京都と琵琶湖を結ぶ。本格運航から5年目を迎えた「びわ湖疏水船」の魅力とは?

  • 散策

新緑のびわ湖疏水船

新緑のびわ湖疏水船

平成30年(2018)、67年ぶりに本格運航をスタートした「びわ湖疏水船」。今年で5年目を迎え、毎年春秋には疏水沿いの美しい風景を眺めようと、多くの方がお越しになります。少人数定員で壁や窓もないことから、“密を避けた観光コンテンツ”としても人気を集めている疏水船。その歴史や乗船中のみどころ、乗船場へのアクセスをご紹介します♪
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琵琶湖疏水とは?

(京都市上下水道局・田邉家資料)

(京都市上下水道局・田邉家資料)

琵琶湖疏水が誕生したのは明治時代。明治維新による事実上の東京遷都で衰退しつつあった京都を復興するために、第3代京都府知事の北垣国道(きたがきくにみち)が建設を計画しました。土木技師には工部大学(現・東京大学)の卒業論文で「琵琶湖疏水工事」について執筆した田邉朔郎(たなべさくろう)を迎え、明治18年(1885)に着工。当時、大きな土木工事はすべて外国人技師の設計監督にゆだねられており、琵琶湖疏水の建設はすべて日本人の手によって行われた「日本最初の土木事業」となったそうです。

それから5年後の明治23年(1890)、大津から鴨川合流地点までの「第一疏水」が完成。かかった費用は当時の金額で125万円、京都府の年間予算の約2倍に及び、いかに大がかりな工事だったかというのがわかります。水力発電を採用したことで、新たに工場が生まれ、路面電車が走り、近代化が進んだ京都。その20年後には第2疏水が建設され、水道と市営電車を開業。現在にもつながる京都の基盤ができあがりました。

びわ湖疏水船の運航

春のびわ湖疏水船

春のびわ湖疏水船

開削後数十年に渡り、旅客・貨物として利用されていましたが、自動車や鉄道など交通機関の発達により、昭和26年(1951)を最後に船の運行は終了してしまいます・・・ 長く復活には至りませんでしたが、平成26年(2014)12月に「琵琶湖疏水船下り実行委員会」が発足。数年にわたる準備期間を経て、平成30年(2018)より、本格的な運航がスタートしました! 春の桜・新緑シーズンと秋の紅葉シーズンに運航し、船上から眺める自然の風景は多くの観光客を魅了しています。

琵琶湖疏水は、2020年6月に「京都と大津を繋ぐ希望の水路 琵琶湖疏水~舟に乗り、歩いて触れる明治のひととき」として日本遺産に認定され、さらに2021年9月には、土木学会選奨土木遺産にも認定されました。

続いては、びわ湖疏水船のみどころをご紹介します♪

秋のびわ湖疏水船

秋のびわ湖疏水船

<びわ湖疏水船のみどころ>
その1、疏水には、4つのトンネルがあります。

  • 琵琶湖疏水第一トンネル  

    琵琶湖疏水第一トンネル  

  • 扁額には「氣象萬千(きしょうばんせん)」の文字

    扁額には「氣象萬千(きしょうばんせん)」の文字

大津から蹴上(けあげ)を結ぶ、琵琶湖疏水の距離は約7.8キロ。およそ1時間のクルーズで、道中には4つのトンネル(第一・諸羽・第二・第三)があります。内部は4~5度ほど気温が低くなるので、寒い日は防寒具をお持ちいただくと安心です。

各トンネルの上部には扁額が掲げてあり、例えば第一トンネルには、伊藤博文の揮毫による「氣象萬千(きしょうばんせん)」の扁額が。「様々に変化する風光は素晴らしい」という意味だそうで、様々な風景が楽しめるびわ湖疏水船にぴったりの言葉ですね。全部で7つの扁額があり、びわ湖疏水船のガイドの方が丁寧に案内してくださいますので、より楽しむことができます。

