京都の老舗・中村ローソク。灯して癒やされる「和ろうそく」の魅力

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京の職人とクラフト 2


旅先で買い物をするなら、“作り手が見えるもの”はいかがですか。さまざまな伝統工芸が息づく京都では、昔ながらの技術はそのままに、時代のニーズに合わせた商品を手がけている工房がたくさんあります。

今回ご紹介するのは、京都の老舗「中村ローソク」が手がける「和ろうそく」です。


“和ろうそく”ってどんなローソク?


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“和ろうそく”とは、室町時代から日本で作られてきた伝統的なローソクのこと。和紙にイグサの髄(ずい)を巻いて作った芯に、櫨(はぜ)や米ぬかから採った蝋(ろう)を固め、すべて植物由来の原材料で作られるのが特徴です。


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(左上)イグサの髄(右上)灯芯
(左下)櫨の実(右下)櫨蝋

明治以降、単価の安い“洋ろうそく”や電気の普及にともない生産数が減少。活躍の場は、もっぱら寺院などの限られた場所になってしまいました。

ところが最近、絵入りや香り付きなど、オシャレな和ろうそくが登場。インテリアやリラクゼーションのアイテムとして雑貨感覚で再注目されています。


創業130年以上! 和ろうそくを作りつづける老舗


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ジワジワと人気を集めている和ろうそく。今回伺った工房は、明治20年(1887)創業の「中村ローソク」です。伏見区、近鉄京都線「竹田駅」そばの工房兼店舗では、今でも職人さんが一本ずつ手作業で和ろうそくを作られています。

寺院に和ろうそくを納める昔ながらの商売をつづけながらも、20年ほど前から花の絵をローソクに描いた「絵ろうそく」を製品化。発起人は4代目の和ろうそく職人・田川広一さんでした。


花のように美しい「絵ろうそく」


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手描き絵蝋燭すすき (2本入)2,090円

元々絵ろうそくは、東北や北陸など寒い地域で、“冬場の仏壇にお供えする花の代わり”として生まれたと言われています。それだけに、見た目はとても華やか。

ご自宅に仏壇がある家庭も少なくなり、ますますローソク離れが進む昨今。より幅広い世代に和ろうそくを知ってもらいたいと考えていた田川さんは、「まずは和ろうそくを手にとってもらおう」と、火を付けなくてもインテリアとして楽しめる絵ろうそくに注目しました。

京友禅の絵付師に依頼して一本ずつ写実的に描かれた絵ろうそくは、まるで美術品のよう。これが、おみやげ物として海外の方や若い人が買い求める、中村ローソクの人気商品になりました。


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8年ほど前から、若い絵師を専属のろうそく絵師として迎え、今までになかった、洋花や動物、舞妓さん、ひな祭りなどの行事の絵といった、より今のニーズに即したデザインの新商品も生まれるようになりました。

「飾るための絵ろうそくですが、特別な日にはぜひ火を灯してみて」と田川さんはいいます。なぜなら、和ろうそくの魅力のひとつは、その「燃え方」にあるから。


“洋ろうそく”とは異なる“和ろうそく”の魅力


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蝋が垂れにくいのも和ろうそくの特徴

和ろうそくの炎は、風がなくても大きくゆっくりと神秘的に揺らめきます。理由は、和ろうそくの芯が空洞になっており空気が通るから。このゆらぎは「1/fのゆらぎ」と言われ、人が心地よいと感じる心音や波の音と同じくヒーリング効果があると注目を集めています。

また、「室内が汚れにくい」ことも魅力のひとつ。植物性の原料で作られている和ろうそくの煤(すす)はサラサラとしており、石油を原料とする洋ろうそくにくらべて油煙が少なく室内を汚しません。


和ろうそくができるまで


では、さまざまな優れた性能をもつ和ろうそくは、どのように作られるのでしょうか。特別に製造工程を見学させていただきました。


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(左上)木型に差し込まれる芯(右上)木型に流し込まれる蝋
(左下)余分な蝋をカットされた木型(右下)生地の取り出し

