多機能・優秀、“漆生活”のススメ ~堤淺吉漆店の「金継ぎコフレ」&「ふきうるしキット」~

  • お買い物
  • 体験
  • 知る・学ぶ

ふきうるしキット

ふきうるしキット

ここ数年、ひそかなブームとなっている「金継ぎ(きんつぎ)」。割れたり欠けたりしてしまった器を、漆(うるし)を使って修復、金粉や銀粉で仕上げる伝統的な技法で、「大切な器を蘇らせることができる」「モノを大切にできる」と、注目を集めています。

初心者でも気軽にできる「体験キット」も数多く登場するなか、京都で4代続く漆屋さん「堤淺吉漆店(つつみあさきちうるしてん)」では、「“漆本来の良さ”をもっとたくさんの方に知っていただきたい」と、数年前から体験キット「金継ぎコフレ」を発売。またこの3月1日から、おうちで漆塗り体験ができる「ふきうるしキット」も発売されました(どちらもオンラインで購入可能です)。

でも、そもそも「漆」って、どんなものなのでしょうか? 体験キットの紹介を交えながら、漆の魅力に迫ります!
※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、京都旅行の際は、政府およびお住まいの都道府県と京都府の要請をご確認ください。京都にお越しの際は、マスクの着用・手指のアルコール消毒など、感染拡大防止の徹底にご協力をお願いいたします。日々、状況は変化しておりますので、事前に最新情報をご確認ください。

京都の真ん中で、漆づくり!?

堤淺吉漆店が店舗を構えるのは、京都の繁華街・四条烏丸の東南エリア、真宗佛光寺派の本山・佛光寺のすぐそば。「こんな街なかに漆の工房が?」と不思議な気持ちになりますが、明治42年(1909)の創業以来100年余。この地で「漆づくり」を営まれています。

工房内。

工房内。

「漆は、縄文時代の遺跡からも出土する、世界最古の天然塗料。古くから優れた抗菌作用があることで知られ、一度硬化すれば口に入れても安心で、食器に適した塗料なんですよ」

と、取締役の森住健吾さん。世間一般には「漆器はめんどくさい・扱いが難しい」というイメージがあるためか、“漆器が家にある”という方も減っているようですが・・・

岩手県・浄法寺産のウルシの木。木肌に傷をつけ、染み出す樹液を「漆掻き職人」が採取します。

岩手県・浄法寺産のウルシの木。木肌に傷をつけ、染み出す樹液を「漆掻き職人」が採取します。

森住さん 「残念ながらそういうイメージが強く、現代の日常生活から遠ざかっているのが現状です。でも実際は、手入れが大変といっても、洗剤も使えますし、タワシなど傷がつくものでこすらなければ問題ありません。漆は油にも強く、酸にもアルカリにも耐えられるから、食器が長持ちして、実は日常使いに適しているんです。永く使えば艶や色合いの変化も楽しめます。使い込むことで生まれる風合いや、塗り替えして世代を超えて使える喜び、“モノを大切に使う”楽しみがわかるのが、漆器かと思います。

最近では、漆を知らない人たちに魅力を伝える様々なプロジェクトも実施していて、漆の素材としての素晴らしさや、新しい価値観を、イベントや映像を通して発信しています。『金継ぎコフレ』や『ふきうるしキット』が、漆を知ってもらう入口になれば嬉しく思います」


「SDGs(持続可能な開発目標)」の取り組みが広く叫ばれる昨今。漆を知ることで、“モノを大切にする”気持ちや、自然環境への意識も高まっていきそうです。

漆の役割・1 「接着剤」

漆には、「塗料」「接着剤」という、2つの大きな役割があります。その「接着剤」の役割を活かしたのが、「金継ぎ」技法です。

森住さん 「割れたり欠けたりしたお皿を漆で接着し、金や銀の粉で仕上げるのが金継ぎ。最近では合成樹脂を接着剤にすることもあるようですが、それは伝統的な金継ぎとはいえません。食器に使うなら安心の天然素材“漆”が一番です」

金継ぎコフレ 13,750円

金継ぎコフレ 13,750円

その「金継ぎ」に必要な道具がセットになったのが、「金継ぎコフレ」。天然漆(生漆・絵漆)と純金粉のほか、テレピン油(漆の希釈・溶剤として使用)やヘラなど一式がスタイリッシュな箱にセットされていて、収納・保管にも便利な工夫がされています。公式ホームページで詳しい説明動画(購入者限定パスワード制)を視聴することもでき、おうちで作業するにも安心です。

初心者の方が金継ぎにチャレンジするとき、もっとも扱いやすいのが、シンプルなお皿。とはいえ、接着し、漆を乾かし・・・ という作業には1ヵ月以上かかることもあるそう。

森住さん 「時間がかかる分、完成したときの感動が大きいですし、新しい命が吹き込まれる様で、より愛着がわきますよ」

おうち時間を長くとれる今こそ、金継ぎチャレンジのチャンスかも??

