染み渡る、京のお出汁。

旅の醍醐味は、その土地ならではの食事。せっかく京都に来たならば、京料理の基本である京のお出汁をじっくり味わってみませんか。思わずほっこりとする優しいうま味には、昆布と鰹節の栄養がたっぷり。昆布のグルタミン酸と鰹節のイノシン酸が合わさる相乗効果で、合わせ出汁は昆布出汁の7〜8倍以上ものうま味が感じられます。お腹の中から温まれば、身も心もリラックス。体の調子を整えて、京都の食文化の奥深さを堪能しましょう。


「京都のお出汁」とは

日本に出汁文化が広まったのは江戸時代。当時、蝦夷地(北海道)で昆布の生産が盛んになり、日本海側から越前(福井)の敦賀を経由して、京都や大阪へ届けられたのがきっかけです。のちに江戸や琉球まで広がった流通ルートは「昆布ロード」と呼ばれ、日本の食文化に大きく貢献。一説には先に届けられた関西で上質な昆布が売り切れてしまったため、関東では鰹出汁が発展したと言われています。京料理とともに独自の食文化を育んだ京都では、あっさりとした昆布出汁が基本。ミネラル含有率が低い京都の軟水だからこそ、繊細な昆布のうま味を十分に引き出すことができます。なかでも利尻昆布は、香り高く上品な味わい。懐石料理の椀物にも適していることから、京都で好まれている昆布です。今ではパンやラーメンなど、和食だけでなく、さまざまな料理にお出汁が使われています。今もなお発展を続ける京のお出汁に注目すれば、旅の食事が一味も二味も違ってきます。

京のお出汁で、違いを知る

まずは純粋なお出汁の味を飲み比べることから。五感を研ぎ澄まして、色、香り、味とわずかな違いを感じ取ります。食物繊維やカルシウムが豊富な昆布や、体内で作ることのできないアミノ酸を含む鰹節など、身体に染み渡るような素材の栄養。王道の出汁料理を味わうことで味覚をととのえ、京のお出汁の“いろは”を学びます。

【京都離宮 ODASHI × DASHIMAKI】

〜 利き出汁で自分好みのだし巻きを 〜

梅と椿の名所として知られる「城南宮」のすぐそば。古民家をリユースした広い店内は、まるで五感で楽しむお出汁のテーマパーク。食事のほか、お出汁について学べる展示や手軽にお出汁が取り入れられる商品なども充実しています。名物は、離宮のおだし、京さわら、あご、本枯節の4種類から効き出汁で好みのだし巻きが選べる「だしまき御膳と釜たきごはん」。四季折々の京料理や目の前で炊き上げる釡たきごはんといただく主役は、見た目も美しい京のだし巻き。京都産のこだわり卵でつくるだし巻きは卵の量に対して3 倍もの出汁でつくられており、ボリュームたっぷりでふわふわに仕上げています。料理人たちの見事な職人技を間近で見られるスペースも。シメにはご飯にだし巻きを乗せ、だし巻き出汁茶漬けにしてさらりと。


【五辻の昆布 昆布と麺 喜一(きいち)】

〜 老舗昆布店が生み出す究極の一杯 〜

老舗昆布店「五辻の昆布」が本店2階に昆布の魅力を伝えるためのラーメン店をオープン。6mものトチノキの一枚板が印象的な店内には洗練された雰囲気が漂います。まずは昆布、鰹節、昆布と鰹の合わせ出汁の3種類を飲み比べから。うま味の相乗効果を実感したのち、つけ麺をいただきます。5代目自らが解説をしながら目の前でおぼろ昆布を削るライブ感満載の提供スタイル。真昆布、利尻、羅臼など、貴重な昆布を惜しげも無く使えるのも昆布店だからこそ。粘り気のある「がごめ昆布」と混ぜ合わせれば、太麺もスルスルと。数種類の魚介出汁にチャーシューを合わせたスープにつければ、増幅したうま味が押し寄せます。最後は1階でお土産をお忘れなく。※夏期はつけ麺、冬期はラーメンの提供になります。


