佐波理おりんが奏でる唯一無二の音色~南條工房の風鈴「Ren」

  • お買い物
  • 知る・学ぶ

ブランドLinNeの風鈴「Ren」

ブランドLinNeの風鈴「Ren」

京の職人とクラフト3 

さまざまな伝統工芸が息づく京都では、昔ながらの技術をもって、時代のニーズに合わせた商品を手がけ開発に取り組む工房がたくさんあります。

今回ご紹介するのは、この夏、心地の良い涼やかな音色で人気を集めている風鈴「Ren」を手がける南條工房です。聞く人を魅了する音色がどのように作られているのか、特別に工房を見学させていただきました。
※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、京都旅行の際は、政府およびお住まいの都道府県と京都府の要請をご確認ください。京都にお越しの際は、マスクの着用・手指のアルコール消毒など、感染拡大防止の徹底にご協力をお願いいたします。日々、状況は変化しておりますので、事前に最新情報をご確認ください。

京都府宇治市にある南條工房は、全国でも珍しい鳴物神仏具(なりものしんぶつぐ)の製造を専門とする工房です。鳴物神仏具とは、祇園祭のお囃子で使われる鉦のように、音の鳴る神仏具のこと。

なかでも、お寺やご家庭の仏前で使われるお椀型の仏具「おりん」をメインに製造され、創業から約190年たった今でも、伝統の技法でひとつひとつ手作りされています。

おりん作りに欠かせない合金「佐波理」とは

佐波理の素材である銅と錫

佐波理の素材である銅と錫

南條工房のおりんの特徴は、なんといってもその“伸びやかな音色”。言葉で説明するのはとても難しいのですが、ウァンウァンと波打つことなく、一定の調子でスーと伸びて余韻が長い音です。

この音を実現しているのが「佐波理(さはり)」と呼ばれる、銅と錫(すず)の合金。古くは正倉院宝物にも用いられたそうで、おりんの素材としては最高級品だそう。非常に硬い金属で、この硬さが良い音を響かせる重要なポイントです。

京の名工 南條工房6代目 南條勘三郎さんの作品「勘三郎りん」

京の名工 南條工房6代目 南條勘三郎さんの作品「勘三郎りん」

「佐波理は錫の含有量が多ければ多いほど硬くなる性質がありますが、製造はより難しくなっていきます。私の祖父である5代目がおりんの音に大変こだわる人で、理想の音を実現するため、錫の割合を限界まで高めることに成功しました。そして、唯一無二ともいえる音色を響かせる南條工房の “佐波理おりん”が生まれたんです」

そう、南條工房の音の秘密を教えてくださったのは、工房をご案内いただいた南條由希子さん。現社長である6代目 南條勘三郎さんの娘さんです。

風鈴「Ren」にもこの「佐波理おりん」と同じく佐波理が使われ、製造方法もほとんど同じだそう。南條工房が追い求めた音色がどうやって生まれるのか。おりんの製造工程を覗いてみましょう。

南條工房のおりん作り
① 鋳型作り

  • (左)中型(右)外型

    (左)中型(右)外型

  • 鋳型の素材となる籾殻

    鋳型の素材となる籾殻

  • 風鈴の「Ren」や、手で振って鳴らす小型のおりん「Chibi」の鋳型

    風鈴の「Ren」や、手で振って鳴らす小型のおりん「Chibi」の鋳型

工程の最初は鋳型(いがた)作りから。鋳型は中型(なかがた)と外型(そとがた)の二重構造になっており、二つを重ねた際におりんの形に隙間ができるようになっています。この隙間に溶かした金属を流し込み、冷やし固めることで、おりんの形を作り出すわけです。

鋳型の材料は粘土と籾殻(もみがら)を混ぜたもので、天日干しで乾かしてから使います。工房の中庭には出番を待つ鋳型がところ狭しと並んでおり、そのサイズはさまざま。鋳造には鋳型が必須になるためさまざまな注文に応えるため、常日頃から数とサイズは揃えているのだとか。

 ② 焼型鋳造

  • 煌々と燃える窯のなか

    煌々と燃える窯のなか

しっかり乾燥された鋳型は、600~700度の高温に熱した窯で焼かれます。粘土に混ぜ込まれた籾殻が燃え尽きることで隙間ができ、その隙間を通って鋳型内部にあったガスを抜き鋳型を締めることで、良質な製品を生み出す鋳型が完成するそう。

