京のあったかお鍋

北山、東山、西山と三方を山に囲まれた京都盆地。山から吹き込む冷気が地表に留まることから、冬の寒さが厳しく「底冷え」と言われています。身体の芯まで冷えきってしまう京都の冬、身体を芯から温めるのにおすすめなのがお鍋です。京都といえば湯豆腐を思い浮かべるかもしれませんが、一口に鍋と言っても、すき焼き、水炊き、ぼたん鍋など種類さまざま。長年、京都人に愛されてきた鍋は、名店ぞろいです。「底冷え」で冷えきった身体、お好みのお鍋で温めませんか。


鍋に欠かせない「京都の食文化」

京都人は牛肉好き

京都の食といえば豆腐や京野菜といったヘルシーなイメージがありますが、意外にも京都人は牛肉好き。牛肉購入額が全国1位になったこともあり、街には牛肉をメインに扱う精肉店が多く見られます。京都は山に囲まれた土地柄、昔は新鮮な魚が流通しづらく、代わりに牛肉文化が根づきました。今では、府内で生産・飼育される高級牛肉を「京都肉」と名づけ、ブランド化されています。

冬が旬の京野菜

九条ネギ、聖護院だいこん、水菜、山の芋など、厳しい寒さで育った京野菜は甘味たっぷり。鍋が美味しい季節にちょうど旬を迎えます。京都では平安京が遷都した1200年にわたって野菜作りが発展し、数多くの伝統野菜が誕生しました。野菜の栽培にも盆地特有の地形や豊富な水源が活かされています。かつて京都では、半纏にもんぺ姿で野菜を積んだ乳母車を引く「振り売り」が多く見られました。

名水とお出汁

一説によると京都盆地の地下には琵琶湖の約8割といわれる地下水があるのをご存知でしょうか。京都では豊富な水源のおかげで豆腐やお酒、染め物などの文化が発展してきました。京料理に欠かせないお出汁もその一つ。軟水でミネラル含有率が低い京都の水は、昆布の旨味を引き出すのに最適。出汁のできが全く違うといいます。そのため、今でも名店の中には、出汁に京都の地下水が使われているところがあります。



時代を超えて愛され続ける名店の味

【すき焼き】三嶋亭 ー 三条 ー

国内外問わず多くの人が訪れる「三嶋亭」は、2023年に創業から150年を迎えるすき焼きの老舗。日本のすき焼き文化の草分け的存在として、明治6年、寺町三条に創業しました。京町家らしい店構えの中は数寄屋造りとなっており、美しい坪庭や内装のほとんどが創業当時の姿を留めています。そんな文明開化を感じさせる店内でいただくすき焼きは、味はもちろんのこと雰囲気も格別。代々受け継がれる目利きにより厳選された黒毛和牛の霜降り肉を独自の方法で熟成。こだわりの焼き方と秘伝の割下でいただきます。日本料理の修行をした5代目当主考案の「花コース」は、すき焼きがメインの懐石仕立て。伝統を守りながらも進化し続けることで多くの人々に愛されています。


【鴨ちり】そば処 桝富  ー 東山 ー

地下鉄東山駅すぐにある「そば処 桝富」では、2名より要予約で鴨ちりがいただけます。お皿いっぱいに美しく盛られた鴨は、朝さばいた新鮮な近江鴨。中でも2・3ヶ月ほどの若い鴨のもも肉を選んでおり、さっぱりと柔らかく味が濃いのが特徴です。たっぷりの野菜に豆腐、湯葉や生麩などを入れ、鴨肉は最後にサッと火を通すのが美味しくいただくコツ。自慢のざる出汁を割った自家製ポン酢につけて味わいます。最後のシメは、お店こだわりの自家製粉蕎麦。風味豊かな蕎麦は、お鍋との相性も抜群。鴨の脂と野菜の甘味が染み出した鍋で蕎麦を温め、ポン酢と合わせていただきます。さらに雑炊を追加すれば、鍋出汁を余すことなく堪能できます。


