(撮影=来田猛)
京都市民や京都を訪れる人々に内外のアートを紹介してきた、「京都市美術館」。平安神宮や京都市動物園、京都国立近代美術館とともに、文化・学術ゾーン「岡崎エリア」を代表するスポットのひとつとして親しまれてきましたが、平成29年(2017)からリニューアル工事のため休館となっていました。
この春、ついに工事が終了。「京都市京セラ美術館」として、リニューアルオープンすることになりました! 人々に愛されてきたレトロな姿はそのままに、現代的で機能的なアート空間に生まれ変わったとのこと。・・・では、“どこがどのように”変わったのでしょうか。気になる記念展覧会の内容とともに、京都市京セラ美術館の“ココがスゴイ!”6つのポイントをご紹介します♪
※京都市京セラ美術館は3月21日(土)に開館予定でしたが、新型コロナウイルス感染予防・拡散防止のため、5月26日(火)に延期となりました(5月20日現在の情報です)。詳細は、公式ホームページをご確認ください。
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岡崎疏水(撮影日:2019年4月9日)
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「京都市美術館」とは?
リニューアル前の京都市美術館(2014年撮影)
平安神宮大鳥居とともに、岡崎公園のシンボリックな存在となっていた、「京都市美術館」。鉄筋コンクリートの近代建築に和風の屋根をのせた特徴的な外観は、昭和初期に流行した和洋折衷の建築スタイル。“現存する公立美術館としては最も古い”貴重な建物です。
開館したのは、昭和8年(1933)。昭和天皇即位の礼を記念した「大礼記念京都美術館」としてスタートし、上野の「東京府美術館(現・東京都美術館)」に次ぐ、日本の公立美術館の魁となりました。戦後、「京都市美術館」と名称を変更。京都画壇など京都ゆかりの作品コレクションを誇り、美術系大学の多い京都ならではの地元密着型展覧会も頻繁に開催。なにより、「ツタンカーメン展」や「ルーブル展」など世界のアート・カルチャーを広く紹介する場として親しまれてきました。
展示風景(2014年撮影)
しかし、展示スペースの狭さや老朽化といった問題もあり、開館80周年を機に再整備が構想されます。平成29年(2017)10月には「京セラ株式会社」がネーミングライツパートナー企業となり、リニューアル後の通称が「京都市京セラ美術館」に決定。平成30年(2018)1月に工事がスタートしました。
2年に及ぶ工事を経て、令和2年(2020)4月4日(土)、リニューアルオープンを迎えます(予定)! ここからは、特に注目いただきたい6つのポイントを紹介します♪
“ココがスゴイ!”
1・改修のコンセプト、“像を重ねていく美術館”
改修を手がけたのは、建築家の青木淳さんと、西澤徹夫さん(青木さんは、2019年4月に京都市京セラ美術館館長に就任されています)。改修のコンセプトとなったのが、「像を重ねていく美術館」。“80年余り京都市民をはじめとした人々に愛されてきた美術館の姿を残しつつ、別の様相を出現させる”ために、様々な工夫が凝らされました。
メインエントランス(撮影=来田猛)
そのコンセプトが明確に表現されているのが、メインエントランス。従来の正面玄関をそのままに、一段掘り下げたところに新たな玄関を作ることで、“京都市美術館”のイメージを壊すことなく、機能的なエントランスを実現させました。“以前の建築を守りながら別の様相を出現させる”というコンセプトは、館内の至る所で感じることができます。
2・まちと美術館をつなげる「京セラスクエア」
京セラスクエア(撮影=来田猛)
エントランスを掘り下げたことにより、平安神宮の大鳥居が建つ神宮道からエントランスに向けて、なだらかな傾斜がつけられました。このスロープ状の広場は「京セラスクエア」と名付けられ、岡崎エリアの“憩いの場”となり、コンサートやパフォーマンスなどのイベントを行うことも想定されているそうです。
ちなみに、神宮道から一段下がることにより、平安神宮大鳥居をローアングルから眺められるようになりました。青空に映える鳥居の存在感!
3・「ガラス・リボン」には、ショップ&カフェがオープン!
