東山の山麓に堂宇を構える南禅寺の界隈には、明治時代以降、政府要人や財閥によって別荘が建てられました。その一つ「對龍(たいりゅう)山荘」は特にお庭が誉れ高い場所。「知る人ぞ知る」存在でしたが、ついに一般公開が開始されました! 南禅寺エリアの新たな観光スポットとなりそうな、對龍山荘についてご紹介します。
南禅寺界隈には多くの“別荘”が残ります
對龍山荘があるのは、“現在の”南禅寺境内への入口ともいえる中門(Google map)から西へ徒歩3分ほどの場所。明治維新以降、南禅寺の旧境内及び廃寺となった塔頭寺院跡が民間に払い下げられ、その地には、長く一般に公開されている無鄰菴を始めとする別荘群が築かれました。多くは現在、広く公開されていませんが、今年(2024)の8月末より、對龍山荘で事前予約制の庭園ガイドを開始。そして9月末からは、人数制限の無い庭園見学の受け入れがスタートすることとなったのです♪
※現在は、庭園ガイドは実施していません
※現在は、庭園ガイドは実施していません
對龍山荘の変遷
表門
對龍山荘は、元薩摩藩士で鹿鳴館の建設にも携わった実業家 伊集院兼常により、明治29年(1896)、南禅寺の塔頭寺院跡に建設。その後、彦根(滋賀県)出身の呉服商 市田彌一郎が譲り受け、大改修が加えられました。そして、明治38年(1905)に現在見られる景観が完成。平成22年(2010)には、株式会社ニトリホールディングスに所有権が移り、会長である似鳥昭雄氏の「広く一般の方に見ていただくのが使命」という強い思いから一般公開されることとなりました。
庭園は七代目小川治兵衛の作庭
東山三十六峰をお庭の一部として取り入れています
對龍山荘の目玉は何といっても、お庭。「植治(うえじ)」こと七代目小川治兵衛により作庭され、昭和63年(1988)に「国の名勝」に指定されました。無鄰菴を始め、小川治兵衛が携わった界隈に残るお庭と同様、東山の山並みを借景に取り入れ、そして琵琶湖疏水から引き入れた水を、池だけでなく、流れや滝として利用しているのが特徴です。それではお庭の様子を少しご紹介しましょう。
お庭に施された仕掛け
お庭に出るとまず目に飛び込んでくるのが、大きく配された池と滝です。佇んでいると、滝の心地良い音を耳にすることができます。この滝の音、実は周囲の雑音を消すための仕掛けでもあるそう。しかし、よ~く耳を澄ませると、滝の音が他の場所からも聞こえてくるのです…
滝の音を作り出す装置
こちらは、滝の西側に建つ「對龍台」と名付けられた書院。池に張り出すように設けられていますが、近づいてみると、下層部に小さな滝のような流れを確認できます。
実はこの流れで、対面側にある滝の音を補っているのだとか。高床式で見晴らしの良い對龍台からは、滝を確認することができますが、あたかもその滝から発せられている音であるように思わせる仕組みになっているのです! なかなか奥が深いですね~。
對龍台も今後一般公開される?
ちなみに似鳥昭雄氏の意向もあり、對龍台をはじめとする建築群の内部も、来年(2025)春の一般公開に向けて調整されているのだとか。こちらは建設当時、「当代随一」と言われた名工 島田藤吉によるもので、ちょうど今年(2024)、国の重要文化財に指定されました。東山や比叡山、そして眼下に広がるお庭の眺望も抜群♪ 一般公開の一報を心待ちにしましょう!
※現在行われている一般公開では、對龍台内部に立ち入ることはできません(特別な許可を得て撮影させていただきました)
お庭には様々な植物が植わります
お庭の植生に目を移しましょう。今の時季は何といっても紅葉が主役のひとつ♪ 常緑の緑をキャンバスとしながら、控え目でもなく派手でもなく、という絶妙なバランスに心惹かれます。
約1,800坪にも及ぶ敷地内では、春はしだれ桜や藤、初夏は花菖蒲など様々な花が咲き、季節ごとにお庭の表情が変化。一度見学に訪れた後も、時季を改めて再訪してみるのも良いでしょう。
造園業者によって維持管理・運営が行われています
對龍山荘の維持管理をされているのは、無鄰菴や南禅寺のお庭にも深く関わられている植彌加藤造園。對龍山荘での一般公開の運営にも携わられています。“造園業者ならでは”と感じずにはいられないのが、見学の際に渡されるこちらのパンフレットです。お庭の植生がおおよそマッピングされており、気になる植物の名称を調べることができます。見学の楽しさをより一層引き立ててくれそうですね。
まるで別のお庭に来たかのような…
実際に對龍山荘を訪ねてみると、お庭が広大で、そして様々な風情を楽しめるということに気づかされます。水車小屋が配され田園風景を再現したかのような一角や、茶会などの園遊会を催すことができる芝生広場、そしてどこか懐かしささえ漂う里山風景を思わせるエリアなど。さらに、季節や時間帯、天候などを変えて訪れると、新たな良さや味わいを感じられることでしょう。
見学の際は、お足元にもお気を付けください
お庭の園路は狭くなっていますので、見学の際には苔や植物を踏みつけないようにお気を付けください。「順路」や「進入禁止」を示す案内板も置かれていますので、ルールを守った上で存分に見学を楽しみましょう♪
公開日程は変則的です
對龍山荘ホームページ(開園日カレンダー)
一般公開が開始となった對龍山荘ですが、公開日や時間が少し変則的となっていますので要注意! 訪れる際は、新たに設けられた公式ホームページから公開スケジュールを確認しましょう。
■對龍山荘
【公開日程・時間】公開日・時間ともに変則的です。下記の公式ホームページよりご確認ください
【入場料】2,000円
【アクセス】地下鉄東西線「蹴上駅」下車徒歩約8分 Google map
【公式ホームページ】https://tairyu-sanso.jp/
※掲載内容は2024年11月25日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。