【元祖ぼたん鍋】畑かく ー 鞍馬口 ー

地下鉄鞍馬口駅すぐにある「畑かく」は、京都市内では珍しいぼたん鍋のお店。中庭を望む数寄屋造りのお部屋で、囲炉裏にかけた土鍋を囲みながらいただきます。囲炉裏には茶の湯でも使用される高価な菊炭を使用。赤土に釉薬をかけて焼いた赤楽の土鍋を使い、炭火でじっくりと火を通すことでまろやかに仕上がります。白味噌仕立ての鍋には、猪肉のほか聖護院だいこん、白ネギ、ささがき牛蒡などの野菜が入っており、出汁をたっぷり吸う聖護院だいこんは、最後にいただくのがお店おすすめの食べ方。主役の猪肉は3〜5歳の若い猪を選んでいるため、臭みが少なく柔らかくて良質。冬に蓄えた脂がいい出汁となり、白味噌と炭火でぽかぽかと温まります。



夜の旅のお供に、祇園でひとり鍋


小鍋屋 いさきち

夜の旅のお供に、祇園でひとり鍋


小鍋屋 いさきち

小鍋屋 いさきち

祇園白川の辰巳大明神を目印に北へ、細い路地を奥へ進むと現れる隠れ家的名店。カウンターにある大皿にはさまざまな料理が盛られ、お酒が進みそうな一品も充実しています。一人前から注文できる冬の小鍋は全部で約15種類、お肉は鶏か豚かを選べます。お店の鶏肉は全て丹波赤鶏を使用。中でも「九条ネギととり」や「ゆば鍋」は人気のメニューです。出汁は煮詰まっても美味しくいただけるように甘めに仕上げているため、シメの雑炊とも合います。お客さんがいなくならない限り、夜中の3時まで営業しているので、遅めの鍋にもおすすめです。





祇園いとう家の小鍋
祇園いとう家の小鍋

いとう家の小鍋

笑顔が素敵な女将が切り盛りする祇園町北側の小鍋専門店・一品おばんざいのお店。女将が自ら育てた新鮮な野菜を使用したおばんざいや自家製のフルーツ酎ハイなど、手作りにこだわったメニューが人気です。おすすめの「ちゃんこ鍋」にも自家栽培の野菜がふんだんに使われており、絶品の出汁が身体にやさしく染みわたります。残った場合、テイクアウトができるので、翌日も温めて美味しくいただけます。ひとりでも大歓迎とあって、元気で明るい女将とのトークも楽しめそうです。夜中3時まで営業しているので、時間を気にせずにゆっくりと過ごすことができます。






京都の鍋どころは個性派ぞろい

【すき焼き】

キムラ

寺町京極商店街に90年以上、店を構えるすき焼き店。赤と青の看板が目を引くレトロな建物は、100名の団体も歓迎できる広さです。自分たちで作る過程を楽しみながら国産黒毛和牛のすき焼きがお手頃価格でいただけます。野菜を入れた上にお肉を乗せ、たっぷりの砂糖と出汁をかけて煮込むのがキムラ流。

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【水炊き】

ぎをん縄手 とり安

東山の名水を使用し、1日かけて作る鶏がらスープが自慢の水炊き専門店。白濁したスープはあっさりとしながらも奥深い味わい。朝引きの特選京丹波地鶏を風味豊かな自家製ポン酢でいただきます。お店の造りは、間口が狭く奥に深い「うなぎの寝床」。京都らしい店内で味わう鍋は、風情があります。

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【鴨すき】

京町家 鴨ゝ

築120年の京町家をリノベーションした雰囲気満点の鴨料理店。看板メニューの「鴨すき」は、京都産の鴨と白ネギが相性抜群。栄養価が高く新鮮な鴨肉は、噛めば噛むほど旨味が広がります。鍋と合わせて唐揚げや肉寿司などの鴨料理、京野菜や湯葉、生麩などの京都らしい一品も楽しむことができます。

