7月にリニューアル! 老舗酒蔵「松井酒造」の最新情報

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鴨川の程近く。京都の街中に蔵を構え、まもなく創業300年を迎える松井酒造。日本酒「神蔵(かぐら)」を醸す酒蔵で、生産の多くは京都市内にしか流通しておらず、県外では“レア”なお酒かもしれません。そんな松井酒造が今年(2022年)の7月に酒蔵と店舗を大幅リニューアルされたとのこと。いったいどんな変化があったのか、15代目であり、自らも杜氏としてお酒を醸し続けている松井治右衛門さんにご案内いただきました。その模様をレポートします!
※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、京都旅行の際は、政府およびお住まいの都道府県と京都府の要請をご確認ください。京都にお越しの際は、マスクの着用・手指のアルコール消毒など、感染拡大防止の徹底にご協力をお願いいたします。日々、状況は変化しておりますので、事前に最新情報をご確認ください。

訪ねてみてびっくり! マンションの1階に酒蔵がある理由とは?

  • 松井酒造はマンションの1階にあります。    

    松井酒造はマンションの1階にあります。    

  • 向かって左側には、井戸や祠があり、小さな二宮金次郎像も。

    向かって左側には、井戸や祠があり、小さな二宮金次郎像も。

  • こちらはかつて井戸水を汲む際に使用されていたそう。藁靴は江戸時代のものだとか!

    こちらはかつて井戸水を汲む際に使用されていたそう。藁靴は江戸時代のものだとか!

松井酒造の創業は、享保11年(1726)。兵庫県北部の香住(かすみ)という町でお酒造りを始め、江戸末期に京都の河原町竹屋町に移転。その後、現在の場所に移ったのは大正時代、13代目の頃になります。

昭和の終わる頃には、京阪電車が三条から出町柳まで延伸することになり・・・ 地下工事となるので酒造りに大事な水が出なくなったり、水質が変わるなどの可能性があり、この場所での酒造りを一旦諦め、伏見にて数社合同の会社でお酒造りを行っていたそうです。

リニューアル前の松井酒造。通路や駐車場(写真右)部分に建物を増築されました。

リニューアル前の松井酒造。通路や駐車場(写真右)部分に建物を増築されました。

そして、平成21年(2009)。「もう一度同じ場所で」という14代目の想いから、再びこの地でお酒造りを再開。かつての蔵はマンションに建て替えられ、資材屋さんに貸していた1階のスペースに設備を整えたのだそう。初めて訪れた方は、「酒蔵なのに、マンションの1階?!」と驚かれることも多いのだとか。

蔵の建物は、今回のリニューアルに伴い、入り口部分を大幅に増築。中はいったいどんな風になっているのでしょうか・・・ 早速入ってみましょう!

店内に入ると、美しいカウンター。井戸水を使用した手洗い場も完備。

  • テイスティングカウンター。<br/>
ちなみに、写真左上のでっぱりは、元々の建物の軒部分。

    テイスティングカウンター。
    ちなみに、写真左上のでっぱりは、元々の建物の軒部分。

  • 手洗い場。ガラスを挟んで奥の方に、ライトに照らされた大きな石があります。

    手洗い場。ガラスを挟んで奥の方に、ライトに照らされた大きな石があります。

  • 15代目・松井治右衛門さん

    15代目・松井治右衛門さん

中に入ると、まず目に入るのが、新設された大きなカウンターテーブル。こちらで日本酒のテイスティングができるのですが、その様子はまた後ほど・・・ カウンターの向かいには手洗い場ができ、センサー式の水道からは酒造りと同じ井戸水が出ます。試飲グラスをすすいだり、和らぎ水としていただくことも可能です。手洗い場の奥には貯蔵庫があり、こちらでは主に低温殺菌を行った無濾過の日本酒を熟成させています。

松井さん 「貯蔵庫はだいたい10~15度で保たれています。奥の方に注連縄が掛けられた大きな石があるの見えますか? マンションが建つ以前からこの場所にあり、どうにも動かせなくて・・・ 今ではお酒の熟成を見守る石になっています」

まるで蔵を守るご神石のようですね。貯蔵庫の新設にあたり、こちらの石はご近所にある吉田神社の神職さんにご祈祷いただいたそう。眺めているだけで御利益を感じられそうです。

日本酒が並ぶ冷蔵庫も大きくなりました!

