世界遺産の桜名所、100年でココが変わった!

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絵はがきで知る古都のうつろい 2

 

 

昔の絵はがきを頼りに、現在との違いを解き明かすシリーズ第2弾。今回も、京都産業大学現代社会学部教授の鈴木康久(すずきみちひさ)先生より貴重なコレクションをお借りしました。

⇒第1弾「清水寺」の記事もあわせてご覧ください。

さて、こちらの立派な門、どこのお寺か分かりますか?
ヒントは…
1. 世界遺産
2. 菊の御紋
3. 遅咲きの桜の名所

3番目のヒントで分かった方も多いのではないでしょうか。答えは御室桜(おむろざくら)で知られる仁和寺です。絵はがきはお寺の正面に建つ二王門前の風景。江戸時代に建てられた高さ約18.7メートルという巨大な門で、国の重要文化財に指定されています。

 

 

 

 

今の風景はというと・・・ そんなに大きく変わってはいませんが、お寺の名前が刻まれた石柱や案内板が増えているのが現代らしいですね。一番大きな変化といえば、門の四隅にある柱がなくなったこと。

屋根を支えるための柱のようですが、取り付けと取り外しの時期が明確に分かりません。何か手がかりがないかと過去の資料を紐解いてみると、明治43年(1910)に発行された『京都名勝写真帖』で同じ柱を確認することができました。

 

 

 

 

「柱はどこに取り付けられていたのだろう」と気になり、現地に行って門を見上げてみると、なんと痕跡を発見! 柱との接着面が変色しています。

お坊様にお伺いしたところ、柱は軒先を支えるためのもので、昭和12年(1937)から翌年にかけて行われた修復工事によって取り外されたのだろうということでした。また、当時は南大門もしくは三門と呼ばれていたそうです。

絵はがき1枚から、たくさんの知識を得ることができました。

 

 

~勅使門~

 

 

 

 

二王門を抜けしばらく進むと、左手に勅使門が見えてきます。昔の絵はがきは通信面のデザインの違いから発行年代を大まかに特定できるのですが、いつの写真を使っているかは分からないため、撮影日を特定できないことがしばしば。

しかし、この絵はがきは、あきらかに大正2年(1913)以降のものと分かります。じつは、仁和寺の勅使門は、明治20年(1887)に火災によって焼失しました。それから長らく再建されなかったのですが、京都府の技師・亀岡末吉の設計で大正2年に完成。

亀岡末吉は名技師として知られ、流麗なデザインは「亀岡式」と呼ばれるほど、もてはやされたといいます。近寄って見てみると、確かに鳳凰の彫り物や花菱の透かし彫りの美しいこと!

 

 

(2017年4月撮影)

 

 

現在も変わることなく美しさを留める勅使門ですが、その門前には再建当時はなかった桜が咲き誇ります。勅使門に向かって左手の桜は昭和54年(1979)の高松宮殿下の参拝記念に、右手の桜は平成11年(1999)に天皇皇后両陛下の参拝記念に、それぞれ植えられたもの。

皇室ゆかりの仁和寺ならではの桜風景ですね。ちなみに、右手の桜は花が黄緑色をした「御衣黄(ぎょいこう)」という珍しい品種。ぜひ、春に拝観する方は注目してみてください。

⇒スタッフのち~たらさんがお気に入りの桜名所として、仁和寺をご紹介しています。詳しくはこちら。

 

 

~御室桜~

 

 

 

 

お待ちかね、御室桜の登場です。御室桜の美しさは江戸時代から知られた存在。数々の文献にも登場し、江戸時代の儒学者である貝原益軒(かいばらえきけん)の著書『京城勝覧(けいじょうしょうらん)』では、「洛中洛外にて第一」「吉野の山桜に対すべし」「花見る人多くして日々群集せり」と、御室桜の美しさと人々の熱狂ぶりを伝えています。

背丈が低いのが特徴で、絵はがきでも着物姿の女性が花を見上げるのではなく、横を向いているのが印象的です。ほのぼのとした昔のお花見風景ですが、一度訪れたことがある方なら違和感にお気付きのはず。

 

 

(2009年4月撮影)

 

 

似たアングルから撮影した現代の写真です。なんとまぁ、桜がてんこもり! 奥に見えているのが、昔の写真にも同じように写り込んでいる観音堂です。現在、観音堂は修復中で覆いがかぶさっているため、皆さんに分かりやすいように修復前の写真で比べてみました。

昔に比べて木々が大きくなったのはもちろんのこと、数も圧倒的に増えています。さらに、現在は観音堂の手前に階段はありません。「いつの時代に階段がなくなったかは分からないものの、かつては御室桜苑を斜めに通って観音堂へお参りする道があったそうです」とお坊様。

「100年の間にこれほど変化があるなんて!」とびっくり。日本人の桜を愛する心が、桜名所をより華やかに進化させているのかもしれません。

 

 

 

 

最後に桜好きの皆さんにお知らせです! ただいま、各旅行会社にて往復の新幹線と桜名所の特別拝観がセットになったプランを販売中。そのプランのひとつに、御室桜のライトアップ企画があるのです!

ご覧のように、皆さんの背丈より少し大きく育ち、いまでは桜のトンネル風に。光に照らされた花々の先に五重塔をのぞむ、春爛漫の古都の景色は忘れられない旅の思い出になりそうです。春の京都旅行をお考えの方は、ぜひプランをチェックしてみてください♪

⇒「仁和寺 境内・御室桜苑ライトアップ」プランの詳細はこちら

 

 

<「そうだ 京都、行こう。」エクスプレス・カード会員の皆さまへ>
2018年4月14日(土)・15日(日)の2日間、「仁和寺 御室桜苑ライトアップ」イベントを実施します。ぜひ、ご参加くださいね♪
⇒「仁和寺 御室桜苑ライトアップ」詳細はこちら

 

Written by. シュガー

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