五層楼閣純和風建築の造形美。「FUNATSURU KYOTO KAMOGAWA RESORT」の魅力に迫る

  • グルメ・スイーツ
  • 知る・学ぶ

京都の名建築探訪 3 

京都、鴨川。夏の風物詩・川床が並ぶ四条大橋と五条大橋の中ほどに位置する松原橋のたもとに、五層楼閣純和風建築のひと際目を引く建物があります。それが、「FUNATSURU KYOTO KAMOGAWA RESORT(鮒鶴京都鴨川リゾート)」。元老舗料亭旅館「鮒鶴」で、大正末期に建てられた建物は登録有形文化財に指定。現在はフレンチレストランや結婚式場として営業し、ほぼ創業当時の姿で保存活用されている館内も見どころのひとつとなっています。

「行ってみたいけれど、なかなか行く機会がなくて・・・」という方に嬉しいお知らせが! 例年5・9月のみ提供される「川床ランチ」が、今年(2021年)は6・7・8・10月も営業。川床でのかき氷の提供もスタートされるなど、気軽にお食事を楽しめるチャンスが増えているんですよ♪

実は、「館内の見学のみも可能」という、鮒鶴京都鴨川リゾート。見ごたえある建物の内部や、この夏のおすすめメニューをご紹介いたします!
※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、京都旅行の際は、政府およびお住まいの都道府県と京都府の要請をご確認ください。京都にお越しの際は、マスクの着用・手指のアルコール消毒など、感染拡大防止の徹底にご協力をお願いいたします。日々、状況は変化しておりますので、事前に最新情報をご確認ください。

「鮒鶴」とは?
“鮒屋の鶴さん”が創業した、仕出し屋さんからスタート!

松原橋から。赤い屋根の建物が鮒鶴。 北側(写真右側)の3階建てが「本館」。その南側の楼閣建築が「新館」です。

松原橋から。赤い屋根の建物が鮒鶴。 北側(写真右側)の3階建てが「本館」。その南側の楼閣建築が「新館」です。

鮒鶴は、明治3年(1870)、川魚業者であった田中鶴三郎が仕出し屋として創業したことに始まります。主に鮒を扱っていたため「鮒屋の鶴さん」と親しまれ、屋号も「鮒鶴」となりました。
  • 館内1階には鮒鶴の歴史を展示する資料スペースも。

    館内1階には鮒鶴の歴史を展示する資料スペースも。

  • 松原橋からの景色も今とは違い、周囲の建物が低いですね。

    松原橋からの景色も今とは違い、周囲の建物が低いですね。

大正11年(1922)には、木屋町松原上ルの現在地へ移転。平屋の料亭が軒を連ねるなか巨大な木造建築物を構想し、大正14年(1925)に完成したのが、木造3階建ての「本館」です。

当時の料亭は、庭を眺めながらお食事をすることがスタンダード。そんななか鮒鶴は、「鴨川と東山三十六峰を愛でながら食事を楽しむ」ことをコンセプトにパノラマビューの客間を展開し、さらに、当時としては異例の200名収容の大広間を設置。物珍しさが評判を呼び、全国から旅行者が訪れるようになります。
  • 4階テラスからの眺望。清水寺や八坂塔などが一望できます。

    4階テラスからの眺望。清水寺や八坂塔などが一望できます。

  • 八坂塔をこの高さから眺められる場所は、少ないのではないでしょうか。

    八坂塔をこの高さから眺められる場所は、少ないのではないでしょうか。

設計は、東京帝国大学出身の建築家・柴田四郎。 宮大工の上田喜三郎・山本米蔵らが腕を振るいました。

設計は、東京帝国大学出身の建築家・柴田四郎。 宮大工の上田喜三郎・山本米蔵らが腕を振るいました。

一部の富裕層だけをターゲットとせず、交通機関の発展に伴い増大した観光客にも門戸を開いたことで大いに賑わい、昭和9年(1934)には鉄骨4階建て(中3階含め5階建て)の「新館」を増築。最大500名を収容できる、京都随一の料亭となりました。

140余年の伝統と風格に、モダニズムを融合!
歴史的建造物を活用しながら保存する道へ。

玄関

玄関

その後も京都有数の老舗料理旅館として営業を続け、転機が訪れるのは平成20年(2008)のこと。歴史的建造物などを後世に遺す事業に取り組むバリューマネジメント株式会社と提携し、それまでの料亭経営を終了。大きく舵を切り、結婚式場・パーティスペース・フレンチレストランからなる複合施設として生まれ変わり、「FUNATSURU KYOTO KAMOGAWA RESORT」として再出発することになりました。

保全・活用が功を奏し、平成24年(2012)4月21日には文化庁から本館・新館・旧門が登録有形文化財(建造物)に指定。夏場の川床や最上階の天空テラスなど、京情緒あふれるシチュエーションをモダンに楽しめるお店として今も人気店となっています。
  • 川床もお洒落なテーブル席に。

    川床もお洒落なテーブル席に。

  • 夜は日よけがなく、さらに開放的な雰囲気に。

    夜は日よけがなく、さらに開放的な雰囲気に。

贅を凝らした内装に注目!