店内を奥に進むと、こちらは日本酒などを購入できるショップ。「以前に比べて冷蔵庫が大きくなったんですよ」と松井さん。2009年に酒蔵を再開された際に誕生した代表銘柄「神蔵」や、創業当時から続くにごり酒「富士千歳」など、約15~20種類の日本酒・リキュールが並びます。
  • 純米 神蔵KAGURA 無濾過・無加水・生酒(ルリ)

    純米 神蔵KAGURA 無濾過・無加水・生酒(ルリ)

  • 機械栓瓶。<br/>
開封されたものかどうかわかるように、シールは綺麗に剥がれないようになっています。

    機械栓瓶。
    開封されたものかどうかわかるように、シールは綺麗に剥がれないようになっています。

ちなみに、「神蔵」の名前の由来とは?

松井さん 「昔からお酒は、“神様からのいただきもの”といわれています。神様への感謝の気持ちを忘れないようにと、この名前を付けました。ちなみに、神蔵の機械詮瓶に貼られているシール“美酒如日輪(びしゅにちりんのごとし)”は、弊社では太陽光発電を導入し約6割の電力を賄っていることから、“太陽のように美味しいお酒”という意味を込めています」

とても謙虚なネーミング、環境にも配慮した酒造り・・・ そして、神蔵の酒瓶は、2021年にリニューアル(季節限定のものは引き続き機械栓瓶)され、瓶に金の文字が煌めくスタイリッシュなデザインになりました。瓶上部には、器の割れやヒビなどに施される伝統的な修復技法“金継ぎ”をイメージしたデザインが施されていて、「傷も酒蔵の歴史の大事な一部です」と松井さん。こちらの瓶、実は最新の“仕掛け”があるのです・・・
松井さん 「スマホでダウンロードした専用アプリを開き、瓶にかざすと・・・ 酒造りの工程を紹介する動画が流れるんです」

なんと!! 酒蔵見学をおうちで楽しめるとは嬉しいですね。動画は、松井さん自らが撮影されているそうで、普段の酒蔵見学では見ることのできないような、近いアングルで作業を拝見できます。麹を作る風景など、動画の内容は2週間ごとに変わるそうなので、ぜひ日本酒を味わいながら眺めてみてください。
  • 新しくなったリーフレット。描かれているのは「カグラ様」。手には稲穂を持っています。

    新しくなったリーフレット。描かれているのは「カグラ様」。手には稲穂を持っています。

  • 7月に登場した紙パックの日本酒「神蔵leap」も「カグラ様」デザインです。

    7月に登場した紙パックの日本酒「神蔵leap」も「カグラ様」デザインです。

ちなみに・・・ 瓶だけでなく、この度新しくなったリーフレットにもスマホをかざしてみると・・・ 「神蔵」をイメージして描かれたという美しいキャラクター「カグラ様」が動いて喋ります! ぜひこちらも試してみてくださいね。
※「カグラ様」のキャラクターデザインは米山舞さん、声優は相羽あいなさんです。知る人ぞ知るお二方なのです!

京都の酒蔵ならではの、新たな取り組み。

神蔵「蜜號(みつごう)」 京ゆず 無濾過日本酒仕込み・濃厚ヨーグルト 無濾過日本酒仕込み

神蔵「蜜號(みつごう)」 京ゆず 無濾過日本酒仕込み・濃厚ヨーグルト 無濾過日本酒仕込み

昨年より日本酒を使ったリキュールの販売も始まり、現在、ゆずとヨーグルトの2種類がラインアップ。どちらも日本酒仕込みで、お酒初心者の方でも飲みやすい柔らかな味わいです。

松井さん 「今後、梅酒などの果実酒も増やしていければと考えています。今年新たに日本酒よりもアルコール度数の高いスピリッツの製造免許も取得したので、もっと幅広いリキュールも作っていく予定です」
  • 酒蔵内の増築されたお部屋に蒸留器が置かれています。建物の外からも見えます。

