京道具ではじめる いとおしい暮らし

千年の都として栄えた京都。皇族や公家、茶道や華道の家元からの多様な要望に応え、京都の職人たちの技術は独自の成長を遂げてきました。調理道具やうつわも茶懐石が盛んな京都が育んだ職人文化の一つ。今も多くの専門店や職人たちが残り、現代の暮らしに合わせた進化を続けています。長い歴史の中で愛されてきた道具たちは、暮らしに取り入れるだけで心豊かに。毎日手にする台所用品を京の道具に新調して、心機一転、あたらしい年を迎えませんか。


毎日のことだから、台所用品は愛着が湧くものを

1日3食、毎日のことだから、食事まわりは愛着が湧くものでそろえたい。そんな時には、職人たちのこだわりがつまった京の道具を取り入れてみませんか。手入れなどの手間がかかる分、道具への愛着は使うごとに増していきます。歳月とともに刻まれる経年変化は、あなただけの道具になった証。大切に育てていきましょう。

家庭用から茶懐石用まで、約400種類がそろう箸専門店

【御箸司 市原平兵衞商店】

江戸時代、明和元(1764)年創業の箸専門店。禁裏御用(後の宮内庁御用達)御箸司として今日まで至ります。食事用や調理用をはじめ、神事用や茶懐石用などの専門的な箸に至るまで約400種類。神社仏閣が多く茶道が栄えた京都だからこそ多様な箸が生まれました。あえてこだわりを持たず幅広く取りそろえるよう心がけていると話すのは、8代目の市原さん。あくまで道具なので、使い勝手が最優先。使い心地への追求は尽きることがありません。自身も普段から色々な箸を使い、細かな仕上がりを職方とすり合わせます。木、竹、漆、螺鈿と見た目も触り心地もさまざまな箸は、日本ならではの文化。ぜひ、手に取って自分だけのお気に入りを見つけて。

〜用途によって使い分ける魅力〜
市原平兵衞商店 箸図鑑

 

京風もりつけ箸

箸先まで竹の皮を活かすことで細くても強度が高く、細かなものも摘みやすく。逆さに持てば、柔らかいものでも跡がつきにくく、ヘラとしても使えます。

 

みやこばし すす竹

茅裏の建材として使用され、150年ほどかけて囲炉裏やかまどの煙で燻された「煤竹」。半炭化した竹はより丈夫な上に一点一点異なる表情が魅力です。

 

あげもの箸

熱い油にも扱いやすいよう手元から先までの距離を保ち、しっかり指に沿う八角形に。箸先が密着するように削られており、食材が挟みやすくなっています。



機能美に惚れ込む、竹製品専門店の台所用品

【公長斎小菅】

三条河原町に店舗を構えるのは、明治31年創業の竹細工の老舗の直営店。工芸品としての竹のイメージを覆すスタイリッシュさが海外でも評判です。お箸やカップ、カトラリーなどのテーブルウェアから、鬼おろし、ざる、泡立て器などの調理道具まで種類豊富な台所用品。しなやかで丈夫な竹は道具に適しているだけでなく、自然本来の温かみも魅力です。店長の田中さんも竹に魅了された一人。手に馴染むように施された面取りなど、使ってこそ細部のこだわりが分かると話します。一度手に取ればリピーターが多い理由も明らかです。古くから受け継ぐ良さはそのままに、現代の生活に合わせてデザイン性を高めた竹製品。伝統と革新の両立が長年愛される秘訣です。

お気に入りの道具を持ち歩くよろこび

公長斎小菅 お弁当箱

店名を検索するとインスタグラムに並ぶ色とりどりのお弁当。雰囲気をグッと格上げし、食材を引き立ててくれるのが「公長斎小菅」の竹製のお弁当箱です。一段と二段の2種類あり、バンドはナチュラル・レッド・ブラックの3色から選べます。広い口は、おかずが詰めやすいだけでなくパッと華やかで見栄え良く。高度な職人技でぴったりと合わせた角には、機械では生まれない美しさが宿ります。細い竹を圧着した集成材は節目の組み合わせが異なり、一つひとつ違った印象。自分だけのお気に入りのお弁当箱を選んで、普段のランチをちょっと特別なものにしませんか。



食道具 竹上

包丁のメンテナンスや使い方を教える「庖丁コーディネーター」による専門店。三徳包丁などの家庭用からプロ向けの骨切り包丁まで多種多様な包丁がそろいます。歪みや反りの調整から研ぎを行う「更生修理」では、買った時よりも切れ味良く。月2回の研ぎ方講座で基礎を学べば、日々の手入れも自身で。

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鳥井金網工芸

創業130年以上と京都で最も古い京金網の老舗。平安神宮や知恩院といった名だたる寺社の鳩よけとして発展した技術は見た目も秀逸。併設された工房では一つひとつ手作業で編み上げる職人技が間近に見られます。代表的な湯豆腐すくいをはじめ、水切りかごや焼き網など暮らしに取り入れたいものばかり。

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開化堂

約150年続く日本最古の茶筒店。国内外問わず多くの愛用者を持つ開化堂の茶筒は、言わずと知れた名品です。手を離すと自然と閉まる蓋は、食材を守るための高い気密性ゆえ。100年以上変わらない手仕事が様式美を完成させます。珈琲缶やパスタ缶などサイズもさまざま。使い込むごとに味が出る相棒を手に入れて。

