作り手と使い手を繋ぐ、清水焼の陶芸スタジオ「TOKINOHA Ceramic Studio」

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京都市山科区にある清水焼団地は、京都の伝統工芸品のひとつ京焼・清水焼(以下、清水焼)の作家や問屋、陶芸材料を扱うお店など、清水焼に携わる人々が集まる一大スポット。2021年4月22日(木)、この地に「TOKINOHA Ceramic Studio(トキノハ セラミック スタジオ)」がオープンしました。“生活に寄り添う器”をコンセプトに、日常生活で使いやすいシンプルなデザインの清水焼ブランド「TOKINOHA」を手がけられています。こちらでは、器を購入するだけでなく、ここでしかできない体験を用意されているのだそう。いったいどんなお店なのか、訪ねてみました。
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ショップと工房を“見える化”!
作り手と使い手を身近にした、ぬくもりある店内。

清水焼団地の一角に佇む白い建物、こちらが「TOKINOHA Ceramic Studio」です。白を基調とした店内は、窓も大きく開放的。中央に大きなシンボルツリーがあり、空間全体に植物のパワーが感じられます。

店内奥の工房では職人さんが器作りの真っ最中。実際に制作風景を見学できるのは嬉しいですね♪ 「今回のオープンにあたり、作り手と買い手(使い手)の距離が少しでも縮まるようにと思い、工房を見えるようにしたんですよ」と、お話しいただいたのは、TOKINOHA Ceramic Studioを運営するKiyo-to-bo株式会社の代表で陶芸家の清水(きよみず)大介さん。清水焼陶工の名跡である5代目清水六兵衛の曾孫にあたり、大学で建築を学んだ後、陶芸の道に進まれたそうです。

清水焼のイメージが変わる!? 生活に寄り添う器「TOKINOHA」

「清水焼」というと、雅で華やかな絵付けのある器をイメージしますが・・・ 店内に並ぶTOKINOHAシリーズの器は、どれも極めてシンプルなデザイン。

清水さん 「『これが清水焼?』と驚く方もいらっしゃるかもしれませんが、そもそも清水焼とは、京都府内で手作りされた器のこと。窯元や作家によって、作られている器も色々なのです」
  • ©二村海<br/>
shiro-kuro/TOKINOHAの原点となるシリーズで、その名の通り白と黒を基調とした器。

    ©二村海
    shiro-kuro/TOKINOHAの原点となるシリーズで、その名の通り白と黒を基調とした器。

  • ©二村海<br/>
tetra/カフェオーナーさんからの注文により誕生したシリーズ。可愛らしい色が目を引きます♪

    ©二村海
    tetra/カフェオーナーさんからの注文により誕生したシリーズ。可愛らしい色が目を引きます♪

  • ©二村海<br/>
copper/マットな質感と青と紫の色合いが美しく、光に当たるとキラキラ煌めきます。

    ©二村海
    copper/マットな質感と青と紫の色合いが美しく、光に当たるとキラキラ煌めきます。

「TOKINOHA」では現在、素材や雰囲気の異なるデザインなど全部で10のシリーズを手がけられています。どれもシンプルでありながらも、手作りならではの暖かさが感じられるデザインです。「shiro-kuro」や「tetra」など、シリーズ名のほとんどは清水さんと奥様で考えられたそうで、最近登場した「sesame」は、TOKINOHAの職人さんが名前を付けたのだとか。職人さんは現在5名在籍されていて、分業で器を作られています。
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ash/天然の木の灰を調合した釉薬を使った器。使うごとに色合いに深みがでてくるそう。

    ©二村海
    ash/天然の木の灰を調合した釉薬を使った器。使うごとに色合いに深みがでてくるそう。

  • ©竹村麻紀子<br/>
TUKU/壁に掛けるタイプの小さな花器。ピン・ドライフラワー付きなので、贈り物にもおすすめ。

    ©竹村麻紀子
    TUKU/壁に掛けるタイプの小さな花器。ピン・ドライフラワー付きなので、贈り物にもおすすめ。

清水さん 「TOKINOHAの器は、日常での使いやすさを意識し、“無個性”を目指して作っています。例えるなら、“プロダクトと作家の間のようなもの”。同じような器に見えても大量生産ではなく手作りなので、どうしても形や色合いに変化が生まれます。シンプルだからこそ難しいですね」

