2014年のオープン以来、女性を中心に年齢問わず大人気のお店「AWOMB(アウーム)」。見目麗しい手巻き寿司、その名も「手織り寿し」が雑誌やSNSなどメディアで話題となり、今では予約が取りにくいお店となっています。「いったいどんなお店なのだろう・・・ 人気のヒミツを知りたい!」と思い、お店を訪ねました。
「手織り寿し」はじまりの地
AWOMB 烏丸本店
今では京都市内に4店舗あるAWOMBの「烏丸本店」。築80年を超える町家をリノベーションし、2014年にオープンしました。開店前に訪ねると、すでにお店の前には「本日はご予約で満席です」という看板が・・・ その人気ぶりが伺えますね。
AWOMBのメインメニューは「手織り寿し」(3,260円)のみ。ドリンクやデザートも注文できますが、基本は1種類のメニューだけです。
色とりどりの「手織り寿し」の世界!
「手織り寿し」と、石野味噌の白味噌を使用した椀物「胡麻豆腐飛鳥仕立て」。※具材や椀物は時季により異なります。
そのメニューがこちら。なんてカラフル! 運ばれてきた瞬間、「わぁ~♡」と思わず歓声をあげてしまいますね♪ 持ち上げると崩れてしまうのでは・・・ と思うほど繊細な世界。見た目にも麗しく、“写真映え”もするため、女性を中心に大人気となっているのも納得です!
プレートに盛り付けられているのは、お造りや野菜、お総菜など。約50種類の素材が使用され、薬味だけで14種類も! 海苔にごはんと具材を乗せ、巻いていただいたり、そのまま具材だけをいただいたり・・・ 食べ方も自由自在です♪ 「種類は季節によって変わりますが、どの季節でも色合いや盛り付け方に気をつけています」と代表の宇治田博さんは話します。どうしてこんなにたくさんの種類を用意しようと考えられたのでしょうか?
宇治田さん 「最初は、ひとつひとつの素材がもう少し大きく、種類も少なかったんです。でも、海苔で巻くときに巻きづらくて・・・ 小さくしていったら、具の数が多くなりました(笑)」
注意! 海苔を斜めに置いた方が巻き寿司らしくなります。
色とりどりの具材がワンプレートに並び、おしゃれでカラフルなお寿司は、女性からの支持が圧倒的です。
宇治田さん 「女性を意識して作られたのでは? と、よく聞かれますが、違うんですよ(笑) 偶然の産物で・・・ ちなみに、プレートの具材の配置は、京都の“碁盤の目”をイメージしています」
大きなガス釜で炊かれるお米。良い匂いです・・・
素材は京都産のものをできる限り使用されていて、全て無添加。お米は丹波産、お酢は京都の老舗・村山造酢の「千鳥酢 銀印」を使用。
宇治田さん 「実は実家が寿司屋でして。大好きな“実家のシャリの味”を伝えたくて、同じ作り方をしています。“金印”は味がまろやかになりすぎるため、“銀印”のちょっと尖った味わいが寿司のシャリにちょうどいいんです」
新しいスタイルに挑戦しながらも、昔ながらの伝統の味を守られている姿に、新旧が溶け合う“京都らしい”一面を感じます。
AWOMBの生い立ち。
「元々は、お寿司が食べられる“カフェ”でした」
AWOMB 代表 宇治田博さん
実は、宇治田さんのご実家は、四条河原町にある名店「ひさご寿し」。現在は、宇治田さんのお兄さんがお店を継がれているそう。宇治田さんは、京都のさまざまな和食のお店で修行を積まれ、29歳のときに独立。北白川にて、握り寿司や巻き寿司がいただけるカフェ「AWOMB」をオープン。そして10年後、現在の場所に「AWOMB 烏丸本店」として移転されました。
宇治田さん 「この場所に移った当初も“お寿司が食べられるカフェ”という営業形態でした。営業しているうちに、“お寿司”の注文がとても多くなり、カフェの営業は辞め、現在のスタイルへと舵を切りました」
「寿司カフェ」から「お寿司屋さん」へ・・・ では看板メニューの「手織り寿し」は、どのようにして生まれたのでしょうか。
“ありそうでないもの”を。
思いついたメニューが「手織り寿し」
お店の入口。白い壁と木を基調とされています。
お店があるのは、今も呉服問屋が軒を連ねる「室町」エリア。店舗の改装も自ら手がけた宇治田さん。改築中に、どんなお店にしようか考えていたそうで・・・
宇治田さん 「“ありそうでないもの”にチャレンジしたかったんです。そこで思いついたのが“手巻き寿司”。家庭ではすることがあっても、お店で提供しているところはなかなかないんじゃないか・・・? と、壁の白いペンキを塗りながらひらめきました(笑)」
調理スタッフの方々が共有できるよう、見本写真があります。
“手巻き寿司”は、様々な具を組み合わせて食べる自由度の高いもの。AWOMBオリジナルの手巻き寿司メニューは「手織り寿し」と名付けられました。
宇治田さん 「室町という地域性とかけて“織る”という言葉に注目しました。お客様の“手”で一枚の海苔に具を“織り”込んでいただく。そこから“手織り寿し”という名前が生まれたんです」
“今までありそうでなかったものを見つける”という目の付けどころが素敵で、そう問いかけると「いえいえ、隙間を見つけただけですよ」とはにかむ宇治田さん。人気のヒミツは宇治田さんの「着眼点」にもありそうです。
“創作”と“工夫”を味わう楽しみ
メニューを眺めるだけでも楽しくなってきます♪
「手織り寿し」は何種類かの具材がひとまとまりずつ配置されていますが、「特にその組み合わせで巻いて・・・ ということはありません。自由に食べるのが手巻き寿司の醍醐味です」とのこと。具・薬味ともにたくさんあるので組み合わせも無限大。食感もいろいろで、食べるたびに新しい発見があります。中にはミカンやリンゴ、ブドウなどのフルーツも・・・!