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京都で暮らしの道具を「えらぶ」たのしみ

さまざまな専門店や職人が残る京都では、こだわりの製品を厳選したセレクトショップも多くあります。商品を選ぶのは、老舗の店主からインフルエンサーまで。それぞれのお眼鏡に叶った品々は、店によって個性が出ます。目利きたちのセレクトに感心しながらの品定めも楽しいひと時。一件であれこれ道具がそろうのも魅力です。

みまる道具店

アパートメントホテル「MIMARU SUITES 京都四条」内に暮らしの道具店がオープン。京都で評判の道具店「川端滝三郎商店」と「倉日用商店」が目利きした日本各地の日用品がそろいます。食器や調理道具、生活雑貨に昔ながらの玩具まで、宿泊者は気になるものを部屋に持ち込み無料でお試し。使ってこそ分かる道具の良さと昔ながらの日本文化が体感できます。販売は行っていないため、気に入ったものがあれば「川端滝三郎商店」や「倉日用商店」まで足を伸ばして旅の記念に購入を。使う度に思い出に浸れる道具たちは、何気ない毎日をちょっと豊かにしてくれます。


器と暮らしの道具店 おうち 岡崎本店

日々の暮らしを発信する人気インスタグラマーの田中千恵さん。美術館が集まる京都カルチャーの拠点、岡崎エリアに古民家を改装した雑貨店を営んでいます。店内には「辻󠄀和金網」や「公長齋小菅」といった京道具や温かみのある作家ものが並び、どこか親しみやすい雰囲気。手仕事の良さが存分に感じられるセレクトは、京都に生まれ育ち、主婦として道具を愛用する田中さんだからこそ。思い入れのある道具を使うことで、面倒に思いがちな家事にも楽しみが生まれます。同エリアにある平安神宮店で開催する企画展やワークショップにも注目を。



あたらしい京都のうつわで食卓に彩を

日々の原動力になる食事の時間は、料理だけでなく食器にもこだわりたいところ。台所用品をそろえたら、食卓を彩るうつわも合わせて新調しませんか。京焼・清水焼をはじめ、新旧あらゆる焼き物がそろう京都。まずは、気軽に一枚取り入れるところから。手作りの温もりが目からも栄養を与えてくれます。ぜひ、手にとって選んでみて。

京都を代表する清水焼を現代の生活に届けるショップ兼工房

【TOKINOHA Ceramic Studio】

多くの作家や窯元が集まる「清水焼団地」にオープンした清水焼のショップ兼工房。制作風景が間近で見られるだけでなく、予約制の陶芸体験や陶芸を味覚で楽しむドリンクメニューもあり、まさに焼き物の魅力を五感で堪能できる空間です。京都府内で制作された器を示す清水焼は多種多様。絵付けを施したクラシカルなものだけではありません。そんな幅広い清水焼の魅力を若い人に届けたいという思いから、シンプルな作風に至ったと話す代表の清水(きよみず)さん。料理が盛られて完成するようにと無地で統一されています。自然と今の暮らしに溶け込み、日々の食卓に彩りを添えてくれる器たち。レストランや料亭などプロの料理人たちにも人気です。



京都徳力版画館【醤油差し】

代々、西本願寺の絵所預として仕えた徳力家の十二代富吉郎がはじめた版画店。京都府北部の花背で「工芸離世(はなせ)」を営み、版画雑貨だけに留まらず花背で焼かれた陶芸も販売しています。愛らしい鳩の醤油差しは、赤と青の2色。口から醤油を出す姿がユニークで、液だれしづらい機能性もうれしい。

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江村商店【友禅のうつわ】

創業100年を超える呉服問屋が斬新なアイディアで反物に新たな命を。煌びやかなガラス皿は、建築資材に用いられる特殊な技術で京友禅とガラスを組み合わせたもの。和洋どんなスタイルにも馴染み、食卓を華やかに演出します。着物を着る機会が減る中で、京都の職人たちの素晴らしい技術を今に伝える品です。

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酒器 今宵堂 【酒器】

店舗兼工房の町家でお猪口や徳利などの酒器や肴皿を制作。日々の晩酌を欠かさないという夫婦が共同で手がける作品は、お酒時間を楽しく彩るものばかり。絵柄のないシンプルなものから動物を描いた遊び心あふれるものまで、どれも愛着が湧いてきます。季節や展示会に合わせて生まれる新作にも注目を。

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食卓で自然を愛でるたのしみ

Shop & Gallery 竹生園

日本屈指の良質な竹の産地、長岡京に工房を構える「高野竹工」の直営店。茶の湯文化で培われた竹工の技術を活かし、茶道具から現代のライフスタイルに合わせた日用品まで幅広く手がけています。時には金閣寺や妙喜庵の国宝「待庵」といった歴史的価値の高い古材を用いることも。茅葺屋根の天井に使われ100年以上燻された「煤竹」を使用した一輪挿しなら、貴重な素材も気軽に暮らしの中へ。長い歳月をかけて生まれた風合いが凛とした佇まいです。ガラスの試験管を合わせているため扱いやすく、さりげなく草花を飾るだけでいつもの食卓がおもてなしの装いに。





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※写真はイメージです。
※掲載内容は2024年1月12日時点の情報です。最新情報は各掲載先へご確認ください。