渋沢栄一ゆかりのスポットも! 京都・街角の名モダン建築めぐり ~三条通界隈~

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京都文化博物館周辺

京都文化博物館周辺

京都の名建築探訪 4 

数々の名建築が遺る京都のなかでも、モダン建築の宝庫といえば「三条通」。特に寺町通から新町通までのエリアは、京都市の「界わい景観整備地区」にも指定され、歴史ある街並みを保全・維持されています。

明治から昭和初期に至る様々なモダン建築が並ぶなかから、5つの建築をピックアップしてみました。まだまだ自由な外出が難しい時期が続きますが、画面の中での“エアまち歩き”を楽しんでみてくださいね♪

また、2021年9月25日(土)より京都市京セラ美術館にて、開館1周年記念展として「モダン建築の京都」が始まります。いま、なぜ「モダン建築」なのか。近現代建築を通して京都を知る大規模建築展の見どころも、あわせてご紹介いたします!
※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、京都旅行の際は、政府およびお住まいの都道府県と京都府の要請をご確認ください。京都にお越しの際は、マスクの着用・手指のアルコール消毒など、感染拡大防止の徹底にご協力をお願いいたします。日々、状況は変化しておりますので、事前に最新情報をご確認ください。

どうして三条通にモダン建築が集まっているのでしょう?

  • 三条大橋西詰(北側)から東を眺める。多くの旅人が往来してきた道です。

    三条大橋西詰(北側)から東を眺める。多くの旅人が往来してきた道です。

  • 豊臣秀吉により天正18年(1590)に架けられた、旧三条大橋の石柱が遺っています。現在の三条大橋は昭和25年(1950)に完成。

    豊臣秀吉により天正18年(1590)に架けられた、旧三条大橋の石柱が遺っています。現在の三条大橋は昭和25年(1950)に完成。

平安京の三条大路をはじまりとする、三条通。豊臣秀吉の時代に整備され、江戸時代には東海道・中山道の終起点である三条大橋(Google map)から続く道、京のメインストリートとして非常に賑わいました。

三条大橋西詰の南側には、『東海道中膝栗毛』でおなじみの弥次喜多像が。

三条大橋西詰の南側には、『東海道中膝栗毛』でおなじみの弥次喜多像が。

その賑わいは明治維新後、一時廃れてしまうのですが、京都の近代化とともに復活。商業活動のメインストリートとして銀行や郵便局、繊維関係の大商社などが建てられ、近代京都の中心地となりました。
しかし明治45年(1912)、四条通が拡幅され市電が開通すると、その賑わいは徐々に南へと移ることになります・・・

河原町三条の交差点。現在(2021年9月)、工事中。

河原町三条の交差点。現在(2021年9月)、工事中。

今では狭く感じる道幅も、重厚な建築物が遺り道路が拡幅できなかったため。メインストリートの座から外れた三条通ですが、その結果として、京都近代の息吹をよりリアルに今に伝えてくれる、“歴史の道”となりました。

*****
それでは、三条通のまち歩き、烏丸三条交差点からスタートしましょう♪

京都銀行前にポツンとあります。

京都銀行前にポツンとあります。

スタート地点は、この小さな道標。烏丸三条交差点の東南角に立つ「京都市道路元標」Google map)です。

大正9年(1920)、旧道路法に基づき各市町村にひとつ建てられた道路の起点を示す目印で、当時のメインストリートが三条通であったことを示すものなのだとか。

①【みずほ銀行京都中央支店】復元再建された「旧第一銀行京都支店」

「京都市道路元標」が立つ交差点から西を向くと、烏丸通越しに「みずほ銀行京都中央支店」が見えます。

赤レンガに緑屋根・白いラインの入ったいかにもモダンな佇まいですが、実はこちらは平成15年(2003)に復元再建されたレプリカの建物。元の建物は、明治39年(1906)、東京駅の建築でも知られる建築家・辰野金吾と、その教え子・葛西萬司によって建てられた「第一銀行京都支店」です。

貴重な建物として保存の声も高かったのですが、耐震性の問題などもあり、残念ながら平成11年(1999)に解体。・・・平成9年(1997)に発行された『京都の赤レンガ《近代化遺産》』(前久夫・日向進編、京都新聞社発行)を見ると、「~典型的な辰野式デザインが見られるが、~華やかな中にも気品の感じられる壁面の美しさが目を引く傑作となった。」と説明され、隣ページに白黒の画像で当時の様子を見ることができます(46-47ページ)。

見比べてみると、細部に違いはあれど、特徴的な白のストライプの外観は同じで、往時の雰囲気を伝えるように復元再建されていることがわかります。第一銀行といえば、渋沢栄一が初代頭取を務めた銀行。レプリカとはいえ、歴史を感じさせてくれる建物があるのは嬉しいですね!

