京都で愉しむ発酵カルチャー

ヘルシー志向の高まりもあり、近年人気の発酵食品。京都には、漬物・味噌・醤油など、発酵を生かした食品や調味料づくりを行う老舗が、今も数多く残ります。また、気軽に発酵グルメが楽しめるカフェや、発酵ワークショップも。京都ならではの発酵文化に触れて、身体が喜ぶ旅をしてみませんか。


老舗・名店に聞く、京都の“発酵カルチャー”

京都では古くから独自の発酵文化が育まれてきました。受け継がれる文化や歴史、製法を知って、発酵食品を味わってみましょう。

御すぐき處 京都 なり田 上賀茂本店

〜上賀茂の社家から御所へも献上された「夏日の珍味」〜

千枚漬・しば漬と並ぶ「京都三大漬物」の一つ、すぐき漬。300年以上前から上賀茂地域で栽培されてきた京野菜・すぐき菜(かぶらの一種)を冬に収穫し塩だけで漬け込んで、すぐき菜が持つ乳酸菌だけで発酵させた酸味のある漬物です。江戸時代までは初夏に漬けあがり、上賀茂神社の社家(神社に仕える人々)から御所や公家に贈られて、「夏日の珍味」として珍重されたと伝わります。その後、発酵を早める製法が発達し、京都の冬の味覚として愛されるように。「美容や健康に良いと話題になったラブレ菌は、すぐきから発見されたんですよ」と語るのは、文化元年(1804)創業の漬物店・なり田の11代目・成田典子さん。春や夏には発酵が進んでラブレ菌も増え、熟成された味わいに変化していきます。



御幸町 関東屋

〜なぜ京都で白味噌が生まれた?〜

弘化4年(1847)から続く老舗で、京の名だたる料理店や菓子店御用達の醸造元。白味噌を中心に、特注を含め白味噌だけで常時約15種類をつくっています。「白味噌は、米を麹菌が分解してできる糖分が主体。米をたっぷり使う白味噌が生まれたのは、年貢米の集まる朝廷があった京都だからこそ。貴重な甘味料として、祭事にも使われていたんですよ」と6代目の西田有一郎さん。同店ではこの味の要になる麹づくりを、昔ながらの手作業でも行っています。「麹蓋で手作りした麹を使うと、香り高い味噌になります」。店頭で小売りする味噌は、「粟國の塩仕込白味噌」など約4種類。和食のほか、乳製品やキムチ鍋などにもマッチするそう。



菱六もやし

〜麹から広がる発酵の世界〜

創業300年超、京都で唯一の種麹(もやし)店。種麹とは、米に麹菌を生やしたもの。この種麹を使い、各種の穀類を発酵させてできた麹から、味噌や醤油などの発酵食品がつくられます。元になる麹菌の違いにより、種麹の色や性質は様々。白は甘酒や白味噌、緑は日本酒や醤油、橙は焼酎、黒は泡盛など、用途に応じ使い分けられます。生き物である種麹づくりは長年の経験や感覚が必要。「1日に3回ほど麹室に種麹の様子を見に行きます。温度だけでなく、実物を見て種麹の状態を確認することが大切なんです」と現当主の助野彰彦さん。一般の人も、不定期で開催される麹づくり体験に参加するほか、小売りの種麹や米麹、料理にも使える米麹パウダーなどを購入することができます。



澤井醤油本店

〜醤油といっても様々〜

京都御所の近くにあった酒蔵を引き継ぎ明治より醤油づくりを続け、「まるさわ」の名で広く知られる醸造元。毎年春先に仕込まれる同店の醤油は、木桶や釜など代々伝わる道具を用いて口伝による昔ながらの製法でつくられます。「最後の仕上げに醤油を釜に入れて加熱することで発酵を止め香りを付けます。いつ火を止めるかは職人の勘どころ」と語る5代目・澤井久晃さん。古くからの看板商品と言えるのが「さしみ醤油」と「淡口(うすくち)醤油」。淡口は甘みを少し加えるほか、塩分濃度をやや高く熟成期間も約1年と短めに仕上げることで、淡い色味と上品な味わいに。素材の色を生かす、野菜の煮炊きなどに用いられます。
(手前)左より「京もろみ」「さしみ醤油」「淡口醤油」「再仕込醤油」
(奥)まるさわ 醤油3本・ぽんず1本 お試しセット(各75ml)





林孝太郎造酢

〜京の町と酢の関係〜

西陣で180年以上酢をつくり続けてきた老舗。海から遠く離れた京都では、古来より海産物の保存に酢が用いられたことから、酢の醸造が発達しました。色落ちを防ぐ「色止め」や発色を良くする効果もあることから西陣織にも活用され、かつてこの地域には酢の醸造蔵が多く見られたそうです。「短期間で発酵できる速醸法でつくられた酢が多く流通していますが、うちは昔ながらの静置発酵法。じっくりと時間をかけて発酵させることで、旨み成分が凝縮されまろやかな味になります」と話す7代目の林孝樹さん。料理人の厳しい舌に認められた看板商品・米酢のほか、万能調味酢「かけてぽんぽん」や「朝のレーズン」など手軽に発酵ライフを楽しめる商品も充実。



