南禅寺界隈の近代日本庭園「無鄰菴」の見どころガイド

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南禅寺界隈には琵琶湖疏水の水を引き入れた庭園がいくつもあります。今回ご紹介するのは、明治・大正時代の政治家、山縣有朋の別荘「無鄰菴」。敷地の大半を占める庭園は国の名勝に指定され、四季折々の風景を楽しむことができます。庭園はもちろん、歴史やイベントなど、訪れる前に知っておきたい見どころをご紹介しましょう。

\無鄰菴で庭園のお話をお伺いしました/
⇒「知ると楽しい! 京都の庭園鑑賞」はこちら

無鄰菴とは?

  • 無鄰菴 門前

    無鄰菴 門前

  • 門をくぐり、まずは母屋へ。

    門をくぐり、まずは母屋へ。

琵琶湖の水を京都へ引くために行われた明治の一大事業「琵琶湖疏水」開通に伴い、明治から大正にかけて、南禅寺界隈には多くの別荘が造られました。琵琶湖疏水の水を引き入れた庭園と邸宅からなる15軒の別荘は“南禅寺界隈別荘庭園群”と呼ばれ、その先駆けとして、明治29年(1896)に造営されたのが無鄰菴です。非公開の多い別荘庭園群のなか、無鄰菴は通年公開されていて気軽に訪れることができます。
  • 母屋

    母屋

  • 洋館

    洋館

  • 茶室

    茶室

施主は、明治・大正時代の政治家 山縣有朋。庭園と母屋・洋館・茶室という3つの建物で構成され、庭園は山縣有朋の指示に基づき、七代目小川治兵衛によって作庭されました。

名勝「無鄰菴庭園」を歩きましょう

  • 庭園を望む母屋。

    庭園を望む母屋。

  • まずは解説に耳を傾けましょう。

    まずは解説に耳を傾けましょう。

東山を借景に取り入れるため、母屋と洋館は敷地内の西側に建ち、その正面に庭園が広がります。
母屋では無鄰菴スタッフさんによる嬉しい「10分無料ガイド」を実施中。わかりやすい解説を聴くことで、庭園巡りがより楽しいひとときとなりそうです。
  • 明るい芝生が一面に敷かれた開放的な庭園。奥には東山が見えます。

    明るい芝生が一面に敷かれた開放的な庭園。奥には東山が見えます。

  • この丸い石はビュースポットの目印。1枚目の写真は、ここから眺めた風景です。

    この丸い石はビュースポットの目印。1枚目の写真は、ここから眺めた風景です。

解説を聴いたら、早速、母屋を出て庭園へ。サラサラと心地良いせせらぎが園内に響きわたり、これからはじまる庭園巡りに期待が高まります。飛石に沿って歩くと丸く大きな石があり、ここで立ち止まってみましょう。顔を上げると、東山を借景にした庭園全体が見渡せ、なんとも開放的♪ 外縁の樹木は東山が美しく見えるように剪定され、庭園中央には平たい大石が据えられています。石を立てないことで、東山に存在感を与えているそうです。
  • 庭園中央で振り返ると、母屋が遠く感じるような・・・

    庭園中央で振り返ると、母屋が遠く感じるような・・・

  • 反対側には池が現れました。

    反対側には池が現れました。

園路に沿って歩き、庭園の中央あたりで振り返ってみると・・・ 先程までいた母屋が想像以上に遠く感じます。実はここ、母屋の地面から1メートルほど高くなっているそう。この高低差を生かすことで、奥行きのある空間づくりをされています。反対側には、母屋前からは隠れていた池が見えました。
  • 木々に包まれ、東山に入り込んだかのよう。

    木々に包まれ、東山に入り込んだかのよう。

  • 木々が鬱蒼とし、苔の絨毯も見られます。

    木々が鬱蒼とし、苔の絨毯も見られます。

さらに奥まで進むと開放的な雰囲気は一変し、木々に包まれ、借景に眺めていた東山の山中までやってきたかのよう。また振り返ると母屋はずいぶん遠くに感じます。「ここは同じお庭?」と思うほど、眺める場所によって様々な風景が楽しめるのも、無鄰菴の魅力です。
  • 三段の滝

    三段の滝

  • 橋ではなく飛石で川を渡ることで、水に視線が行くようになっているそう。

    橋ではなく飛石で川を渡ることで、水に視線が行くようになっているそう。

庭園の最奥にあるのは「三段の滝」。豊臣秀吉が設計に携わったという醍醐寺「三宝院庭園」の滝を模して作られたと考えられており、琵琶湖疏水から引き入れた水がここから流れ落ち、園内をめぐります。絶えず聞こえていた心地良いせせらぎは、ここが“発信地”だったのですね♪

