京都を味わう焼き菓子さんぽ

芳醇なバターの香りに誘われて、ふと足を止めた先は焼き菓子店。新旧話題の店がひしめく京都では、全国から注目される焼き菓子店も数多く出店しています。一口味わえばあふれ出す、店主のこだわりや街への想い。生菓子ほどの華やかさはないけれど、焼き菓子にはシンプルゆえにお菓子本来の魅力がつまっています。そんな焼き菓子を頼りに街を散策すれば、ディープな京都が分かるはず。ちょっぴりお腹を空かせて、いざ街へ繰り出しましょう。


趣ある街にとけこむ焼き菓子店

焼き菓子店が店を構えるのは、繁華街よりも住宅地や商店街といった京都人たちが暮らす街。エリアごとに街のカラーが異なる京都だからこそ、そこに集まるお店もまた、その場所ならではの雰囲気をまとっています。街を愛する店主が手がける焼き菓子は、見た目も味も実にさまざま。焼き菓子を通じて、街の深い魅力に迫ります。

【京都 村上開新堂】

〜 街の移り変わりを見守る京都最古の洋菓子店 〜

明治40年(1907)の創業時より、御所南で商いを続ける洋菓子店へ。「大昔は路面電車が通っていて、私が子どものころは今よりも人通りが少なかったんですよ」と、4代目の村上彰一さん。レトロな店構えや、年代物のガラスケースからも歴史の重みが感じられます。昔から変わらぬクッキーは、素朴な味わいと手作りゆえの愛らしさが魅力。なかでもレーズンとチェリーをあしらったロシアケーキは、長年親しまれている定番商品です。「変えずに守り続けることも大切ですが、時代に合わせた新たな試みもしています」と、彰一さん。ブラックペッパーを効かせたガレット・ブルトンヌや塩キャラメルのクリームが入ったダックワーズなど、新しい焼き菓子にも注目を。

■編集部のおすすめポイント:レトロなビジュアルが可愛いロシアケーキは、手土産としてイチオシ。クッキーより少し柔らかく、老若男女に愛されるシンプルな美味しさです。タイムスリップしたかのような和洋折衷の空間で、お菓子がつつまれるのを眺めている時間も愛おしい…。


【アンフルネ】

〜 壬生エリアブームの火付け役と噂のお店 〜

「小学生がおつかいに来たり、商店街のおじいちゃんが立ち寄ったり、人との触れ合いが楽しい場所です」と、話すのは店主の長内さん。壬生の西新道錦会商店街に開いたお店では、次々にお菓子が焼き上がり、20種類ほどの焼き菓子がカウンターを覆うように置かれていきます。長内さんが大切にするのは、親しみやすい焼き菓子作り。決して特別なものではなく、あと1個が買える身近な”おやつ“を目指しています。イートインでは、ケーキに手作りアイスや生クリームを添えた食べ方も。お店がオープンしてから、焼き菓子店やコーヒーショップが増えたという壬生エリア。賑わいを取り戻した街並みを愛しみながら、思いが詰まったおやつを頬張ってみませんか。

■編集部のおすすめポイント:レモンケーキの部位が選べたり、どれも大きめのカットなので思いっきり頬張ったり、誰かと分けて色々試せたり、食べる人が「いつもより少し幸せになる工夫」を感じられるのがここのお菓子の良いところ。情緒あふれる西新道商店街でふらっと寄り道するのもおすすめですよ。



【LuckyDuckyCooky】〜伏見から、元気がみなぎる個性派クッキー〜

市街地から少し足を伸ばして、伏見区の墨染へ。建物の間を奥に入ると現れたのは、種類豊富なクッキーが評判の焼き菓子店です。発酵バターやチョコなどのベーシックなものから、ガラムマサラやカルダモンなどのスパイスが効いたものまで個性豊かなラインナップ。食べた瞬間の驚きから最後の余韻までじっくり噛み締めて。

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【カシエ】〜自然豊かな西山でつくる“滋味菓子”〜

天王山の麓、豊かな自然に恵まれた大山崎町にある小さな焼き菓子店。香ばしくて甘すぎない”滋味菓子”をコンセプトに、十数種類の焼き菓子が並びます。看板商品は、バターと小麦の香りが豊かで分厚いガレット・ブルトンヌと、全粒粉入りの生地に生クリームとヨーグルトを配合したスコーン。どちらも粉の風味が豊かに広がります。

