お手軽ハイキングへ! 石仏の里「当尾」を歩こう

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わらい仏

わらい仏

近年、健康志向のブームもあってか、登山やランニング、サイクリングなどを旅行の目的にされる方も多いそう。今回は、体力を使いすぎることなく、“ハイキング感覚”で京都旅を楽しむことができる「当尾(とうの)での石仏巡り」をご紹介。散策に役立つポイントもあわせてお届けします。
※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、京都旅行の際は、政府およびお住まいの都道府県と京都府の要請をご確認ください。京都にお越しの際は、マスクの着用・手指のアルコール消毒など、感染拡大防止の徹底にご協力をお願いいたします。日々、状況は変化しておりますので、事前に最新情報をご確認ください。

「当尾」とは、どんなところ?

当尾の里

当尾の里

京都府の南部、木津川市の東南部に広がる当尾。平安時代ごろから、世俗化した南都(奈良)仏教を厭う僧侶がこの地に移り住み修行に励んだと伝わります。そのことも影響して、当尾は“石仏の宝庫”としても有名。岩肌などに刻まれた磨崖仏や石仏が多く遺り、主要なものを巡る道はハイキングコースとしても整備されています。新緑が美しい時季、地域を代表する寺院、岩船寺と浄瑠璃寺も拝観しながら人気のコースを巡ってみました。

まずは当尾へのアクセスを確認

木津川市コミュニティバスは平日も運行

木津川市コミュニティバスは平日も運行

理由は後述しますが、当尾での石仏巡りは岩船寺からのスタートがおすすめ。京都駅から岩船寺までの公共交通機関を利用したアクセスで、一般的なものは下記となります。
 
★京都駅から岩船寺へのアクセス方法
JR京都駅 → JR奈良線 みやこ路快速・奈良行き(約40分) → JR「木津駅」乗換 → JR関西本線 大和路快速・加茂行き(約6分)→ JR「加茂駅」東口乗換 → 木津川市コミュニティバス当尾線 加茂山の家行き(約16分) → 「岩船寺」バス停下車徒歩約2分 → 岩船寺
 
お昼ごろには当尾に到着したいので、今回は京都駅を10時過ぎに出発しました。目的地は京都市街地からかなり遠方となりますが、それほど朝早くに出発する必要がないのも嬉しいポイント。
 POINT
・岩船寺付近やJR「加茂駅」付近にはお食事処があまりないので、電車での移動中などに軽食を食べたり、朝食を多めにとるなど対策をしましょう
・京都駅を出発するタイミングによっては、乗り継ぎで「待ち時間」が大きく発生しますので、事前に各乗物の時刻表をしっかりと調べましょう

散策するルートを考えましょう

木津川市観光協会オフィシャルサイト

木津川市観光協会オフィシャルサイト

当尾には石仏が色々なところに見られ、その巡り方も様々。特に行き慣れない場所であれば、JR「加茂駅」などで配布されているパンフレットを頼りにするのも手段のひとつです。今回は「木津川市観光協会」の公式ホームページに掲載されているモデルコースを参考にすることとしました。
 
 木津川市のおすすめ観光コースを紹介した「お勧めコース」の中から、「当尾の石仏を訪ねるみち 岩船寺から浄瑠璃寺へ」に沿って石仏を巡ります。
POINT
・石仏巡りの途中、電波の入りにくい場所もあり、スマホや携帯電話が利用できないこともありますのでご注意を