京都で行きたい“発酵カフェ”

京都には、発酵食品を現代的にアレンジしたメニューがそろうカフェも。気軽に発酵グルメを味わってみませんか。

Haccomachi

昭和2年(1927)創業の、西京漬で知られる京都一の傳がプロデュースする発酵カフェ。「発酵に出会う、発酵を楽しむ」をキーワードに、発酵食品を取り入れた豊かな食生活を提案しています。店内は格子窓からの柔らかな光と木の温もりが感じられる心地よい空間。京の老舗の米麹をはじめ、全品に発酵食品を使った「Haccomachi特製 発酵ごぜん」は、ヘルシーながらボリュームも満点。身近な料理に使われている日本伝統の発酵食品の幅広さやおいしさを改めて発見できます。店内仕込みの自家製米麹甘酒や、甘酒の優しい甘さや発酵バターのコクを感じる発酵クレープはテイクアウトも可能。



AMACO CAFE

漬物の老舗・西利が手掛ける、発酵をテーマとしたカフェ。「AMACOドリンク」や「AMACOソフトクリーム」など、甘麹をラブレ乳酸菌でさらに発酵させた乳酸発酵甘麹「AMACO(あまこう)」を使ったメニューが楽しめます。土日限定の「サラダランチボックス」は、甘麹熟成食パンや甘麹塩パン、野菜サラダ、乳酸発酵ラブレスープなどがセットに。元小学校の校舎を活用した複合施設内にあり、中庭の芝生に座ってピクニック気分で味わうこともできます。
※現在はテイクアウトのみの営業

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糀屋cafe

文化元年(1804)創業の麹の老舗「大阪屋こうじ店」内のカフェ。看板メニューの「味噌汁定食」は、白味噌や赤味噌など6種類の味噌から選べる味噌汁が主役です。大ぶりのお椀の中には、しめじや豆腐など、味噌の風味を引き立てる具もたっぷり。舞鶴で穫れた魚を白味噌で漬けた西京焼きも美味。他に「もろみチーズホットサンド」などの食事や、甘酒を使ったアイスやラテなどもそろいます。味噌や塩麹などは小売りもしているので、お土産にもオススメ。

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発酵食堂カモシカ

JR嵯峨嵐山駅にほど近い、発酵食のカフェ&レストラン。人気の「発酵8種定食」は、鯖のへしこや魚醤のピリ辛こんにゃく、燻製煮卵などの発酵盛り合わせと、京白味噌のお汁、自家製ぬか漬け、など手間暇をかけた発酵食の数々が堪能できます。定食にはさらに発酵スイーツやお酒をプラスすることも可能。他にも季節替わりの甘酒パフェや、魚醤ラーメン、テイクアウトの弁当や量り売りの調味料などもそろいます。2階には、発酵食品や発酵手づくりキットを販売する姉妹店「発酵マルシェ」 も。

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京都で挑戦できる“発酵ワークショップ”

塩麹&醤油麹作りのワークショップで、発酵の世界に触れてみませんか。自分の手でつくれば、愛着もひとしお。旅の思い出にも。

梅小路醗酵所

「かもす」「まなぶ」「のむ」「かう」の4つの切り口から醗酵の世界に触れられる体験型スポットで、2020年に宿泊施設・梅小路ポテル京都内にオープン。運営するのは酒販店で、日本酒づくりに欠かせない麹づくりを行うガラス張りの「麹室」を構えています。店内では自家製甘酒や日替わりの「日本酒4種類飲み比べとおつまみ」などが味わえるほか、自家製米麹や発酵食品、全国選りすぐりの地酒などを購入することも可能。ワークショップスペースでは、自家製麹を使った「塩麹&醤油麹作り体験」を予約なしでも手軽に楽しめるほか、毎月定期開催されている米麹作り体験(要予約)は、平日でも満席が出るほどの人気ぶりです。



自分でつくればおいしさ倍増!? 麹調味料づくりにトライ

塩麹&醤油麹作り体験

自分でつくればおいしさ倍増!? 麹調味料づくりにトライ

塩麹&醤油麹作り体験


梅小路醗酵所_024

STEP1

つくれるのは、塩麹か醤油麹のいずれか。麹の種類が黄麹・黒麹から選べるほか、オプションでハーブやスパイスを追加したい場合はそれも含め、オーダーシートに記入します。


梅小路醗酵所_064

STEP2

塩麹の場合は量った水と塩をビーカーに入れ、塩が溶け切るまでよくかき混ぜます。醤油麹の場合は、濃口醤油と薄口醤油をビーカーに量り入れ、合わせます。


梅小路醗酵所_078

STEP3

保存瓶に麹とハーブ(オプション)を入れ、その上から塩水もしくは合わせ醤油を注ぎ込みます。          


梅小路醗酵所_129

STEP4

瓶の蓋を閉め、今日の日付を書いたタグを取り付けたら終了。瓶ごと持ち帰ります。

持ち帰った後は、1日1回瓶を開け、よくかき混ぜます。約1〜3週間ほど続け、発酵が進み、甘い香りがしてきたら完成です。




京都 発酵めぐりマップ

※写真はイメージです。
※掲載内容は2023年3月1日時点の情報です。最新情報は各掲載先へご確認ください。