エントランスの左右に広がる空間デザインは、「ガラス・リボン」と呼ばれています。
ART LAB KYOTO(イメージ)
メインエントランスを入って左側には、ミュージアムショップ「ART LAB KYOTO(アート ラボ キョウト)」が登場。京都の美術出版社「光村推古書院」や「銀座蔦屋書店」など4社による共同企業体「CCCアートラボ」が手がける、注目のショップです。
ENFUSE(イメージ)
右側には、京都の食材などを取り入れたメニューを提供するミュージアムカフェ「ENFUSE(エンフューズ)」が開業。カフェメニュー以外にも、ピクニックセットやおみやげなども展開されるそう。“京都市美術館”時代にはミュージアムカフェがなかっただけに、どんな空間となるのか今から楽しみですね♪
4・“開かれた美術館”を実現! 中央ホールは、無料開放に。
中央ホール(撮影=来田猛)
いよいよ、館内へと進みます。
エントランスから大階段を上がったところに広がるのが、中央ホール。以前は「大陳列室」として使われていた空間です。左右には、南北の陳列室「南回廊」「北回廊」へとつながる扉があり、ホールを介して人々が展示室に向かう仕組みになっています。そして、この中央ホールは、なんと開館時間内は無料で開放! 美術鑑賞の目的だけでなく、自由に出入りができるのは嬉しいことですね♪
この中央ホールの奥に待ち受けるのが、東山を借景とした「日本庭園」。・・・実はこの庭園は以前からあったにもかかわらず、館の裏手に位置したため、あまり存在を知られてこなかったそうです。元々あるものを活かしながら、新たな憩いの場を創成する。“以前の建築を守る”ことは、“美術館の魅力を掘り起こす”ということに繋がり、ここにもリニューアルのコンセプトが明確に表現されています。
5・新館も誕生! 現代美術ギャラリー「東山キューブ」
すばらしい眺望の「東山キューブテラス」にも注目♪
東山キューブ
リニューアルにより、新たに生まれたのが新館「東山キューブ」。天井高約5メートル、約1,000平米の広々とした空間で、大型の作品が多い現代美術の展示に対応できるようになっています。開館記念として行われるのが、独自の写真作品を制作する現代美術作家・杉本博司の個展「杉本博司 瑠璃の浄土」です。大型カメラを用いて「現代の浄土と再生」をテーマにした作品を発表されるとのこと。この広い空間のなかにどのように展示されるのか。展示方法にも注目が集まります。
【日程】2020年3月21日(土)~6月14日(日)※本展の開幕は4月11日(土)に延期となりました。
10:00~18:00(入場17:30)、月曜日休(祝日は開館)
【場所】新館 東山キューブ
【料金】一般1,500円
東山キューブテラス(撮影=来田猛)
東山キューブの屋上には「東山キューブテラス」が設けられ、広々としたスペースから東山の山並みを楽しむことができます。“パブリックスペース”として展覧会に入場しない方でも入ることが可能とのこと。気軽にこの眺望を楽しめるというのは嬉しいことですね♪
6・企画展のメインとなる「北回廊」では、気になる展覧会が目白押し!
本館は、元の建物のポテンシャルを活かしつつ機能的な空間に生まれ変わり、たくさんある展示室では常時、様々な展覧会が催されることになります。なかでも「北回廊」1階は、企画展のメイン展示室。まずは開館記念として、“京都の美術をかつてない規模で全国から集めた”展覧会「京都の美術 250年の夢」が4期構成で開催されます。展示作品は、その数なんと、400点以上(総計)!
中村大三郎《ピアノ》1926年 同館蔵
スタートを飾るのが、特別企画「最初の一歩:コレクションの原点」。開館3年目の昭和10年(1935)に初めて開催した「本館所蔵品陳列」に出品された47点が展示されます。時を越えて蘇る、創設当時の展覧会。今あらためて観ることにより、“京都市美術館の再生”を目撃することになるのではないでしょうか。
【日程】2020年3月21日(土)~4月5日(日) ※本展は開催中止となりました
10:00~18:00(入場17:30)、月曜日休(祝日は開館)
【場所】本館 北回廊1階
【料金】一般1,000円
曾我蕭白《群仙図屏風》(上:左隻、下:右隻)1764年 文化庁蔵 重要文化財 前期展示
そして4月18日(土)からは、「第1部 江戸から明治へ:近代への飛躍」がはじまり、京都で活動した巨匠たちの名作が全国から集結し、展示されます。伊藤若冲、円山応挙、与謝蕪村、池大雅、呉春、そして曾我蕭白- 偉大な作品が京都で生み出されてきたことに驚くばかりです。
竹内栖鳳《百騒一睡》(上:左隻、下:右隻)1895年 大阪歴史博物館蔵 後期展示
【日程】前期:2020年4月18日(土)~5月17日(日)
後期:2020年5月19日(火)~6月14日(日)
10:00~18:00(入場17:30)、月曜日休(祝日は開館)
【場所】本館 北回廊1階
【料金】一般1,500円
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ここに紹介した以外にも、様々な見どころのある京都市京セラ美術館。昨年(2019年)11月に行われた内覧会の際には、「京都市美術館って、こんなに広かったんだ!」と驚くほど、館内を広大に感じました。でもそれは、改修のコンセプトにあるように、建物自体が元々持っていたポテンシャル。建物の能力を掘り起こし、新たな面を引き出すことにより、リフレッシュして生まれ変わる。馴染みある外観のまま、さらに使いやすく親しみやすいスポットになったことが、とても嬉しく感じられました♪ このリニューアルした建物でこれからどんなアートが観られるのか、とても楽しみですね!
【開館時間】10:00~18:00(展覧会の入場17:30)
【休館日】月曜日(祝日は開館)、年末年始
【料金】展覧会ごとに異なる
【電話】075-771-4334(9:00~17:00、12月28日~1月2日を除く)
【アクセス】市バス「岡崎公園 美術館・平安神宮前」バス停から徒歩すぐ、地下鉄東西線「東山駅」から徒歩約8分 Google map
【公式ホームページ】https://kyotocity-kyocera.museum/