琳派・若冲でお馴染み! 開館25周年を迎えた細見美術館の魅力とは?

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京都には様々なミュージアムがありますが、なかでも日本画の“琳派”や“伊藤若冲”作品を多く所蔵する美術館といえば、細見美術館ではないでしょうか。平成10年(1998)、京都の文化ゾーン・岡崎エリアに誕生し、四半世紀。国内外屈指の日本美術コレクションを誇り、四季折々に企画展を開催されています。

2023年9月5日(火)からは、この秋注目の「開館25周年記念展Ⅰ」がスタート。記念すべき展覧会を訪れる前に知っておきたい見どころや同館の魅力について、広報ご担当・大塚さんにお伺いしました!

細見美術館のはじまりとは?

歴代の企画展がわかる、25周年を記念したフリーペーパー

歴代の企画展がわかる、25周年を記念したフリーペーパー

細見美術館では、昭和の実業家・細見良(初代 古香庵)からはじまる細見家3代が蒐集した日本美術を所蔵・展示。常設展は設けず、コレクションを中心に年4回ほどの企画展を開催しています。

初代は、兵庫県の農家に生まれましたが、小学校卒業の頃に父親の事業が傾き、13歳で大阪へ奉公に。毛織物業界に入り、当時繊維産業が盛んだった大阪南部の泉大津に店を構え、事業を拡大します。日本の古美術への関心が高まり、30代半ば頃から蒐集を始めました。60歳で事業から引退したあとは、蒐集三昧の日々を過ごしたのだとか。

大塚さん 「初代は主に、仏教美術や茶の湯釜などの金工品、根来などの漆器を蒐集していました。平安から桃山など古い時代のものが多く、重要文化財に指定されている作品もあります。蒐集した作品をいずれは美術館として公開したいという初代の思いを受け、二代 古香庵・細見實(みのる)・有子夫妻と三代・細見良行が設立したのが細見美術館です」

琳派展23「琳派の扇絵と涼の美」(2023年)※終了しました

琳派展23「琳派の扇絵と涼の美」(2023年)※終了しました

コレクションのなかでも人気の高い“琳派”や“若冲”の作品は、昭和40年代から50年代にかけて實氏が積極的に蒐集したものだとか。その当時から人気があったのでしょうか。

大塚さん 「今でこそ人気の若冲ですが、実は蒐集当時はあまり知られていませんでした。開館2年目に初めて若冲の展覧会を開催したのですが、残念ながら話題にならず・・・ 翌年(2000年)、京都国立博物館で開催された『特別展覧会 没後200年 若冲』展をきっかけに、若冲ブームが起こったのです」

なんと・・・ 先見の明! 若冲ブームは開館3年後のことだったのですね。琳派作品に関しては、開館以来、ほぼ毎年「琳派展」シリーズを開催されていて、今年で23回目。その人気は現在も色あせることなく、多くの方に愛され続けています。

それでは、若冲・琳派作品をたっぷりと鑑賞できる、注目の展覧会をご紹介しましょう♪

若冲、北斎、江戸琳派など・・・ 「開館25周年記念展」に注目!

  • (左)伊藤若冲「群鶏図」寛政8年(1796)頃 細見美術館蔵、(右)伊藤若冲「糸瓜群虫図」江戸中期 細見美術館蔵

    (左)伊藤若冲「群鶏図」寛政8年(1796)頃 細見美術館蔵、(右)伊藤若冲「糸瓜群虫図」江戸中期 細見美術館蔵

  • 鈴木其一「朴に尾長鳥図」(部分) 江戸後期 細見美術館蔵

    鈴木其一「朴に尾長鳥図」(部分) 江戸後期 細見美術館蔵

  • 葛飾北斎「五美人図」江戸後期 細見美術館蔵

    葛飾北斎「五美人図」江戸後期 細見美術館蔵

「開館25周年記念展」は2回に分けて行われ、記念展Ⅰ「愛し、恋し、江戸絵画-若冲・北斎・江戸琳派-」(2023年9月5日~)では、實・有子夫妻が二人三脚で蒐集したお気に入りの江戸絵画が展観されます。