まずは岩船寺を拝観

  • 三重塔

    三重塔

  • 本堂

    本堂

  • 例年6月中旬に見頃となる紫陽花

    例年6月中旬に見頃となる紫陽花

JR「加茂駅」からバスに乗り、20分弱で岩船寺へ。12時過ぎに到着しました。山門をくぐり中へ進むと三重塔が目を引きますが、平安時代作という約3メートルを誇るご本尊「阿弥陀如来坐像」(重文)など、本堂に祀られる仏像の数々も見逃すことができません。また6月中旬から7月上旬にかけて見頃を迎える紫陽花の名所としても知られます。仏様に、ハイキングの無事もお祈りして石仏巡りをスタートしましょう!
 POINT
・紫陽花の時季に訪れるのであれば、1時間ほどの拝観時間は見積もりましょう
・水分補給用のドリンクをお持ちでない場合、岩船寺付近の自動販売機で必ず購入しておきましょう(浄瑠璃寺までの道中に自動販売機はありません)
・御手洗いは岩船寺山門前にありますので、そちらで済ませて石仏巡りに向かいましょう
 ■岩船寺
【拝観時間】8:30~17:00(12月~2月は9:00~16:00)※拝観受付は15分前まで
【拝観料】500円
【電話】0774-76-3390
【アクセス】JR奈良線「木津駅」乗換、JR関西本線「加茂駅」乗換、木津川市コミュニティバス当尾線「岩船寺」バス停から徒歩すぐ Google map
【公式ホームページ】https://gansenji.or.jp/
【公式Instagram】https://www.instagram.com/gansenji_temple/

基本的には山道を歩きます

  • 未舗装区間も多いですが、ある程度は整備されています

    未舗装区間も多いですが、ある程度は整備されています

  • 岩船寺~浄瑠璃寺間の最も“ハード”な区間。「下り坂」であることに救われます・・・

    岩船寺~浄瑠璃寺間の最も“ハード”な区間。「下り坂」であることに救われます・・・

  • 随所に案内版が設置されています

    随所に案内版が設置されています

  • 念のため地図は必携ですが、案内表示だけでも迷うことなく進めました

    念のため地図は必携ですが、案内表示だけでも迷うことなく進めました

“定番”ともいえる人気コースということもあってか、山間部を抜けていくことにはなるものの岩船寺~浄瑠璃寺間の散策路はおおよそ整備されています(車道も歩きます)。坂道では手すりも設置されているのが安心ポイントの1つです。また岩船寺から浄瑠璃寺に向かっていく場合は、基本的には「下り坂」となるので体力の消費も軽減されます。これを反対に進むとなると・・・ より気軽に楽しむのであれば、やはり岩船寺から出発するのが良いでしょう。また少なからず足下の悪い区間があるので、雨天やその翌日に訪れることは控えた方が良いかもしれません。
 POINT
・すべりにくく履き慣れた歩きやすい靴をおすすめします
・歩いていると暑くなることが予想されますので、状況に応じて脱ぎ着できる服装が良いでしょう
・リュックや肩がけのカバンなどを携行し両手をあけた状態にすることをおすすめします

 願い事を叶えてくれるお不動さん

  • 一願不動

    一願不動

  • 表情をアップで見てみると・・・

    表情をアップで見てみると・・・

岩船寺を出て徒歩5分ほど、いよいよ最初の石仏とご対面です。こちらは鎌倉時代に造られたとされる一願不動(岩船不動明王立像)。一心にお願いすると、1つだけ願い事を叶えてくれるそう。でもその表情は少々お怒りのご様子・・・ これは人間を叱っている姿を表しているそうなのですが、願いを叶えてくれるということを考えると、叱ることもまた愛情の裏返しでしょうか。それでは次の石仏に向けて歩を進めます。
 POINT
・一願不動の表情が見えにくい場合、デジカメなどで撮影し、デジカメ上で撮影画像を拡大して表情を確認しても良いでしょう。

眺めるこちらの表情も柔らかくなってしまいそう

  • わらい仏

    わらい仏

  • 皆さん優しそうなご表情

    皆さん優しそうなご表情

  • 一願不動からわらい仏に至るまでの坂道

    一願不動からわらい仏に至るまでの坂道

一願不動から歩いて10分ほど、続いての石仏が姿を現します。ここに至るまでの区間は、手すりこそあるものの、やや急で長い坂が続きます(写真3枚目)。進行方向的には「下り坂」となるので、その恩恵を最も感じる区間となりました。
 
下り坂の先に現れたのは、鎌倉時代作のわらい仏(岩船阿弥陀三尊磨崖仏)。その名の通り、先ほどのお不動さんとは対照的に微笑みを浮かべており、当尾を代表する石仏の1つでアイドル的な存在です。両脇の仏様もどこか柔らかな印象で、ここまでの疲れがじわーっと消えていくような感じさえしました。

 傍らで眠るお地蔵様

眠り仏

眠り仏

わらい仏のすぐ側に、地面から上半身だけを露わした仏様が。その表情や土に埋もれる様子から眠り仏(埋もれ地蔵)と呼ばれますが、手にはしっかりと錫杖を握られています。あえて掘り起こされることなく祀られているそうですが、当尾にはまだまだ未発見の石仏もあるのかなぁ・・・ なんて思いながら次の場所へ。
 

散策中に出会った色々なもの

  • 岩船寺前の「吊り店」

    岩船寺前の「吊り店」

  • どの商品も安い!