京都の出汁文化について学ぶなら

京の食文化ミュージアム・あじわい館

全国各地から新鮮な海産物や青果物が集まり、京の食文化を支える「京都市中央卸売市場」。活気あふれる市場の一角、京都青果センタービルの3階に京の食文化が体感できるミュージアムがあることをご存知ですか。行事食やおばんざい、京菓子や京野菜など、あらゆる角度から食文化を紹介。京料理に欠かせないお出汁の展示も充実しています。実際にさまざまな種類の昆布や魚節が見られるだけではなく、お出汁の飲み比べ体験も。展示室は入場無料・予約不要につき、ふらりと立ち寄ることができます。



街の料理で、お出汁を味わう

京都のお出汁と聞いて思い浮かぶのが京懐石に欠かせない椀物。少し敷居が高いイメージを持たれがちですが、京都は出汁文化が根付く街。おでんやお茶漬け、さらにはパンに至るまで、日々のさまざまな料理にもお出汁が使われています。思い切って立ち寄れば、今までのイメージも一変。本格的なお出汁がもっと身近な存在に。

【麩屋町103(イチマルサン)】

〜 出汁の老舗「うね乃」のお出汁を使ったおでん屋 〜

“おくどさん”を囲むように配されたカウンターは、ビルの一室とは思えない上質な雰囲気。こちらでは、京都の老舗乾物店「うね乃」が出汁にこだわる“おでん”を提供。大きな銅鍋の中には、定番の水ダコや大根、こんにゃくのほか、自家製の飛龍頭(ひろうす)や豆腐など京都らしい食材も並びます。イタリアン出身の店主とあって中にはトマトやカチョカバロなどの変わり種も。創業当時より継ぎ足す煮込み出汁には、利尻昆布と枕崎産の鰹節のみを使用。仕上げに椎茸粉や枯節で深みを増した澄んだお出汁をかけて盛り付けます。おでんのほか一品料理も季節によって入れ替わり。だし巻きや湯葉汁などお出汁が堪能できる朝食(予約制)にも注目を。



【おこぶ北淸(きたせ)】〜老舗昆布店の一品料理で日本酒を〜

酒どころ伏見に店を構えて100年以上の老舗昆布店がプロデュース。土・日曜の昼はカフェ、夜はバルといったカジュアルなスタイルで、昆布や出汁にこだわった一品料理が気軽に楽しめます。昆布店だからこそ、さまざまな種類の昆布がラインナップ。伏見をはじめ日本各地から取りそろえる地酒とともに味わえば、幸せな余韻が広がります。

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【ワルダー】〜お出汁のうま味あふれる新感覚パン〜

京都の中心部に店を構える人気ベーカリー。種類豊富なパンが並ぶなかでも話題となっているのが「京のおだしパン」です。シンプルな見た目にプレーンな味を想像しますが、一口食べればびっくり。鰹と昆布の合わせ出汁、さらには練り込まれた桜エビのうま味が次々とあふれます。京都らしい手土産として持ち帰るのもおすすめ。

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【阿じろ】〜精進料理ならではの滋味深い味わい〜

日本最大の禅寺「妙心寺」御用達の精進料理店。肉や魚を一切使わない分、出汁には昆布、どんこ椎茸、かんぴょう、煎り大豆などで味に深みを出す工夫をほどこしています。精進料理の基本「五味(5つの味覚・五法(5つの調理法)・五色(5つの色合い)」を実践することで、お弁当に懐石と多彩な料理の数々が楽しめます。

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【京都 柳馬場 ほん田亭】〜一番出汁にこだわった京のだし巻〜

本格的な京料理店もお昼ならリーズナブルに。連日多くの人が求めて来店する「京だし巻丼」は、ふっくらした見た目通りお出汁がたっぷり。鰹節と利尻昆布で引いた一番出汁に三重県産「青山高原どり」の朝採れ卵を4つも合わせた贅沢な一品です。ご飯にかけた鶏そぼろあんかけと一緒に出汁の奥深さを堪能して。

