手ぬぐいでお馴染みの老舗「永楽屋」が美術館をオープン!

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創業400年を超える日本最古の綿布商・永楽屋。京みやげで人気の手ぬぐい・風呂敷などを手がけるお店が、2022年4月17日(日)に新たに「細辻伊兵衛美術館」をオープンされました。メイン展示となるのはもちろん“手ぬぐい”。いったいどんな館内になっているのか、永楽屋の広報ご担当・岩子さんにご案内いただきました。
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永楽屋とは?

昭和初期の永楽屋。当時は三条東洞院で商いをされていました。

昭和初期の永楽屋。当時は三条東洞院で商いをされていました。

永楽屋が綿布商として創業したのは、元和元年(1615)。創業以前に織田信長の御用商人をつとめたことから、信長より「永楽屋」の屋号と「細辻」の性を与えられました。現在は14代目が伝統を受け継ぎ、京都の行事や季節を感じられる様々な色柄の手ぬぐい・風呂敷など、日常使いに便利な布アイテムを手がけられています。

14代目・細辻伊兵衛さん(写真は手ぬぐいの製造工程の型染めの様子)

14代目・細辻伊兵衛さん(写真は手ぬぐいの製造工程の型染めの様子)

いざ、細辻伊兵衛美術館へ!

14代続く当主の名が冠された「細辻伊兵衛美術館」。ここ室町三条には本社ビルが建ち、もともと本店があった1階と2階フロアが美術館になりました。訪れてまず目を引くのが、入り口の輝く銅板! 神社仏閣の屋根にも見られる伝統的な工法“一文字葺”で仕上げられていて、年月の経過とともに綺麗な青緑になっていくのだそう。

建物に入ると、左手にミュージアムショップ、右手に美術館の入口が。こちらも銅板一文字葺が施されています。白い壁はよく見ると、壁紙ではなく手ぬぐいに使用されるさらし生地が貼られています!

入館チケットはなんと“手ぬぐい”!

入館の際、中学生以上の方ならチケットとして「手ぬぐい」がいただけます。手ぬぐいには、アーティストの立花文穂さんによるタイポグラフィーの「細辻伊兵衛美術館」ロゴが施され、おしゃれなデザインです。現当主が手がけたオリジナルの「十四世」という小巾(こはば)木綿生地で、一般的な手ぬぐいよりも密に織られ、発色も良いのだとか。

・・・ちなみに手ぬぐいは、江戸時代から今も変わらず長さ約36センチ。様々な用途に使用できるよう、裁縫を一切せず切りっぱなしになっています。端を縫い止めていない分乾きやすく、清潔に使い続けることができるという優れものです。

手ぬぐいチケットの下が半券になっていて、その部分を引き裂くため少し横糸がとれてしまいますが、使用するうちに馴染んでくるそうなのでご安心を。ほつれても1センチくらいとのこと。「使っているうちに柔らかい布に育つので、ぜひ実際に使って確かめてみてください」と岩子さん。チケットがおみやげに早変わりするとは嬉しいですね♪

1階の展示は歴代の「手ぬぐい」作品がずらり。

1階の展示室では、江戸・明治・大正・昭和・平成・令和の6つの時代に手がけられた「手ぬぐい」約30点が展示されています。今回は春の特別展(~6月20日)ということで、“桜”や“京の春”などをイメージした作品が多く飾られていました。そもそも、いつ頃から手ぬぐいは人気となったのでしょうか・・・

岩子さん 「日本で綿栽培が盛んとなったのが江戸時代。麻の着物から触り心地の良い綿の着物が好まれるようになり、その頃から一般的になったようです。着物作りの際に残った布を手ぬぐいにし、その名の通り手を拭いたり、ものを包んだり、使い方は様々。軽くてかさばらないことからおみやげにも重宝され、なかにはコレクターがいたほどでした」

永楽屋に遺る手ぬぐいには様々なデザインがあり、特に昭和初期に10代目が作った手ぬぐい事業部「百(もも)いろ会」の作品が多いそう。当時は毎年100種以上の色柄を、わずか3~4人で制作していたのだとか・・・ かなりのハイペースで生み出されていたことに驚きます。

岩子さん 「永楽屋には1,000枚ほどの手ぬぐいが遺っていて、当美術館ではそのなかから季節ごとにテーマを変え展示予定です。手ぬぐいの柄には、その時代の流行や文化を見ることができるので、その辺りも注目してご覧ください」

左:「やれやれ」(昭和7年、10世細辻伊兵衛作)、中央:「ドライブ」(昭和9年、10世細辻伊兵衛作)、右:「ペガサス」(大正、10世細辻伊兵衛作)

左:「やれやれ」(昭和7年、10世細辻伊兵衛作)、中央:「ドライブ」(昭和9年、10世細辻伊兵衛作)、右:「ペガサス」(大正、10世細辻伊兵衛作)

