夏の風物詩「宇治川の鵜飼」ってどんなイベント?

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京都の夏の風物詩の一つ、宇治川の鵜飼。その歴史は古く、現在放送中の大河ドラマに登場する、藤原道綱の母の『蜻蛉日記』には宇治川の鵜飼見物の様子が記されています。いま注目が集まる宇治で、幽玄の世界へいざなう鵜飼を体験してきました。宇治川の鵜飼のポイントを交えながらお届けします。

宇治川の鵜飼の特徴とは?

観覧船が並ぶ宇治川

観覧船が並ぶ宇治川

鵜飼とは、鵜を操って川魚を獲る漁法。現存最古の歴史書『古事記』や『日本書紀』にも記述がある、古来の伝統漁法です。宇治川の鵜飼は平安時代にはすでに行われていましたが、平安後期になると仏教の教えの影響から宇治川における殺生が全面的に禁じられ、平安貴族の没落とともに衰退していきました。
現在の鵜飼は大正15年(1926)に再興したもので、毎年7~9月に行われています。
  • 喜撰橋

    喜撰橋

  • 平安時代後期に魚霊供養のため建立された日本最大の十三重石塔(重文)

    平安時代後期に魚霊供養のため建立された日本最大の十三重石塔(重文)

鵜飼が行われるのは、JR「宇治駅」から徒歩15分ほどの京都府立宇治公園付近。宇治川にかかる喜撰橋を渡った塔の島に、鵜飼観覧の乗客船乗り場と、鵜小屋があります。

鵜小屋

鵜小屋

鵜飼の鵜は、「ウミウ(海鵜)」というカツオドリ目ウ科の鳥類。秋から冬にかけ越冬のため日本に飛来する渡り鳥です。宇治川をはじめ全国の鵜飼地の鵜は、茨城県日立市で捕獲されたウミウが使われています。

ウミウ

ウミウ

ウミウは体長約90センチ、体重約2~3キログラム。他の鵜よりも体が大きく体力があるので、鵜飼に向いているのだそう。鵜は喉がペリカンのように袋状になっているため、喉に魚をためることができるのが特徴です。

人工ふ化で生まれた「うみうのウッティー」

人工ふ化で生まれた「うみうのウッティー」

長年、飼育下では産卵しないといわれていた野生のウミウ。宇治川の鵜飼では、小屋の中で卵を見つけたことをきっかけに前例のなかった人工ふ化を試み、平成26年(2014)、無事にヒナが誕生しました。その後も毎年ヒナが生まれ、現在は12羽に。公募によって「うみうのウッティー」と名付けられ、すべて「ウッティー」と呼ばれています。

全国でも珍しい女性鵜匠が活躍

その鵜を船の上で操る人を「鵜匠」といいます。宇治には4名の鵜匠がおり、うち3名が女性! 全国に鵜匠は60名ほどいるそうですが、女性はわずか4名のみ。そのうちの3名が宇治に在籍しています。けん引するのは、23年前に宇治で初めて女性鵜匠となった沢木万理子さん。

鵜匠の沢木万理子さん

鵜匠の沢木万理子さん

もともと鳥好きで、鳥とかかわる仕事に就きたいと鵜匠の世界に入った沢木さん。現在は宇治市観光協会の職員も兼業し、鵜飼の時期は風折烏帽子(かざおりえぼし)、腰蓑(こしみの)など伝統的な装束をまとい、鵜匠として活躍されています。沢木さんは、先程ご紹介した、日本で初めてウミウの人工ふ化に成功したプロジェクトのメンバーでもあります。

小屋の中は2つに区切られ、野生に生まれた鵜とウッティーがそれぞれ暮らしています

小屋の中は2つに区切られ、野生に生まれた鵜とウッティーがそれぞれ暮らしています

沢木さんは鵜飼のシーズンだけでなく、年中、鵜の世話を行っています。「一年間世話をして、翌年の鵜飼でまたお客様が喜んでくださる姿を見るのが何より嬉しいです」。そのために日々、鵜たちの体調管理を徹底し、愛情を込めて接することで信頼関係を築いています。