リニューアルしたとはいえ、創業当時の豪奢な内装は当時のまま保存され、昭和初期のモダンな雰囲気と現代的な使いやすさが融合した空間を楽しむことができます。

嬉しいことに、スタッフの方に声をかければ、館内の見学も可能。今回は、支配人の熊澤さんに、館内をご案内いただきました♪
<館内見学について>
・レストランご利用の場合
→食事前後のお好きなタイミングでご案内いただけます。予約時などに希望をお伝えください。
・館内見学のみの場合
→事前予約なしでも見学いただけます。ご案内付きでの見学となりますので、必ずスタッフの方にお声かけください

※貸切営業や満席でご案内が難しい場合もありますので、ご了承ください。

①玄関から贅沢尽くし! 足元に注目を。

玄関前の沓脱石(くつぬぎいし)は、滋賀県・瀬田川産の真黒石。現在は採取禁止の貴重な石。

玄関前の沓脱石(くつぬぎいし)は、滋賀県・瀬田川産の真黒石。現在は採取禁止の貴重な石。

木屋町通り沿いにある玄関は、本館へと通じる入り口と、その南側、新館前にある「旧門」(現在は使用禁止)の2ヵ所。そのどちらも、足元には大きな石が配されていて、これほどのサイズの石は現在手に入らない貴重なものなのだとか。

熊澤さん 「旧門は幕末の彫師による透かし彫りの欄間も見事で、こちらも登録有形文化財に指定されています。足元にも頭上にもご注目ください」
  • 南側の「旧門」。踏石は上質な鞍馬石を使用。

    南側の「旧門」。踏石は上質な鞍馬石を使用。

  • 見事な彫刻にも注目。

    見事な彫刻にも注目。

  • 吉祥の鶴が舞います。

    吉祥の鶴が舞います。

②現在も現役! 昭和初期のエレベーター

  • レトロなエレベーター。

    レトロなエレベーター。

  • ボタンや蛇腹式の扉も、当時のまま!

    ボタンや蛇腹式の扉も、当時のまま!

新館の1階から4階を結ぶのは、新館増設時に設置されたアメリカ・オーチス社製のエレベーター。当時は、「木造建築にエレベーターが!?」ととても驚かれたそうで、現在では「今でも現役なの!?」と驚かれるそう。

本館の4階屋上にある入母屋造の塔屋。なんとも雰囲気がありますが、実はエレベーターの滑車を格納しているそう。

熊澤さん 「屋根の梯子は、エレベーターの点検用です。今も毎月、オーチス社の技師さんが点検にいらっしゃるんですよ」

③東山を一望! 2人の船出を祝福する船底天井のチャペルは、窓枠にも注目を。

新館4階は、セレモニースペース。3方向に窓があり、ベンチシートに座った時に東山の山並みが一望できるように設計されています。2人の門出を祝う船出の場所ということで、天井は船底天井に。左右の窓枠は、なんとオールをモチーフにデザインされているのだとか。

熊澤さん 「参列者の皆さまも一緒に船を漕ぎ、2人の船出を祝福する意味があるそうです。こちらも昭和初期のままの内装で、先日もお祖母様、お母様がこちらで結婚式を挙げたという方が、お式を挙げられました。歴史ある建物だからこその出来事で、大変光栄でした」

最近では、このチャペルでのプロポーズプランも大人気なのだとか! なんてロマンチックなんでしょう・・・。
⇒プロポーズプランはこちら

④これぞ「鮒鶴」! 圧巻の大広間は、創業当時からの見どころです!