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【菓子・茶房 チェカ】〜カルチャーの発信拠点で愛される味〜

美術館や寺社が点在する岡崎エリアに店を構えて15年。1階はお菓子の販売、2階は茶房と、街を散策したあとに立ち寄りたい洋菓子店です。ドーナツ型のティラミスや夏期限定のかき氷も人気ですが、種類豊富な焼き菓子にも注目を。リーフパイやフロランタンなど、どれもパティシエの内田さんによる丁寧な仕事が光ります。

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スイーツアンバサダー・ナンシさんに聞く!話題のお店と焼き菓子巡りのすすめ

Un Son Doux pâtisserie

お菓子好き界隈で今、最もアツいお店がこちら「アン ソン ドゥ パティスリー」さんです。店主の清水さんは東京の名店「オーボンヴュータン」で修業を積んだ実力派。日本ではまだ馴染みのない伝統的なフランス菓子にも出合えるお店です。どれも本当に素晴らしいのですが、私のお気に入りは、キャラメリゼしたアーモンドにパイ生地を重ねたアルザシエン。サクサクとした食感が心地よく、ラズベリーの酸味にときめきます。京都の焼き菓子店は、ほかの地域と比べてこだわりを持った人が多い印象。店やエリアごとに個性が出るので、街を散策しながら、いくつか巡ってみるのがおすすめです。



nanshi(ナンシ)さん

関西を中心に年間1,000種類以上のスイーツを食べ歩くお菓子好き。そんな自身の肩書を「スイーツアンバサダー」と名付け。近年では百貨店など催事の企画も手がける。SNSでは、特徴的な手書きのデザインとともにとっておきのスイーツを投稿している。


外でのお味見は、現地ならではの特権

手土産にも最適な焼き菓子ですが、やっぱりすぐに味わいたい。そんな時は、思いっきり青空の下で楽しみましょう。南北を流れる鴨川は、比較的どのエリアからも立ち寄りやすい定番スポット。ほかにも公園や植物園などの施設が充実している京都では、ピクニックに困りません。最後はゴミを持ち帰って、気持ち良く。

【菓歩菓歩・京都御所西店】

〜 京丹波の人気店が京都の街中へ 〜

京都府北部、京丹波町でカフェを併設する菓子工房「菓歩菓歩」。地場農家が育てた有機栽培・無農薬食材を使ったお菓子作りを大切にしています。「京丹波の栗の魅力を伝えたくて、京都市内に店を構えました」と、店主の石橋さん。京都御所西店では、タルトやバターサンド、サブレなど、日持ちするお菓子を中心に販売しています。石橋さんが惚れ込んだのは、地元の栗農家が無農薬で育てたふっくら大きな栗。素材の味を生かしたお菓子に、栗本来の美味しさが際立ちます。人気のバターサンドは、ラムレーズンやピスタチオ、ハスカップなどの8種類。大きめで満足感がありながらも重くない自然な甘さ。京丹波の自然を思いながら、近くの京都御苑で味わってみませんか。

■編集部のおすすめポイント:お店で人気の大きなバターサンドは具材がごろっと入っていて、なんともリッチな味わい。体に優しい素材を使っているので、満足感はあるのに軽く食べられてしまう不思議な感覚が忘れられません…!何か頑張った時、自分へのご褒美にしたいお菓子です。



【Nowhereman】〜できたての美味しさに目覚める〜

オンラインやイベントで人気の焼き菓子店が2019年に待望の実店舗をオープン。フィナンシェ、マドレーヌ、ガレット・ブルトンヌなど、フランスの正統派焼き菓子がそろいます。なんといってもオーブンから取り出したばかりの”できたて”が味わえるのが醍醐味。焼き菓子に添えられた詩に思いを馳せながら、旧立誠小学校を改装した複合施設まで足を延ばすのもおすすめです。

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【LOCAL ~baking treats~】〜季節の移ろい感じる旬の焼き菓子〜

