京都の企業ミュージアムを訪ねて。あの製品にも技術が使われた!? 「京セラ」編

  • 体験
  • 知る・学ぶ

京都生まれの様々な企業が運営するミュージアムをご紹介するシリーズ。今回は、世界的にも有名な大手電子部品メーカー・京セラ株式会社(以下、京セラ)の3施設(京セラギャラリー・京セラファインセラミック館・稲盛ライブラリー)をご紹介。京都で誕生した京セラの歴史やその技術をひも解くべく訪ねてみました。
※館内は撮影禁止です。今回は特別な許可を得て撮影させていただきました。

伏見区にある京セラの本社へ。

  • 稲盛ライブラリー

    稲盛ライブラリー

昭和34年(1959)に、ファインセラミックスの専門メーカー・京都セラミック株式会社として創業した京セラ。“ファインセラミックス”は、天然鉱物を原料とする陶磁器やガラス、セメントなどに対し、精選された人工原料を使用し、徹底的な管理のもと製造された窯業製品のこと(詳しくは京セラの公式ホームページにてチェック)。現在では半導体や自動車、産業機械、医療機器など幅広い分野で活躍しています。ファインセラミックスの名付け親は、「経営の神様」とも呼ばれる、京セラ創業者の稲盛和夫氏なのだそう。

京セラ本社内の1階に京セラギャラリー、2階に京セラファインセラミック館、そして隣に建つビルに、稲盛ライブラリーがあります。
京セラギャラリー京セラが所蔵する美術品や工芸品などを展示。
京セラファインセラミック館ファインセラミックスの特長や用途についての解説や、京セラが開発してきた数多くの製品を展示。
稲盛ライブラリー:稲盛和夫氏の経営・人生哲学である「京セラフィロソフィ」を中心に、経営者としての足跡や様々な社会活動を展示。
まずは本社内に平成10年(1998)に開館した京セラギャラリー・京セラファインセラミック館からご紹介します!

【京セラギャラリー】
ピカソなど名だたる芸術家作品と、ファインセラミックスで作られた茶器も展示!

  • ピカソ銅板画「347のシリーズ」は、15点を展示。

    ピカソ銅板画「347のシリーズ」は、15点を展示。

  • 平山郁夫「平等院」や上村松篁「暖日」など、現代日本画もずらり。

    平山郁夫「平等院」や上村松篁「暖日」など、現代日本画もずらり。

  • 乾隆ガラスのひとつである小さな鼻煙壷(びえんこ)。絵は、小さな口から細い筆を挿し入れ、内側から描かれているそう!

    乾隆ガラスのひとつである小さな鼻煙壷(びえんこ)。絵は、小さな口から細い筆を挿し入れ、内側から描かれているそう!

まずはじめにご紹介するのは、京セラギャラリーです。京セラが取り組む社会貢献活動の一環として、地域文化の発展を願い開館されました。パブロ・ピカソ(1881-1973)の晩年の代表作とされる銅板画「347のシリーズ」や、平山郁夫、上村松篁、東山魁夷などが描いた現代日本画、中国清代に作られた乾隆ガラスなど、多くの所蔵品を常設展示。名だたる作品をなんと無料で拝見できるのも嬉しいポイントです。開館は平日のみで比較的来館者も少なく、じっくりと作品と向き合えそう。定期的に展示替えも行われるので、現在の展示内容は公式ホームページでご確認ください。
  • フィンセラミック茶器 玉磁「煎茶茶碗 磯菊模様」

    フィンセラミック茶器 玉磁「煎茶茶碗 磯菊模様」

  • ファインセラミック茶器 玉磁「茶入 四君子」

    ファインセラミック茶器 玉磁「茶入 四君子」

ファインセラミックスの製造技術を利用して作られた「ファインセラミック茶器」も展示。天然の素材を用いて作られる通常の陶磁器とは異なる独特の透光性や透明感、美しい光沢、深い色合いが特長とのことですので、ぜひ皆さんの目で確かめてみてください。

【京セラファインセラミック館】
ファインセラミックスを知る・学ぶ。懐かしのあの製品の部品にも??

