大超寺(だいちょうじ) 鍬形(くわがた)薬師
コロナ禍や自然災害など、不安な日々が続きますね。「どうにも気持ちが落ち着かない・・・」と思っているとき、ふと「お薬師さんをめぐってみよう」と思い立ちました。
お釈迦様や阿弥陀様など、お寺には様々な仏様が祀られていますが、そのなかでも病気やケガなど、私たちの身近な悩みに寄り添ってくれるのが、「薬師如来」様。疫病除けのご利益を持つ“お薬師さん”もおられ、今一番ご縁をいただきたい仏様ではないでしょうか。
京都にも様々な“お薬師さん”が祀られていますが、今回は、特に信仰を集めてきた「京都十二薬師霊場」を、実際に一人でめぐってみました。遠方から気軽に巡礼に出かけることはまだまだ難しい時節となりますので、画面を通して一緒にご祈願をいただければ幸いです。
\お参りの際はマスクなど、感染予防・対策をお忘れなく/
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そもそも、「薬師如来」様とは?
薬壺には“あらゆる病を治す霊薬”が入っているそう
「薬師如来」は、“薬師瑠璃光如来”とも呼ばれ、東方浄瑠璃世界(瑠璃光浄土)の教主。西方極楽浄土の教主・阿弥陀如来が死後にやすらぎを与えてくれるのに対して、現世に願いを叶えてくれるとされます。左手に薬壺(やっこ)を持ったお姿であることが多く、病気やケガなど、私たちの現実の痛みや苦しみを救ってくださる現世利益の仏様で、それだけに、日本でも古来篤く信仰されてきました。
京都で有名なお薬師さんといえば、国宝に指定される醍醐寺や神護寺、仁和寺の薬師如来像や、比叡山 延暦寺の最澄自作と伝わる薬師如来像など。また、市中の大小様々なお堂にもお薬師さんは祀られていて、病気平癒や無病息災、厄難消滅などの願をかけて巡る“薬師詣り”も、平安時代以降、盛んに行われてきたといいます。
「京都十二薬師霊場めぐり」もそのひとつで、江戸時代後半には現在の12のお寺が札所となり、しばしの中断ののち、平成24年(2012)に復興を果たされました。
コンパクトにめぐろう! 京都十二薬師霊場
おおよその札所マップ
京都十二薬師霊場の魅力はなんといっても、コンパクトさ! 8番札所の大超寺だけ少し離れた位置にありますが、それ以外の11の札所は中心部にぎゅっと集まっているため、一日でぐるっとめぐることもできます。
なぜこんなにコンパクトなのかというと・・・
「お薬師さんをめぐられる方は、お身体がお悪い方も多いため、遠距離を歩かなくてもいいように距離が近いのではないか、と思っているんですよ」
と、第3番札所・水薬師寺のご住職さま。
御朱印や御身影を綴る、専用納経帖も。
7月11日(土)には、New 御朱印帳が登場!
御朱印と御身影用のバインダー式納経帖(1,200円)も用意されています
京都十二薬師霊場では、多くのお寺でお薬師さんが秘仏とされ、実際の姿を拝むことはできません。そのため各お寺では、御朱印(冥加料300円)とともに、仏様の姿を鉛筆画でしたためられた「御身影(おみえい)」(一躰500円)を授与されています。お姿をイメージしながらお参りできるとともに、巡礼の思い出にもなる、嬉しいお心遣いです。
京都唐長製唐紙《瓢箪唐草》文柄朱印帳 一冊3,000円
7月11日(土)からは、京都十二薬師霊場だけで授与される新しい御朱印帳も登場! 第1番札所・平等寺の大釜住職にお話を伺うと・・・
大釜住職 「こちらは、京都の唐紙工房『唐長』さんの唐紙を使った御朱印帳です。表紙は唐紙の雰囲気を大事にしたいので、霊場会の名称は入れていません。霊場会の御朱印だけでなく、それぞれの方が神仏とご縁を結ばれる際にお使いいただきたいと思っています」
子孫繁栄や厄除け、多福を表す吉祥文様「瓢箪唐草」の唐紙は、質感や色合いも高級感があり、光によって雲母がキラキラきらめきます。12の札所のうち、第2番の東寺と第5番の地福寺を除く10ヵ寺で、色違いの御朱印帳を授与されるそう。各札所で数に限りがあるため、気になる方はどうぞお早めに。唐長での取り扱いはなく、この霊場会限定での授与になるそうですよ。
では、お薬師さんめぐりに出かけてみましょう!