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【出汁しゃぶ】

京都 瓢斗

お店の名物は、京懐石やおばんざいに欠かせない“お出汁”を主役にした「出汁しゃぶ」。北海道産昆布と鰹節、煮⼲しを贅沢に使った出汁で、薄く刻んだネギと一緒に甘く柔らかい国産ブランド豚をいただきます。ポン酢や胡麻ダレに変わる新しい“お出汁”のつけダレで、素材の風味を堪能できます。

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【芳香炉】

晦庵 河道屋

数寄屋造りの店構えが趣深い、江戸時代から続く老舗そば屋。先々代(14代)が考案した「芳香炉」は、九条ネギ、かしわ、飛龍頭(ひろうす)など京都らしい8種類の食材が入ったお店独自の鍋。代々守り続けてきた出汁が効いており、シメには山の芋を打ち込んだ蕎麦とコシのあるうどんが楽しめます。

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【京もつ鍋】

京もつ鍋専門店 亀八本店

京都のお出汁に吟醸白味噌を合わせた上品でコクのあるスープが人気の「京もつ鍋」。近江牛の上質なモツをはじめ素材にこだわった贅沢な鍋は、食べ進めるごとに旨味が増していきます。定番の「自慢の白」のほか、韓国辛みそ味の「旨辛の赤」、カレースパイスが入った「やみつきの黄」など味は5種類。

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お家鍋の相棒さがし

【ずっと使い続けたい、職人の道具】

お家鍋の相棒さがし

【ずっと使い続けたい、職人の道具】

本格的なお店の鍋もいいけれど、周りを気にせずに楽しめるお家鍋はいかがですか。いつもの鍋を特別なものにしてくれる調理道具が京都にはそろっています。一つひとつ丁寧に作られた職人の手仕事は、長く愛用できる高品質なものばかり。旅の思い出とともに持ち帰ってみませんか。



鍛金工房 WESTSIDE33

【金物】鍛金工房 WESTSIDE33

その名の通り三十三間堂の西側にあるお店には、数えきれないほどの調理器具やテーブルウェアが所狭しと並んでいます。こちらは全て金づちで叩き仕上げる鍛金(たんきん)という手法を用いて作られたもの。職人の手作業によって付けられた「つちめ」と言われる金づちの跡は、見た目が美しいだけでなく金属を丈夫にしてくれる効果があります。素材は銅、真鍮、アルミの3種類。さまざまなサイズの鍋やおたま、お酒を温める酒燗器(しゅかんき)など、鍋にぴったりな道具が勢ぞろい。フタのない鍋は、お皿としても使えるとのこと。京都の料亭でも使われている一流の調理器具、お家の鍋を一段と美味しく食卓を華やかにしてくれます。






桔梗利 内藤商店

【たわし】桔梗利 内藤商店

鍋のお手入れが気になったら、三条大橋の麓にある「内藤商店」へ。店頭には、ほうき、たわし、ブラシなど職人によって作られた掃除道具が並びます。店で扱うシュロのたわしは、一般的なヤシのたわしよりも柔らかく、鍋だけでなくガラスまで洗うことができます。特にS字たわしは金属部分が出ていないので、食器を傷つける心配もいりません。現在の形のたわしは明治時代のもので、江戸時代は棒状のたわしだったといいます。こちらでは棒状のたわしも購入できるので、深さがあるものを洗うのに最適。シュロの成分が汚れを落としてくれるそうで、洗剤を使わず洗うことができます。油をお湯で落として、しっかり水気を切って乾かせば長持ちします。





京都のあったかお鍋マップ

※写真はイメージです。
※掲載内容は2022年12月16日時点の情報です。最新情報は各掲載先へご確認ください。