jp/shrine/02/004/
【公式インスタグラム】https://www.instagram.com/goryojinja/
★御霊祭
【日程】
神幸祭:令和元年(2019)5月1日(水・祝) 11:30~16:00頃
※神輿渡御は13:00頃~(予定)
還幸祭:令和元年(2019)5月18日(土) 11:30~19:30頃
※神輿渡御は13:00頃~(予定)
【参拝時間】6:00~20:00、授与所9:00~17:00
【参拝料】境内無料
【電話】075-231-3530
【アクセス】地下鉄烏丸線「丸太町駅」から徒歩約7分 Google map
【公式ホームページ】http://shimogoryo.main.jp/
【公式ツイッター】http://twitter.com/shimogoryo863
★神幸祭・還幸祭
【日程】
神幸祭:令和元年(2019)5月1日(水・祝) 14:00~16:30頃
還幸祭:令和元年(2019)5月19日(日) 10:00~18:00頃