宇治田さん 「料理においては、素材も味も“間違いない”仕事をしているという自信があるので、そこにプラスで“遊び”をいれていきたいんです。フルーツは、シャリの甘みとの違いが感じられて、意外に合うんですよ♪」
まさに、こだわりがたくさん詰まったワンプレート。お客様自身の“一手間”を加えることで、さらに美味しく感じられるはずです。椀物・デザートも含め、毎月メニューが変化し、宇治田さんとスタッフの方々で一緒に考案されているそう。これは・・・ また新しい食の発見ができると思うと、何度も通いたくなりますね♪
日本酒の銘柄も各店舗により異なるそうです。お食事とのマリアージュを楽しんで♪
AWOMBは現在、4軒のお店を展開中。
それぞれ特色があり、どのお店も魅力的♪
烏丸本店のお隣にある「AWOMB こころみ」
AWOMBでは烏丸本店の他に3軒のお店を展開されています。2016年にオープンした「AWOMB 西木屋町」(Google map)は、「手織り寿し」と天ぷら、黒豆と全粒粉を使用した自家製そばがいただけるお店。2017年に新たな展開としてオープンした「AWOMB 祇園八坂」(Google map)では、“巻き寿司”ではなく“ちらし寿司”をテーマとした「手和え寿し」を考案されました。
そして、1年前の2018年12月にオープンしたのが、烏丸本店の隣にある「AWOMB こころみ」(Google map)です。
宇治田さん 「今までとは少し趣向を変えて、ここでは“喫茶”をやりたいなと」
手織り果子
その言葉のとおり“こころみ”では、スイーツとお茶や珈琲が楽しめます。スイーツは、「手織り果子」という名前で、「手織り寿し」と同じようにカラフルで、かわいらしいワンプレート。「お菓子の“菓”は元々、果物の“果”からきているんです。それでちょっと古風というかノスタルジックな感じをイメージし、寒天や木の実、ナッツなど、どこか懐かしい素材を選んでいます」とのこと。確かに店内もノスタルジックな雰囲気ですね。
衣服や雑貨、器などの販売も。
「こころみ」の店内奥にはショップ「AWOMB studio」もあり、衣服や雑貨を販売されています。こちらも、もちろんAWOMBのオリジナルブランド。「もともと服を手がけるのが好きで」と宇治田さん。ちなみにスタッフの方々の制服も、宇治田さんのデザイン。ぜひ注目してみてください♪
2階には、ワークショップや打合せが行えるような広々としたお部屋が。机や扉など、すべて町家を改装した際に出た端材を再利用されているそう。
「AWOMB」のコンセプトとは?
そして部屋を見渡し、見つけたのがこちら。どうやら店名のAWOMBに由来するようです。そもそも「AWOMB」とは・・・?
宇治田さん 「“WOMB”は英語で“子宮”という意味なんです。それに限定詞の“A”を付けた造語でAWOMB。お腹の中の暖かさというか安心感のようなものを“衣・食・住”で提案できればいいなというのがコンセプトなんです。このたまごは、いわばお腹の中の子どもでもあり、AWOMBならではの魔除けとして飾っています。・・・たまごはレプリカですよ(笑)」
安心感を提案する。「・・・それができているかは、まだわかりませんけどね」と微笑む宇治田さん。その温かいお人柄こそ人気のヒミツかもしれません。“まだまだアイディアがある”とのこと、これからのAWOMBの展開も要チェックですね♪
■AWOMB 烏丸本店
【営業時間】12:00~15:00(ラストオーダー14:00)、18:00~21:00(ラストオーダー20:00)
【定休日】無休
【電話】050-3134-3003
【アクセス】地下鉄烏丸線「四条駅」から徒歩約7分 Google map
【公式ホームページ】http://www.awomb.com/