サステナブルな社会への取り組みとして、日本の伝統技法である金継ぎに注目が集まっています。金継ぎは主に器の修理に用いられますが、2024年1月に河原町の路地裏にオープンした「香凛(かりん)」では、アクセサリーづくりに技法を活用。今回、2名の「そう京」スタッフが体験にチャレンジしてきましたので、その様子をレポートします♪
そもそも金継ぎって?
金継ぎが始められたのは茶の湯の文化が確立された室町時代といわれます。割れてしまった器のかけらを漆でつなぎ、金や銀の金属粉で装飾する日本ならではの伝統技法で、金継ぎによって器に新しい「景色」が生まれると、美術的な価値が高まることもあるそうです。
使い捨てにせず再利用する文化は、昔から日本に根付いているのですね。
しかし、あまりに細かく割れてしまうと、器に再利用できないケースも。「香凛」の店主、木村香織さんは金継ぎに注目が集まるようにという想いはもちろん、役目を終えたものを違う形で生かすため、かけらを用いたアクセサリーづくりを提案されています。
体験では、ピアス、イヤリング、指輪、帯留め、ブローチ、ピンブローチ、ペンダントのいずれかの製作が可能です(時期によってはバングルもあり)。
かけら1個で作るコース(3,500円)と、かけら2個を組み合わせるコース(3,900円)があり、今回は2個の組み合わせに挑戦。1名はピアス、もう1名はブローチを作ることに。
※2025年5月以降、かけら1個で作るコースは3,900円、かけら2個で作るコースは4,500円に価格改定されます。
かけらとの一期一会の出会い
体験は、かけら選びからスタートします。まず、その数の多さにびっくり!
運搬過程で割れてしまった骨董品や、清水焼の工房で焼き損じた器を木村さんが買い取り、かけらを丁寧に研磨。300種類以上ありますが、形、大きさ、模様の出方など、同じものはひとつとしてないそうです。
「直感で気に入ったものを、どんどん選んでください」と木村さん。なかには江戸時代の器もあり、「これは何の器のかけらですか?」と聞きながら、お気に入りを探します。
ピアスは片方で2個のかけらを用いるため、合計で4つをチョイス。同じような色や形でも、組み合わせる向きが違えば表情ががらりと変わります。まさに世界にひとつだけのオリジナルアクセサリーづくりです。
さらに、オプションでは約20種類の天然石や人工パールを好きなだけ付け加えることができます(500円)。かけらをL字型に組み合わせて角に天然石を配置したり、側面を色とりどりに装飾したり、自分好みに仕上げていく過程は楽しさ満点。
完成形をイメージできたら、接着作業へ。伝統的な技法は「本漆金継ぎ」と呼ばれ乾燥に3週間ほどかかるため、体験では漆の代わりに「新うるし」という植物由来の樹脂を使う「現代金継ぎ」を用います。「現代金継ぎ」は出土した土器の修復にも使われる手法です。
まずは、爪楊枝を使って接着剤を丁寧に塗っていきます。ピアスの軸となるポストや、ブローチの留めピンもしっかりと固定。
接着剤が固まるまでの間、漆についてのレクチャーの時間も。木村さんはアクセサリーづくり以外に、「本漆金継ぎ」による修理作業も請け負っていらっしゃいます。
漆は樹皮に付いた傷を癒すために木が出す樹液で、10年でたった300グラムほどしか取れないそうです。採取に途方もない労力がかかるうえに、時代とともに需要が少なくなったため、国産漆の出荷量はごくわずかに。日本の伝統文化を守るためにも、塗りの器や金継ぎの良さが広まり、国内需要が少しでも高まればと願わずにはいられません。
続いて、「新うるし」と金粉、うすめ液を混ぜ合わせ、接着部分に筆を使って薄く塗り広げていきます。「新うるし」を塗った部分にだけ金粉が残るため、あえて接着面からはみ出して多めに盛り上げるテクニックも。完成をイメージしながら作業に集中していると、時間が経つのも忘れてしまいます。
最後の作業はゴージャス! アクセサリーに金粉をたっぷりと振りかけて筆で優しく撫でると、「新うるし」を塗った部分だけが金色に彩られます。
出来上がりはこちら! もとが器のかけらとは思えない仕上がりになったと思いませんか。じつは、ピアスの縞模様のかけらは徳利、ブローチの2個のかけらは湯呑み。金継ぎによって和モダンなアクセサリーに生まれ変わりました♪
アクセサリーは可愛らしくラッピングしていただけます。すぐに使いたくなりますが、2日間置いてから水洗いが必要です。
店内では木村さんが作ったアクセサリーも販売しています。体験してから、あらためて木村さんの作品を見て「こんな組み合わせ方もあったんだ!」と次回作への意欲を掻き立てるお客さんも多いのだとか。
体験は2時間ほどで終了。製作中は木村さんが手直しをしてくれるので初めてでも安心して体験できました。「新うるし」はかぶれる心配もありません。
ぜひ、皆さんもサステナブルな体験を楽しんでみてくださいね♪
■香凛(かりん)
【営業時間】10:00~17:00 ※体験予約はInstagramのDMもしくはこちらから
【定休日】不定休
【アクセス】地下鉄烏丸線「四条駅」・阪急京都線「京都河原町駅」から徒歩約5分 Google map
【公式Instagram】https://www.instagram.com/karin_kyokintsugi/
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※掲載内容は2025年3月14日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。