これは、焼型鋳造法(やきがたちゅうぞうほう)と呼ばれる手法で、現在でも”薪を燃料とした窯”を使っているのは、全国でも南條工房ぐらいだといいます。

由希子さん 「一度に作れる数も限られますし、燃料代も現在主流のガスとは比較になりません。生産性という意味では割に合わない方法だと思います。ですが、この方法でないと、うちが求める音は出ないんです」

鋳型を焼く作業と平行して行われるのが、鋳型に流し込む金属を溶かす溶解の作業です。コークスを焚いて熱された炉の温度は1,500~2,000度。ただ溶ければ良いというわけではなく、鋳型に流し込むための最適な状態があります。

それを見極めるのに必要なのは、長年の経験から培われた“職人の勘”。湯(ゆ)と呼ばれるぐつぐつと煮えたぎる溶けた金属を、やっとこ鋏でつかんだ器ですくい取り、状態をチェックします。この時感じた、粘度や、色、煙の量といった僅かな情報から最適なタイミングを判断するそうです。

僅かな光の違いを見逃さないため、暗い中での作業

僅かな光の違いを見逃さないため、暗い中での作業

由希子さん 「機械で温度を測ったり、なんとか数値化しようと試みたことがあるのですが、外気温などさまざまな要因が影響してくるので、職人さんの勘に頼るのが一番なんです」

湯を準備している間に窯から鋳型を取り出し、ゆっくりと冷ましていきます。この後、鋳型に湯を流し込むのですが、鋳型の温度が高いままでも低すぎても良いおりんは生まれません。そこで、鋳型が冷める頃合いと“湯”のできる時間がちょうど合うようにタイミングを調整する必要があります。このタイミングを合わせるのも職人さんの経験によるそうです。
  • おりん製造の魅力に惹かれ、料理人から職人に転向した南條工房の7代目 南條和哉さん

    おりん製造の魅力に惹かれ、料理人から職人に転向した南條工房の7代目 南條和哉さん

すべての条件が揃ったとき、いよいよ湯を鋳型に流し込みます。“湯”の状態を見極め、鋳型へ流しこむ作業は、南條工房の7代目となる南條和哉さんの仕事。

和哉さん 「鋳造は、どんな音になるかは取り出してみるまで分からないので、やり直しの利かない一発勝負。湯の流し方でも出来が変わってくるので気が抜けない作業ですが、鋳造を行っているときが一番楽しいですね」

肌が焼けるような熱気の中、重量のあるやっとこ鋏で溶けた金属を扱うのは、危険と隣り合わせの重労働。それでも、ひとつひとつ祈るかのように湯を注ぎ込んでいく姿は、どこか神事を見ているかのような厳かさがありました。
  • 外側をハンマーで崩すと・・・

    外側をハンマーで崩すと・・・

  • ころんと、おりんの原型が姿を現します

    ころんと、おりんの原型が姿を現します

  • 内側に付いた鋳型はドリルとヤスリで剥がします

    内側に付いた鋳型はドリルとヤスリで剥がします

  • おりんの原型の音色を、耳を澄ませて聴く職人さん

    おりんの原型の音色を、耳を澄ませて聴く職人さん

冷えて固まったあとは、鋳型をハンマーで砕きおりんを取り出します。取り出されたおりんの原型は、複数の工程を経て完成に至りますが、その前に一度、職人さんの手によって産声とも言える最初の音を鳴らします。 その結果は・・・?

ベテラン職人さんもにっこり

ベテラン職人さんもにっこり

もう、この笑顔が答えですね! まだまだ澄んだ音色とは言えませんが、スーと伸びる南條工房のおりんの音をしっかりと奏でていました。

「この音が聞けるのは私ら職人だけの特権。やっぱり、良い音がなると嬉しいね」 とベテラン職人さん。

本当に誇りと愛情をもって仕事をされているのだと感じます。

③ 「粗削り」と「轆轤加工(仕上げ削り)」 

  • 最初は鈍色のおりんが・・・

    最初は鈍色のおりんが・・・

  • 見事な金色に!

    見事な金色に!