※各寺院の詳細情報は、「京都十二薬師霊場会」公式ホームページをご確認ください。
【公式ホームページ】https://www.kyoto12yakushi.net/
第1番札所【平等寺/因幡薬師】
市街地の真ん中・烏丸高辻に、平安時代の創建以来ずっと伽藍を構えているのが、因幡堂 平等寺です。御本尊の薬師如来は、天竺伝来の像が因幡国(鳥取県)から飛来し、鎮座したと伝わる不思議な霊像。子授け・安産、病気平癒、なかでも「がん封じのお薬師さま」として篤く信仰されています。
平等寺でいま人気なのが、こちらの御朱印帳。
大釜住職 「最初は、“入幸(いりこう)”ということで、インコのお守りを作ったんです。子どもが持てるようにかわいらしいお守りにしたら、人気をいただき。それで御朱印帳も作ったところ、たまたまその年の干支が“酉(とり)”で・・・ 翌年も“干支の御朱印帳を”という声が多く、それから、干支に合わせて御朱印帳を出すようになったんです」
ご住職と奥様のアイデアが詰まった授与品は、インコのお守りのほかにも、かわいらしいものが多く、とても愛情が感じられます。お寺には「チョビちゃん」「ゴマちゃん」という寺猫の姿も♪
御朱印と御身影をいただき、平等寺を出て地下鉄で「京都駅」へ戻ると、そこから第2番札所・東寺に向かいます。ここからは巡礼路を急ぎ足に巡ります!
⇒因幡堂 平等寺の詳細情報はこちら(京都十二薬師霊場会公式ホームページ)
※堂内拝観不可。
第2番札所【東寺/金剛薬師】
東寺のお薬師さんは、金堂に祀られる本尊・薬師如来「金剛薬師」です。薬壺を持たず、日光菩薩と月光菩薩を脇侍とする「薬師三尊像」で、創建当初の像は焼失、桃山時代に仏師・康正によって古式に則り復興されました。
⇒東寺の詳細情報はこちら(京都十二薬師霊場会公式ホームページ)
※金剛薬師さんは金堂で拝観できます(通常拝観料500円)。
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東寺を出て、西へ。羅城門跡や、古代の朱雀大路である旧千本通、西寺跡を通りながら、西七条の水薬師寺へ向かいます。こちらは現在、幼稚園内にあるため、少しわかりにくいかもしれません。
第3番札所【水薬師寺/水薬師】
平安遷都以前から、湿地帯の広がっていた西七条の地。その大池の中から見つかった「水薬師」を祀るのが、水薬師寺です。“水”ということで水に縁が深く、かつては平清盛が熱病を癒やした井戸もあったとか。水は清浄、清潔を意味し、病気平癒の功徳も篤いお薬師さんです。
⇒水薬師寺の詳細情報はこちら(京都十二薬師霊場会公式ホームページ)
※堂内拝観不可。1月8日のみ本尊の御開帳が行われます。
第4番札所【壬生寺/歯薬師】
水薬師寺から北へ約2キロ。30分ほど歩いたところにある壬生寺が、第4番目の札所。御本尊はお地蔵様なのですが、本堂の南側に中院があり、その脇仏として通称「歯薬師」が祀られています。
「は、は、は」と笑っているように見えるという、お薬師さん
⇒壬生寺の詳細情報はこちら(京都十二薬師霊場会公式ホームページ)
第5番札所【地福寺/日限薬師】
壬生寺から北へ約2キロ。千本通や平安京の大極殿跡など京都の歴史を感じられる道を歩き、到着したのは、第5番札所・地福寺です。元は太秦にあったお寺で、江戸時代に現在地に移転。「日限(ひぎり)薬師」と呼ばれ、耳の病気を治してくださると伝わるお薬師さんを祀られています。
日にちを自分で決めて祈願することから「日限」と呼ばれるそう
⇒地福寺の詳細情報はこちら(京都十二薬師霊場会公式ホームページ)
※巡拝者のみ拝観可。
第6番札所【福勝寺/峰薬師】
地福寺からは、徒歩2分ほど。福勝寺に祀られるお薬師さんは、愛知県にある鳳来寺の本尊・薬師如来と同じ木で作られているそう。東大寺大仏再建の際に、重源(ちょうげん)上人に授与されて諸国を遍歴後、この地に安置されたと伝わる、長い旅を経てきたお薬師さんです。
鳳来寺の通称「峰薬師」の名を持ちます
⇒福勝寺の詳細情報はこちら(京都十二薬師霊場会公式ホームページ)
※堂内拝観不可。毎月1日・16日のみ、本堂自由参拝可(5:00~17:00)。
第7・8番札所はルートが異なるため、先に二条城の東側、二条釜座にある「こぬか薬師」へ向かいます。
第9番札所【薬師院/こぬか薬師】