「鮒鶴といえば大広間」というほどに、創業当初から大人数を収容できる大広間が名物となっている鮒鶴。それは、リニューアルした今も、変わらぬ特徴となっています。

レトロな照明も創業当時からのもの。

レトロな照明も創業当時からのもの。

熊澤さん 「私が一番にご覧いただきたいと思うのが、やっぱりこの3階の大きな空間です。二条城二の丸御殿と同じ折上格天井(おりあげごうてんじょう)の見事さもさることながら、木造建築なのに柱を使わず広い空間を実現しているのは、当時の職人技術のすばらしさかと思います」

5メートルもの高さの天井が創業当時のままというのも驚きますが、現在の披露宴などにもそのまま使える大空間の実現は、鮒鶴の真骨頂ともいうべきもの。耐震工事を施し、畳からテーブル式へと変化はしたものの、当時の建築のすばらしさをそのままに、今も使い続けているというのは驚くばかりです。

小村大雲(1883—1938)の板絵作品。7匹の鯉が天井を泳ぎます!

小村大雲(1883—1938)の板絵作品。7匹の鯉が天井を泳ぎます!

そのほかにも、2階ギャラリールームの『群鯉遊泳図』など見どころいっぱい。約1時間ほど見学をしましたが、「まだまだご案内したいところがいっぱいで・・・」と、熊澤さん。お店を訪れたならば、ぜひ見学をしてみましょう!

レストラン「LE UN 鮒鶴京都鴨川リゾート」
この夏のおすすめ料理は?

1階のフレンチレストラン・ルアンでは、新型コロナウィルス感染防止対策を徹底しながら、この夏も様々なプランをご用意されています

①京フレンチを川床で楽しむ「川床プレミアムシート」

川床ランチは4,235円~、ディナーは10,285円~。いずれも公式ホームページから予約が可能です。冒頭にもお伝えした通り、今年は5~10月までランチを営業。オープンスペースでのお食事をお楽しみください♪
  • 夏には鱧(はも)など、京都の夏素材もたっぷり楽しめます。

    夏には鱧(はも)など、京都の夏素材もたっぷり楽しめます。

  • お料理のイメージ

    お料理のイメージ

■2021川床プレミアムシート
【日程】2021年5月1日(土)~10月31日(日)
⇒詳細はこちら
※雨天時は室内での飲食となります。

②特別な京都の夜を堪能! 「天空テラスダイニング 特別ディナーコース」

天空テラス

天空テラス

本館屋上の天空テラスでは、6席限定での屋外ディナーを楽しむことができます。東山の夜景を眺めながらの特別なディナーは、記念日にぴったりですね。

■「天空テラスダイニング 特別ディナーコース」
【日程】2021年5月1日(土)~10月31日(日)
⇒詳細はこちら

③平日の晴れの日限定! ルアンの創作かき氷が登場♪

かき氷 ~京の彩~ 各1,500円

かき氷 ~京の彩~ 各1,500円

納涼床でかき氷をいただける、嬉しいメニューも登場! かき氷専用に作られた氷と、京都の特産品などを使った3種類のシロップをご用意。暑さをしのぐ川床で、き~んと冷たい氷とは、嬉しい組み合わせですね♪

氷:京都 アサヒ氷業 美里氷室(鈴鹿山系)
シロップ:上林春松本店抹茶 『琵琶の白』/甘酒と柚子/京都赤紫蘇
トッピング:アロエのコンポート/あずき

■ルアンパティシエが作るかき氷~京の彩り~
【日程】2021年9月30日(木)までの平日・晴れの日限定
⇒詳細はこちら
※貸切営業や満席で利用できない場合があります。来店前に問い合わせください。

④人気のテイクアウトも継続!!

コロナ禍に始まったテイクアウトサービスは、利用される方が多く、引き続き提供をされるそう。受け取りの際に、館内見学をしてみるのもよさそうですね♪

シェフの気まぐれサンドウィッチBOX 2,000円

シェフの気まぐれサンドウィッチBOX 2,000円

■テイクアウト
※事前予約のみ。当日受取り希望の場合、電話予約より1時間程かかります。
⇒詳細はこちら

*****
鴨川を通るたびに気になる、鮒鶴の五層楼閣。見学だけでも可能というのは、嬉しいことですね♪ 川床は10月まで続きますので、遠方の方は心置きなく自由な移動が可能となったときに、ぜひ訪ねてみてくださいね!
■FUNATSURU KYOTO KAMOGAWA RESORT
【営業時間】レストラン11:30~15:30(ラストオーダー14:00)、17:30~22:00(ラストオーダー21:00)※川床期間は23:00閉店
【定休日】不定休
【電話】075-351-8541(レストラン)
【アクセス】阪急京都線「京都河原町駅」から徒歩約5分、市バス「河原町松原」バス停から徒歩約5分 Google map
【公式ホームページ】https://www.funatsuru.com/
※掲載内容は2021年7月19日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. みさご

おすすめコンテンツ