自然主義的な庭園を目指した山縣有朋

  • 園内に広がるのは苔ではなく芝生。

    園内に広がるのは苔ではなく芝生。

  • 山縣有朋の指示に基づき、滝の周りにはシダが植えられています。

    山縣有朋の指示に基づき、滝の周りにはシダが植えられています。

庭園を巡ってみて感じるのは、明るく開放的であること。山縣有朋は伝統的な作風ではなく自然風の庭園を望み、苔ではなく芝生、滞留する池ではなく川を作り、園内に水の流れを作るなど、造営当時にはなかった斬新な表現が取り入れられました。その表現は、後に明治を代表する作庭家となった七代目小川治兵衛に新しい庭園観のインスピレーションを与えたといいます。

レトロな洋館で無鄰菴の歴史に触れる

  • 2階 無鄰菴会議の再現室。

    2階 無鄰菴会議の再現室。

  • 1階では資料を通して無鄰菴を知ることができます。

    1階では資料を通して無鄰菴を知ることができます。

母屋の隣に建つのは、レンガ造りの洋館。2階の一室は、山縣有朋が伊藤博文らと日露戦争開戦前の外交方針について話し合う歴史的な「無鄰菴会議」が行われた場所。狩野派の絵師による金碧花鳥図障壁画が飾られ、天井は華やかな格天井。テーブルと椅子も置かれ、当時の様子を伺うことができます。1階は倉庫として使われていた部屋で、現在は無鄰菴庭園の変遷を学べる資料展示が行われています。

母屋の「庭園カフェ」でひとやすみ♪

庭園カフェ

庭園カフェ

最後は母屋に戻り、「庭園カフェ」へ。山縣有朋も楽しんだという庭園が見渡せる特等席で、飲み物とスイーツ(スナック)のセットをいただきましょう。社寺の庭園ではよく抹茶とお菓子のセットが用意されていますが、無鄰菴は「カフェ」と銘打つだけにメニューが豊富。
  • スパークリングワインとピスタチオ

    スパークリングワインとピスタチオ

  • 抹茶と無鄰菴オリジナルお干菓子

    抹茶と無鄰菴オリジナルお干菓子

抹茶やコーヒーのほか、クラフトビールやスパークリングワインといったアルコールの提供も♪ お酒をオーダーすれば、より優雅な気分を楽しめそうです。スイーツには、これからの暑い季節に嬉しい抹茶最中アイスもあります。飲み物とスイーツ(スナック)、お好みの組合せを選び、ゆっくりと過ごしましょう。

訪れるのが、さらに楽しみになる! 様々なイベントを開催

庭園コンシェルジュによる庭園ガイドの様子。

庭園コンシェルジュによる庭園ガイドの様子。

嘉永元年(1848)創業の植彌加藤造園が庭園管理をされている無鄰菴。庭園を楽しめるだけでなく、「週末庭園めぐり- 庭園コンシェルジュによる庭園ガイド(お抹茶付き)」(毎週土曜・日曜日※要予約)など、様々なイベントを開催されています。

「苔むすテラリウムの魅力」展

「苔むすテラリウムの魅力」展

現在、洋館では、「苔むすテラリウムの魅力」展を開催中(2023年7月7日まで)。LEDライトの光と水だけで、ガラス容器のなかの苔が何年も生き続ける小さな苔庭「Mosslight-LED」をお楽しみいただけます。期間中は、開発者の内野敦明さん在館の日もあり、直接お話ができるチャンスです。ぜひ苔のあれこれについて聞いてみましょう♪

他にも、職人さんと一緒にお庭の手入れに参加できたり、茶室からお庭を眺めることができたり・・・ 気になるイベントがたくさん! 訪れる前に、公式ホームページでイベント情報もチェックしてみてくださいね。

秋の無鄰菴もおすすめです

今回は新緑の庭園をお届けしましたが、紅葉シーズンもおすすめです。モミジが色づくと、印象がまた変わりますね。例年の見頃は、11月中旬から下旬。秋もお楽しみに♪

⇒無鄰菴の紅葉情報はこちら

無鄰菴
【入場時間】4~9月9:00~18:00、10~3月9:00~17:00 ※最終入場は閉場30分前
【入場料】600円(4/1~9・24~30・5/1~31・9/24~30・10/15~21・11/1~5・12/1~3は900円、11/6~26は1,100円)、庭園カフェ1,200円
【休場日】12/29~31
【電話】075-771-3909
【アクセス】地下鉄東西線「蹴上駅」から徒歩約7分、市バス「神宮道」バス停から徒歩約10分 Google map
【公式ホームページ】https://murin-an.jp/
【公式Facebook】https://www.facebook.com/ueyakato/
【公式Twitter】https://twitter.com/murinan_garden
【公式Instagram】https://www.instagram.com/murinan_garden/
※掲載内容は2023年6月22日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. かりー

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