シンプルで毎日の食卓に使っても飽きのこないデザインが魅力のTOKINOHA。ではいったい、どのようにしてTOKINOHAが生まれたのでしょうか。

トキノハ陶房からトキノハ、そしてTOKINOHA Ceramic Studioへ

  • 焼成前の器。

    焼成前の器。

  • 工房の様子。窓からショップが見えます。

    工房の様子。窓からショップが見えます。

  • 電気釜を使用されています。

    電気釜を使用されています。

TOKINOHA Ceramic Studioは、2009年に清水さんと奥様がオープンした「トキノハ陶房」が原点。当時の住所・紫竹西桃ノ本町の「紫」と「桃」から、トキ色(紫がかった桃色)という色名を見つけ、その別名「トキノハ色」から、工房の名前をつけたのだそう。2011年に現在の清水焼団地に移転し、ショップ併設の工房「トキノハ」となりました。元々は作家性の強い作品を制作されていたそうですが、この頃から「生活に寄り添う器」をコンセプトに「shiro-kuro」と「tetra」が登場し、徐々にシリーズが増えていきます。
  • ©中島光行<br/>
改装中の工房。壁も床も剥がし、スケルトン状態です。

    ©中島光行
    改装中の工房。壁も床も剥がし、スケルトン状態です。

清水さん 「トキノハの頃は、セレクトショップと間違えられることが多くありました。作り手とお客さまとの距離を感じ、もっと近くに感じていただけるにはどうすれば・・・ と考え、生まれたのがTOKINOHA Ceramic Studioです。

器の購入だけならオンラインショップで十分。せっかく訪れていただいたのなら、ファンになってもらえるような特別な体験が必要かなと。清水焼の器がどんなものか、素材や工程を学んでもらえるような工夫をプラスしました」

ショップ空間から工房を見えるようにしたのも工夫のひとつだそう。そしてさらなる工夫とは?

【その1】
職人さんが丁寧に手ほどきしてくれる「電動ろくろ体験&楽焼体験」

  • ©中島光行<br/>
電動ロクロ体験(40分) 6,600円

    ©中島光行
    電動ロクロ体験(40分) 6,600円

まず体験といえば外せない陶芸体験。現在、工房では2つの体験をご用意されています。どちらもTOKINOHAスペシャルドリンク付きです。

電動ロクロの器づくり体験では、30分で3~4個作ることができます。職人さんが丁寧に教えてくださるので初心者も安心♪ 作った器は、TOKINOHAのオリジナル釉薬の中から選んで焼くことも(1つあたり別途2,200円)。完成までには2ヵ月ほどかかるそうですが、手元に届くのが待ち遠しいですね。
  • 楽焼体験(50分) 8,800円※別途器代2,200円~。4色の釉薬から選べます。  

    楽焼体験(50分) 8,800円※別途器代2,200円~。4色の釉薬から選べます。  

  • ©中島光行<br/>
器を窯から取り出し新聞紙の上に置くと一気に炎が!

    ©中島光行
    器を窯から取り出し新聞紙の上に置くと一気に炎が!

楽焼体験では、塗りを体験。職人さんが作った素地(お猪口・小皿・植木鉢の3種類)と4種類の釉薬から好きなものを選び、筆で塗っていきます。塗り終わったら職人さんが900度に熱せられた窯へ投入。約10分後に火バサミで取り出して完成です。体験したその日に出来上がるので、おみやげとしても良さそうです。

【その2】
“眺める・触れる”だけでなく、陶芸を“味わう”!? 「フードスタンド」

  • トキノスミ 1,500円

    トキノスミ 1,500円

  • トキノドロ 1,500円

    トキノドロ 1,500円

ショップ内にはフードスタンドがあり、釉薬や粘土など陶芸にまつわる要素を“味覚”から体験できる(!?)メニューがいただけます。「トキノスミ」は、釉薬の原料のひとつでもある灰をイメージしたドリンク。中央の氷のような塊は、陶片をよく冷やしたものです。

清水さん 「見た目は真っ黒ですが、飲んでみると赤い印象に変わりますよ」

「どういうことだろう??」と思いながらいただいてみると、見た目からは想像していなかったスパイシーな味わいで、印象ががらりと変化。こちらは、竹炭・ザクロ・砂糖・生姜・スパイスを炭酸で割ったドリンクで、“器を焼くと鮮明に浮かび上がる釉薬の発色やその焼き上がりへの期待感”を表現しているそうです。その他にも、粘土を飲むような体験ができる「トキノドロ」など、全5種類のメニューが揃います。TOKINOHAの器を直に感じられるのも嬉しいポイントです。ショップで1万円以上購入の方は、メニューの中からひとつ無料で味わうことができます。

