京都のプロに聞く! 祇園祭「宵山」の見どころ、楽しみ方

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いよいよ、日本三大祭のひとつ「祇園祭」が始まりますね。都大路を進む豪華な山鉾巡行はもちろんですが、幻想的な雰囲気の宵山(よいやま)散策は、お祭り気分をさらに高めてくれます。

でも、「そもそも、宵山ってなに?」「宵山の具体的な楽しみ方って?」といった疑問をお持ちの方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、京都の旅行企画や講演、ガイドなどを務め、山鉾保存会にも所属されている「らくたび・京都学講師」の山村純也さんに、宵山の見どころや楽しみ方を教えていただきました♪

※掲載内容は2018年6月時点の情報です。最新情報は事前にご確認ください。
 


そもそも、“祇園祭”ってどんなお祭り?


お祭り情緒溢れる宵山や、絢爛豪華な山鉾巡行に多くの観光客が集まる祇園祭。しかし、お祭り自体の起源や歴史は、意外と知られていないのではないでしょうか。もっと深く祇園祭を知れば、楽しさも倍増するはず! まずは、その歴史をおさらいしましょう。


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らくたび・京都学講師 山村純也さん


山村さん「祇園祭は八坂神社の祭礼で、その歴史は平安時代前期まで遡ります。その頃、全国で蔓延していた疫病を鎮めようと、神泉苑で当時の国の数と同じ66本の矛(ほこ)を立て、祇園社の神輿(みこし)を神泉苑に奉納し、疫病退散を祈る御霊会(ごりょうえ)を行いました。これが、祇園祭の起源だといわれています」

いまの華やかなイメージからは想像もつかないような由来ですね! でも、なぜ疫病退散に矛が使われたのでしょうか?

山村さん「矛には悪いものを吸い寄せる力があると考えられていたためです。時代が進むにつれ、街に漂う悪いものを引き寄せて綺麗にしようと、氏子が矛を持って街中を巡廻するようになり、これが今の山鉾巡行の原型となりました」

最初から、豪華な山鉾が巡行していたわけではなかったんですね! では、いつ頃からいまのような山鉾になったのでしょうか。

山村さん「平安時代中頃から除々に規模が拡大し、現在のように豪華・巨大化したのは室町時代からです。室町時代は職業が多様化し、経済が発展した時代。各山鉾に属する町衆達が裕福になり、それに合わせて装飾も華やかになって、次第に『自分のところの山鉾はこんなに豪華だぞ』と競うようになったのです。いかに山鉾を派手に飾り、大きくするかで町衆たちの経済力を示す、いわば自慢の場だったんですよ」

町衆達の競い合いがここまで山鉾を大きくしたなんて! そのおかげで、“動く美術館”と称される現在の美しい姿を見ることができるのですから、嬉しいことですね。


祇園祭の“宵山”ってなに?



宵山とは、祇園祭のメインとなる山鉾巡行(7月17日・24日)の3日前・前々日・前日の総称で、いわば前夜祭のようなもの。ひとくちに「宵山」といっても、前祭(さきまつり)と後祭(あとまつり)とでは雰囲気が全く異なります。前祭宵山では、15日と16日の夕方から歩行者天国になり、たくさんの露店が出て、賑やかなお祭りムード。後祭宵山は、歩行者天国や露店の出店はなく、お祭り本来の幻想的な雰囲気のなか落ち着いて散策することができます。

祇園囃子(ぎおんばやし)の演奏に耳を傾け、建ち並ぶ山鉾を見ながら歩くだけでももちろん楽しいのですが、せっかくならば“宵山ならでは”の楽しみ方を知りたいところ。お祭りを最大限に堪能するべく、5つのポイントを山村さんに伺いました!


宵山の見どころや楽しみ方
【その1】町会所で会所飾りを見よう


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山伏山の会所飾り


山村さん「“町会所(ちょうかいしょ)”とは、各山鉾町内の寄り合いやお囃子の練習場所になるところ。宵山の期間中には、粽(ちまき)や護符などの縁起物の授与も行われます。なんといっても、最大の見どころは会所飾り! 山鉾巡行の際に台座に掛けられる懸装品(けそうひん)などがたくさん展示されるんです。

山鉾巡行では細部まで見ることが難しいですが、間近でじっくりと鑑賞できるのは宵山ならでは。前懸や胴懸、見送(みおくり)などの懸装品は、西陣織物をはじめ、中国やベルギー、インド製など、重要文化財クラスの貴重なものばかりです。山鉾それぞれに異なるデザインにも注目してみましょう」