伝教大師・最澄自作という薬師如来像が伝わる、薬師院。鎌倉時代に疫病が広がった際、“病の衆生がお参りに来たら諸病をことごとく除いてあげよう「来ぬか、来ぬか」”とお告げがあったとのこと。実際にお参りの後に皆が治癒したため、「こぬか薬師」と呼ばれるようになったといいます。・・・今まさに、癒やしてほしい仏様ですね。
美濃の斉藤道三に伝来、織田信長によりこの地に移されたと伝わります
⇒薬師院の詳細情報はこちら(京都十二薬師霊場会公式ホームページ)
※堂内拝観不可。10月8日のみ、13時より御開帳法要が行われます。
第10番札所【大福寺/菩提薬師】
こぬか薬師より東へ徒歩5分ほど。麩屋町通の民家の並ぶ中に佇むのが、大福寺。商売繁昌のご利益があり、「大福帳」の由来になったともいわれるお寺です。本堂に祀られるのが、「菩提(ほてい)薬師」。「様々な身体の部位を癒やしてくれるお薬師さんですが、こちらは“菩提”、心に寄り添ってくれるお薬師さんなんですよ」と、ご住職の奥様。
元は奈良県に創建したと伝わり、お薬師さんは聖徳太子の自刻と伝わります
⇒大福寺の詳細情報はこちら(京都十二薬師霊場会公式ホームページ)
※堂内拝観不可。
第11番札所【西光寺/寅薬師】
京都随一の繁華街、新京極通に面してひっそりと建つ西光寺。「寅薬師」と呼ばれる薬師如来像は、本尊阿弥陀如来の隣に祀られ、弘法大師空海が寅の日・寅の刻に彫り上げたと伝わります。元は宮中に奉安されていましたが、民衆の幸福を祈るため下賜され、お堂を建て祀ったことが創建とされています。
無病息災、病気平癒、寅年の守護仏として信仰されています
⇒西光寺の詳細情報はこちら(京都十二薬師霊場会公式ホームページ)
※現在、感染症対策のため堂外からのお参りになります。
第12番札所【永福寺/蛸薬師】
巡礼の最後の札所となるのが、寅薬師と同じく新京極通にある永福寺。伝教大師が彫られた石の薬師如来を比叡山より勧請し、祀ったお寺です。こちらには、病の母に蛸を食べさせようとした僧侶を救った“蛸薬師如来様”の話が伝わり、境内には「なで薬師」など、蛸のお姿をしたお薬師さんが様々に祀られ、通称「蛸薬師」の名で親しまれています。
御本尊様は、蛸の姿ではありません
⇒永福寺の詳細情報はこちら(京都十二薬師霊場会公式ホームページ)
※堂内拝観不可。
次は、四条通を歩き、円山公園方面へ向かいます。
第7番札所【雙林寺(そうりんじ)/東山薬師】
円山公園音楽堂の東側に佇む雙林寺は、今はひっそりとした小さなお寺ですが、かつては国体安穏祈祷の道場として皇室とのかかわりも深い、巨刹であったそう。桓武天皇の勅願で最澄が創建したと伝わり、本尊薬師如来も最澄自作と伝わります。
⇒雙林寺の詳細情報はこちら(京都十二薬師霊場会公式ホームページ)
※本堂参拝可。参拝料200円。
この霊場で一番の難所となるのが、第8番札所の大超寺。地下鉄烏丸線で「国際会館駅」まで行き、そこから京都バス「花園町」バス停まで約5分、さらにそこから徒歩約5分・・・ と、時間がかかる場所のため、私は日を替えて、改めて伺うことにしました。
第8番札所【大超寺/鍬形薬師】
元は千本一条にあったお寺で、近年岩倉に移転されました。鍬形薬師像は、御本尊の左側に祀られ、田んぼを鍬で耕しているときに発見されたお薬師さんと伝わります。病気平癒の功徳があり、「痛いところを撫でてお参りしてくださいね」とご住職さま。
移転されて30年ほどのため堂宇は新しいのですが、開山は1500年代に遡り、現在のご住職は27代目。恵心僧都作の本尊阿弥陀三尊像や、徳川吉宗寄進の宮殿(くでん)など、歴史あるお寺にふさわしい寺物が伝わります。
⇒大超寺の詳細情報はこちら(京都十二薬師霊場会公式ホームページ)
※平日の巡拝は要電話予約(075-711-3166)。
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これですべてのお薬師さんを巡ることができました! 最後に、平等寺に戻り「満願証」をいただきました。
※満願証(発行冥加料1,000円)は希望者のみ。満願証は以下の札所でいただくことが可能。
(平等寺・壬生寺・地福寺・福勝寺・雙林寺・大超寺・薬師院・西光寺・永福寺)
お薬師さんのご縁日「8日」に満願成就です♪
仏様のお姿を実際に見ることなくお参りする巡礼は、ついつい“仏様を鑑賞しながらお参り”してしまう心とは別の、祈りの形を感じられる巡礼でした。今は、ただただ感染症の終息、これ以上の自然災害が起きないよう祈るばかりです。皆さまのご無事をお祈りするとともに、早く京都観光をのんびり楽しめる日が戻りますように・・・