文化財を守るために。週3日限定、萬福寺塔頭宝蔵院の「寺そば」とは?

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宇治市にある黄檗宗大本山萬福寺の塔頭、宝蔵院は、江戸時代に木版印刷の技術を用いて、仏教経典の大量印刷を行ったお寺。こちらで味わえる「寺そば」が話題を集めています。「寺そばとは?」、「木版印刷との関係は?」など、気になる誕生の経緯をお伺いしました。

鉄眼禅師が開創

  • 山門

    山門

宝蔵院は寛文9年(1669)、鉄眼(てつげん)禅師が師事していた黄檗山萬福寺の隠元(いんげん)禅師から萬福寺内の寺地を授かり、藏板・印刷所を建立したのが始まりです。
当時日本では経典を書写していましたが、隠元禅師が中国で印刷所を構えていたことを聞いた鉄眼禅師は、仏教の百科事典とも例えられる「一切経」の開版を志します。
  • 本堂

    本堂

  • 鉄眼禅師の寿像

    鉄眼禅師の寿像

版木製作には莫大な費用がかかるため、全国行脚し募財活動を行って資金を集めた鉄眼禅師。途中2度の大飢饉に遭った際は、集めた資金を惜しむことなくすべて難民救済に充てたといいます。再び一から募財を行うなど苦心を重ねた末、発願から17年、木版を彫り始めて13年後の延宝6年(1678)に、ついに版木が完成しました。

原稿用紙と明朝体のルーツがここに

  • 一文字一文字が美しく彫られています

    一文字一文字が美しく彫られています

  • 原稿用紙の原型といわれています

    原稿用紙の原型といわれています

版木は縦約26センチ、横約82センチ、厚さ約1.8センチ、左右に約3センチの縁が付いています。材料は奈良・吉野の桜の木。板の両面に文字が彫られており、片面に20字×10行の文字列が左右に2つ並びます。これが400字詰めの原稿用紙の規格のもとになりました。また書体は、現在広く使用されている明朝体のルーツとされています。
  • 収蔵庫内。2階と3階を全面に使って保管されています

    収蔵庫内。2階と3階を全面に使って保管されています

  • 積み重ねられている「鉄眼版一切経版木」

    積み重ねられている「鉄眼版一切経版木」

  • 本堂の奥に建つ収蔵庫

    本堂の奥に建つ収蔵庫

収蔵庫には、約6万点の「鉄眼版一切経版木」を収蔵し、うち4万8275点が国の重要文化財に指定されています。しかし、収蔵庫内は昭和36年に建立された当時のまま手付かずのため、老朽化が著しいのが現状。版木自体も劣化してきており、文化財の保全や維持、調査を行うための費用捻出が急務になっています。

「寺そば」で文化財を守る!

そこで、現住職の盛井幸道さんが令和2年(2020)に始めたのが「鉄眼プロジェクト」。普段は非公開のお寺ですが、収蔵庫の特別拝観や法話、イベントなどを実施し、その費用を文化財保護に充てています。その一つが「寺そば」です。
  • 寺そば 600円(毎週木・金・土曜日の3日間のみ、1日30食限定)

    寺そば 600円(毎週木・金・土曜日の3日間のみ、1日30食限定)

  • 冷そば 600円(ひやそば、夏季の毎週木・金・土曜日の3日間のみ、1日30食限定)

    冷そば 600円(ひやそば、夏季の毎週木・金・土曜日の3日間のみ、1日30食限定)

「寺そば」は、宝蔵院ボランティアスタッフが考案したヴィーガンラーメン。2022年から提供が始まりました。
動物性食材を一切使用せず、植物性の食材のみで作られています。四季によって味付けが変わり、夏は塩味、秋は濃口醤油味、冬は味噌豆乳味、春は淡い醤油味。写真は塩味。スープは昆布、椎茸、大根など11種類の植物性の材料と、白醤油、お酒、みりん、砂糖などから作られたもので、じんわりとした滋味深さと甘みがあります。

今年の夏は、お客さんからの要望が多かったことから、冷そば(醤油タレ&胡麻味噌タレ)が提供されています。
 

  • もち米入りかやくご飯200円。寺そばとご一緒に

    もち米入りかやくご飯200円。寺そばとご一緒に

トッピングは、メンマ、トウモロコシ、わかめ、白キクラゲ、糸トウガラシ。お釈迦様の身体の色を表す五色になっています。上に振りかけられている黒コショウのようなものは、馬告(マーガオ)という台湾の香辛料。スープにピリッとアクセントを加えています。

体に染み渡るような優しい味わいで、普段スープを残すことがある私も、全部飲み干しました。心を穏やかにしてくれるお寺ならではのラーメンです。
  • 本堂で味わうことができるのも贅沢です

    本堂で味わうことができるのも贅沢です

「寺そば」を食べることで、文化財の保全に役立っていると思うと嬉しい気持ちになります。
収蔵庫の特別拝観も毎月不定期で行われているので、詳しい日程は宝蔵院公式ホームページをご覧ください。

■黄檗山宝蔵院

【拝観時間】寺そば11:00~14:00(売切れ次第終了)※本堂は通常非公開
【拝観休止日】不定休、寺そばは木・金・土曜日のみ営業(臨時休業、貸切営業、夏季・冬季休業あり)
【拝観料】収蔵庫500円
【電話】0774-31-8026
【アクセス】京阪宇治線「黄檗駅」から徒歩約2分、JR奈良線「黄檗駅」から徒歩約4分 Google map
【公式ホームページ】https://www.hozoin.net/
【公式X】https://x.com/tetsugenproject
※掲載内容は2024年6月26日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. 「そう京」編集部

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