中村ローソクでは、木型を使う製法と、生掛け(きがけ)と呼ばれる製法の2種類でローソクを作っています。今回は木型での製法を見せていただきました。

まずは、竹串を差した芯を木型に差し込みセッティング。溶かした蝋を流し込み、固まったら串を外して余分な蝋と芯をカットします。あとは1本ずつ木の棒で押し出すようにして取り出すと・・・


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写真のようにローソクの形のできあがりです。すでに完成品のように見えますが、これは生地(きじ)と呼ばれる途中の段階。ここから、いったん日光にさらして乾かしたあと、よく練った上掛け用の蝋をこすりつけていく「清浄生掛け(しょうじょうきがけ)」という作業を行います。


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丁寧に蝋をこすりつけていく田川さん

竹串を差した生地を数本まとめ、固まらないように約48度から50度ぐらいに保たれた鍋から蝋をすくい、手の平で転がすように擦りつけていきます。簡単な作業のように見えますが、一定の厚みになるように蝋を擦りつけていくには経験と熟練の技が必要だそう。


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生掛けで作られたローソクの断面

ちなみに、生掛けでは芯の状態から何度も蝋を擦りつけていくため、木型で作ったものとは異なり断面が年輪のように見えます。この年輪が、「木型」と「生掛け」、どちらで作られたかを見分けるポイントのひとつになるそうです。


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最後に、乾燥させたローソクの芯回りと下部の余分な蝋を切って、形を整えたら完成です。絵ろうそくは、ここから絵師が絵を手描きしていきます。


ローソク屋生まれのハンドクリーム


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玉締め搾り櫨蝋入りハンドクリーム 2,530円

中村ローソクには、絵ろうそく以外にもユニークな商品があります。それが、「和蝋燭職人からのおすそ分け 玉締め搾り櫨蝋入りハンドクリーム」です。

和ろうそく職人の手はシミがなく、ツヤツヤでとても綺麗なのだそう。その理由は、櫨蝋を毎日手で触れているから。櫨蝋は、昔から舞妓さんや歌舞伎役者さんの化粧下地としても用いられてきたほど、保湿効果のある素材です。

このハンドクリームは、あるプロジェクトから生まれました。それが、2015年にスタートした「京都“悠久の灯”プロジェクト」。実は、和ろうそくの原料である「ぶどう櫨」の生産農家は和歌山県に一戸を残すのみであり、将来的な供給が難しくなっています。

そこで、中村ローソクをはじめ伝統工芸職人と京都市が協力し、京都府中部の京北地域を新たな産地として櫨の栽培をスタートしました。そして、「プロジェクトと櫨蝋の素晴らしさを多くの方に知ってもらいたい」と限定生産されたのが、このハンドクリームです。

中村ローソクのオンラインショップで販売されているので、興味のある方はぜひ、その効果をお試しください。


和ろうそくの使い方は千差万別


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養徳院のキャンドルナイト ※通常は実施されていません

和ろうそくは蝋が垂れにくく光量も多いことから、防災グッズとしても注目を集めています。また、少しの風では火が消えないのでキャンプや野外ライトアップの光源としても優秀です。

たくさんの和ろうそくを並べて夜のひとときを演出するキャンドルナイトの光景は、とても幻想的。ゆらめく炎が、電気では表現できない神秘的な雰囲気を作り出してくれます。

\中村ローソクの和ろうそくを用いてキャンドルナイトを実施します/
⇒【そう京イベント】養徳院 和ろうそくの灯りで夜坐禅(2020年9月26日実施)の詳細はこちら
※キャンセル待ちで受付中


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中村ローソクの職人さん達が丹精込めて作った和ろうそくは、実店舗のほかオンラインショップでも購入できます。

さまざまなシーンで活躍してくれる、ポテンシャルの高い和ろうそく。ぜひこの機会に、その魅力に触れてみてください。

\おかいものは下記リンクから/
https://www.kyorousoku.jp/

■中村ローソク
【営業時間】9:00~17:30
【定休日】日曜日、祝日、第2・4土曜日
【電話】075-641-9381
【アクセス】地下鉄烏丸線・近鉄京都線「竹田駅」から徒歩約5分 Google map
【公式ホームページ】https://www.kyorousoku.jp/

Written by. きのこ

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