宸殿の修復工事が完了! 涼を感じる「青蓮院」を訪ねて

  • 散策

「祇園・東山」に、名前からして涼やかな印象のお寺、青蓮院があります。観光客で賑わうエリアに位置しながらも、中心部から少し離れているため、境内はゆったりとした時間が流れています。今年(2025)5月には宸殿の改修工事が完了し、美しく生まれ変わったばかり。境内の“涼ポイント”を交えながら、あらためて訪れたい青蓮院の見どころをご紹介します。

由緒ある門跡寺院

  • 好文亭 内観 ※春秋に特別公開されます

    好文亭 内観 ※春秋に特別公開されます

青蓮院は、比叡山山上に開かれた住坊「青蓮坊」を起源とし、天台宗三門跡のひとつに数えられる格式の高い門跡寺院です。天明の大火(1788)で御所が炎上した際に、後桜町上皇の仮御所となったことから「粟田御所」とも呼ばれ、境内全域は国の史跡に指定されています。境内には後桜町上皇が御学問所として使用された好文亭が遺り、春秋の特別公開で拝観できます(現在の建物は復元されたもの)。

長屋門横のクスノキ。存在感たっぷりです!

長屋門横のクスノキ。存在感たっぷりです!

訪れると、まず迎えてくれるのは青蓮院のシンボルツリーのクスノキ。樹齢800年以上を誇る巨木で、京都市の天然記念物になっています。四脚門と長屋門付近に4本、境内の庭園に1本が植わり、樹高は最大のもので約26メートルといいますから、驚きますよね。見るからにパワーを授かれそうです!

大改修で、宸殿が生まれ変わりました

  • 宸殿 外観

    宸殿 外観

  • 美しい瓦屋根に

    美しい瓦屋根に

  • 宸殿からの眺め 

    宸殿からの眺め 

  • 宸殿前にもクスノキが。立派な枝ぶりです

    宸殿前にもクスノキが。立派な枝ぶりです

境内には門跡寺院らしい雅な殿舎が並びますが、宸殿や大玄関(車寄せ)、長屋門は、2022年7月頃から大改修が行われ、長らく覆いが被さっていました。

なかでも宸殿は、有縁の天皇および歴代門主の御尊牌を祀る重要な建物。東福門院(後水尾天皇の女御)の御殿を移築したもので、明治26年(1893)の火災で焼失しますが、2年後に復元されました。大改修では大屋根の葺き替えや耐震補強などが約3年かけて行われ、今春ついに完了! 一見、大きな変化は感じませんが、内陣の床には漆塗りが施され、じっくり眺めたい美しさです。
  • 『濱松図』(重文)

    『濱松図』(重文)

  • 赤松が植わる浜辺には、白い貝殻

    赤松が植わる浜辺には、白い貝殻

  • 日本画家・黒田正夕が描いた孔雀の杉戸絵も見どころ

    日本画家・黒田正夕が描いた孔雀の杉戸絵も見どころ

宸殿では狩野派が描いたという襖絵『濱松図』にもご注目を。徳川秀忠の娘、和子(後の東福門院)が後水尾天皇入内の際に持参したものと伝わり、明治の火災で難を逃れた貴重な作品です(一面は復元模写)。

※宸殿内は撮影禁止です。特別な許可を得て撮影しています

“涼”を感じる境内散策

ここからは夏に訪れても心地よい、青蓮院の“涼ポイント”をご紹介しましょう!

①アートな“青い蓮”の襖絵

狩野派とは対照的に、現代アートの襖絵もあります。
拝観受付の奥に待ち受ける華頂殿の「蓮—青の幻想・生命讃歌・極楽浄土」です。壁画絵師 木村英輝氏がアクリルガッシュやネオカラーという現代的な画材を用いて描いた作品は、奉納から今年(2025)で20年。当初は驚きの声もあったようですが、現在ではお寺を代表する襖絵になりました。青を基調とした鮮やかな蓮の花々は、涼をもたらしてくれるようです。

②華頂殿から庭園鑑賞

  • 華頂殿は「相阿弥の庭」を鑑賞する特等席

    華頂殿は「相阿弥の庭」を鑑賞する特等席

  • 廊下には、かつての「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンポスターが飾られています

    廊下には、かつての「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンポスターが飾られています

華頂殿の外に視線をうつすと、相阿弥作と伝わる主庭が。室内に座り、モミジや松の緑美しいお庭を眺めていると、龍心池に流れる水音がBGMとなり涼やかな気分になります。じつは、1995年の「そうだ 京都、行こう。」夏キャンペーンのポスターに採用されたのがこの風景。じっくり眺めれば、30年前のキャッチコピーを実感できるかも。

  • 小御所

    小御所

  • 小御所から眺める「相阿弥の庭」

    小御所から眺める「相阿弥の庭」

  • 時おり、室内を風が抜けていきます

    時おり、室内を風が抜けていきます

  • 随所にみられる影

    随所にみられる影

殿舎は廊下で繋がれ、陽射しを避けて拝観できるのも魅力。小御所前には「相阿弥の庭」が広がり、室内を抜ける“風”や足元にこぼれる“影”など、ふとした瞬間に涼を感じます。

③新緑のアーチさんぽ

  • 霧島の庭

    霧島の庭

  • 頭上を包み込む“緑の世界”

    頭上を包み込む“緑の世界”

  • 靴を履き、順路に沿って“小さなトンネル”を抜け庭園へ

    靴を履き、順路に沿って“小さなトンネル”を抜け庭園へ

殿舎を出て、華頂殿や小御所から眺めた庭園のなかへ。
池泉回遊式となり、「相阿弥の庭」から華頂殿東側へ歩みを進めると、小堀遠州作庭と伝わる「霧島の庭」が続きます。この辺りはモミジが見事! 新緑のアーチが散策路を包み込み、暑い陽射しを和らげてくれます。頭上は緑いっぱいで清々しい気分です。

④じつは、庭園には竹林も

  • 新緑と竹林

    新緑と竹林

  • 竹林の石段

    竹林の石段

「霧島の庭」から「大森有斐の庭」を抜けた先、ちょうど「相阿弥の庭」の裏に、じつは竹林の小径があります。庭園散策はゆっくり歩いて15分ほど。中間となるこのあたりは、新緑と竹でさらに緑を感じるエリアです。風が吹けば、サラサラと竹の葉擦れの音が…

*****
まだまだ暑い日が続きますが、見て聞いて感じる“涼”を求めて青蓮院を訪れてみませんか。
今年は、4年ぶりに「秋の夜間特別拝観」の開催が予定されています。この秋も見逃せませんね。

■青蓮院
【拝観時間】9:00~17:00(受付終了16:30)
【拝観料】600円
【電話】075-561-2345
【アクセス】市バス「神宮道」バス停から徒歩約3分、地下鉄東西線「東山駅」から徒歩約5分 Google map
【公式ホームページ】https://www.shorenin.com/
※掲載内容は2025年7月18日時点の情報です。最新情報は各掲載先へご確認ください。

Written by. 「そう京」編集部

おすすめコンテンツ