京都に登場した新アートPart1 “コケ寺リウム”ができるまで

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先日、2018年初秋「モシュ印・コケ寺リウム」キャンペーン開始のお知らせをお届けしました。この独創的な苔アート作品“モシュ印”と“コケ寺リウム”は、いったいどのようにして作られたのでしょうか。今回は、水槽のようなガラス容器の中に、各お寺の魅力をぎゅっと詰めこんだ“コケ寺リウム”制作の舞台裏を、三千院を例にご紹介します。

⇒「モシュ印・コケ寺リウム」キャンペーンの概要はこちら



まずは復習を。 “コケ寺リウム”とは?

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“コケ寺リウム”とは、近年、お部屋を飾るインテリアとして人気の“苔テラリウム(コケリウム)”と“寺”をかけ合わせた造語。ガラス容器の中に、各寺院を代表する建造物のジオラマ苔で再現したお庭を配したミニチュアアートです。「モシュ印・コケ寺リウム」キャンペーンでは、三千院、圓光寺建仁寺東福寺常寂光寺にそれぞれ3つが展示され、計15個のコケ寺リウムがご覧いただけます。



手がけたのは“気鋭のクリエイター” 今田裕(ゆたか)さん

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“コケ寺リウム”の制作に携わったのが、この方。大阪で、苔テラリウムや苔玉の販売、制作体験や苔庭の施工などを行なっている「moss-connect(モス・コネクト)」の代表、今田裕(ゆたか)さんです。幼少期を自然豊かな滋賀県で過ごし、その当時から苔の魅力にどっぷりと浸かっていたそう。“若手”ではあるものの、“コケ歴”は30年以上(!)、最近ではテレビや雑誌などに登場されることも多い、苔の第一人者です。

⇒今田さんのコメントも掲載! 「モシュ印・コケ寺リウム」対象5寺院の苔めぐりに役立つ冊子付きの旅行プランはこちら
⇒覚えておきたい代表的な苔6種類! 京都のお寺でよく見かける苔を今田さんに教えていただきました
⇒苔の宝庫である三千院で、今田さんと苔テラリウムを作りましょう♪



作品のイメージを膨らますため、実際にお寺めぐりへ

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寺院の特徴を表現するためには、それぞれのお寺のことを知る必要があります。今田さんは、実際に今回のキャンペーン寺院を訪れ、苔の具合を調べました。「あそこに生えているのはヒノキゴケ」、「この辺はツヤゴケが群生してますね~」、「ほらあれ、さっき教えた苔ですよ。名前覚えてますか?」と、境内を歩いていると、あちこちで苔の話をしてくれる今田さん。「本当に苔が好きなんだろうなぁ」と思う反面、「作り出す作品のイメージしてくれてるのかな・・・」と思ってしまったのが本音でした(笑) でも、そんな不安は完成したものを見て、見事なまでに一掃されることとなります。



兵庫県で行われた、ある打ち合わせ

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場所は変わって、こちらは兵庫県西宮市にある「ヤマネ工芸」の事務所です。さて、なんの打ち合わせでしょう・・・? 今田さんの姿は見当たりません。机の上には、お寺の写真とお堂のようなものが数個・・・ そして小さくてわかりにくいですが、なにやら寝ころがった人形のようなものもあります。



“コケ寺リウム”に必要不可欠なエッセンス ジオラマ

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ドドーン、と並んだこれらは、“コケ寺リウム”の容器の中に並べられるジオラマ! ヤマネ工芸は、主に街並みなど建築の模型を制作されるジオラマ屋さんなのです。お寺の模型を作られることはあまりないそうなのですが、右側にあるお堂を見てみると、“時を経た風情”もしっかりと再現されています。ちなみに、寝ころがっていたのは、三千院の人気者である“わらべ地蔵”。愛嬌もしっかり再現されていますね~(笑)
※三千院境内のわらべ地蔵は杉村孝氏の作品です



いよいよコケ寺リウムの制作開始・・・?

