観光名所をまわる旅も良いけれど、地域に溶け込むような旅がしたい。そんな気分にぴったりなのが、京都のサウナ旅です。古くより銭湯文化が根付く京都では、サウナや銭湯施設は地域の特色が詰まった場所。京都は“サウナの聖地”と言っても言い過ぎではないほど。街の人に愛されるサウナ施設とその周辺を巡って、暮らすような旅をしてみませんか。地元の方々と一緒に一汗かいて、気の向くままに街を巡れば、きっと地域の愛らしい素顔が見えてくるはず。
京都銭湯マークが入っている銭湯は京都浴場組合加盟の銭湯になります。京都府公衆浴場共通入浴券をお持ちの方は、京都浴場組合加盟銭湯のみで使用可能です。 |
食とサウナの都を堪能する 清水五条〜祇園四条
清水五条から祇園四条は、名所や名店が多く、散策が楽しいエリア。まずは宮川町近く、舞妓さんや板前さんも通うという大黒湯でひと汗かきましょう。「さっぱりした後はカウンターでお寿司を」というお好みにも答えてくれるのがこの街の良いところ。夕暮れの花見小路や八坂神社を通って 「祇園 えもん」へ。30代の快活な大将とのお喋りは楽しく、お寿司もお酒も進みます。次はどこへ入りましょう。祇園の夜は長いです。(撮影:祇園 えもん、花見小路、大黒湯)
このエリアのおすすめサウナ
大黒湯
創業80年を超える昔ながらのお風呂屋さん。浴室に入ると、サウナ室の壁一面の味わい深い信楽焼のタイル絵が迎えてくれます。男湯は上高地で、女湯はスイスの情景だそう。営業は15時から25時まで。開店前から入口で待つ常連さんの姿に、地域で長年愛されてきた歴史が感じられます。
サウナ&カプセルホテル ルーマプラザ
サウナ好きなら知らない人はいない、京都で人気を誇る男性専用サウナ。祇園の中心にあり、24時間いつでも気軽にサウナを楽しめます。人気の理由は、京都の広い空と東山が一望できる開放感のある外気浴スペース。究極のリラックスタイムは、観光や仕事で疲れた身体を癒やしてくれるはずです。
ぎょうざ湯
人気の餃子店「夷川餃子なかじま」が店舗と同じビルに2021年にオープンした、サウナが売りの銭湯。80分入れ替え制で完全予約制。お友達や家族で気兼ねなくサウナを楽しめます。ここへ来たら、サウナ後は餃子とビールで決まり。サウナ好きの店主が思い切ってつくってしまったというのも、うなずけます。
名社とサウナでタイムトリップ 北野天満宮〜円町
平安時代からの歴史ある北野天満宮と、門前町にある花街・上七軒は合わせて訪れたい場所。路地を歩く芸舞妓さんに遭遇したなら、いにしえにタイムトリップした心地に。小休憩は昭和12年創業の「喫茶 静香」で。デニッシュパンに2種の生クリームと果物を挟んだフルーツサンドを頬張れば、疲れも吹き飛びます。千本通りを南下して“インコ風呂”の愛称をもつ松葉湯へ。鳥たちの愛らしい姿につい長風呂になりそうです。(撮影:北野天満宮、喫茶 静香、松葉湯)
このエリアのおすすめサウナ
松葉湯
創業120年超の銭湯。動物好きのご主人が「入る人に楽しんでもらいたい」との想いから、約40羽のインコと巨大なリクガメを見ながらお風呂に入れます。多数の観葉植物やマッターホルンのタイル絵が織りなす空間は、どこか懐かしい印象。露天風呂脇の外気浴スペースもサウナ好きには嬉しいポイントです。
山城温泉
ゆったりめで10人入れる遠赤外線サウナと冷たい水風呂が名物の銭湯。水風呂の水温は17度前後が一般的ですが、こちらはおよそ9度。このキンキンの水風呂が目当てというサウナファンも多いそうです。他にも月3〜4度の替わり湯では、入浴剤ではなく薬草を使った本格的なお湯を楽しめます。
衣笠温泉
3階立てのビルに、お風呂やサウナの設備が充実した銭湯。8人ほどでゆったり入れる広さのサウナも人気ながら、こちらの特徴はなんといっても氷点下が体感できる冷凍サウナ。サウナ後の水風呂の代わりに入ることで、肌が引き締まるのだそう。観光の合間にゆっくり楽しみたい施設です。
話題のスポットと巡礼 紫竹〜紫野
住宅地に新店が増えつつある注目のエリア。こだわりの銭湯が多い一帯でもあり、お店が点在するのでレンタサイクルがおすすめ。北大路駅近くの「Bike Laboratory」を起点に賀茂川を経て、オリジナルの木工製品を扱う「KIJIRUSHI」へ。触り心地・書き心地ともに素晴らしい、無垢のナラ材のクリップボードをもとめます。催しにも力を入れているむらさき湯では、地域に根付いた銭湯・サウナ文化を改めて感じられるはず。(撮影:木印、むらさき湯、賀茂川)
このエリアのおすすめサウナ
むらさき湯
