都として栄えた京都にはさまざまな伝統工芸が受け継がれています。平安時代から行われてきた染織技法「絞り染め」もそのひとつ。布を絞ったり、糸を縛ったりして部分的に染料がしみこまない工夫をすることで多種多様な美しい模様があらわれます。
今回、和装小物の製造・卸を行うアンドウ株式会社でトートバッグを染める体験にチャレンジしてきましたので、その様子をたっぷりとお届けします♪
創業100余年、アンドウ株式会社とは
五条大橋のほど近くに本社を構えるアンドウ株式会社(以下、アンドウ)。2023年7月に創業100周年を迎えたのを機に社屋1階をリニューアルし、体験型コンセプトショップをオープンしました。
アンドウが得意とするのは絞りのなかでも最高峰の技術といわれる「京鹿の子絞」です。連続する小さな斑点が子鹿の背模様に似ていることから付けられた名称で、細やかな模様はひとつひとつを糸で括って染めるという途方もない工程を経て作られています。
創業時より「京鹿の子絞」の帯揚の製造を主体にしてきましたが、和装の需要は年々減少。現在は、伝統技術をいかして、暮らしを彩るアイテムを多数手がけています。
染めの実務経験を12年以上積んだ人しか試験を受けられないという「京鹿の子絞(染色部門)伝統工芸士」の資格をもつスタッフが複数名在籍しているのもアンドウの強みです。機械化する部分もありつつ、複雑な工程には職人さんの経験と技が欠かせないといいます。
コンセプトショップのオープンにより、職人さんによる品質の良い商品を直接手に取れるようになったことを思うと嬉しい限りです。
※工場は非公開です。特別に工場を撮影させていただきました
トートバッグの染め体験にチャレンジ!
体験はコンセプトショップの奥にあるスペースで行われます。洗練されたオシャレな空間というのもおすすめポイントですが、時に伝統工芸士の方が講師を務めるというのも魅力のひとつ。プロならではの視点からアドバイスを受けられると思うと、体験にも熱が入ります。
A4のクリアファイルが入る大きさです
染めるのは麻布のトートバッグ。ハンカチやストールなど一枚ものの布を染める体験はよくありますが、トートバッグは珍しいかもしれません。じつはアンドウでは自社で縫製も行っているため、トートバッグのほかにもTシャツやエプロンなど、多彩なグッズを用意できるそうです。
まずは色とおおよその模様を決めます。選べる色の種類はなんと20色! 体験スペースの横に展示されたTシャツを参考に好きな色を選びます。今回は夏らしく、爽やかな青色をチョイス。模様は“花火”をイメージして円形に決めました。
円形部分が染まらないように糸で括るため、まずは目安となる補助線を描いていきます。伝統工芸士を目指す阪中さんによるサポートもあり、なんとか第一段階をクリア。
補助線に沿って布を均等に折り畳み、糸で縛ります。「糸は弱くても強くてもダメで、ちょうど良い塩梅が必要です」というアドバイスを受けてチャレンジするも、一定の強さで糸を引き締めていく作業にひと苦労。ひとつの作業からも職人さんに尊敬の念を感じます。
染めの工程ではエプロン、手袋、アームカバーを着用します。すべてご用意いただけるので、持ち物は必要ありません。
いよいよ染めの工程です! トートバッグ全体に染料をかけ、手で揉んでしみ込ませていきます。糸を括った部分も染まっているのでは… と心配になりつつ、この後の工程はスタッフさんに託します。
染色スペースから出てくると、ドリンクをご用意いただけました。ほっとひと息ついて、職人さんとお話をしたり、買い物を楽しんだり、20分ほど色が定着するのを待ちます。
トートバッグにしっかりと染料がしみこんだら、糸をほどいて模様を確認。熟練の職人さんでさえ思ってもみない柄が出ることがあり、それこそが絞り染めの良さだといいます。偶然の産物は時として美しい出合いをもたらすのですね。
緊張しながら、ゆっくり布を広げていくと…
ついに完成!
いかがでしょう! 揺らめく大輪がお気に入りの仕上がりになりました。「糸の跡や絶妙なグラデーションは、プリントではない染めの証拠です」と大槻さん。糸の括り方や染料を揉みこむ強弱でも模様が変わるため、ひとつとして同じものはできないといいます。
持ち帰る際は、乾燥した状態でお渡しいただけます
乾くと、麻布ならではの優しい風合いに。青と白のコントラストも爽やかです。
約90分の体験は時間が経つのもあっという間。実際に伝統工芸にチャレンジすることで、日本のものづくりの価値を再認識できました。
体験すると店内の商品を10%OFFで購入できます。直営ショップのため比較的リーズナブルな価格設定が魅力で、思わず私もストールを買い求めてしまいました。
今後、体験内容をグレードアップし、もっと複雑なアイテムを染める計画もあるそうです。まずは手軽なトートバッグから始めてみませんか。
■絞りコンセプトショップ ANDO京都本店
【営業時間】9:30~17:00
※絞り染めトートバッグコース(5,500円)の体験予約は公式ホームページから(前日までに要予約)
【定休日】日曜日、祝日
【電話】070-3317-6772
【アクセス】地下鉄烏丸線「五条駅」から徒歩約8分 Google map
※掲載内容は2025年7月28日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。