長い歴史と豊かな自然が育んだ京都のお茶
宇治茶は、鎌倉時代に栄西禅師(えいさいぜんじ)が中国から日本へもたらした茶種を明恵上人(みょうえしょうにん)が京都に持ち込んだことがはじまりとされています。室町時代の足利義満や義政の頃には、お茶の栽培を奨励。全国屈指の産地となりました。千利休により確立された茶の湯も宇治茶があってこそ。宇治市、宇治田原町、和束(わづか)町、南山城村などが産地としても有名です。安定した雨量や昼夜の寒暖差といった良質なお茶には欠かせない条件がそろう場所。長い歴史と恵まれた自然環境が京都の良質なお茶の秘密です。
“お茶のまち”から、いろんな視点でお茶に「ふれる」
いつも何気なく飲んでいるお茶は、どのようにつくられているのでしょうか。茶畑を大切に育てる茶農家や熟練した技で製茶を行う職人など、多くの人たちが手間暇かけて私たちの元へと届くお茶。宇治茶の産地では、あらゆる角度からお茶を楽しむ体験が大充実しています。深く知れば、一味も二味も違って感じることでしょう。
茶畑からお茶のすべてを知り尽くす体験ツアー
【d:matcha Kyoto】
宇治茶の主産地・和束町で栽培から製茶・販売までを一貫して行う茶農家。3ヘクタールの茶畑で栽培するお茶は10品種。大半を農薬不使用、有機肥料のみで栽培しています。国外からの人気も高い和束茶満喫ツアーでは、生産農家だからこそ実現できる貴重な体験が充実。3時間半かけ、お茶のことをしっかりと学びます。はじめにお茶の知識を深めたら、実際に茶畑へ。茶摘み体験し、製茶工場を見学。目の前に茶畑を望むカフェで、お茶を使ったランチ、抹茶、煎茶3品種の飲み比べが楽しめます。併設するショップでは、茶葉のほか自社で製造する種類豊富な抹茶スイーツを販売。「Farm to Table」というコンセプトのもと、お茶の魅力を世界に発信しています。
『源氏物語』ゆかりの古刹で抹茶を使ったお香づくり
【INCENSE KITCHEN(インセンスキッチン)】
宇治で抹茶を使ったお香「いとをかし香」を手がける「INCENSE KITCHEN」。『源氏物語』ゆかりの古刹「恵心院」でお香づくり体験を行なっています。平安時代に部屋や衣裳に香をたきしめていたという「空薫(そらだき)」の実演を受けてから、お香づくりへ。材料は、樹皮を粉末にしたタブ粉、抹茶、水のみ。宇治の製茶工場から廃棄せざるを得なくなった高品質の抹茶を仕入れています。木型は京都やお茶にまつわるモチーフなど、選ぶ時間まで愛おしいものばかり。四季折々に姿を変える庭を眺めながら、部屋中に漂う抹茶の香りに癒されます。体験後は、制作したお香5.6点と、専用香炉とキャンドルをお待ち帰り。お茶どころにいるような爽やかな香りで旅の思い出がよみがえります。
手軽に挑戦できる話題のラテ缶づくり【ますだ茶舗】
世界遺産「平等院」の正門前で店を営む、創業1912年の宇治茶専門店。隣接する「TEA STAND SHOP」のラテ体験では、本格的な宇治抹茶やほうじ茶を自分で点てて、手軽なラテ缶でいただけます。コク深いミルクと上質なお茶が絶妙な組み合わせ。お茶の産地ならではの思い出にいかがですか。
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宇治茶の知識を深める【お茶と宇治のまち歴史公園 茶づな】
宇治茶の歴史をひも解く複合施設。体感型のミュージアムや宇治茶に関する体験プログラムなど、楽しみながらお茶について学ぶことができます。館内には抹茶メニューが味わえるレストランや手土産が購入できるショップも併設。屋外には史跡、庭園、広場があり、子ども連れにもおすすめのスポットです。
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老舗茶舗による新しいお茶の施設【TEA SQUARE MORIHAN】
江戸時代に創業した老舗茶舗「森半」が新たに「お茶の施設」をオープンしました。お茶の木が植えられた中庭や新茶のハーバリウムなど、さまざまなお茶の展示が見られます。施設内の工場で製造したお茶は、「森半 蔵カフェ」でスイーツやドリンクに。ふんだんに茶葉を使用した贅沢な味わいは、お茶屋だからこそ。