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さて、ジオラマは兵庫県を旅立ち、今田さんの店舗兼工房である大阪のmoss-connectへとやってきました。さっそく簡易的にディスプレイをおこなって、様子を見ます。何やら考え込んでいる表情の今田さん。ここから苔を敷き詰めていくのかと思いきや・・・



わらべ地蔵は帰って行きました・・・

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この日は、「わらべ地蔵の苔をどのように再現するか」など、ジオラマ細部の作り込みに関する打ち合わせが行われました。三千院の境内に横たわる実際のわらべ地蔵は苔生しているので、その模様までも模型上で再現しよう! という狙いなのだとか。「お堂のジオラマと容器の大きさがしっくりとハマるか」という確認作業なども行われ、長時間の打ち合わせを経て、わらべ地蔵は再び兵庫県のヤマネ工芸へと帰って行きました・・・



作品そのものの制作期間は・・・

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こうして、何度も打ち合わせを重ね、全てのジオラマが完成したのは8月も下旬にさしかかる頃。「モシュ印・コケ寺リウム」キャンペーンは9月1日に開始。 ・・・今田さんにすれば、既に残り時間わずかという状況でした。対象となる5つの寺院には“コケ寺リウム”を3つずつ展示するため、残り半月で15個のコケ寺リウムを制作しなければいけません。しかも、どれひとつ同じデザインのものは作らないというわけですから、その苦労は計り知ることができません。



なんとか無事に完成しました!

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※特別な許可を得て、お部屋の照明を消して撮影しています



最終的に全てが完成したのは8月31日のこと。今田さんにとっては、まさに時間との勝負となりましたが、それだけに作品を初めて見た時には本当に感動してしまいました! それでは、今田さんの力作、三千院の客殿にならぶ3つの“コケ寺リウム”を見てみましょう。



1・感性で眺める作品

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※特別な許可を得て、お部屋の照明を消して撮影しています



左端は、境内にある「聚碧園(しゅうへきえん)」というお庭をイメージした、想像力がかき立てられる作品。丸いサツキの刈り込みが、特殊なフォルムの“シラガゴケ”で表現されています。お庭に据えられている石塔は、写真では少し分かりづらいですが、高さのある石を使うことで表現。聚碧園は“コケ寺リウム”が置かれているすぐそばにあるので、ぜひ見比べてみてくださいね♪



2・苔とモミジに覆われた往生極楽院

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※特別な許可を得て、お部屋の照明を消して撮影しています



中央に置かれるものは、まるで実際の風景をそのまま閉じ込めたような作品。「苔は往生極楽院の周辺に生えていたものと同種のものを敷きました」と、今田さん。「あぁ、あの下見の時、ちゃんと完成物をイメージしてくれていたんだなぁ・・・」と、過ぎさりし日のことを思い出しました(笑) さらに今田さん、「順調にいけばこのモミジは色づいて、苔の上に散ると思うのですが、どうなるかなぁ・・・」と。実際に色づくなんて!! 40センチほどの容器の中に、季節の移ろいまでもが閉じ込められているとは、驚きですね。一度だけでなく、何度も見に行きたくなってしまいます♪



3・緑をまとった“彼”との再会(笑)

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※特別な許可を得て、お部屋の照明を消して撮影しています



右端に置かれた作品をよーく見ると・・・ いました! そう、わらべ地蔵です! 頭部には、見事に苔が付着しています。この苔は、「本物」ではなくヤマネ工芸さんが作り出したもの。質感もわざとらしくなく、本当に自然な苔に見えます。それだけでなく、わらべ地蔵の、高さ・幅・奥行きなども実物を採寸し、容器の中に違和感なく収まるサイズに縮小するという、こだわり様。“コケ寺リウム”をご覧になる時は、今田さんによって創り出された作品全体のデザインだけではなく、ヤマネ工芸さんによるジオラマの細部にもぜひ注目してみてくださいね!
そういえば、先ほどご紹介した往生極楽院のジオラマもよく見ると、中にいらっしゃるんですよ、ご本尊様が! 写真では確認できませんので、現地でよ~~~~~くご覧くださいね。



思いのこもった“コケ寺リウム”。ぜひ現地でご覧ください!

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“コケ寺リウム”の制作秘話、いかがでしたか? 実際にはまだまだお伝えしたい苦労話や、まったく見栄えのしない、とても見せることができない地味すぎる作業も多くありました(笑) ただ最後にお伝えしたいのは、「作品を生で見ていただきたい!」ということ。小さなガラス容器の中に、今田さんをはじめとする携わった人、全員のこだわりをきっと見つけられることと思います。

・・・さて、“コケ寺リウム”の横には“モシュ印”の姿がありますね。次回は、“モシュ印”の制作秘話をお届けします。お楽しみに~♪

※「モシュ印・コケ寺リウム」のInstagramキャンペーンの詳細はこちら
※JR東海「そうだ 京都、行こう。」Instagram公式ページはこちら

三千院
【拝観時間】8:30~17:30(受付終了17:00)
※12月8日~2月は9:00~17:00(受付終了16:30)
【拝観料】700円
【電話】075-744-2531
【アクセス】京都バス「大原」バス停から徒歩約10分 Google map
【公式ホームページ】http://www.sanzenin.or.jp/

 

Written by. カツオ

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