扇いで見て、“涼”を楽しむ。京うちわの老舗「阿以波」を訪ねて

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残暑厳しい時季となりました。皆さんはどのようにして、この暑さを和らげていますか?
京都では、さまざまな涼道具が揃いますが、なかでも随一の歴史を誇るのが京うちわ。今回は錦市場の程近くにお店を構える老舗「京うちわ 阿以波(あいば)」で、歴史や魅力などを伺いました。扇ぐだけではない“涼”の感じ方をぜひ暮らしに取り入れてみてください。
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京うちわの歴史

誰もが知るうちわですが、その歴史はかなり古く、高松塚古墳(奈良)の壁画に描かれている通り、飛鳥時代には中国から日本へ伝わっていたそう。当時は、神事や朝廷の儀式で使われ、高貴な方の顔にかざすためなどに用いられていました。江戸時代を迎えると庶民の間にも広がり、涼を取る道具として愛用されるように。“邪気を打ち払う”縁起物として贈り物にも好まれたようです。
  • 阿以波の外観

    阿以波の外観

  • のれんには、うちわのモチーフも

    のれんには、うちわのモチーフも

日本三大うちわのひとつに数えられる「京うちわ」は、宮廷で用いられた優美なもので、「御所うちわ」とも呼ばれています。その特徴は、細骨を放射状に並べた“団扇面”と持ち手の“柄(え)”を別々に作り、組み合わせる「差し柄」構造。この造りが骨組を強くし、心地よい風を起こしてくれます。

元禄2年(1689)創業の「阿以波」では、300年以上にわたり京うちわを製作。現在の場所に移転して約200年、歴史を感じる町家のお店で京うちわに出会うことができます。

手に取るとわかる使い心地。
自分好みの京うちわを選びましょう

戸を開けると、形・図柄もさまざまな京うちわが勢揃い。床机が置かれ、ゆっくり腰掛けて会話を楽しみながら選ぶことができるのは実店舗ならではの醍醐味です。

饗庭(あいば)さん 「手にとって扇いでみてください。うちわによって面の大きさや柄の長さが異なり、使い心地も違いますよ」
  • 「片透うちわ」は片面が透かしで、その上に美しい切り絵細工が♪ こちらは、並型の「片透うちわ」(2,720円)

    「片透うちわ」は片面が透かしで、その上に美しい切り絵細工が♪ こちらは、並型の「片透うちわ」(2,720円)

  • 江戸時代から残る木版で作られた「木版うちわ」(4,840円)

    江戸時代から残る木版で作られた「木版うちわ」(4,840円)

ふわりふわり・・・ 早速扇いでみると、どれも驚くほど軽やかな使い心地♪ 柄もしっくり手に馴染みます。「片透うちわ」は片面が透かしになっていて、より涼やかな印象。とても細い骨が均一に施されているのがよくわかります。

  • 作業風景

    作業風景

  • 着々と面ができていきます

    着々と面ができていきます

饗庭さん 「面の竹は丹波、紙は越前・八尾(やつお)の手漉き楮紙(こうぞし)、そして柄には栂や杉を使用しています。この素材だからこそ、扇ぎ疲れが少ない、ちょうど良い重さのうちわに仕上がるのです。うちわ作りにはさまざまな工程がありますが、阿以波では自社工房で一貫製作。現在も職人が手作業で作っています」
  • 種類豊富な木版うちわが揃います

    種類豊富な木版うちわが揃います

  • ミッキー&ミニーが京うちわに!

    ミッキー&ミニーが京うちわに!