大塚さん 「第一弾では、若冲のユニークな作品や、葛飾北斎の肉筆美人画、江戸琳派の作品群など、約50点を展示予定です。琳派を愛した實さんは多くの琳派の絵師に関心を持ち、初期の琳派から昭和にいたるまで、30名ほどの絵師をカバーする琳派コレクションを形成しています。本展ではその中から酒井抱一やその弟子・鈴木其一などによる洗練された洒脱な江戸琳派の世界をどうぞお楽しみください」

まさに「琳派美術館」の異名を持つ同館だからこそできる展覧会ですね!

重要文化財「金銅春日神鹿御正体」南北朝時代 細見美術館蔵 ※本作は記念展Ⅰ・Ⅱ共に出品予定です

重要文化財「金銅春日神鹿御正体」南北朝時代 細見美術館蔵 ※本作は記念展Ⅰ・Ⅱ共に出品予定です

記念展Ⅱ「挑み、求めて、美の極致-みほとけ・根来・茶の湯釜-」(2023年11月14日~)では、初代が選び抜いた、平安から桃山時代にかけての作品を展示。重要文化財にも指定される名品の数々を楽しむことができます。

大塚さん 「今回展示される『金銅春日神鹿御正体』は、今にも動き出しそうな程リアルな造形です。細部に至るまで注目してみてください」

こちらよく観察してみると、虫に食べられた葉っぱの穴など細かな部分まで精巧に作られているそう。実際に拝見するのが楽しみです♪
■開館25周年記念展Ⅰ「愛し、恋し、江戸絵画-若冲・北斎・江戸琳派-」
【日程】2023年9月5日(火)~11月5日(日)
    10:00~17:00
【休館日】月曜日 ※祝日の場合は翌日
【料金】1,400円
【公式ホームページ】https://www.emuseum.or.jp/exhibition/ex082/index.html
■開館25周年記念展Ⅱ「挑み、求めて、美の極致-みほとけ・根来・茶の湯釜
【日程】2023年11月14日(火)~2024年1月28日(日)
    10:00~17:00
【休館日】月曜日 ※祝日の場合は翌日、2023年12月25日(月)~2024年1月4日(木)
【料金】1,400円
【公式ホームページ】https://www.emuseum.or.jp/exhibition/next_exhi.html

岡崎エリアで目を引く、個性的な建物。展示室にも工夫が!?

  • 故・大江匡氏の設計による建物

    故・大江匡氏の設計による建物

細見美術館は、地上3階、地下2階からなり、ロの字型に構成された建物です。中央部にはサンクンガーデン(中庭)と呼ばれる空間があり開放感があります。展示室は1階から地下2階にあり、フロア移動の際は一度外に出て階段を利用します。外の空気を吸い、気分を入れ替えて次のフロアへ向かえるのが、個人的にはお気に入りです。

入館シールには、故・仲条正義氏によるロゴマーク

入館シールには、故・仲条正義氏によるロゴマーク

外壁には波のような線がつけられた「櫛目引き」という技法が施され、全て左官の手作業によるもの。熟練の職人さんの技が光ります・・・ ちなみに入館時にはシールが配布され、見える位置に貼り付けて展示室へ。曜日によって色が異なるそうです♪

展示室にも工夫が施されているそうで・・・

大塚さん 「当館が多く所蔵する屏風や掛軸は、通常、座敷や床の間に飾られるものです。自然な目線でご覧いただけるように、第1・2展示室のケース内の床面は低い位置に作られています」

言われてみれば確かに高さがなく、自然な目線で眺めることにより作品への親しみも増しそうです。

芸術鑑賞のあとは、お茶席で一服を(事前予約制)

  • お茶室「古香庵」

    お茶室「古香庵」

  • 季節の生菓子とお抹茶 1,100円(写真はイメージ)