■みずほ銀行京都中央支店
Google map

②【文椿ビルヂング】大正モダンな木造ビル

三条烏丸交差点を西へ。両替町通の北東角に建つのは、「文椿(ふみつばき)ビルヂング」。大正9年(1920)、西村貿易会社の社屋として建てられ、その後所有者を転々としながら、平成16年(2004)に商業施設としてリノベーションされました。

現在は、1階にイタリアンレストラン、焼肉店、炉端・鮨店、カトラリーショップ、きもの店やアロマのお店などが入り、2階にはバーとクラシック音楽のかかるカフェが入居されています。レトロな雰囲気が魅力的な、珍しい木造建築のビル。国の登録有形文化財にも指定される貴重な建物です。

■文椿ビルヂング
Google map

③【新風館】外観はレトロ、内部はおしゃれにリニューアル♪

三条烏丸交差点に戻り北に目を向けると、木立の向こうに見えるのは「新風館」

大正15年(1926)に建てられた旧京都中央電話局をリノベーションした商業施設で、建物は京都市指定・登録文化財の第一号。

令和2年(2020)6月にリニューアルオープンし、映画館やホテル、約20店舗のショップ&レストランがお目見え。その模様は、「烏丸御池のランドマーク、新生「新風館」がオープン!」ブログでご紹介しています♪

■新風館
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④【中京郵便局】渋沢栄一にゆかりあるレンガにも注目!

烏丸通を東へ渡り、東洞院通との交差点にあるのが、「中京(なかぎょう)郵便局」。もちろん今も現役の郵便局で、あまりにも町に馴染みすぎていて歴史を感じにくいのですが、明治4年(1871)郵便制度発足時に設けられた、日本最古の郵便局のひとつです。

現在の建物は、明治35年(1902)築。逓信省(現・郵政省)の技師・吉井茂則と三橋四郎の共同設計です。三橋が設計した、現役郵便局舎として日本最古の下関南部町郵便局(明治33年築)に並ぶ、貴重な建築なのだとか。

昭和48年(1973)にはこの郵便局にも取り壊し・建て替えの話が出ます。しかし保存を求める声が多く、昭和53年(1978)、外壁の一部(南面及び東西側面)を保存し内部を改修する、日本初の「ファサード保存」という手法が取り入れられ、改築されました。歴史ある外観が今に遺り、当時の方に感謝したい気持ちになりますね!
  • 壁面博物館内に飾られる撤去レンガ。

    壁面博物館内に飾られる撤去レンガ。

  • ファサード保存の工事の模様が展示されています。

    ファサード保存の工事の模様が展示されています。

  • 壁面博物館は東洞院通側の入り口からお入りください。

    壁面博物館は東洞院通側の入り口からお入りください。

そうして遺された、こちらのレンガ。なんと、渋沢栄一にゆかりあるレンガだそうで・・・ 明治20年(1880)、渋沢栄一らが埼玉県上敷免村(現在の深谷市)に創業した日本初の機械式レンガ工場「日本煉瓦製造」で焼成されたレンガが使われています。西日本でこのレンガが見られるのは珍しいとのこと。郵便局内「壁面博物館」では、工事の模様や撤去部分のレンガを見ることができます。

■中京郵便局
Google map
※壁面博物館の見学は無料(営業時間内)。

⑤【京都文化博物館 別館(重文)】三条通のランドマーク、近代京都を支えたバンク

三条通を代表する景観といえば、高倉通との交差点に位置する「京都文化博物館」。本館は昭和63年(1988)10月1日の開館時に建てられた建物ですが、南側にあるレンガ造りの「別館」は明治39年(1906)築の「日本銀行京都出張所(京都支店)」の建物を利用しています。
設計は、日本銀行本店も手掛けた辰野金吾。そして辰野の弟子であり奈良県庁舎などを手掛けた長野宇平治の2人によります。赤レンガに白い花崗岩を配した美しい建物で、明治を代表する洋風建築として昭和44年(1969)、国の重要文化財に指定されました。
  • ホール(旧・営業室)