  • 縄文土器、弥生土器・・・ と、順番にファインセラミックスが登場するまでの歴史を辿ります。

    縄文土器、弥生土器・・・ と、順番にファインセラミックスが登場するまでの歴史を辿ります。

  • セラミックスの分類。フィンセラミックスは土器や陶器などと同じ陶磁器類です。

    セラミックスの分類。フィンセラミックスは土器や陶器などと同じ陶磁器類です。

  • 代表的なファインセラミックスの特徴をご紹介する展示。<br/>
科学的な記号が並んでいますが、説明付きなので、苦手な方もご安心を♪<br/>

    代表的なファインセラミックスの特徴をご紹介する展示。
    科学的な記号が並んでいますが、説明付きなので、苦手な方もご安心を♪

続いて2階へ移動し、京セラファインセラミック館へ。電子機器などの部品として使われることの多いファインセラミックスの歴史や基礎知識、特性、どのようなものに使用されているかなどをわかりやすく展示されています。
  • ファインセラミックスの製造工程を学べる装置(写真は「焼成」と言われる工程)。ボタンを押すと・・・

    ファインセラミックスの製造工程を学べる装置(写真は「焼成」と言われる工程)。ボタンを押すと・・・

  • 実際に製品(模型)が流れていき、よく見ると焼成され色が変わっています!

    実際に製品(模型)が流れていき、よく見ると焼成され色が変わっています!

  • 鉄とファインセラミックス、どれだけ重さが違うでしょう?

    鉄とファインセラミックス、どれだけ重さが違うでしょう?

  • 台の下にあるレバーをそれぞれ押し上げて重さを比べます。鉄よりファインセラミックスが軽い!

    台の下にあるレバーをそれぞれ押し上げて重さを比べます。鉄よりファインセラミックスが軽い!

館内にはファインセラミックスがどのように製造されているのかを学べる装置があり、まるで工場見学をしているようなワクワク感。ファインセラミックスの特性である、「高硬度」「耐熱性」「圧電性」「剛性」などを、体験・体感できるコーナーもあり、お子様の自由研究にもぴったりです♪
  • 創業当時(1959年)から年代を追って、開発してきた製品を展示。

    創業当時(1959年)から年代を追って、開発してきた製品を展示。

  • 創業当初はテレビやラジオなどに使われていた基板などが並びます。

    創業当初はテレビやラジオなどに使われていた基板などが並びます。

  • 東芝製の電子レンジ(1972年)の中にも京セラで製造された部品が。

    東芝製の電子レンジ(1972年)の中にも京セラで製造された部品が。

  • ビデオカメラやカセットプレーヤーの中にも京セラ製の細か~い部品が使われています。

    ビデオカメラやカセットプレーヤーの中にも京セラ製の細か~い部品が使われています。

  • 懐かしの携帯電話がずらりと並び、つい思い出に浸ってしまいました・・・

    懐かしの携帯電話がずらりと並び、つい思い出に浸ってしまいました・・・

大人の皆さまに特に響きそうなのが、京セラが開発してきた数多くの製品が並ぶコーナー。創業当時から年代を追って展示されていて、「この製品にも京セラの部品が!」と驚いてしまいます。電子レンジやビデオカメラ、カセットプレーヤー、プレイステーション、携帯電話・・・ と、昭和~平成初期を感じられる懐かしいデザインの製品も並び、当時の思い出が蘇ってきそう。日常生活で何気なく使っている製品の中にも、どこかに京セラの部品が使われているのかもしれませんね。

ファインセラミックスは、“極限の世界”でも活躍中。小惑星探査機「はやぶさ」に搭載されたリチウムイオン電池端子の部品や、約11,000メートルの深海にある地震観測現場を支える耐圧容器も拝見することができます。今後、京セラの技術でファインセラミックスがどのようなものに活用されていくのか、目が離せません。

【稲盛ライブラリー】
一般の方の希望で公開! 京セラの創業者・稲盛和夫氏とは?