岩子さんにご案内いただいた展示のなかから、作品の注目ポイントをご紹介。
「やれやれ」は、まだ信号機のなかった頃、警官が交通整理を行っていた姿が描かれています。「ドライブ」は、男女の服装にご注目。女性は和装、男性は洋装に帽子を被っていて、他の作品にもその組み合わせが見られました。「恐らく当時の流行だったのではないでしょうか」と岩子さん。「ペガサス」は、まだ当時は珍しかったペガサスが描かれ、富士山の上空を羽ばたいています。体に描かれた模様や羽の色も斬新です。

他にも、円山公園の桜が描かれた「円山桜」や、舞妓さんが三十三間堂から平安神宮までお花見を楽しんでいるような「ふたり舞妓」など、現在の京都の風景を想像しながら眺めるのも楽しそう。まさに、アート作品としての手ぬぐいを堪能できます♪

2階には、400年の歴史を誇る貴重な資料を展示

  • 永楽屋の歴代と年表が描かれた手ぬぐい

    永楽屋の歴代と年表が描かれた手ぬぐい

  • 「手ぬぐい屏風」(明治中期)

    「手ぬぐい屏風」(明治中期)

2階の右側展示室では、14代続く永楽屋の貴重な資料を展示。歴代当主の実印や永楽屋のマークにもなっている永楽通宝など、創業以来約400年の歴史がしみじみと感じられます。

床の間飾り(江戸時代末期、8世細辻伊兵衛作)

床の間飾り(江戸時代末期、8世細辻伊兵衛作)

今回の展示作品の中で一番古い手ぬぐいは、こちらの江戸時代末期に作られた作品。当時最高峰の友禅染で、細辻家に残る最も古い手ぬぐいといいます。手ぬぐいではありますが、掛け軸の様なデザインになっていて、当時からアートとしても親しまれていたことがわかります。
  • 右の手ぬぐい“「美南見十二候」(鳥居清永)写し”にご注目。

    右の手ぬぐい“「美南見十二候」(鳥居清永)写し”にご注目。

  • 朱い部分は注染。

    朱い部分は注染。

  • 白枠内は型友禅。注染より全体にはっきりとしているように見えます。

    白枠内は型友禅。注染より全体にはっきりとしているように見えます。

「展示作品の中で特に珍しいものです」とご案内いただいたのが、鳥居清永作「美南見十二候」の写しの手ぬぐい。「一枚に2種類の染色方法が使われています」と岩子さん。朱色の部分が「注染」という技法で染められ、白い枠内は「型友禅」となっていて、染めの技法によって工場も職人さんも異なるそう。近くで眺めてみると、注染は柔らかい印象で、型友禅は線がはっきりとしている印象。手間暇かけて作られたこだわりの一枚ですね。
※「注染」「型友禅」の詳細は永楽屋の公式ホームページをチェック!
  • 「屏風 モノクローム手ぬぐい」

    「屏風 モノクローム手ぬぐい」

  • 有名ブランドや京都の老舗など、コラボ手ぬぐいもずらり。多彩なデザインに心も躍ります♪

    有名ブランドや京都の老舗など、コラボ手ぬぐいもずらり。多彩なデザインに心も躍ります♪

  • 立花文穂さんによる美術館ロゴの原画も展示されています。

    立花文穂さんによる美術館ロゴの原画も展示されています。

左側の展示室では、現当主である14代目が手がけた手ぬぐいが展示されています。特に個人的に惹かれたのが、金屏風に仕立てられた「モノクローム手ぬぐい」。祇園祭など京都の風景がデザインされていて、よく見るとモノクロームの中に金箔や螺鈿が施されています。訪れた際はぜひ細部までご注目を。

鑑賞後は、ミュージアムショップへ!

1階・2階には、ミュージアムショップが併設され、手ぬぐいが種類豊富に揃います。「百いろ会」の柄を使った復刻手ぬぐいや舞妓さんが描かれた京都らしいデザインのものなど、お気に入りを一枚に絞りきれず、コレクションしたくなる気持ちも納得です。風呂敷やバッグ、巾着、ハンカチなど、アイテム数も多いので、じっくり吟味しながら選んでみてください。

手ぬぐい一枚にも、時代背景や人々の暮らしを眺めることができ、また、制作に携わる方々の思いも感じられる貴重な機会。芸術性の高い永楽屋の手ぬぐいの世界に、ぜひ一度、ゆっくり浸ってみてください。

■細辻伊兵衛美術館
【開館時間】10:00~19:00(最終入館18:30)
【休館日】無休
※開館時間・休館日は変更になる場合があります。
【入館料】一般1,000円(手ぬぐいチケット付)※大高中生は学生証提示で100円引き、小学生以下300円(手ぬぐい無し)
【電話】075-256-0077
【アクセス】地下鉄烏丸線「烏丸御池駅」・市バス「新町御池」バス停から徒歩約3分 Google map
【公式ホームページ】https://hosotsuji-ihee-museum.com/
【公式Instagram】https://www.instagram.com/hosotsujiiheemuseum/
※掲載内容は2022年5月13日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. オパン

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