    酒蔵内の増築されたお部屋に蒸留器が置かれています。建物の外からも見えます。

  • 大きなタンクは眺めているだけでワクワクします・・・

    大きなタンクは眺めているだけでワクワクします・・・

カウンターテーブルの奥には作業場があり、大きな蒸留器が設置されています。こちらで新たにお酒造りを始められるとのこと! 「香りの影響を受けないように」と、日本酒造りとは少し離れた場所となっています。「実はこの蒸留器を置くために、今回のリニューアルに踏み切ったんですよ」と松井さん。

松井さん 「これから、日本酒を利用したジンや、京都酵母・和三盆を使ったラムなど、原料も色々に採り入れて京都らしいお酒を作ろうと考えています。今年の9月頃にはお披露目できるかと思いますので、楽しみにしていてください」

お待ちかね! 日本酒のテイスティングタイム♪

さて、ここからは日本酒好きなら気になる“テイスティング”のご紹介です。
松井酒造では今回のリニューアルにあわせて、新たに非接触を心がけた日本酒サーバーを導入。入り口近くと、ショップの一角にひとつずつ設置されていて、現在は11種類の日本酒が味わえます。
まずは、チャージ式のカード(こちらもカグラ様デザインです♪)を購入し、グラスを受け取ります。次にサーバーにカードを差し込み、飲みたいお酒の注ぎ口までグラスを持ち上げましょう。その真上にある液晶画面で量(30・60・120ml、250円~)を選ぶとお酒が注がれる仕組みです。カードは、50円からチャージでき、余った分は次に訪れた際、使用できます。
  • 左から、酒米のおむすび~京都のお漬物と一緒に~ 650円、蔵元特製 具だくさんなかす汁 お米のおせんべい付 600円、本日の肴 三種盛 750円

    左から、酒米のおむすび~京都のお漬物と一緒に~ 650円、蔵元特製 具だくさんなかす汁 お米のおせんべい付 600円、本日の肴 三種盛 750円

  • テイスティングしながら、モニターで蔵見学♪

    テイスティングしながら、モニターで蔵見学♪

松井酒造のテイスティングは肴メニューも豊富! 酒米や酒かすを使った蔵ならではの肴はぜひいただきたい逸品。メニューはすべて若女将さんが考案されているそうで、ボリュームも満点。日本酒が進むこと間違いなしです。観光途中、「ちょっとだけ飲みたいな」というときにも利用したいスペースではないでしょうか。

ぜひ酒蔵に、足を運んでみてください!

  • 醗酵奇譚と書かれた本型の箱。

    醗酵奇譚と書かれた本型の箱。

  • 松井さん、ご案内いただきありがとうございました!

    松井さん、ご案内いただきありがとうございました!

様々にリニューアルを遂げた松井酒造。まだまだ新しいお酒も登場予定なので、これからの動向にも注目です♪ 最後に、お酒の箱として使用されている、本のような形をした「醗酵奇譚(はっこうきたん)」についてお伺いしました。

松井さん 「箱の中にはお酒と一緒に、“お酒にまつわる不思議なお話”も同封していますので、そちらもぜひ読んでみてください。本を読むような感覚で、お酒を飲んでもらえると嬉しいです」

皆さんもぜひ酒蔵を訪れて蔵人の思いに触れながら、日本酒とじっくり向き合ってみてください♪

■松井酒造
【営業時間】9:00~18:00 ※テイスティングルームは11:00~18:00(ラストオーダー17:00)
【定休日】日曜日・祝日
【電話】075-771-0246
【アクセス】市バス「京大正門前」バス停から徒歩約6分、京阪鴨東線「出町柳駅」から徒歩約10分 Google map
【公式ホームページ】https://matsuishuzo.com/
【公式Facebook】https://www.facebook.com/KurabitoMatsuishuzo
【公式Twitter】https://twitter.com/Kagura1726
※掲載内容は2022年8月24日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. オパン

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