    季節の生菓子とお抹茶 1,100円(写真はイメージ)

さて、芸術作品に浸ったあとは、お抹茶で一服してみませんか。なんと最上階にはお茶室「古香庵(ここうあん)」があり、一般の方も利用することが可能です(事前予約制)。“古香庵”とは、初代が天龍寺の関精拙大師より授かった雅号だそう。京菓子司「末富」の季節の生菓子と老舗茶舗「一保堂」のお抹茶が味わえるほか、スタッフの方にお手前していただける茶の湯体験も。お茶室からは、遠くに東山を眺めることもでき、ゆっくりとした時間を過ごせます。

■茶室 古香庵(事前予約制)
【営業時間】11:00~16:00
【定休日】不定休

地下2階のカフェもおすすめ♪ 25周年限定スイーツをチェック!

  • ブラッドオレンジフロート 850円    

    ブラッドオレンジフロート 850円    

  • オリジナルポストカード

    オリジナルポストカード

  • CAFÉ CUBE

    CAFÉ CUBE

最上階にお茶室がある一方、地下2階には「CAFÉ CUBE」があり、期間限定で開館25周年記念コラボメニュー「ブラッドオレンジフロート」を提供中(9月中旬まで。売り切れ次第終了)。神坂雪佳の『金魚玉図』をイメージし、ゆらゆら揺れるグラスも涼やかです。ブラッドオレンジの爽やかな味わいは、暑い日にもぴったり♪ オーダーするといただけるオリジナルポストカードは、切り取って本のしおりとしても利用できます。

大塚さん 「ポストカードに描かれている四季の作品をモチーフに、コラボメニューをご用意しております。秋頃には、神坂雪佳の『楓紅葉図』をモチーフにしたデザートが登場予定です。どのようなメニューになるか、どうぞお楽しみに!」

■CAFÉ CUBE
【営業時間】10:30~17:00(ラストオーダー16:30)
【定休日】細見美術館の休館日に準ずる

お土産は、オリジナルアイテムが豊富なARTCUBE SHOPへ!

  • ARTCUBE SHOP

    ARTCUBE SHOP

  • 中村芳中などの人気作品をモチーフにしたアイテムがずらり

    中村芳中などの人気作品をモチーフにしたアイテムがずらり

  • 神坂雪佳の「狗児」をモチーフにした六兵衛窯製のお皿やコップ

    神坂雪佳の「狗児」をモチーフにした六兵衛窯製のお皿やコップ

  • 御朱印帳のデザインも豊富です

    御朱印帳のデザインも豊富です

  • 根強い人気を誇る絵はがき

    根強い人気を誇る絵はがき

最後は、カフェ向かいにある「ARTCUBE SHOP」をご紹介。琳派・若冲など、人気作品をモチーフにしたオリジナルアイテムが豊富です♪ 手ぬぐいやクリアファイル、御朱印帳・・・ 日常使いしやすいものばかりで、どれも可愛らしく、つい目移りしてしまうほど。

大塚さん 「公式X(Twitter)でも、おすすめアイテムをご紹介していますので、ぜひチェックしてみてください♪」

お気に入りのアイテムを見つけ、普段の生活に取り入れることで、よりアートを身近に感じられるかも知れません。お土産はもちろん、プレゼントにもおすすめです!

■ARTCUBE SHOP
【営業時間】10:00~17:00
【定休日】細見美術館の休館日に準ずる
細見美術館
【開館時間】10:00~17:00
【入館料】展覧会により異なる
【休館日】月曜日(祝日の場合は翌日)、展示替期間
【電話】075-752-5555
【アクセス】市バス「東山二条・岡崎公園口」バス停から徒歩約3分 Google map
【公式ホームページ】https://www.emuseum.or.jp/
【公式Facebook】https://www.facebook.com/hosomimuseum/
【公式X(Twitter)】https://twitter.com/HosomiMuseum
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※掲載内容は2023年8月28日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. オパン

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