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複数のお茶を「くらべる」
古くからお茶文化が根付く京都には、飲み比べが楽しめるお店もたくさん。玉露や煎茶といった種類の違いだけにとどまらず、茶葉の産地や品種の違いにも無数の味わいがあります。お店ごとに厳選された飲み比べセットは個性豊か。甘み、渋み、旨み、細かな味の違いをじっくりと確かめて、自分の好きなお茶に出合いませんか。
製茶場を併設する喫茶で揉み立てのお茶を味わう
【売茶中村】
喫茶と製茶場を兼ね備える日本茶専門店。新茶の時期には店主自らが全国各地の茶畑へ足を運び、厳選した茶葉を低温で急速冷凍。店内で毎日のように製茶をすることで、年間を通して揉み立ての新茶が味わえます。小型の機械を使った製茶は、1度にわずか400g。店内がお茶の香りに包まれます。香り高い出来立ては、茶工場でしか味わえない特別な味。20種類ものお茶の中から決めかねた時には、煎茶三種飲み比べセットがおすすめです。特殊なサーバーから注ぐ水出し煎茶「NITRO GREEN TEA」は、細かな窒素ガスが行き渡り、すっきりとクリーミーな口当たり。あたたかな煎茶との違いが楽しめます。こだわりの茶器で淹れる店主の美しい所作からも目が離せません。
特製スイーツとお茶のペアリング
茶寮 FUKUCHA 京都駅店
創業者・伊右衛門の名で有名な老舗茶舗「福寿園」による茶寮。京都駅直結ながらも、店内に入ると落ち着いた雰囲気が広がります。種類豊富な宇治茶ほか抹茶ラテや、特製の抹茶スイーツなど、幅広いメニューの数々。なかでもおすすめは、飲み比べが楽しめるティーペアリングセットです。4種類のお茶に合わせてパティシエが個性豊かなスイーツを考案。組み合わせごとに新たなお茶の美味しさと出合えます。抹茶や煎茶など定番のお茶を飲み比べるセットのほか、シナモンやジンジャーなどをブレンドした宇治茶ハーブティーを飲み比べるセットも。
日本茶の文化を体感する町家のサロン
◯間[MA]
築100年ほどの町家を改装した現代日本文化茶論。茶論(サロン)とは、茶の湯と日本茶を軸に食、アート、香り、音楽といった文化を総合的に楽しむ空間のこと。日本茶を中心に産地や品種、生産者に至るまで幅広く取りそろえ、約200種類以上ものお茶がそろいます。茶葉の購入はもちろん、茶房では多くのお茶のなかから3種類の茶葉を選ぶ「茶味比べ」が味わえます。洗練された空間で心静かに日本茶をいただく至福のひととき。店頭では日本茶から抽出したフレグランスや茶器の販売ほか、お茶会などのイベントも。必ず予約をしてから訪れて。
お茶を飲み当てる娯楽
茶香服(ちゃかぶき)
「茶香服」とは、お茶の香りや味わいから銘柄を当てる遊び。唐の時代に中国から伝来した「闘茶」を起源とし、日本でも瞬く間に人気となりました。南北朝時代から室町時代には最盛期を迎え、あまりの白熱ぶりに室町幕府から禁止令が出されたほどです。当時は京都とそれ以外の産地を飲み比べていましたが、現在は玉露や煎茶など5種類を用意。茶葉を拝見してから順に同じ条件でお茶を淹れていきます。香りや味を確かめながらお茶と向き合い、感覚が研ぎ澄まされる真剣な時間。伝統文化に触れることで、お茶への理解が一層深まります。
お茶で世界を「旅する」
喫茶文化が盛んな京都では、中国茶や台湾茶、紅茶など日本茶以外の専門店も目にとまります。それぞれのお茶に精通した店主たちが選ぶ茶葉は多種多様。豊富な品ぞろえのなかから、あなたが飲みたかったお茶を提案してくれます。一口飲めば、鼻に抜ける豊かな香り。味わいながら目を閉じれば、異国の情景が浮かぶようです。
中国茶のプロが選ぶ種類豊富な茶葉【7T+】
日本茶インストラクターで中国政府公認の評茶員でもある店主による茶葉専門店。店頭にずらりと並んだ茶葉見本は個性豊か。中国や日本を中心に、さまざまな産地に赴き厳選した80種類以上が並びます。お茶の種類は、緑茶、白茶、青茶など、製法や発酵の違いで7つのグループに部類。悩んだら、好みに応じたプロの提案に頼ってみて。