【その2】御神体をじっくりと鑑賞しよう


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浄妙山


山村さん「町会所では、懸装品とともに御神体にも注目してみてください。それぞれの山鉾に祀られている御神体はどれも個性的。たとえば、浄妙(じょうみょう)山<後祭>の一来(いちらい)法師と筒井浄妙の厳めしい顔つきや、黒主山<後祭>の大伴黒主(おおとものくろぬし)が桜を仰ぎ見る様子など、山鉾巡行のときにはなかなか見えない表情がとても面白いんです。町会所では御神体の由来も紹介されているので、そちらもチェックしておきましょう。山鉾巡行の鑑賞が、より楽しくなるはずですよ」


【その3】各山鉾の儀式を見よう


山村さん「山鉾のなかには、独自の儀式を行うところもあります。たとえば、山伏山<前祭>役行者山<後祭>は、巡行の安全を祈願するため、聖護院門跡の山伏達が護摩焚きを行います。綾傘鉾<前祭>四条傘鉾<前祭>では、無形民俗文化財にも指定される棒振り囃子が見どころのひとつとなっています。

なかでも特に見ていただきたい儀式が、南観音山<後祭>あばれ観音。23日の深夜に行われ、台座に載せた観音様を激しく揺さぶるという、なんとも変わった儀式です。かなり激しいので、少し離れてご覧になってくださいね(笑)」


【その4】各山鉾の御利益を授かろう


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山村さん「各山鉾には、さまざまな御利益があります。たとえば保昌(ほうしょう)山<前祭>は、御神体の平井保昌(やすまさ)と和泉式部の恋物語に由来して“縁結び”の御利益があるとされています。鈴鹿山<後祭>は、鈴鹿峠で悪さをしていた山賊(鬼とも)を退治した鈴鹿権現を祀り、珍しい“盗難除け”の御利益が。由来を理解しながら、自分の願いに応じた御利益を求めて巡るのも楽しいですよ。また、各山鉾では宵山の期間中、御朱印の授与も行っています。専用の御朱印帳も販売されているので、ぜひ山鉾を巡ってご縁を結んでみてはいかがでしょうか」


【その5】屏風祭を楽しもう


山村さん「宵山の期間中でとくに見逃せないのが、屏風祭(びょうぶまつり)。山鉾町にある旧家や老舗の商店が所蔵する、屏風をはじめとした美術品や調度品が一般公開されます。新町通と六角通の交差点に位置する「野田家」で公開<後祭>される屏風は、“源平合戦”を描いたもの。源義経の“鵯越(ひよどりごえ)の逆落とし”と“屋島の戦い”の場面が一双になった屏風で、とくに皆さんに馴染みがあるのではないでしょうか。屏風というと堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、飾られているものはどれも貴重で価値のあるものばかり。この機会に、ぜひ屏風の美しさに触れてみてくださいね」

※屏風祭は、一部有料の家・施設があります 


山村さんがおすすめする祇園祭の行事


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鉾建ての様子


7月の1ヶ月間には、宵山や山鉾巡行のほかにも、さまざまな神事や歳時が行われます。そのなかで、山村さんが特におすすめする行事はなんでしょうか?

山村さん「やっぱり、山鉾建てですね! 前祭の山鉾は10日から、後祭の山鉾は18日から組み立てが始まります(一部を除く)。釘を使わずに木と縄だけで組み立てていく“縄がらみ”は、まさに職人技。だんだんと形になっていく山鉾を見るのはとても面白いですよ。山鉾が完成したら、一部の山鉾では曳き初め(ひきぞめ)舁き初め(かきぞめ)が行われます。これは、建てたばかりの山鉾がちゃんと動くかどうかのテスト。誰でも参加できるので、ぜひ“曳き手”になって、貴重な体験をしてみてください!」

※各山鉾によって、曳き初め・舁き初めの日程は異なります


山村さん「また、10日の19時半から四条大橋で行われる、神輿洗式(みこしあらいしき)も見応え抜群。素戔嗚尊(すさのおのみこと)が乗る中御座(なかござ)神輿を、鴨川から汲んだ御神水で清める神事なのですが、その際にかなりの水しぶきが飛ぶんです(笑) このしぶきにかかれば無病息災のご利益を授かるそうで、あたりは大変な賑わいとなります。

祇園祭というと、宵山や山鉾巡行が注目されがちですが、他にもお祭り気分が味わえる神事や歳時がたくさん。訪れたら、ぜひそういった行事も楽しんでいただきたいですね!」

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山村さんに伺う「宵山」の見どころや楽しみ方はいかがでしたか? 祇園祭に行くのが初めての方も、そうでない方も、ぜひ参考にしてお祭りを楽しんでみてくださいね♪ ご案内いただいた山村さん、ありがとうございました! 


 

Written by. ち〜たら

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