月を愛で、風流に遊ぶ 9月の和菓子 4選

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京の和菓子の玉手箱 24


9月を迎え、ようやく京都も朝晩が過ごしやすくなってきました。今年(2019年)は湿度の高い日が長く続き、夏の疲れが溜まりましたよね・・・ 今回ご紹介する9月の和菓子は、疲れた心を癒やすような、心落ち着くお菓子たち。じ~っと眺めていると、お菓子の意味がわかってきて、“見立て”の面白みが体感できますよ♪ ナビゲーターは、“和菓子ライフデザイナー”の小倉夢桜(ゆめ)さんです!

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暑かった8月が終わり、いよいよ9月。暑い夏を乗り切り、どことなく安堵感に包まれます。

勝念寺 萩と彼岸花


9月の京都市内では、中秋の名月にちなんだ「観月祭」をはじめ、上賀茂神社車折神社などの神社で行われる「重陽(ちょうよう)の節句」の神事、梨木神社の「萩まつり」などが行われます。夏の間は暑くて外に出るのを控えていた方も、ようやく京都散策を楽しむことができるのではないでしょうか。・・・とは言っても油断は禁物。まだまだ暑い日がありますので、熱中症に気をつけながら京都を満喫してくださいね。


着せ綿【本家玉壽軒】


着せ綿 388円(9月上旬販売予定)


9月9日は、今年最後の節句「重陽の節句」です。古来より、奇数は縁起の良い陽数、偶数は縁起の悪い陰数と考えられてきました。なかでも特に重んじられていたのが、「9」という一番大きな陽数が重なる「9月9日」。そのことから「重陽の節句」と呼ばれるようになりました。

旧暦では菊の花が咲く頃であることから「菊の節句」とも呼ばれています。菊の花が邪気を払い長寿に効くとされ、菊の花びらを浮かべた菊酒を飲み、不老長寿を願います。

また、8日の夜に菊に綿をかぶせておき、9日の早朝に朝露で湿った綿で体を拭い長寿を祈る「菊の着綿(きくのきせわた)」という習わしがあります。その「菊の着綿」を表現した、9月を代表する意匠のお菓子です。

■本家玉壽軒
【営業時間】8:30~17:00
【定休日】水曜日・日曜日
【電話】075-441-0319
【アクセス】市バス「今出川大宮」バス停から徒歩すぐ Google map


水面の月【千本玉壽軒】


水面の月 432円(9月上旬~中旬販売予定)


2019年の「中秋の名月」は、9月13日(金)です。この日の前後に京都市内の社寺では、「観月祭」が執り行われます。

中秋の名月として親しまれている「十五夜」、そして「十三夜」の頃が一年のなかで最も夜空が澄みわたり、月が美しく見えると言われています。私のお気に入りのお月見スポットは、嵯峨野にある「広沢池」。月明かりに照らされた芒と静けさの中で鳴り響く虫の音が、秋の夜を素敵に演出してくれます。

平安時代の貴族たちのお月見は、夜空を見上げて月を見ることはせずに水面に映して、揺れる月を愛でながら歌を詠み、宴を催したそう。こちらは、“水面に映る十五夜”を表現した外郎製のお菓子。愛でているだけでお月見をした気分になれる、風流なお菓子です。

■千本玉壽軒
【営業時間】8:00~18:00
【定休日】水曜日
【電話】075-461-0796
【アクセス】市バス「千本今出川」バス停から徒歩約1分 Google map
【公式ホームページ】http://sentama.co.jp/


日栄軒【こぼれ萩】


こぼれ萩 320円(9月上旬~下旬販売予定)


9月半ばを過ぎると、萩がこぼれんばかりに花を咲かせます。「萩の寺」として親しまれている、京阪鴨東線「出町柳駅」近くの常林寺。“かましきさん”として親しまれている、伏見区の勝念寺。“萩の宮”として名高い、京都御苑東隣の梨木神社など、様々なスポットで見ることができます。

\“萩の花”撮影法はこちらのブログもチェック/
【古都こよみ】常林寺 小さな境内に初秋がぎっしり
【古都こよみ】勝念寺 街角にあらわれる萩の苑


その中でも、毎年盛大に行われているのが、梨木神社の「初秋の調べ 萩まつり」。今年は9月21日(土)から23日(月・祝)の3日間にわたり行われます。萩の花が一面に咲く頃、舞殿で奉納される狂言や日本舞踊などの伝統芸能を鑑賞して過ごすことができます。

萩は9月を代表する和菓子の意匠でもあります。萩の葉を模った外郎に、いら粉(蒸した餅米を乾燥させ細かく砕き煎った粉)を花に見立ててあしらった、日栄軒の「こぼれ萩」。楚々としたピンク色が可愛らしいお菓子です。

■日栄軒
【営業時間】9:00~19:00
【定休日】日曜日
【電話】075-491-2204
【アクセス】地下鉄烏丸線「北大路駅」から徒歩約7分 Google map


虫の声【船屋秋月】


虫の声 302円(9月上旬~下旬販売予定)


本格的な秋の訪れを喜んでいるかのように、月夜の下で美しい音色を聴かせてくれる虫たち。これからの時季は、京都での「秋の夜長」を存分に満喫できることと思います。

今年も高台寺では、毎年恒例の「秋の夜の観月茶会」が9月6日(金)から22日(日)までの金・土・日曜日に行われています(要予約)。秋の月、虫の音、秋草を楽しめる茶会は、秋の夜長にはうってつけ。限られた人数で過ごす夜は、日中の賑やかさとは別世界のように幻想的です。

こちらは、月に見立てた外郎に秋の草。そして、秋の虫を小豆で表現したお菓子。愛でているだけで澄んだ虫の音が聞えてきそうな、素敵な意匠です。

■京菓子処 船屋秋月 福王子店(本店)
【営業時間】9:00~18:00
【定休日】無休
【電話】075-463-2624
【アクセス】市バス「福王子」バス停から徒歩約1分 Google map
【公式ホームページ】http://www.funaya.jp/

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今回は、秋の風情を感じられる京都の和菓子を4つ、ご紹介いたしました。皆さんも京都に来られた際には和菓子屋に立ち寄り、和菓子から京都の秋を感じてみてくださいね。

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文・写真:小倉夢桜 —Yume—
和菓子ライフデザイナー/ライター/フォトグラファー。京都五感処・京都Loversフォーラム代表。2012年よりホームページ『きょうの「和菓子の玉手箱」』を運営し、毎日京都の和菓子を紹介し続けている。現在は『月刊京都』(白川書院)で「月刊京都版・きょうの『和菓子の玉手箱』」を連載中。
【きょうの『和菓子の玉手箱』】http://kyoto-lovers-forum.com
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Written by. みさご

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