    ホール(旧・営業室)

  • ホール(旧・営業室)

    ホール(旧・営業室)

  • ホール(旧・営業室)

    ホール(旧・営業室)

こちらの外壁レンガは、大阪で製造されたもの。屋根のスレート(粘板岩)は宮城県の登米産、内部に使われる大理石は岐阜県大垣市の赤坂産など、各地の材を贅沢に使っています。今は喫茶室として活躍する「金庫室」や、今はホールとなっている「営業室」など、内部も当時の様子そのままに保存活用され、銀行だった時代の名残がそこここに感じられます。

■京都文化博物館 別館
Google map
⇒スポット情報はこちら
※別館のみの見学は無料(営業時間内)。

\「生きた建築博物館」京都のモダン建築を、徹底解説/
京都市京セラ美術館開館1周年記念展「モダン建築の京都」
【京都市京セラ美術館】9/25(土)~12/26(日)

近代建築の保存活用において、先進都市と評価される京都。まちのいたるところに近代建築が見られるその特異性をピックアップし、建築的な視点からアプローチする展覧会「モダン建築の京都」が、9月25日(土)より始まります。

大礼記念京都美術館(現・京都市京セラ美術館)[撮影:来田猛]

大礼記念京都美術館(現・京都市京セラ美術館)[撮影:来田猛]

会場となるのは、昭和8年(1933)築、昨年(2020年)リニューアルオープンした京都市京セラ美術館。京都を代表するモダン建築を会場に、京都のモダン建築が多数、紹介されます。
  • 旧御所水道ポンプ室[画像提供:京都市上下水道局]

    旧御所水道ポンプ室[画像提供:京都市上下水道局]

  • 長楽館(旧村井吉兵衛京都別邸)[画像提供:長楽館]

    長楽館(旧村井吉兵衛京都別邸)[画像提供:長楽館]

  • 駒井家住宅(駒井卓・静江記念館)[画像提供:公益財団法人日本ナショナルトラスト]

    駒井家住宅(駒井卓・静江記念館)[画像提供:公益財団法人日本ナショナルトラスト]

展覧会では、明治・大正・昭和の京都のモダン建築を厳選。1章から7章までの7セクションに分けて、図面や写真、模型など400点以上の資料を展示します。

オフィシャルブック「モダン建築の京都100」(9月下旬発売予定)

オフィシャルブック「モダン建築の京都100」(9月下旬発売予定)

まち歩き音声ガイドアプリ「モダン建築クロニクルKYOTO」(展覧会開催時に配信予定)

まち歩き音声ガイドアプリ「モダン建築クロニクルKYOTO」(展覧会開催時に配信予定)

また、会場だけにとどまらず、京都に現存する100のモダン建築を紹介するオフィシャルブックや、まち歩き音声ガイドアプリ「モダン建築クロニクルKYOTO」も登場。長楽館やフランソア喫茶室、無鄰菴など、様々なモダン建築施設との連携企画もあり、複合的・包括的に京都のモダン建築を楽しむことができます。

「モダン建築・・・ なんだか取っつきにくくて・・・」という方も興味を持ちやすい仕掛けが多数用意されていますので、この機会にぜひその魅力に触れてみてはいかがでしょうか。

★「モダン建築クロニクルKYOTO」
【公式ホームページ】https://modakuro.com/
■京都市京セラ美術館開館1周年記念展「モダン建築の京都」
【日程】2021年9月25日(土)~12月26日(日) 10:00~18:00(入場17:30まで)
【休館日】月曜日
【場所】京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ 詳細情報はこちら
【料金】1,900円 ※混雑時には事前予約されている方を優先案内。美術館公式ホームページから日時チケットご購入または日時指定予約をおすすめします。
【問合せ】美術館公式ホームページをご確認ください。
【展覧会ホームページ】https://kyotocity-kyocera.museum/exhibition/20210925-1226
★「そうだ 京都、行こう。」エクスプレス・カード特典協力先です。
※掲載内容は2021年9月17日時点の情報です。最新情報は各掲載先へご確認ください。

Written by. みさご

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