漆の役割・2 「塗料」

塗料としての漆の魅力に触れられるのが、この3月に発売されたばかりの「ふきうるしキット」。

ふきうるしキット 4,950円。お椀2客とのセットは8,580円。

ふきうるしキット 4,950円。お椀2客とのセットは8,580円。

「ふきうるし」とは、「生漆(漆樹液そのもの)」をお箸やお椀などの木地に摺り込み→拭き上げる工程を繰り返して艶を出す作業のこと。京都芸術大学の学生さんとの共同開発で生まれ、「漆をもっと身近に」感じられる内容となっています。

基本キットにはお箸2膳が含まれ、+αでお椀やお弁当箱などの木地をECサイト上から購入可能。こちらも公式ホームページに動画解説(購入者限定パスワード制)が用意されていて、「金継ぎ」よりもさらに気軽に、漆体験ができます。

森住さん 「まずはお箸で試して、拭き漆のコツをつかんでから、お椀などの大きなモノにチャレンジを。回数を重ねるとより艶が上がるので、リアルに変化がわかります。ワクワク感や達成感を楽しんでみてくださいね」

作業する際は、乾かす(硬化)時間が必要になりますが、金継ぎよりも短期間で完成するとのこと。色合いの変化を、ぜひ味わってみましょう!

お客様のニーズに対応する、「漆屋」さんの仕事とは?

ところで・・・ そもそも、「漆屋」さんとは、どんな仕事なのでしょうか? 漆製品を販売する漆器屋さんではなく、漆製品を作る伝統工芸の塗師(ぬし)さんでもなく・・・

森住さん 「この店では、産地から届いた漆樹液を精製・調合し、お客様ごとのニーズに合わせた漆を製造・販売しています」

樹液の入った漆桶。繊細な漆樹液は、冷蔵庫の中で恒温管理されています。

樹液の入った漆桶。繊細な漆樹液は、冷蔵庫の中で恒温管理されています。

森住さん 「岩手県の浄法寺など、産地から届いたばかりの漆樹液は、採取したときの木くずなどが入っていたりするため、まずは不純物を取り除く作業が必要です。湯せんして、漉し綿を練り込んで木くずを付着させて、遠心分離機で漉しあげて・・・ ホームページに作業風景の動画を公開していますので、ぜひそちらを見ていただければわかりやすいかと思います」

⇒受け継がれる伝統の漆精製技術
  • 産地から届いた漆樹液。空気に触れると、すぐに反応して黒くなってしまいます。

    産地から届いた漆樹液。空気に触れると、すぐに反応して黒くなってしまいます。

  • 精製後の漆は、カフェオレのようにクリーミーな色。

    精製後の漆は、カフェオレのようにクリーミーな色。

森住さん 「漆は、同じ産地・同じ木から採取しても、漆掻き職人さんが違えば、性質が違う漆樹液になります。性質が異なる漆は、塗料として使用したときに乾く時間や艶なども異なります。個々の性質を把握して、いくつかの漆を混ぜ合わせ、お客様の希望に沿った漆に仕上げるのが、漆屋の仕事になります」

クロメ鉢。ナヤシ(撹拌作業)の工程を経た生漆に熱をかけ、余計な水分を飛ばす機械。「クロメ」「ナヤシ」など、漆用語は独特です・・・

クロメ鉢。ナヤシ(撹拌作業)の工程を経た生漆に熱をかけ、余計な水分を飛ばす機械。「クロメ」「ナヤシ」など、漆用語は独特です・・・

ベンガラを混ぜて、赤い「色漆」を精製中。機械も独特です。

ベンガラを混ぜて、赤い「色漆」を精製中。機械も独特です。

食器・茶道具・仏壇・仏具や、国宝・重要文化財・・・ 漆は様々な製品に使われます。使うモノ、使う人によって違うオーダーを受け、それぞれに使いやすい漆を提供するのが、「漆屋」さん。完全オーダーメイドの、繊細なお仕事なのです。
  • 出荷用のスタンプ。漆業界の専門用語が並びます。

    出荷用のスタンプ。漆業界の専門用語が並びます。

  • 堤淺吉漆店の出荷用シール。

    堤淺吉漆店の出荷用シール。

  • ヘラで漆をブレンドし、ムラなく手作業で混ぜ合わせます。

    ヘラで漆をブレンドし、ムラなく手作業で混ぜ合わせます。

  • 完成品を出荷用の桶に移す作業も、ひとすくいずつヘラで手作業です!

    完成品を出荷用の桶に移す作業も、ひとすくいずつヘラで手作業です!

*****

知られざる、漆屋さんの世界。堤淺吉漆店では、漆の良さを知っていただくため「urushi no ippo」という啓蒙活動や、漆の木の植樹活動などにも取り組まれています。最近では、漆塗りの自転車のフレームやサーフボード、スケートボードなど、異素材との組み合わせにも挑戦していらっしゃいます! 今はまだ非売品とのことですが、漆の多様性がわかる取り組みですね♪
漆体験キットから、漆のふか~い世界にも、ぜひハマってみてくださいね♪
■堤淺吉漆店
【営業時間】8:50~17:30
【定休日】日曜日・祝日、第2・4土曜日 ※不定休あり
【電話】075-351-6279
【アクセス】地下鉄烏丸線「四条駅」から徒歩約3分 Google map
【公式ホームページ】https://www.kourin-urushi.com/
【公式Instagram】https://www.instagram.com/tsutsumi_urushi/
※掲載内容は2021年5月28日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. みさご

おすすめコンテンツ