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【京都おぶや】〜出汁をとことん楽しむためのお茶漬け〜

京都駅直結の京だし茶漬け専門店。自慢の出汁は鰹と昆布をベースに素材の味が引き立つようにあっさりと。米にもこだわり、茶漬けに合わせて厳選した国産米を昆布とともに炊き上げています。具材はシンプルな昆布と梅から海鮮を贅沢にのせたものまで。いずれも鰹、鮪、鯖の3種類をブレンドした削り節をかけて召し上がれ。

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【すりながしスタンド だしとうまみ】〜伝統料理をカジュアルに〜

京料理店「匠 正阿弥(たくみしょうあみ)」の料理長が岡崎エリアにすりながしスタンドをオープン。普段は料亭などで味わう“すりながし”をワンハンドでいただくカジュアルなスタイルに。ビーツやナッツ、アロエなど和食の域を越えた食材も使用し、出汁と合わせます。見た目が華やかなだけでなく、栄養満点の一杯です。

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京都特有の文化?

焼肉の洗いダレ

お出汁だけでなく、牛肉文化も根強い京都。そんな2つの食文化が融合した独自のスタイルが焼肉の「洗いダレ」です。他府県ではほとんどお目にかかれませんが、京都の焼肉店ではテーブルに澄んだタレが用意されていることがしばしば。しっかりと下味がつけられた焼肉をこちらの「洗いダレ」にくぐらせ、余分な脂を落としてあっさりといただくのが京都流です。細かくは異なりますが、基本はお出汁がベース。京都を代表する焼肉店「天壇(てんだん)」をはじめ、店ごとの味が確立されています。



京都の本格お出汁を手軽に楽しむ

京都でお出汁を楽しんだあとは、日々の食卓にもお出汁を取り入れて。お店の味を再現したお出汁パックなら、家庭でも簡単にプロの味が再現できます。一流料亭や老舗味噌屋など、各店こだわりのお出汁は個性豊か。お家でしみじみ味わえば、旅のゆったりとした時間が蘇ります。持ち帰りやすい軽さで、お土産にもおすすめです。

【京都𠮷兆】〜一流料亭の“本物の味”をご家庭でも〜

日本指折りの一流料亭が追求した“本物の出汁”は、無添加の「極みだし」。化学調味料や香料不使用はもちろんのこと、塩や醤油も加えず厳選した国産素材のみを使用。本枯鰹節と羅臼昆布だけの純粋なうま味を存分に堪能できます。京都駅の新幹線改札内「京のみやげ」でも販売しているので、帰り際に購入できるのも嬉しいところ。

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【茅乃舎 大丸京都店】〜2種類の昆布を合わせた京都限定〜

全国で評判の出汁ブランド「茅乃舎」では、大丸京都店でしか手に入らない京都限定の出汁パックを販売。昆布好きな京都人に合わせ、鮪節に真昆布と利尻昆布2種の昆布をブレンドしています。上品で繊細な昆布の味わいは、お漬物や餡かけにぴったり。3種の鰹節を使用した東京限定と飲み比べてみてはいかがでしょうか。

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【本田味噌本店】〜老舗味噌屋の味噌汁専用お出汁〜

天保元年(1830年)創業の老舗味噌屋が手がける「ほんだ京みそのだし」は、なんと味噌汁専用。西京白味噌に合わせて利尻昆布をメインに鰹節を少し合せた「白」と、数種類の魚節と昆布をバランスよく合わせた「赤」の2種類を販売しています。種類豊富にそろう味噌と合わせて持ち帰れば、ほっこりと京都の思い出が蘇る食卓に。

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染み渡る、京のお出汁。マップ


※写真はイメージです。
※掲載内容は2024年9月2日時点の情報です。最新情報は各掲載先へご確認ください。