    どの商品も安い!

  • 小さなお花

    小さなお花

  • 小さなお花

    小さなお花

  • 新緑もきれい♪

    新緑もきれい♪

訪れたのは新緑が眩しく、色々な草花が芽吹く季節。石仏だけでなく、自然を満喫することができるのも当尾の魅力です。
また、岩船寺や浄瑠璃寺近くでは、無人営業の“吊り店(つりみせ)”が数軒見られます。地元の野菜を使用したお漬け物などを販売(お値打ち価格!)。旅を振り返りながらご自宅やホテルでいただくのも良いかもしれませんね。

お地蔵様を見落とすなかれ!

  • 正面からは阿弥陀様しか見ることができません

    正面からは阿弥陀様しか見ることができません

  • 向かって左側に回り込んでみると・・・ お地蔵様を発見!

    向かって左側に回り込んでみると・・・ お地蔵様を発見!

わらい仏・眠り仏からは歩くこと10分ほどで、南北朝時代作のからすの壺二尊(阿弥陀・地蔵磨崖仏)に到着です。でも明らかに阿弥陀様しかいらっしゃいません。残るお地蔵様はというと、正面向かって左側に。少し回り込んでみると・・・ いらっしゃいました!
当尾を訪れてから数体の石仏を見てきましたが、「よくここまで彫れるなぁ・・・」と感心の連続。彫るのに適した花崗岩であるそうですが、それを差し引いても技術の高さに驚いてしまいます。

 当尾に遺る最古の石仏?

やぶの中三尊磨崖仏

やぶの中三尊磨崖仏

しばらく歩くとバス停などもある車道に。浄瑠璃寺まであと僅かですが、その途中にあるやぶの中三尊磨崖仏に立ち寄ります。文字通りちょっとした藪の中にいらっしゃいましたが、車道からはほんの数秒ほどの場所なので、労せずたどり着くことができました。かつてこの場所には浄瑠璃寺の塔頭寺院があり、そのご本尊であったと考えられているそう。中央のお地蔵様には「弘長二年」(1262年)の銘が見られますが、当尾の石仏群で見られる最古の年号となるそうです。

 思いのほか順調だったので、ちょっと寄り道を。

  • 首切地蔵

    首切地蔵

  • 大門石仏群

    大門石仏群

  • この表示のある場所から谷へ降りて進むと、大門阿弥陀磨崖仏の側まで行けるようですが、悪路のため回避。真っ直ぐアスファルトを進みます

    この表示のある場所から谷へ降りて進むと、大門阿弥陀磨崖仏の側まで行けるようですが、悪路のため回避。真っ直ぐアスファルトを進みます

  • 数秒ほどでこちらに到着。そこから眺めてみると・・・

    数秒ほどでこちらに到着。そこから眺めてみると・・・

  • 大門阿弥陀磨崖仏とご対面♪

    大門阿弥陀磨崖仏とご対面♪

やぶの中三尊磨崖仏からゴールとなる浄瑠璃寺までは車道を歩いて5分ほど・・・ 実は岩船寺をスタートしてここまでおよそ50分ほどしか経っていません。写真撮影も楽しみながら歩いてきたのですが、意外とあっさり浄瑠璃寺の近くまでやってきました。時間に余裕があるので、付近の石仏を追加で巡ってみることに。