夏季限定のアイスクリームも登場中で、Instagramをフォローするとサービスでいただけます♪

夏季限定のアイスクリームも登場中で、Instagramをフォローするとサービスでいただけます♪

“味覚から体験”という視点から「CLAY_EAT | PROJECT」を新たに立ち上げ、2021年6月には「もし釉薬を食べたらどんな味がするだろう?」というテーマでイベントを開催。工房ツアーや釉薬にまつわるお話、黄色の釉薬で焼き上げられた器に釉薬をイメージしたお菓子とドリンク・・・ まさに知識からも味覚からも釉薬を味わうひとときとなったそう。次回は10月頃の開催予定。どのような内容で行われるのか楽しみですね♪

【その3】
特典色々♪ 「メンバーズ制度」で器をオーダー

1階はショップ・工房・フードスタンドとなっていますが、2階には会員限定の「メンバーズギャラリー」があり、器をセミオーダーすることができます。TOKINOHAがこれまで制作してきた500点以上の器がずらりと並び、眺めているのも楽しいひととき。職人さんと相談しながら、好みの色や形を組み合わせ、自分だけの器をオーダー。入会金11,000円・月会費1,100円となりますが、

・TOKINOHA Ceramic Studioと姉妹店HOTOKIで使える11,000円の金券を毎年プレゼント
・欠けてしまったTOKINOHAの器の金継ぎが年間10個まで無料
・器をオーダーできる
・イベントの先行予約

・・・と、さまざまな会員特典があります。「自分用はもちろん、オーダーした器をプレゼントにされる方もいらっしゃいますよ」と清水さん。器好きの方はお見逃しなく!

2階に並んでいる器は料理人さんがフルオーダーできる「素-siro」というブランドで、「真っ白な状態からあなた色に染まりたい」という意味があるそう。

清水さん 「元々建築をやっていたので、お客様から『こういうのを作って欲しい』という要望に応えるのが楽しいんです。ただ、どんな器を作ったとしても、TOKINOHAのフォルムがどこかに感じられる仕上がりになります」

器の使い手と作り手の思いがひとつになった、オンリーワンの器。使い手と作り手の距離がさらに縮まるのを感じられますね。

陶芸のイメージを明るく。
TOKINOHA Ceramic Studioの挑戦

TOKINOHAのフォルムを作るための削りの作業

TOKINOHAのフォルムを作るための削りの作業

TOKINOHA Ceramic Studioは若い職人さんが多く、日々制作に励まれています。「TOKINOTANE」というブランドでは、「未来の陶芸職人を育成するプロジェクト」として、練習過程で制作された器を手に取りやすい価格で販売されています。その売り上げの一部は職人さんに還元されているそう。

清水さん 「陶芸の工房といえば、暑かったり寒かったり、ごちゃごちゃしていたりというイメージがありますが、それでは若い方が憧れる職業にはなれないと思っていて・・・ 今回の改装では工房の環境も改善し、飛躍的に快適になりました。ここで働く職人の姿を見て、若い方々が職人を目指してくれるといいなと思います」

「意識して若者ばかりを雇っているというわけではないんですけどね」とおっしゃいながらも、清水焼を絶やさないよう、しっかりと未来を見つめる清水さん。

自由な旅が楽しめるようになったときにはぜひ足を運び、作り手さんとの距離を縮められるような体験をしてみてください。
  • オープン当初のTOKINOHA Ceramic Studioの皆さま

    オープン当初のTOKINOHA Ceramic Studioの皆さま

  • ©中島光行

    ©中島光行

■TOKINOHA Ceramic Studio
【営業時間】10:00~18:00
【定休日】火曜日
【電話】075-632-8722
【アクセス】京阪バス「川田」バス停から徒歩約3分 Google map
【公式ホームページ】https://tokinoha.jp/
【公式Facebook】https://www.facebook.com/tokinoha.kyoto
【公式Instagram】https://www.instagram.com/tokinoha_kyoto/
※掲載内容は2021年8月25日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. オパン

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