小屋の中を清掃

小屋の中を清掃

鵜飼シーズンは、開始2時間ほど前に小屋へ行き、準備を始めます。清潔な環境を保つために清掃した後、鵜たちの様子を確認し、くちばしを研ぐなどのメンテナンスを行います。
そして、その日の体調などを見ながら、その日に出演する鵜を選んでカゴの中に入れていきます。
  • 鵜籠(うかご)で待機中 

    鵜籠(うかご)で待機中 

  • 鵜舟に運ばれていきます

    鵜舟に運ばれていきます

乗船して鵜飼観覧へ

いよいよ鵜飼の時間が近づいてきました。観覧の乗合船の受付は17時頃~、乗船は18時30分~(9月の乗船は18時~)。

受付は「遊覧船のりば」の看板を目印に

受付は「遊覧船のりば」の看板を目印に

受付で料金を支払い、出船を待ちます。出船は19時~(9月は18時30分~)。定員になり次第締め切り。予約制ではないので、早めに受付を済ませておくと安心です。受付後は、周辺で夕食を済ませたり、宇治川沿いの散歩を楽しむのがおすすめ。

順番に乗り込み出船です。
気持ちのいい風を感じながら、船は少し上流へ。いつの間にか辺りは夕暮れに包まれ、これから行われる鵜飼への期待が高まります!

鵜匠が乗る鵜舟が到着すると、鵜飼についての説明が行われます。そして、鵜匠が6羽の鵜の首に「追い綱」という長さ約4メートルの綱をつけ、川に放ちます。

6本の綱をさばいて巧みに鵜を操る沢木さん

6本の綱をさばいて巧みに鵜を操る沢木さん

鵜匠は追い綱が絡まないよう、熟練の技で巧みに操ります。そしてドンドンドンと船縁を棒で叩いて魚を驚かせ、鵜たちを鼓舞します。かがり火の灯りのもとに集まってきた魚を鵜が捕らえたら、その鵜を素早く船の方に引き寄せ、魚を吐き出させます。うまく吐き出せたら、観客みんなで拍手。
まさに、鵜と鵜匠が一体となって繰り広げるエンターテインメントショー。かがり火の熱気が伝わる近さで観ることができ、迫力満点でした!

20時頃に岸へ戻り下船

20時頃に岸へ戻り下船

一緒に乗船していた皆さんも興奮冷めやらぬ様子で、「楽しかった」という声が多数聞かれました。日本古来の伝統を感じられるスペシャルな体験を、ぜひ夏の期間に楽しんでみてはいかがでしょうか。

日本で唯一の「放ち鵜飼」

最後に宇治の鵜飼の嬉しい情報をお届けします!

鵜飼には、追い綱をせず、鵜が自由に魚を捕り、その鵜を鵜匠が呼び寄せる「放ち鵜飼」という漁法があります。国内では平成13年(2001)に島根県益田市の高津川で行われていたのを最後に途絶えていましたが、沢木さんらが令和4年(2022)に復活させました。
放ち鵜飼は、綱をつけない分、通常の鵜飼よりも鵜匠と鵜の信頼関係が重要になってきます。そこで人の手で育てられたことで人に慣れているウッティーならできるのではないかとトレーニングを重ね、実演に至りました。

場所は、宇治川の鵜飼地から北へ1キロメートルほどの「お茶と宇治のまち歴史公園 茶づな」にある人工池。「ウッティ、おいで」と呼ぶと帰ってくるのがなんとも愛らしいです。
開催時期は、毎年5~6月、10~11月(予定)。

春と秋にも鵜飼が楽しめるようになった宇治。“鵜飼の町”として、ますます目が離せません。

■宇治川の鵜飼
【日程】2024年7月1日(月)~9月30日(月)
7月1日~8月31日 出船19:00~(受付17:00~、乗船18:30~)
9月1日~30日 出船18:30~(受付17:00~、乗船18:00~)
※乗船時間・約1時間、貸切船は要予約
【料金】乗合船2,300円
【場所】宇治川・塔の島の喜撰橋周辺 (宇治市宇治塔川)
【問合せ】0774-21-2328(宇治川観光通船)
【公式ホームページ】https://www.kyoto-uji-kankou.or.jp/ukai.html
※荒天時および天ヶ瀬ダム放流による増水時には、中止となる場合があります。事前にご確認ください。

※掲載内容は2024年8月26日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. 「そう京」編集部

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