入口を入ってすぐの展示スペースでは稲盛氏がお出迎え。 

入口を入ってすぐの展示スペースでは稲盛氏がお出迎え。 

最後に、本館隣の建物にある「稲盛ライブラリー」をご紹介します。

稲盛氏の実体験や経験則に基づいた経営・人生哲学である「京セラフィロソフィ」を学び、継承することを目的に、2013年に開設された稲盛ライブラリー。元々は、従業員向けに開設されたそうですが、稲盛氏について知りたい、学びたいという一般の方が多く、広く公開されることになったのだとか。

8階建てのビルの1階から5階のフロアをたっぷり使い、技術・経営、思想などテーマにわけて展示されています。
  • ブラウン管のテレビ。よく見ると・・・

    ブラウン管のテレビ。よく見ると・・・

  • 稲盛氏が松風工業株式会社時代に開発したU字ケルシマが。後に創業期の京セラを支える製品になったのだとか。

    稲盛氏が松風工業株式会社時代に開発したU字ケルシマが。後に創業期の京セラを支える製品になったのだとか。

  • 創業当初の本社工場模型をよく見ると・・・<br/>

    創業当初の本社工場模型をよく見ると・・・

  • 奥の一室には稲盛氏の姿があり、壁の額には稲盛氏が敬愛した西郷隆盛が好んだ言葉「敬天愛人」が。現在も京セラの社是に掲げられています。

    奥の一室には稲盛氏の姿があり、壁の額には稲盛氏が敬愛した西郷隆盛が好んだ言葉「敬天愛人」が。現在も京セラの社是に掲げられています。

  • 1980年代に製作されたハンドヘルドコンピュータ。プログラム開発には若き日のビル・ゲイツも関わっていたそう!

    1980年代に製作されたハンドヘルドコンピュータ。プログラム開発には若き日のビル・ゲイツも関わっていたそう!

その一部をご紹介すると・・・
2階では、京セラ創業からの稲盛氏の歴史を詳しくご紹介されていて、どのように大企業へと成長したかを知ることができます。京セラが手がけた製品もあわせて展示されているので、先ほどの京セラファインセラミック館同様に、レトロなものが好きな方はこちらも必見です。
  • 稲盛氏の思想が読み取れる自筆手帳。細かい字がびっしりです・・・

    稲盛氏の思想が読み取れる自筆手帳。細かい字がびっしりです・・・

  • 蒲生(がもう)工場時代の机。机の上にはIBM社のモットーである「考えよ(THINK)」と書かれたプレートが。

    蒲生(がもう)工場時代の机。机の上にはIBM社のモットーである「考えよ(THINK)」と書かれたプレートが。

3階では、稲盛氏の人生・経営哲学がご紹介されていて、「地味な努力を積み重ねる」や、「損得で判断するのではなく、善悪で判断することが大事」など稲盛氏のお言葉は、経営だけでなく、日常の暮らしに置き換えても心に響くものばかりです・・・

京セラ創業の2週間前から書き綴られたとされる自筆手帳や、創業当初に愛用されていた鞄と当時の名刺、初の自前工場として開業した蒲生工場時代の机など貴重な品々も展示。稲盛氏のお人柄を少し身近に感じることができそうです。

京セラギャラリー、京セラファインセラミック館を訪れたなら、ぜひ稲盛ライブラリーもあわあせて足を運んでみてはいかがでしょうか。

■京セラギャラリー・京セラファインセラミック館・稲盛ライブラリー
【開館時間】10:00~17:00 ※一週間前までに公式ホームページにて要予約
【休館日】土曜日・日曜日、祝日、会社休業日、展示替時 ※開館日カレンダーをご確認ください
【料金】無料
【電話】075-604-6141
【アクセス】地下鉄烏丸線「竹田駅」から徒歩約20分、近鉄京都線「伏見駅」から徒歩約25分 Google map
【公式ホームページ】https://www.kyocera.co.jp/company/summary/facility/
※掲載内容は2023年6月5日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. オパン

おすすめコンテンツ