  • まん丸がかわいい、小丸型の「片透うちわ」

    まん丸がかわいい、小丸型の「片透うちわ」

職人さんの手により、ひとつひとつ丁寧に作り上げられたうちわ。季節の草花や動物などの伝統的な図柄のほか、2020年からはウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社監修のもと、「ディズニー/京都伝統工芸シリーズ」として製作されたディズニーキャラクターのうちわも並びます。使い心地を確かめながら、お気に入りの京うちわをみつけてみましょう♪

“扇ぐ”から“見る”へ。
両面透かしの「飾りうちわ」で“涼”を感じる

  • 朝顔の「両透うちわ」

    朝顔の「両透うちわ」

うちわは扇ぐもの、夏のもの- そんな概念を覆すうちわが、阿以波にはあります。
それがこちらの「両透うちわ」。先程ご紹介した「片透うちわ」が両面透かしになっていて、扇いで風を起こすことはできません。“飾って楽しむうちわ”なのです。先代の頃に製作が始まり、いまや阿以波を代表する人気商品になっています。

細骨の数は通常のうちわが60本くらいなのに対して、両透うちわは90本から120本。これだけ多くの骨を乱れることなく均一に整えるのはまさに職人技。その上に繊細な切り絵や刺繍が施され、完成品はまるで芸術作品のようです。間近で見れば見るほど、その美しさに惚れ惚れ♪ 「見た目の涼やかなうちわをお部屋に飾って、“涼”を感じてみるのも良いものですよ」と饗庭さんは話します。

並型の「両透うちわ」と「片透うちわ」は、毎年、朝顔や菖蒲などをモチーフに新たなデザインが登場。9月頃から構想をはじめ、翌年の春頃に新作を発表されるそうです。

季節のインテリアとしての、京うちわ

  • 豪華な特大型うちわ「鯉」は、端午の節句を盛り上げてくれそう!

    豪華な特大型うちわ「鯉」は、端午の節句を盛り上げてくれそう!

  • 木版うちわ「鬼」は節分飾りに♪

    木版うちわ「鬼」は節分飾りに♪

  • 雪の結晶がキラキラ美しいうちわは、冬に飾ってみたい

    雪の結晶がキラキラ美しいうちわは、冬に飾ってみたい

  • 可愛らしいお花が散りばめられた特大型うちわ

    可愛らしいお花が散りばめられた特大型うちわ

饗庭さん 「うちわは夏だけに楽しむものではありません。お正月には梅や鶯のおめでたい柄、端午の節句には鯉など、季節のインテリアとして取り入れることができます。お花を生けるように、うちわから季節を感じてみてはいかがでしょう」
  • 「竹台」(左)や、「うちわ置き」(中央・右)も販売されています

    「竹台」(左)や、「うちわ置き」(中央・右)も販売されています

インテリアとして活躍するとは意外な発見です! 古来、うちわは悪いものを打ち払う意味が込められていたといいますから、お部屋に飾ることで縁起も良くなりそうですね。飾るために便利な「竹台」(1,320円~)や「うちわ置き」(1,100円~)も販売されているので、あわせて購入するのもおすすめですよ。

京うちわに香りを添えて

千鳥型のお香

千鳥型のお香

京うちわの購入時には、千鳥型の手作りのお香を添えていただけます。「心地よく、風を楽しんでいただきたくて」と饗庭さん。移り香と風を感じる・・・ なんて雅な楽しみ方なのでしょう。長年、お客様からも愛されているサービスなのだそう。

包み紙は“すごろく”に

そして包み紙にも、おもてなしの心があふれています♪ デザインは、かつて活躍された阿以波の絵師さんの絵を元に作られたもの。・・・ 実はこちら“すごろく”になっていて、京都の名所が描かれたうちわ型のコマを進めば、ゴールは阿以波! 見逃しがちな包み紙ですが、広げて細部まで眺めてみましょう。

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扇ぐだけでなく、眺めても楽しい。エアコンでは感じることのできない“涼”が、京うちわにあります。お伺いした日には、“お祝いの贈り物”や“自分用”を求めてお客様がお越しになっていました。皆さんもぜひ、お店に訪ねて、京うちわを触れてみてくださいね。

■京うちわ 阿以波

【営業時間】10:00~18:00
【定休日】日曜日・祝日
【電話】075-221-1460
【アクセス】地下鉄烏丸線「四条駅」から徒歩約10分 Google map
【公式ホームページ】https://www.kyo-aiba.jp/
【公式Facebook】https://www.facebook.com/kyotouchiwa/

\京都の“涼”グッズを取り入れてみませんか?/
⇒五感で感じる京都の涼(2021年8月掲載)
※掲載内容は2022年8月16日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. かりー

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