やぶの中三尊から5分ほどの首切地蔵(東小阿弥陀石龕仏)、そしてさらに5分ほど歩くと大門石仏群が。短時間で次々と石仏に出会うことができます。更に15分ほど進むと、インパクト十分な大門阿弥陀磨崖仏とご対面。途中、磨崖仏の側までたどりつけるという谷へ降りる道がありましたが、道が険しそうだったのでここは回避した方が良さそうです。少し進むと展望できる場所があるので、そこから鑑賞しましょう。ここまで来たら、歩いてきた道を引き返して浄瑠璃寺へ向かいます。
 POINT
・後述する浄瑠璃寺前からのバスの発車時刻を踏まえて時間に余裕がありそうなら、「寄り道」を検討すると良いでしょう
・大門阿弥陀磨崖仏から、やぶの中三尊磨崖仏や浄瑠璃寺方面に戻る際は緩やかな登り坂が続きます

 いよいよ浄瑠璃寺へ・・・ その前に、ちょっと疲れたなら門前で休憩を

  • あ志び乃店

    あ志び乃店

  • 山菜とろろそば(1,100円)

    山菜とろろそば(1,100円)

いよいよ最終地点となる浄瑠璃寺へ・・・ と、その前に、ちょっと疲れたなら門前の「あ志び乃店」で休憩を。地元のものや国産素材にこだわったお蕎麦やうどんの定食にくわえ、コーヒーやわらび餅などをいただくことができ、ひと休みにはぴったり。店舗の前に広がるお庭には、四季折々の草花が彩り、ここまでの疲れを一気に癒やしてくれそうです。
 POINT
・石仏巡りを浄瑠璃寺から始める場合は、「あ志び乃店」で腹ごしらえをするのもおすすめ
 ■あ志び乃店
【営業時間】10:00~16:30
【定休日】不定休
【電話】0774-76-2791
【アクセス】木津川市コミュニティバス当尾線「浄瑠璃寺前」バス停から徒歩すぐ Google map
【公式ホームページ】http://ashibinomise.life.coocan.jp/
【公式Twiettr】https://twitter.com/ashibi_kamo
★「そうだ 京都、行こう。」エクスプレス・カード特典協力先です。

 貴重な文化財が多い当尾の代表的寺院

  • 三重塔

    三重塔

  • 本堂

    本堂

中央に池を、その東西に三重塔(国宝)と本堂(国宝)を配するなど、浄瑠璃寺の特徴的な境内構造は浄土信仰の世界観を表したものであるそう。9躯の阿弥陀仏(国宝)を祀ることで知られる本堂は、平安時代の京都に多く建てられた「九体阿弥陀堂」で唯一現存する貴重なものです。9躯のうち2躯は修復中のため奈良国立博物館内修理所に搬出されていますが、せっかくなら内部も拝観しておきたいもの。ただし、まずは三重塔にお参りし、そこから振り返り、池越しに本堂に向かってお祈りをするのが、極楽浄土の世界を体現したこのお寺の正しい拝観方法とのこと。その後に、本堂の中をお参りして帰りましょう。
 POINT
・岩船寺と同じく素晴らしい仏様の数々と出会えます。拝観時間は最低でも30分ほどは想定しておいた方が良いでしょう
 ■浄瑠璃寺
【拝観時間】9:00~17:00(12月~2月は10:00~16:00)※拝観受付は30分前まで
【拝観料】庭園無料、本堂400円
【電話】0774-76-2390
【アクセス】JR奈良線「木津駅」乗換、JR関西本線「加茂駅」乗換、木津川市コミュニティバス当尾線「浄瑠璃寺前」バス停から徒歩すぐ Google map

 日帰り旅も十分可能

JR加茂駅

JR加茂駅

石仏巡りの旅は、浄瑠璃寺にて終了。浄瑠璃寺前からは毎時14分にコミュニティバスが出発となり、最終は16時14分発の便。今回は15時14分の便に乗ってJR「加茂駅」に戻りました。岩船寺から浄瑠璃寺までは、両方のお寺の拝観、そして石仏巡りもあわせて3時間ほどでした。バスの最終便を考えると、まだまだゆっくりと拝観や散策を楽しむことができたようです。
電車を乗り継いでJR「京都駅」にたどり着いたのは17時15分頃。朝は少し早い出発になりますが、関東方面からの日帰り旅も可能となりますね。石仏巡りのハイキング、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
※掲載内容は2022年5月20日時点の情報です。最新情報は各掲載先へご確認ください。

Written by. カツオ

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