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軽食やスイーツと楽しむ本場台湾の味【FUDAO 福到 台湾茶喫茶店】
出町柳にオープンした台湾茶専門店。町家をリノベーションした店内では、台湾茶とともに台湾の軽食やスイーツが楽しめます。実際に見て、香って12種類の中から茶葉をセレクト。二煎目、三煎目とゆっくり味の変化を堪能することができます。茶葉の販売も行っており、試飲をした上での購入が可能です。
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舞妓さん御用達!世界の紅茶専門店【京・ひがしやま 京都紅茶倶楽部】
宮川町近くに店を構える舞妓さん行きつけの紅茶専門店。インド、スリランカ、中国など、店主が厳選した上質な茶葉をそろえています。ティールームで自家製スイーツと味わえるほか、京都をイメージしたオリジナルブレンドや紅茶アメも多数あり、お土産にもおすすめです。
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発酵度合いによって分類される
中国茶の世界
日本にお茶をもたらした中国には、さまざまな産地を合わせ数千種類ものお茶があると言われています。五千年にも及ぶ中国茶の歴史のなかで、1978年に提唱された”6大基本茶類”が基本の分類。発酵度の浅い順に緑茶、白茶、黄茶、青茶、紅茶、黒茶と6グループに分かれています。加熱や乾燥など、製造工程の細かな違いで同じ茶葉から個性豊かな味わいが生まれる中国茶。よく耳にする烏龍茶は青茶、プーアール茶は黒茶の部類です。また、この6つに当てはまらないものにソバ茶、マテ茶など、チャノキとは関係のないお茶(葉外茶)や香りを付けたジャスミン茶などがあります。
食事にお茶を「取り入れる」
シンプルにお茶を味わったあとは、食事に取り入れてみるのはいかがですか。昔は薬とされていたほどお茶には栄養が豊富。お料理やスイーツと合わせれば、茶葉を余すことなくいただけます。京都のお茶文化は進化の途中。まだまだ可能性を秘めています。新しい食材と出合えれば、さらなるお茶の世界が広がることでしょう。
老舗料理屋で抹茶のフルコースを堪能【抹茶料理 辰巳屋】
1840年に茶問屋として創業し、料理屋に転身してから100年以上。食べることでお茶が堪能できる抹茶料理がお店の名物です。鮮やかな緑が目を引く抹茶豆腐をはじめ、田楽や白味噌、茶蕎麦など計9品のコース。工夫を凝らした料理がめくるめく抹茶の世界へと誘ってくれます。お昼限定、ご予約をお忘れなく。
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新感覚!宇治茶が香るクラフトビール【家守堂】
明治創業の「安本茶舗」を改装、事業継承しながらビール醸造所を併設する新しいスタイルのブリューパブ。お茶とビールそれぞれを楽しめることはもちろんですが、注目すべきは原材料に宇治茶を使用した特別なクラフトビール「茶かぶき」。酵母のスパイシーな香りとお茶と柚子の爽やかな風味が人気の一杯です。
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京都唯一の村から上質なお茶を届ける【麩屋柳緑】
京都府唯一の村、南山城村から名産のお茶をお届け。「村茶」と称される南山城村の茶葉が農家ごとに販売されており、細かな違いが楽しめます。プリンやどら焼きなど、抹茶とほうじ茶スイーツの販売も。2階のカフェ「naturam RYU-RYOKU」では、オーナーシェフ手がける美しい抹茶スイーツの盛り合わせがいただけます。
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※写真はイメージです。
※掲載内容は2024年4月10日時点の情報です。最新情報は各掲載先へご確認ください。