その2、第一トンネルの第一竪坑(たてこう)下は、雨天時(雨天後)に楽しいハプニングも

  • 第一トンネル内、第一竪坑のちょうど真下部分 

    第一トンネル内、第一竪坑のちょうど真下部分 

  • 第一竪坑

    第一竪坑

第一トンネルの途中には、地上に「第一竪坑」と呼ばれる穴があります。これは当時、工事をなるべく早く進めるために、山の中からも両側に向かって穴を掘り進める「竪坑方式」を初めて採用したもの。こうして当時日本最長となる全長2,436メートルのトンネルが作られました。現在、雨量が多い日には山に貯まった水がトンネル内に流れこんできてしまうそうで、天井の穴から大雨が降ることも! びしょ濡れになる心配はありませんが、少し濡れても船風で次第に乾くのでご安心を♪ 雨天時または雨天後は楽しみにしてみてください。

その3、当時の光景が目に浮かぶ? 四ノ宮船溜(しのみやふなだまり)

山科エリアにある四ノ宮には船溜があり、こちらは当時、荷物の積み下ろしや人の乗り降り、船頭たちの休憩場所として利用されていた船の停泊スペース。現在も場所が開けているので、「当時の人々」を想像しながら風景を眺めてみるのも面白いかもしれません。山科から乗船・下船される方は、ここが乗下船場となります。

その4、日本最初の○○橋! 日ノ岡第11号橋

疏水船の道中には、安朱橋(Google map)や本圀寺正嫡橋(Google map)など“絵になる橋”が架かっているのですが、“日本最初”といえばこちらの橋に注目。日ノ岡第11号橋は、日本最初の鉄筋コンクリートで作られた橋といわれています。明治36年(1903)に田邉朔郎により作られ、疏水船から間近に見ることができます。

その5、レトロな建物が目を引く、旧御所水道ポンプ室

蹴上の乗下船場内にあるレンガ造りのレトロな建物は、旧御所水道ポンプ室。京都国立博物館などを手がけた明治期を代表する建築家・片山東熊による設計で、2020年4月には国指定登録有形文化財に登録されました。かつては京都御所の防火用水として利用する水を、琵琶湖疏水から貯水池に汲み上げていたそう。乗下船場のすぐそばにあるので、近代建築好きの方は要チェックです。

乗船場までのアクセスは?

最後に、京都駅からびわ湖疏水船をご利用される際の乗船場(大津・山科・蹴上)までのアクセスをご紹介します!

★大津から乗船の場合 
京阪「三井寺駅」から徒歩約2分 Google map
・「京都駅」→JR東海道本線(琵琶湖線・湖西線)<約5分>→「山科駅」乗換、京阪「京阪山科駅」→京阪京津線<14分>→「びわ湖浜大津駅」下車徒歩約6分→「三井寺駅」
・「京都駅」→JR東海道本線(湖西線)<約5分>→「大津京駅」乗換、京阪「京阪大津京駅」→石山坂本線<3分>→「三井寺駅」
・「京都駅」→JR東海道本線(琵琶湖線)<約9分>→「大津駅」下車徒歩約18分→「三井寺駅」

★山科から乗船の場合
京阪「四宮駅」から徒歩約6分 Google map
・「京都駅」→JR東海道本線(琵琶湖線・湖西線)<約9分>→「山科駅」乗換、京阪「京阪山科駅」→京阪京津線<2分>→「四宮駅」
・「京都駅」→JR東海道本線(琵琶湖線・湖西線)<約9分>→「山科駅」下車徒歩約8分→「四宮駅」

★蹴上から乗船の場合
地下鉄「蹴上駅」徒歩約5分 Google map
・「京都駅」→JR東海道本線(琵琶湖線・湖西線)→「山科駅」乗換、地下鉄「山科駅」→地下鉄東西線<6分>→「蹴上駅」
・「京都駅」→地下鉄烏丸線<6分>→「烏丸御池駅」乗換、地下鉄東西線「烏丸御池駅」→地下鉄東西線<7分>→「蹴上駅」

■びわ湖疏水船 春シーズン運航 ※完全予約制
【運航期間】2022年3月26日(土)~6月12日(日)※運休日あり
【乗船料金】ひとり 5,000円~8,000円
※料金は時季により変動します
※下り便(大津~蹴上)、もしくは上り便(蹴上~大津)一回あたりの乗船料金です
【電話】075-365-7768(平日9:30~17:30※土日祝休)※電話でのご予約はできません。
【公式ホームページ】https://biwakososui.kyoto.travel/
※料金やご予約方法など詳細は公式ホームページでご確認ください。
※掲載内容は2022年4月1日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. オパン

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