おりんの原型は、加工しやすいように柔らかくするため、一度加熱してから急冷する「焼きなまし」という工程を行ってから「粗削り」の作業に入ります。

粗削りの作業は南條工房お手製の専用の機械で行われます。回転する台にセットされたおりんに、削り機を添えるように当てると・・・ まるで鰹節のように薄い削りかすが落ち、鈍色だった表面が黄金色に変わっていきます!
  • (左)粗削り後(右)轆轤加工後

    (左)粗削り後(右)轆轤加工後

  • 握るとぱりぱりと粉になる削りかす。硬い佐波理ならではの現象

    握るとぱりぱりと粉になる削りかす。硬い佐波理ならではの現象

均等な厚みに削られた後は、表面にできた削り跡の凸凹をさらに轆轤(ろくろ)で削り取り、滑らかに整えていきます。

音の響き方を左右するため、粗削りと轆轤加工には熟練の技術が必要です。現在、この工程を担当しているのは、勘三郎さんと和哉さんのおふたりだけ。習得までには10年もの時間がかかる大変な作業です。

④ 音のチェック

最後に、もう一度加熱してからゆっくりと冷ますことで、「焼きなまし」で柔らかくしたおりんを硬くする「焼き入れ」を行ったあと、音の検品が行われます。

南條工房が特に気をつけているのは「音が揺れないこと」「音が長続きすること」「どこを叩いても同じ音がすること」の3点。クリアできなかったおりんは溶かし、納得がいくまで鋳造し直すそうです。

由希子さん 「おりんは仏前での祈りに使われ、毎日聴くものです。だからこそ音にはこだわりたくて、納得のできるものしか世に出しません。1回の鋳造で200個ぐらいのおりんを作りますが、ときにはほとんどが出荷できない場合もあります」

クリアしたおりんは、研磨剤で磨かれ、酸化防止用に蝋をコーティングして仕上げられ、完成です。これだけの緻密な工程をすべて手作業で行っていることに驚きますが、ここまでこだわるからこそ、あれだけ素晴らしい音色を響かせるのだと納得できました。

 「佐波理おりん」の音色を、より身近な存在に!

LinNeの「Chibi」

LinNeの「Chibi」

そんな音にこだわる南條工房が、より身近に「佐波理おりん」の音色を楽しんでほしいと立ち上げたブランドが「LinNe」です。

商品の第一弾として販売されたのは「Chibi」。こだわりの音はそのままに、最小、最薄にチャレンジしたことで生まれた「手で振って鳴らすおりん」です。円柱型のフォルムに京都府宇治市にある「昇苑くみひも」の組紐を持ち手に使い、その姿はとてもスタイリッシュ。もちろん、おりんと同じ素材、同じ方法で製造されているので、「佐波理おりん」と同じく清らかで澄んだ音色が響きます。

LinNeの「Ren」

LinNeの「Ren」

人気を集めた「Chibi」は、おりん本来の形とは異なるために、南條工房でも予想していなかった、さまざまなシーンで活用される事になりました。坐禅やヨガをはじめ、楽器、ドアベル、なかには登山で熊除けの鈴として使う人もいるのだとか。

ある日、「Chibi」を求めるお客さんから「風鈴型はないの?」と聞かれたことがきっかけで、生まれたのが一番最初にご紹介した風鈴「Ren」です。

由希子さん「ご自身で音を鳴らしたい人とは別に、自然と音が生まれるのが好きな人もいると気づかされ、開発することになりました。手で振って鳴らすより柔らかい音がするので、好みに合わせて選んでみてください」

新商品! そして、クラウドファンディングも実施中

LinNeの新商品「Myo」

LinNeの新商品「Myo」

そんなLinNeに新商品が登場しました! 据え置き型でりん棒(おりんを叩く棒)とセットになった「Myo」は、リラックス、コンセントレーション、リフレッシュの3つテーマに合わせて「enn(リラックス)」、「sui(コンセントレーション)」、「hou(リフレッシュ)」と名付けられた3種類の形で展開。お洒落な見た目だけでなく、りん棒をマグネットで台に固定できるよう、実用性にもこだわったデザインです。

「大変な今だからこそ、心落ち着く佐波理おりんの音色を生活に取り入れていただき、少しでも日々の暮らしに役立てていただければ」という思いで一般販売に先駆け、南條工房の活動を応援するクラウドファンディングのリターンにすることに。

8月1日(日)から始まって、すでに目標金額は達成していますが、まだ一部のリターンコースが残っているため、9月29日(水)までは続行されるそう。気になる方はぜひご確認ください。

⇒南條工房のクラウドファンディングはこちら

この夏、伝統工芸が生み出す美しい音色を身近に感じられる「LinNe」の、涼やかな音色を日常に取り入れてみてはいかがでしょう♪

\オンラインショップはこちら/
https://linne-orin.stores.jp/

■南條工房
【公式ホームページ】https://linne-orin.com/
【公式facebook】https://www.facebook.com/linne.orin/
【公式Instagram】https://www.instagram.com/linne_orin/
※公式ホームページで「LinNe」の音色を聴いてみてください。
※掲載内容は2021年8月13日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. きのこ

おすすめコンテンツ