文化的なオーナー夫妻の計らいで、寄席や絵本とのコラボレーションなど、さまざまな取り組みをしている銭湯。なかでも絵本作家・tupera tuperaさんの絵本『パンダ銭湯』との共同イベントは、毎年夏の人気企画。およそ90年前の船大工がつくったという重厚感ある脱衣所も見どころです。
門前湯
大徳寺の東、新大宮商店街に面した銭湯。深夜2時まで営業しています。サウナの温度が低いところでは70~80度、高いところでは90度ほどが一般的ですが、こちらの特徴は、110度を超える熱々の電気式サウナ。水風呂も10〜12度という冷え冷えの設定。サウナ好きのリピーターさんが多いのだそうです。
紫野温泉
大徳寺の東側に位置し、府下ではもっとも遅い深夜2時まで営業している銭湯。サウナ室は清潔で広々としています。冷たいのが苦手な人にも入りやすいようにと、水風呂の水温は19度前後に設定しているのだそう。超微粒子の気泡が出る人気のミルキー風呂をはじめ、スクリュー風呂や露天風呂など、お風呂の種類も豊富です。
サウナで京都の懐の深さを知る 百万遍〜哲学の道
京都大学に近い百万遍は、学生の多いエリア。東に行けば哲学の道に続くので、観光客など街行く人の顔ぶれも多国籍。サウナにもその趣が現れます。脱衣所とサウナで60年代のオールディーズが終日かかる東山湯温泉など、少しディープなお店巡りを楽しんでみては。日本人にも食べやすいようアレンジしたタイカレーが人気の「アオゾラ」さんなど、サウナ後に行きたい安くておいしいご飯屋さんにも事欠きません。(撮影:アオゾラ、東山湯温泉、今出川通)
このエリアのおすすめサウナ
東山湯温泉
音楽好きの店主が営む銭湯。脱衣所とサウナルームにはBeatlesを中心に60年代のロックやジャズがかかります。前職はイベントプロデュース業というご主人だけに、アンプにもこだわりが。ロックスターをモチーフにした暖簾や浴槽そばの「to the heaven」の張り紙など、随所に店主の遊び心が光ります。
しののめ湯
百万遍の交差点の北側にあり、近隣の学生や外国人に親しまれている銭湯。サウナの温度は95〜100度程度と高めの設定。立って滝行のように水を浴びられる男湯の打たせ風呂がサウナファンに定評あり。肌への当たりが柔らかい水は、地下60mから組み上げた透明度の高い地下水を使っているからだそうです。
京都のサウナ事情
サウナの追加料金なし
京都市内にあるサウナ付き銭湯のほとんどでは、入浴料だけでサウナを楽しめますが、実はこれは全国的にも珍しいこと。特に東京ではサウナは別料金がかかるのが一般的なので、観光で訪れて驚く人も多いかもしれません。京都の銭湯が、全国のサウナファンに注目されている所以でもあります。
地下水の水風呂
地下水が豊富な京都。豆腐作りや日本酒の醸造、茶の湯など、古くよりさまざまな用途で使われてきました。同様に銭湯施設でも大半が地下水を使用。50m以上の深い井戸をもつところも多いそう。カルキ臭がせず、肌へのあたりが柔らかい地下水の水風呂は、サウナ好きをうならせるポイントです。
京町家と銭湯
京都市内には古くから営業する銭湯が多く残りますが、これは京町家の造りと関係があります。もともと京町家にはお風呂がついておらず、代わりに町内には必ず一軒や二軒銭湯があり、コミュニティの場としても機能してきました。今ではお風呂付きの家が多いですが、銭湯通いの文化はそのまま残っています。
人気のサウナアイテム
各施設のオリジナルアイテムが見られるのも、サウナ旅の隠れた楽しみ。個性豊かなタオル(写真左上:五香湯、写真左下:サウナの梅湯)は旅のどんなシーンにも使える優れもの。サウナ好きには、頭部と髪を守るためにサウナルームの中でかぶるサウナハット(写真右:ルーマプラザ)も喜ばれそうです。
「本日あります」
今では珍しくなりましたが、銭湯の入口にこんな看板が掲げられていることがあります。これは京都の銭湯独特の言い回しで、本日営業します、という意味。銭湯のお湯を薪で沸かすのが当たり前だった時代に、その燃料となる廃材が手に入ったことを「(材が)あります」と記したのが始まりだったとか。
ロウリュが楽しめる施設
サウナストーンに水やアロマ水をかけ蒸気を出す「ロウリュ」はサウナの醍醐味。これを自分で自由にできる施設もあり、「森のサウナ Replus」「ぎょうざ湯」などで楽しめます。「ルーマプラザ」「さがの温泉 天山の湯」「宇治天然温泉 源氏の湯」では施設の方によるロウリュが一日数回行われます。
※写真はイメージです。
※掲載内容は2022年1月11日時点の情報です。最新情報は各掲載先へご確認ください。