鴨川は夷川飛び石のあたりからほど近く、長屋にかかる大きな泡立て器が目印です。タルトにケーキ、スコーンなどの焼き菓子は、いずれも旬の食材によって入れ替わり。なかでもオリジナルのアップルパイは9月下旬~3月ごろまでの人気商品です。砂糖とバターを控えめに、素材の味を引き出した焼き菓子たち。鴨川で季節の移ろいを感じながら召し上がれ。

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【小麦小店】〜全国にファンを持つ焼き菓子専門店〜

小さな店内を満たすのは、有機小麦を使ったスコーンにショートブレッド、クッキーなどの焼き菓子たち。旬の食材を取り入れたランナップで常時15〜20種類ほどが並びます。シンプルな材料に合わせるのは、果物や野菜だけにとどまらず、おじゃこや白あんといった京都らしいものまで。おしゃれな北山通りを闊歩して、帰りは近くの京都府立植物園に立ち寄って。

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あたたかくなったら、行きたい!

京都のおすすめピクニックスポット

ケーキ屋さんや焼き菓子店はイートインスペースが少ないこともしばしば。そんな時は、テイクアウトして青空の下でお菓子を楽しむのもおすすめ。北山エリアに来たならば京都府立植物園へ、もう少し南へ下がれば京都御苑へ。ともに広大な敷地のなかには、豊かな自然が広がっています。繁華街に来てしまっても大丈夫。古い小学校を改装した「立誠ガーデン ヒューリック京都」では、レトロな校舎をバックに中庭でピクニックが楽しめます。いずれも敷物があれば、なお良し。まだまだ寒い季節は、ひざ掛けなどの防寒アイテムもお忘れなく。


京都のエッセンスを取り入れた新しい洋菓子

京都に来たら、やっぱり気になるのが和スイーツ。味噌店や和菓子屋などの老舗も焼き菓子を手がけています。和と洋のコラボレーションは話題性が抜群なうえ、もちろん味もお墨付き。和の素材を可憐に変身させた焼き菓子に、京都の新たな歴史が垣間見られます。和菓子も洋菓子もどっちも欲張りたい、あの人への手土産にも。

【梅園 oyatsu】〜名物のみたらし団子が新感覚焼き菓子に〜

新しいお菓子を次々に手がけているのは、約100年続く甘味処の3代目。「みたらしバターサンド」に続いて誕生した「あんマドレーヌ」も、創業当時からの名物「みたらし団子」をもとに誕生。中にみたらしのタレと白あんを入れて焼き上げており、絶妙な甘じょっぱさがクセになる一品です。宇治金時や黒糖カカオ味もそろいます。

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【Le martin de miso】〜老舗味噌店発の洋菓子ブランド〜

天保元年(1830)創業の「本田味噌本店」から生まれたのは、京都でしか手に入らないお味噌の洋菓子。バターとの組み合わせは、意外にも好相性。ふんわり軽やかなダックワーズも、西京味噌と隠し味に赤味噌を入れたクリームで奥行きのある味わいに。フィナンシェやラスクと詰め合わせれば、周りと差がつく贈り物にもなります。

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【京らく製あん所】〜あんこのプロが手がけるビスキュイ〜

製あん所ならではの視点から、あんこに特化したお菓子を手がけるスイーツ店。どら焼きや最中といったベーシックな和菓子がそろうなかで、目を引くのが「あんビスキュイ」です。バターたっぷりのクッキー生地のなかには、北海道産小豆の粒あんがたっぷり。味はプレーン、さつまいも、ミルク紅茶の3種類からえらべます。

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個性豊かなクッキー型の博物館へ

sacsac / cookie cutter museum

焼き菓子巡りにハマったら、今度は自分で作ってみませんか。せっかくならば、ちょっと珍しいクッキー型の博物館へ。祇園四条駅から徒歩10分ほどのところ、古い町家の扉を開けると、秘密基地のような空間が広がります。かわいい動物たちやお花から、仏像に土偶まで。芸術、文化、歴史とジャンルを問わず、カラフルなクッキー型が700種類以上。舞妓さんや五山の送り火など京都らしいものもそろうため、お土産にも最適です。イラストや写真があれば、オリジナルクッキー型のオーダーメイドも可能。世界にひとつだけのクッキーに思いを込めてみませんか。


京都を味わう焼き菓子さんぽ マップ


※写真はイメージです。
※掲載内容は2025年2月12日時点の情報です。最新情報は各掲載先へご確認ください。